モンハン世界で狩猟ツアー【完結】   作:糸遊

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ちょっとしばらく更新が遅くなりそうです…。
気長にお待ちいただければ幸いです。




第48話 災厄は空からいづる

 

 

 

 

 

 

「あっ…ちょっ、こら。 まてまて、どうしたんだ。落ち着きなさい、いい子だから、ね?」

 

 

ポッケ村に移動しない?と、レイリス達に提案したらすんなりと受け入れてくれました。

 

というわけで今朝は移動の準備。

レイリス達に聞いたら『狩りに生きる』なんかのハンター情報誌は各地のマイハウスに置いたままにしてるらしい。

アレ、なかなか面白いんだよね。読み始めたらあっという間に時間が過ぎて行く。

 

まぁそれはそれとして、移動の準備はほとんど整った。

整ったんだけど…。

 

 

「おわっ…ちょ、体当たりはやめて…。あーもう、逃げないの。 あーっ!本棚崩すな!」

 

 

いつもは素直なプーギーさんが今日は何故か荒れている。

あとはこの子を連れていければ終わりなんだけどな…。ってそっちはまずくないですか?

 

 

「待て待て!外に逃げるのはやめてくれ!」

 

 

プーギーさんが玄関に向かって駆け出した。

部屋の中でも捕まえるのは一苦労なのに、外に逃げられたらたまったもんじゃない。なんとしても阻止せねば。

 

なんて思ったら、急に玄関に人影が。

 

 

「お〜いヘタレ〜!自分から提案しといて遅刻は少しないんじゃないか……ってうわっ!

 

プ、プーギー…?

あっ…ぷにぷにだぁ…!えへへ…」

 

 

玄関に立っていたのはラディスでした。

プーギーさんは俺から逃げるようにラディスに飛びついた。そして此方を向いて、ぷりぷりと不機嫌な様子。ラディスに捕まるのは良くて俺に捕まるのはそんなに嫌か、そうなのか。

 

 

「おいヘタレ!プーギーがなんか不機嫌じゃんか!なんか酷いことしたんじゃないだろうな!?」

「い、いや…何もしてない…はずですぞ?」

 

 

なんて答えたら、プーギーさんは何故かブーブー怒り出した。そしてラディスの疑うような視線が俺に突き刺さる。

えぇ…?なんでだよ?

 

 

「いや、本当に何もしてないぞ? 移動のために連れて行こうとしたらやたら嫌がってさ」

「えぇ…?本当に?

プーギーちゃん、ヘタレの言ってることは本当かな?」

 

 

ラディスがそうプーギーに尋ねると、プーギーは少し申し訳なさそうな顔に。

随分と器用な表情をする子豚だなおい。

 

 

「う〜ん…そっかぁ…。

ねぇ、プーギーちゃん。今回はちょっとだけ我慢してくれないかな?アタシ達もポッケ村に行きたいと思ってるし、もう移動の準備はしちゃってるんだ。 特にクルルナは馴染みの受付嬢さんと久しぶりに会えるって喜んでるし…。

ね?今回は我慢してみんなと一緒に行かない?」

 

 

ラディスが優しげにプーギーを諭す。

流石にラディスには強く出れないのか、プーギーは諦めたようにうなだれた。

 

 

「ごめんね?ただ、向こうに行ったら雪でいっぱい遊ぼうね?約束するよ!」

 

 

少ししょんぼりしているプーギーに、ラディスは励ましの言葉をかける。

それで、少しはプーギーの元気も戻ったみたい。

流石はラディス、普段から元気いっぱいなだけある。

 

 

「おっし!それじゃあヘタレも早くしろ!出発はもうすぐだぞ!」

「あいあいさーっと…」

 

 

と…まぁこんなことがあったわけだけど、ポッケ村への移動の準備は概ね順調です。

 

 

「よっこいせっと…」

 

 

既にアイテムボックスは何個か運び終わって、残りは1つ。忘れ物はおそらくない…ハズ。まぁ忘れてても問題はないだろう。

 

最後のアイテムボックスをゆっくりと持ち上げる俺。

遠くから、飛行船の汽笛の音が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「んぐっ…んむんむ、んまっ!」

 

 

船内の部屋でモグモグと串焼きを食べるラディス。確かモスポークとか言っていた。

うむ…見てたら俺も腹減ってきたな。買ってこようかな?

 

 

「ちょっと…聞いてますの? 」

「あっ、ハイ。すみません、聞いてませんでした」

「ぶっ飛ばしますわよ?」

「許してください」

 

 

なんて事を考えてたら、セレスから怒られました。 まぁちょっとぐらい許してほしい。

…で、何だっけか?

 

 

「えと…片手剣を使えるかどうか?」

「えぇ、そうです。 貴方は操虫棍がメインのようですが、片手剣は使えるんですの?」

 

 

片手剣ねぇ…。まぁ使えなくはないかな?

おそらく使用回数は100いったかどうかだけど、基礎的なことはわかる。

超特殊とかその辺りをやれ、とか言われたら厳しいとは思うけどまぁ普通のクエストならサクッといけるんじゃないだろうか。

 

 

「あんまり触ってはないけど…まぁ使えるぞ? イビルジョーとかラージャンくらいならいけるとは思う」

「………あまり触ってなくてそのレベルなのですのね」

 

 

セレスが少しムスッとした様子に。

……なんか悪いこと言ったかな?

 

 

「………片手剣を使うときのコツとかあります?」

 

 

あら、珍しい。呼ばれたから何事かと思ったけど、そういうことでしたか。

生憎だけど、片手剣はあんまり使わないんだよなぁ…。

 

 

「別にセレスくらいの実力がありゃ十分だと思うけどなぁ…」

「いいから答えなさい」

「はい、スミマセン」

 

 

セレスさんったらちょっと怖い。

………つっても、このパーティのみんなは普通に上手いからなぁ。

1番荒削りなラディスだって、そこいらのハンターよりは強い。

 

以前、ギルドの人に頼まれて操虫棍使いの新米ハンター少年と一緒にクエストに行った時はなかなかに悲惨だった。

赤エキスをとるのにめっちゃ時間かかってた。まぁ、期待の新人だそうで飲み込みは早かったとは思うけど…。

 

どうやら、この世界のハンター達はスキルとかそういった概念について随分と疎いらしい。

上位ハンターと言われる人達は、とりあえずそこそこ強いモンスターの一式装備。

たまに見るG級ハンターさん達は、一応武器種との相性が良くなるようにしてるけど、それでも殆どが一式装備だった。

もしかしたら外装装備なのかもしれないけど、一度気になって聞いてみたらそういうのはしてないみたいだった。

武器や防具は相手を倒したという勲章。そうして自らの力を示す、という人が多いみたい。

 

ウチのパーティみたいに混合防具を使う人なんてまずいないらしい。

まぁ、とやかくいうつもりはないんだけど…なんかなぁ…。

 

 

「片手剣というか…まぁモンスターと戦うときはさ、余裕を持ってやればいいと思うよ?

何かに追われるような気持ちだと上手くいくものもいかないさ」

「………なんか適当ですわね。そんなものなのです?」

「あぁ、そんなもんさ。

セレスやラディスを見てると、レイリス達よりは余裕が少ない気はする。必死すぎるというかなんというか…」

 

 

俺から言えるのはそんなもん。

クエスト中の動き…というか表情とかを見てると、この2人はまだまだ余裕がない。

レイリスやルファールさんみたいに余裕を持った方が力を出せるような気はする。

それに…。

 

 

「あっ、聞いておきたかったんだけどさ。

このパーティのみんなってハンター歴はどんくらいなの?」

「…ハンター歴? えっと…レイリスさんとクルルナさんが4年目で、ルファールさんが10年目。 私とラディスが2年ですわ。

それがどうかしまして?」

 

 

ルファールさんの貫禄がすごい。1人だけ桁違いでした。

…でも、まぁそんなもんか。あの人、俺より5つも年上だし。

 

 

「それなら大丈夫だろ。単純に経験の差だとは思うぞ?」

「う、う〜ん…そうなんですの?」

「そんなもんさ。技術は十分、あとはその力をどんな状況でも出せるか。たったそれっぽっちだけど、それが全てだとは思うかな?」

 

 

まぁそんなもんだと思う。

モンハンに限らず、あらゆる分野において『いつも通り』の力を出せるのは重要だ。

 

 

「んで、いつも通りをずっと続けてればいつのまにか強くなる。

俺だって…最初はドスジャギィとか水中のラギアクルスにヒイコラ言わされてたよ」

「……貴方でもそんな時期があったんですのね」

 

 

そんなの当たり前だ。最初から上手いわけがない。

 

デビュー作はtriだったけど、武具屋でチェーンシリーズを揃えて、武器をハンターカリンガに強化して意気揚々と臨んだドスジャギィ狩猟は2乙した。ヘェーイの掛け声と共に繰り出されたタックルは強かった。

 

それに、ラギアクルスを初見2乙45分針で倒したのは今でもはっきりと覚えている。モンハンやっててあんだけ達成感を覚えたのは、あれかジョジョブラキ倒した時くらいだろう。

 

 

「まぁそうしてだんだんと…」

「えっ!? ヘタレは水中でラギアクルスを狩ったときあるのか!?」

 

 

おぉう?ラディスがものすごく喰いついた。

こらこら、肉を食べながら喋るんじゃありません。汚いでしょうが。

 

 

「え?あ、あぁ…まぁ新人の頃な」

「へぇ〜!ウチのパーティで水中で狩りをしたときあるのはルファール姉くらいだから、なんか憧れるな!アタシ、モガ出身なんだよ!言ってなかったっけ?」

 

 

え?マジで? モガの村出身なんですか?

ってことは、あのアイシャさんと知り合いだったりする?

俺、一番好きな受付嬢さんはアイシャさんなんだけど。サインとか頂けるのなら貰いたいところだ。

 

 

「おぉ〜。だったらいつか案内してくれよ?

何だかんだ愛着のある場所なんだ」

「えっ…?あ、愛着あるのか?

……ま、まぁ歓迎するよ!いつかな!」

 

 

デビュー作はMH3なんです。だからモガの村にも愛着は湧く。いつか行きたいね。

 

 

「で、俺から言えるのはこんなもんだけど…。大丈夫だった?」

「…まぁいいアドバイスを貰えたような気はしますわ。感謝します」

「あいよ。

なぁ、腹減ったからなんか買ってこないか?ラディスのヤツ見てたら食いたくなった」

「いいですわね。わたくしも小腹が空いてきた所でしたわ。ラディスもまだいけます?」

「おしきたー!まだまだ食べたいぞ!」

 

 

よし、そんじゃ軽く食べるとしますか。

俺達は屋台がある場所へと向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ねぇ、何でいきなりポッケ村だと思う?」

「さぁ…私に聞かれても…。 ポッケ村は好きですけど、ユクモ村の方が魅力的だとは思いますし…。何ででしょうね?」

 

 

 

風の吹き抜ける飛行船の甲板。

私達は涼しげな風を浴びながら、3人でお喋りしていた。

まぁ…ポッケ村に近づいているわけだから、風は涼しげというより肌寒くなっていたけど…。

 

 

「温泉だ!雪見温泉だ!その中で酒だ!

いやぁ、楽しみだなぁ!」

「タハハ…。ルファールはしばらくベルナ村にいたからね…。温泉は久しぶりだよね?」

「何ヶ月ぶりかわからないな! みんなは途中でユクモ村に寄ったらしいから大丈夫だろうが…私は本当に温泉は久しぶりだ!いやぁ、待ちきれないよ!」

 

 

ルファールのテンションがかなり高いなぁ…。

まぁ…ユクモ村に滞在してたラディスとセレスは言わずもがな、私とクルルナもポッケ村とユクモ村はこの間訪れたばかりだから、温泉に入ったのはそう昔じゃない。

でも、ルファールはずっとベルナ村で1人だったんだよね…。最年長だとはいえ、すごいなぁ…。

 

 

「最近は、ユクモ村の温泉ドリンクをポッケ村でも飲めるらしいですよ?

雪見温泉の中でドリンクはなかなかオツですから、おススメです!」

「おっ、ポッケ村通のクルルナがそういうなら間違いないな! 酒じゃなくドリンクもか…。 こりゃますます楽しみだ」

 

 

雪見温泉……。少し恥ずかしい思い出が蘇る。

ま、まぁ今は迷子君とこんな関係になっちゃってるんだから特に気にしなくてもいいんだ。

彼の周りに3人もいるのは気にしないでおこう。

 

 

 

………最初は私だけだったんだけどなぁ。

 

 

 

「なぁレイリス。ポッケ村に行ったら何をするんだ?特に何も聞いてないんだけど…」

「え?あぁ、う〜んとね…。とりあえずしばらく其処を拠点にして、クエストをこなすことになるかな。

迷子君がなんかポッケ村に用事…?があるみたいだし、それが終わったらどうするかはまだ考えてないけど…」

「なるほど…。それじゃあ久々の雪山クエストが出来るかな?それにベルナ村からは向かい難かった狩場もあるだろうし…。うん、やっぱり楽しみが抑えきれないな!」

 

 

ルファールは相変わらずの様子。まぁいつも通りでいてくれた方が私としても助かる。

いつも通りでいれればこのパーティは大丈夫。つくづくそう思います。

 

 

「うぅ…ズビッ…。ち、ちょっと寒くなってきたぞ…。 ホットドリンク飲もうかな…?」

「ふふっ。体調を崩しちゃったら温泉だって楽しめませんよ? 早めに飲んでおいた方がいいのでは?」

「あ、ああ…。そうするよ…。 こんな寒いっけか…?」

 

 

しばらく寒冷地帯を訪れていなかったからなのか、ルファールが寒そうな様子。

クルルナに勧められてホットドリンクを飲みに行ったみたい。

 

そして残ったのは私とクルルナの2人。

何だかんだ言って、クルルナと2人きりになることが多い。やっぱり付き合いが長いからかな?

 

 

「ねぇ…レイリス」

「うん?どうしたの?」

 

 

なんてことを考えてたらクルルナから声をかけられた。

 

 

 

 

「私達…トマトさんの事をどれだけ知ってます?」

「………えっ?」

 

 

 

 

彼の事をどれだけ知っているか?

別に…言われなくても彼のことは良く知って…。

 

あれ?

 

 

 

 

「待って……?彼の事……全然知ってない?」

「気づきました?」

 

 

 

クルルナに言われて初めて違和感に気づいた。

以前、寝たフリをして聞いてしまった事なら知っている。ただ、このことはみんなに言うと問題がありそうだから私だけの秘密な筈。

 

 

それにしても、だ。

 

 

 

「私……彼の名前すら知らない…」

「ですよね? 私も今まで違和感を感じずに過ごしてたんですけど、昨日の夜に急におかしいと思って…。まるで誰かに魔法をかけられたみたいに自然と過ごしてました。

ずっと一緒にいる、好きな人の名前すら知らないのに…違和感を感じないなんておかしいと思いません?」

 

 

 

そうだ。そうだよ。

そんなこと、ありえない。

なのに、私達は今まで違和感を感じなかった。

 

 

 

「………何で?」

「………わかりません」

 

 

 

どうしてなのか考える。だけど…すぐに答えは見つからない。

名前を知らない───なのに違和感はない。

普通に考えたらありえない。

だけど、そのありえないことが何故起きているのか…私には分からなかった。

 

 

 

「今回ポッケ村に行くことになったのは、何かに一区切りがつくからなのかもしれませんね…。神様とかからの啓示…みたいな?」

「ふぇ? あ、う…うん…」

 

 

 

クルルナにしては、随分とぶっ飛んだことを言ってくれた。

……区切りか。まぁ確かにそんな時期なのかもしれない。

迷子君…彼と出会ってからどれくらい経っただろう?半年くらいかな?

 

半年も付き合ったんだ、多少グイグイ踏み込んでいったって構わないだろう。

グイグイいくのは得意じゃないけど、彼に対してなら何故か大丈夫な気がする。

 

 

「うん…そうだね。ポッケ村に着いて落ち着いたら、彼に直接聞いてみるよ。

名前…だけじゃなくてさ」

 

 

そう答えると、クルルナは微笑んだ。

長年見てきた、優しい微笑みだった。

 

 

「ふふっ、勢いが大事ですよ?

彼、グイグイ来られるとすぐに折れるんですから…。レイリスのお願いならきっと聞いてくれます」

 

 

そう言ってくれると嬉しいよ。ありがとう。

よし、勇気も出てきた。これなら頑張れそうだ。

 

 

「ふぅ…なんかお腹すいた…。 なんか食べに行かない?」

「いいですね。甘いものでも売ってれば食べたいところです」

 

 

少しお腹が空いてきたので、クルルナにそう提案。

すんなり受け入れてくれたのでルファールを待つことにした。

 

 

 

「あっ、ルファール! なんか食べに行かない?」

「うん?いいぞ? 熱い食べ物でもあったら食べたいな。 どうも寒冷地は久々で…。まだ寒いや……ズビッ」

「ふふっ、風邪引かないでくださいね?」

 

 

軽く会話を交わす私達。

熱い食べ物…というより温まる食べ物か…。

アツアツハツとかいいかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて考えてた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………レイリス。アレは一体何だ?」

 

 

後ろにいたルファールからそう声をかけられた。

さっきまでの雰囲気とは一変、モンスターと戦っている時のような様子で。

 

ルファールが見つめているのは空のある一点。

 

私とクルルナもつられてそちらを見る。

 

 

 

 

 

 

はるか遠くからこちらに向かって迫ってくる、赤い彗星のような物が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「おわっ…。どうした?そんなに慌てて…。もしかして寒いか?」

 

 

モスポークの串焼きを3人で食べていると、急にプーギーさんの様子がおかしくなり始めた。少し震えている感じ…寒いのかな?

 

 

「お?プーギーちゃん大丈夫か?ほら!抱っこしてあげるよ!これであったかいでしょ?」

 

 

ラディスが震えているプーギーを抱き上げる。

だけど、プーギーの震えは収まらなかった。

これは……怯えてる?

 

 

「あら……イマイチな様子ですわね…」

「う〜ん…お腹すいたのかな…?もう雪山を通ってる途中だし、ポッケ村まで我慢してくれれば…」

 

 

ラディスがそこまで言った時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ズン───と、飛行船が揺れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわっ!?何!?」

 

 

ラディスがそう叫び、抱えられているプーギーが激しく暴れる。

そして俺の方へ駆け寄り、ピーピーと何かを訴えるような表情。

 

途端に外が騒がしくなるのが聞こえた。

つかまれ!だの、また来るぞ!とか言った怒声が響く。

 

 

「ちょい待ってろ」

「あ…ちょっと!」

 

 

後ろからセレスの声がしたけれど無視。

念のためにアイテムポーチを手にとって、外に出た。

 

甲板に出ると、乗組員の人達が騒然としていた。

辺りで怒鳴り声が響き、慌ただしさが伝わってくる。

 

兎にも角にも状況を把握したい。

近くにいた乗組員のおっさんに声をかける。

 

 

「なにがあった?」

「あ…あんたは、あのハンターさん達の…。

待て!捕まれ!」

 

 

乗組員さんが空を見上げると同時に、近くにあった柱に俺を引き寄せた。

 

 

次の瞬間、飛行船の先端を何かが凄まじい速さで貫いた。

ちょっと危険な感じの揺れが飛行船を襲い、ガクン──と何かが抜けたような感覚が足を通して伝わってくる。

 

 

「くそッ!やられた! 衝撃に備えろッ!」

 

 

何処かからそんな声が聞こえてくると同時に、俺の身体は嫌な浮遊感に襲われた。

 

 

「おい…落ちるのか…!?」

「知るか!状況はどうなってる!?」

 

 

目の前にいる乗組員さんに聞くと、乗組員さんはそう叫ぶ。

すると、操縦席への入口らしき所から別の乗組員さんが顔を出した。

 

 

「墜落はしない!だが少々荒い着陸になる!

何かに捕まれぇ!」

 

 

船全体に届くような怒鳴り声が響き、辺りの人がそれぞれ柱などに駆け寄る。

 

嫌な浮遊感はどんどん大きくなっていき………、ついに足が浮いた。

 

 

「マジかよ……」

「ハンターさん!来るぞ!」

 

 

目の前の乗組員さんから言葉をかけられ、ハッと我に帰る。

眼下には大きな湖が広がっていた。

ここに降りる……のか?

 

 

 

そう思った次の瞬間、尋常じゃない衝撃が船を襲った。

 

 

「グッ……うぁ……」

 

 

なるほど、これがGを感じるってヤツですか。

人生で1回は経験したいと思ってたけど、まさかこんな所で経験できるとは思ってなかった。

こんなん二度とやってたまるか。吐きそうだ。

 

 

「うっ……うぅお?」

 

 

とか思ってたら、着水した飛行船の姿勢がおかしな事に。

あれ……?これってひっくり返るんじゃ…?

 

なんて思った次の瞬間、飛行船が何かにガタンと引っかかった感じがした。

そして飛行船は湖の上で横倒しに。

 

 

「と、止まった…?」

 

 

周りにいる人たちは、まだ緊張を解いていない。

一応飛行船は湖の上に不時着出来たみたいだけど…。

 

なんて思っていたら、上からピーピーとした鳴き声が聞こえた。

 

 

 

「うん?」

 

 

 

上を見ると、プーギーさんが悲鳴?をあげて落下してきていた。

いや…どういうことですか……。

 

 

「飛べない豚はただの豚ですよぉぉお!?」

 

 

捕まっていた柱をすぐに放し、落下中のプーギーにむかってダッシュ。

あ〜…これ間に合わなくね?

まぁいいや、どうにでもなっちまえ。

 

 

意を決してヘッドダイビング。

恐らく俺の身体はアタリハンテイ力学で守られる。だけどプーギーさんはなんとも言えない。あの高さから水面に打ち付けられるのは…。

 

ヘッドダイビングの効果はしっかり出たようで、空中でプーギーさんを見事にキャッチ。

 

そして下を見ると、水面からそれなりの高さがあった。

………痛いかな?痛いよなぁ。

でも……俺はアタリハンテイ力学があるからいいか。

 

俺は背中から水面に飛び込むように姿勢を取り、プーギーを包み込むような態勢に。

 

 

そしてそのまま、水面に吸い込まれた。

 

 

背中を思いっきり叩かれたような感覚がして口から空気が吹き出たけど、まぁこれくらいならセーフ。

 

幸いな事に、衝撃を和らげる程度の水深はあるけど脚が地面に着いた。

すぐに立ち上がり、プーギーが濡れないように万歳で持ち上げた。

 

 

「う、うおぉぉ……冷てえぇぇぇ……。

うわっ!水を撒き散らすな!」

 

 

俺の手の上で、濡れた身体を乾かそうとブルブルと震えるプーギーさん。

や、やめてくれ……冷たさが堪える……。

 

 

早足で陸地に上がり、プーギーを地面に下ろす。

そして、俺の足からも力が抜けて思わずへたり込んだ。

 

 

「そうだよ……。ここはゲームじゃないんだ……。 ははっ、見事に思い知らされたな…」

 

 

座ったまま、辺りを見渡してみる。

 

すると、此処は雪山のエリア1だということがわかった。

湖には、飛行船が湖面に突き出た岩と接触する感じで止まっていた。あそこを狙って操縦したのか…凄いな。

あっ、乗組員や乗客の皆さんが小舟で降りてきてる。

 

そして………ラディスは泳いできていた。

元気だねぇ。

 

 

「うっおおお……!!つ、つべたいよぉぉぉ……!!」

 

 

いや、無理してたみたい。泣きそうな顔になってる。

なんで泳いでくるのさ…。

 

 

「い、いや…そんなことより…。大丈夫か!?」

「あぁ……俺は大丈夫。プーギーも無事。他のみんなは?」

「セレスは小舟で来るみたいだけど……あっ、来た」

 

 

少し離れた湖の岸辺を見ると、セレスがこちらに駆け寄ってくるのが見えた。

 

 

「だっ、大丈夫ですかしら!?」

「だっ、大丈夫ですわよ」

 

 

なんて返したら本気で睨まれた。

ごめんなさい、調子乗りました。

 

 

「まぁ……なんとか助かったな。ふはぁ…疲れたぁ……」

 

 

地面に倒れ込み、空を仰ぐ。

 

 

そこで、大事なことを忘れているのに気づいた。

 

 

 

「………レイリス達は?」

 

 

 

そう言葉を落とすと、セレス達もハッとした顔になる。

 

 

 

「そういえば……見てない……」

「いや……でも……まさか…!?」

 

 

 

俺はすぐさま乗組員さん達のいる方へ歩き出す。

そして、疲弊した様子の乗組員さん達に尋ねた。

 

 

「なぁ、他にハンターが乗ってた筈なんだけど……。何処にいるかわかる?」

 

 

そう尋ねると、乗組員さんの何人かが暗い表情に。

………なぁ、頼むからそういうのはやめてくれ。

変な事を想像してしまうじゃないか。

 

 

「頼む、何が起きたのか知りたい。

………言いづらいような事でも構わない。

俺のパーティメンバーは何処にいる?」

 

 

それでも乗組員さん達は喋ろうとせず、俯いたまま。

なぁ……頼むよ。言ってくれよ……!

 

 

 

「あ…あのモンスターに……」

 

 

 

ふと、乗組員さんの1人が喋り出した。

さっき俺の事を柱に引き寄せてくれた人みたいだ。

 

 

「あ、あの3人は…飛行船の前方に居て……。

あの謎のモンスターの攻撃で……落ちた」

「ありがとう。で、どの辺りを飛行してる時か覚えてるか?」

 

 

『落ちた』の単語を聞いた時、腹の底が冷えた。

けど…まだだ。まだ聞いておかないと…。

 

 

「た、確か……雪山山頂の上を通ってる時だった……」

「わかった。助かったよ」

 

 

そう答えた時だった。

 

 

「な…なんだありゃあ…!?」

 

 

乗組員さんの何人かが雪山の方を見ていた。

つられてそちらを見る。

 

 

 

まず目に入ったのは赫い彗星だった。

 

そして、その彗星が凄まじい速度で雪山の山頂に向かっていき、恐らくだけど雪山の山頂辺りに落ちただろう。

 

 

あぁ……そういうことね…。

あのへっぽこ天使、何が面白いことだよ…。

こんなクソッタレイベント望んじゃいねーよ…。

 

 

 

「な…なんですのあれ…」

「なぁセレス。これってギルドの支援は望めないよな?」

「え?あ、そうですわね…。でも…ポッケ村はすぐ近くなのでそこで準備して…」

「あ〜…セレス。 乗組員さん達頼んだ。

俺、ちょっと行ってくるわ」

 

 

 

とりあえずそう言い残して、駆け出す。

面倒なので返事をさせる暇も与えなかった。

 

 

 

「はっ……!? ちょっ………待ちなさい!?」

 

 

 

ごめん、こればっかりは待てない。

今のセレスの反応からして…こっちの世界では、アイツは多分まだ認識されてないモンスターだと思う。

 

ハンターにはアタリハンテイ力学があるから、落下ダメージは恐らく大丈夫。

だけど、準備が十分じゃ無い状態でモンスターに襲われるのは大変よろしく無い。

 

いくらあの3人とはいえ、万全じゃない状態でアイツとの初見は危ない。

それに……ギルドの支援が無いなら……最悪の事だって考えられる。

 

後ろからセレスとラディスの声が聞こえてくるけど、無視。

全力疾走でエリア3の洞窟へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あ〜っと…。あの装備かな…」

 

 

エリア3の洞窟内部で1人そう呟く。

 

頭でイメージするのは採集クエスト用の装備。

ただ、今回は採集目的じゃなく発動するスキルが目当て。

俺の採集用装備のスキルは『キープラン』と『自動マーキング』のスキルが組み込まれてる。

 

早速その装備に着替えたところ、山頂であるエリア8にモンスターの反応が。

どうやら戦闘中の様だった。クソッタレが。

 

 

 

「アマエビ、ヒラメ、出番だ」

 

「「呼ばれて飛び出て参上ニャ!」」

 

 

そしてオトモを呼び出す。

ガードのヒラメと回復のアマエビ。

防御特化コンビだ。

 

 

「今回はアレだ。 もしレイリス達が倒れてたりしたらお前達が協力して、すぐに避難させてほしい。防御特化コンビならいけるだろ?」

「「任せておいてニャ!」」

 

 

おし、あとは無事でいてくれればいいんだけど……。

 

そんなことを考えながら俺は走った。

キープランのお陰でスタミナは一定値から減らない。

これならすぐに着きそうだ。

 

 

 

 

「間に合えよ……!」

 

 

 

3人には無事でいてほしい。

今の俺は、それしか考えられなかった。

 

 

 

 

 





恐らくですが……あと8話くらいでこの物語は完結すると思います。
年内にちょうどよく終われたらいいな…。


感想など気軽にどうぞ。お待ちしてます。

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