モンハン世界で狩猟ツアー【完結】   作:糸遊

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3週間空いてしまいました。
文字数は多いので、大目に見ていただければ…。




第49話 凶星

 

 

 

「あぁ……落ちてるなぁ…」

 

 

身体中に冷たい風を浴びながら、私は空を落ちていた。

顔に雪が当たってとっても冷たいけど、それは大した問題じゃない。

 

本当に問題なのは…。

 

 

 

「………2人は大丈夫かな」

 

 

 

周りは雪ばかりで、人が落ちていくのなんて一切見えなかった。

そもそもなんで私がこんな状況になっているのかというと、飛行船が謎のモンスターの襲撃に遭ったから。

 

飛行船の船首の辺りにいた私達はその衝撃をモロに受け、空に投げ出された。

ただ…投げ出されただけならそこまで心配はいらない。

 

私達ハンターには『アタリハンテイ』とかいう力が働くらしく、基本的に高所からの落下では怪我をしたりすることはない。

今だって下に雪山らしきものが見えるけど、この高さよりは遺群嶺の頂上からのエリア移動の方が高低差がある。

だから…落下の衝撃のことはそこまで心配していない。

 

本当に心配なのは…遭難した場合。

いくらハンターといってもこの寒さをホットドリンク無しで過ごすなら、防具のスキルの補助がない限りいずれ体力が尽きる。

交通網やギルドの支援が充実してない頃は、そんなことで取り返しのつかない事になったハンターもたくさんいたらしい。

 

だから、あの2人が遭難しているなら早く見つけ出さないといけない。

クルルナはポッケ村周辺の地理には詳しいし、ルファールもさっきホットドリンクを飲んでいたみたいなのが幸いだ。

それに、どうやら私が落下していっている場所は、ギルドから狩場に認定されている雪山の山頂みたい。少なくとも私が遭難することはなさそうかな。

 

なんて考えてたら、地面が相当近くなっていた。

かなりの速さで落ちている私。す、少し緊張するな…。

 

ちょっと不安だったけれど、体に力を入れて踏ん張る準備。

そして…ドスンと着地に成功しました。

 

 

「ふ、ふぅ…。ちょっと怖かった……」

 

 

落下には慣れているけど、ちょっと特殊な状況だったから心が落ち着かなかった。

でもなんとか無事みたい。よかったです。

 

 

「ううっ…寒っ…。さて…これからどうするべきかな…。

 

………ん?」

 

 

自分のことはひとまず片付いたから、他の2人を探すなりなんなりしようと思ったところ、空に少し大きな影が見えた。

 

 

 

 

「………ぁぁぁぁぁぁああ」

 

 

 

 

……なんか悲鳴が聞こえるけど、それは聞き覚えのある悲鳴だった。良かった、無事だった…。

というか、どうやら2人ともいるみたい。

クルルナが凄い悲鳴をあげ、それを落ち付けようとするルファールが見えた。

 

 

「ぁぁぁぁぁあああああ!?!?……みぎゃっ」

「………っとぉ…着地成功……。

クルルナ、騒ぎすぎだぞ?耳がおかしくなるかと思ったよ」

「だ、だってぇ……。高いところが苦手なんですよぉ……」

 

 

無事に地面に辿り着いたクルルナが涙目でそう言う。どうやら腰が抜けて立てないみたい。まぁ…無事で良かった。

 

 

「おっ、レイリスもいるじゃないか。良かった良かった。

さて……どうする? 武器はみんな持ってるみたいだけどアイテムは一切無いから、すぐにベースキャンプに向かうのが得策だとは思うが…」

 

 

ルファールが少し緊張感を含んだ口調で私に話しかける。

うん、今はその案が最善だと思う。

ベースキャンプで待ってればギルドの手配も来るだろうし…。

 

 

「そうだね、そうしよう。それじゃあ3人でベースキャンプに向かうって事で!

クルルナ、立てる?」

「はい…。もう大丈夫…」

 

 

クルルナもなんとか立て直したみたい。

あの謎のモンスターとか気になることは多いけど、先ずは自分達の安全を確保しなきゃ…。

 

 

「じゃあ…なんでかわからないけど、エリア6への道が岩で塞がれてるから…。エリア7から戻る感じに……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこまで言った途端、異変を感じ取った。

 

 

 

 

空から甲高い音が聞こえる。

………なんの音?

 

 

 

 

 

すぐに3人でそちらの方を見る。

 

 

 

 

 

 

そこには、ついさっき飛行船を攻撃した赤い彗星がこちらに迫ってくるのが見えた。

速い……。あんなに早く動くものは初めて見る…。

 

彗星は凄まじい速さで地面に激突───するかと思ったら、急激に減速。

そのままフワリと浮き上がり、彗星の正体と思われるモンスターが私達の前に現れた。

 

 

「何……?コイツ……。初めて見る……」

 

 

そのモンスターは、それなりに経験を積んできた私でも見たことがなかった。

隣にいるルファールの表情もいいものでは無いことから、長年ハンターをしている彼女でさえ初めて見るモンスターらしい。

 

 

全身が暗めの銀鱗で覆われており、地面に着いている脚は4本。

 

そして……背中からは翼……?のようなものが。

翼といっていいのか悩んだのは、それがとても羽ばたけるような形状をしていなかったから。ブレードの様な鋭角的な形状をしており、風を受け止めて飛べるようには見えなかった。

 

よく見ると、翼から赤黒いエネルギーらしきものが溢れ出ている。

あぁ…なるほど。

多分だけど、あれを噴射させて空を飛ぶんだろう。そして、それは凄まじい速さになるみたい。さっき飛行船を攻撃したように…。

 

 

 

そして…こればっかりは認めたく無いんだけれど…コイツはおそらく『竜』じゃあない。

4本の脚に翼らしきもの。

つまり……コイツは古龍だってこと。

 

 

 

「レイリス……。コイツは私達の事をすんなり逃してくれると思うか?」

 

 

ルファールが苦々しい顔で呟く。

此方を睨みつけているモンスターからは目を離さない。一瞬の隙が命取りだ。

 

 

「いやぁ…そうしてくれるとありがたいんだけどね……。どうやらそうしてはくれないみたいかな?」

 

 

そう会話を交わした途端、威嚇していた古龍が大きな咆哮をあげた。

 

……あぁもう。いきなり来るのはやめてほしいなぁ!

私達は思わず耳を手で塞ぐ。そうしないと鼓膜に深刻なダメージが及ぶし、恐怖で体が勝手に反応するんだ。

 

 

「………来るっ!散らばって!」

 

 

咆哮をあげた古龍は、私達に向かって突進をしてくる。

咆哮の影響から立ち直った私達はギリギリで散らばり、突進を回避。

 

 

それぞれ背中の武器に手を伸ばし、古龍を相手取る。私は大剣、ルファールは太刀、クルルナは弓。

相手をしないで逃げるのが1番なんだけど、それは相手をするモンスターのことをよく知っている場合。

遠距離にとんでもない攻撃を持っているモンスターだと、相手に背を向けるのが命取りになる場合だってあるんだ。

今回は背中を向けないで、撤退する事が最優先。

少しずつ戦う場所を動かして…そのまま素早く撤退できればいい。

 

 

「積極的に戦おうとはしないで!ダメージを受けない事を最優先で!」

 

 

私が声をかけると同時に、古龍が動き出す。

 

狙いはクルルナ。

古龍は背中の翼らしきものを変形させ、槍のように尖らせた。

そして…一瞬のうちに、信じられないほどにリーチを伸ばしてクルルナを突き刺そうとした。

 

 

「………ッ!? あ…っぶない!」

 

 

何とかジャスト回避したクルルナ。

だけど…古龍は2発目の攻撃に繋げてきた。

今のとは別の翼を、同じく槍のように伸ばしてクルルナを狙う。

 

 

「うっ……ギリギリ……!」

 

 

ジャスト回避をした方向が良かったらしく、2発目の攻撃は空を切った。

なるほど…とりあえず今の攻撃は、気をつけないといけない1つだ。

 

ともかく、クルルナばかり狙われるのは危険だ。

古龍は未だにクルルナを睨みつけている。気を逸らさないと…!

 

 

 

 

 

 

 

 

………私の中で、何かが切り替わる様な感覚があった。

周りから余計な音が消え、視界がクリアに。

 

雪山にいるのだから地面は白い。

だけど……視界の中の白い地面から、色が抜け落ちた。

 

 

「レイリス……無茶だけはするな」

「うん……わかってる…!」

 

 

ルファールが心配して声を掛けてくれた。

大丈夫。この間みたいな無茶はしないよ。

 

 

「ここをなんとかして、ポッケ村に行かないとね…。

彼に聞きたいことがいっぱいあるんだから…」

 

 

色を失った銀世界を前に、私は大剣の柄に手を伸ばして駆け出した。

 

 

 

クルルナを睨みつけている古龍の頭部を、側面から抜刀攻撃。

大剣を通して伝わってきた手応えから、頭部の肉質は柔らかいらしい。

見た目からして随分と硬そうな身体だったけど、弱点があるとわかったのは良かった。

 

 

 

なんて思った途端、古龍はびっくりする程の素早さで引っ掻き攻撃を私に繰り出した。

 

 

「速……ッ!?痛ったぁ……」

 

 

納刀継続に繋げることも出来ず、私は被弾。

そして…大して強そうな攻撃でもないのに、受けたダメージは結構なもの。顔をしかめずにはいられない。

 

吹っ飛ばされたから、古龍との距離は空いた。

そして古龍の方を見ると、引っ掻き攻撃から背中の翼を地面に突き刺す攻撃に繋げていた。

龍属性の様なエネルギーを噴射させ、その勢いをプラスしての攻撃…。喰らったら随分と痛そうだ。

 

 

「攻撃が強い!気をつけて!」

「わかった!」

 

 

ルファールがそう言いつつ、太刀で尻尾を斬りつける。

ただ、そこまでいい手応えではなかったみたいでルファールの表情は険しい。

 

古龍は背後にルファールがいると気づいたらしい。力を溜める様な動作。

……嫌な予感。

 

 

「……うぉお!?」

 

 

古龍は振り向きざまに翼をルファールめがけて振り下ろした。

ルファールは何とかイナしたみたい。

随分と攻撃が多彩なモンスターだ…。

思わず顔に苦い笑みが浮かぶ。

 

古龍はルファールを狙って、先程もみた翼で突く攻撃。

1度見ていたからなのか、ルファールは一撃目を難なく避ける。

 

その隙を狙って、クルルナが古龍の頭を狙い撃つ。

矢を番えて力を溜め、連射矢を射出。

見事に頭部にヒットした。

 

突き刺し攻撃は2発続けてくることがわかっているので、クルルナはそのまま剛射に繋げる。

 

 

 

ただ…認識が甘かったのかもしれない。

古龍は突き刺し攻撃を2発目に繋げる事はなく、翼を大きく振り上げた。

不味い…。嫌な予感がする…!

 

 

「クルルナ!気をつけ───」

 

 

私の中の勘が危険信号を発し、クルルナに声をかけようとした瞬間だった。

古龍は槍のように伸ばした翼で、辺りを横薙ぎに振り払いながら回転した。

 

ハンターとして染み付いたもののおかげか、私は反射的に納刀継続状態に。

ルファールも同じくイナシの構えに入るのが見えた。

 

そのおかげで、私とルファールは何とか薙ぎ払いをイナす。

 

 

 

 

 

ただ…クルルナはそうはいかなかった。

 

 

 

 

「───────ぁ」

 

 

 

 

振るわれた古龍の翼は…剛射を放って隙だらけのクルルナを捉え、体を打ち据え、あまりに呆気なく吹き飛ばした。

 

吹き飛んだクルルナは雪山の壁に打ち付けられる。そして、糸が切れた人形のように地面に転がり…立ち上がることはなかった。

 

 

 

「ルファールッ!引きつけてッ!」

「クソッ…!そっち任せたぞ!」

 

 

 

私はすぐにそう叫んだ。

かなりの負担だけど、古龍のことは一旦ルファールに任せる。あのままクルルナを放置しておくのはそれ以上に危険だ。

 

 

「クルルナ!返事してッ!」

 

 

クルルナの体を抱き上げ、軽く頬を叩いて意識があるか確認する。

だけど、意識は完全に無い様だった。全く反応してくれない。

 

 

マズイ…マズイ、マズイ!

一気に不利な状況になった…。

 

相手の攻撃力が高いことはわかっていた。クルルナだってガンナー防具だから防御力が低いのも重々承知していた。

けれど…まさか一撃でダウンなんて。

いつかの金雷公に匹敵する程の攻撃力じゃないか…。

 

 

ひとまず、モンスターの攻撃の余波が及ばないエリアの端へクルルナを運ばないと…。

ルファールの負担が増えるけど、彼女ならきっと大丈夫。今だって上手く立ち回っているみたい。

 

 

 

私はクルルナを運ぼうと肩を支えた。

その時だった。

 

 

 

馬鹿でかい咆哮がエリアに轟き、私は思わず耳を塞いだ。

あぁもう…それどころじゃ無いのに…!

 

モンスターが咆哮をあげる時はティガレックスみたいな奴じゃない限り、まず決まっている。

大抵は鉢合わせた時か…怒り状態に入った時。

つまり…あの古龍が怒り状態に入ったということ。

 

 

「ルファール!大丈────」

 

 

 

大丈夫、と言おうとしたところで…

 

チュドン、という音が聞こえ、目の前の壁に何かが飛んできた。

 

 

 

「…………え?」

 

 

 

目の前に飛んできた物を見る。

いや…物じゃない。吹っ飛んできたのは…ルファールだった。

 

……何で? だって…さっきまでルファールは上手く立ち回っていたじゃないか。

 

 

 

 

「攻撃が変わった……。気をつけ……!

クソッ……!」

「きゃっ!?」

 

 

 

ルファールが、ドン、と私を突き飛ばし、クルルナを隠すように覆いかぶさった。

私はそこから突き飛ばされ───ルファールとクルルナが赤い爆発に呑まれた。

 

 

その光景を呆然と眺めていた私は、モンスターの方を見る。

 

古龍が怒っていた。銀色の甲殻の隙間から龍属性らしき赤いオーラが溢れ出し、さっきよりも力強く……そして何よりも恐ろしく見えた。

 

何かがさっきと違うような…。何…?どこが違うの…?

違和感の原因を探ろうとした瞬間───古龍とはっきり目が合った。

 

 

 

 

 

 

やばい。

 

 

 

 

 

「こっちだッ!」

 

 

 

 

 

 

このままだと、倒れた2人も巻き添えを喰らう。

すぐさま私は2人から離れるように駆け出した。

 

古龍は私に向かって駆けて来る。

そして、今気づいた。

 

さっきまで噴射口が後ろを向いていた翼が、今は噴射口が前を向き、大きな爪のようになっている。

ルファールが呟いた『攻撃が変わった』というのはこの事だろう。

元の状態でもあれだけ多彩な攻撃があったのに、また別の段階があるだなんて…。

ちょっとヤバいかもね……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………まぁ、なるようになるか。

ポッケ村に行ったら迷子君に聞きたい事いっぱいあったけど…これじゃどうなるかわからないし。

 

 

 

怒れる古龍を目の前に一呼吸。

焦っていた心が、少し落ち着いた気がする。

 

ふと倒れた2人の方を見ると、ルファールがクルルナを肩に背負ってこの場から離れようとしていた。

 

ルファールと目が合う。

私は少しだけ笑って頷き返した。

 

ルファールは悲痛な…、それでいて悔しそうな顔をしたけれど、クルルナを背負って離れ始めてくれた。

大丈夫。なんとかするから。

 

 

 

背中の大剣の柄に手を伸ばし、もう一度深呼吸。

 

 

 

「全く……キミは何なのさ……。せっかくあと少しでポッケ村だってのに…全部台無しだよ…」

 

 

古龍が引っ掻き攻撃を繰り出す。

体が勝手に反応し、引っ掻きに向かっていくように回避行動をとる。

私の体はフワリと古龍の腕をすり抜けるように回避した。

 

古龍はそこから爪のような翼を地面に叩きつける。だけど、私は既に懐に潜っていたので頭に抜刀攻撃を叩き込む。

 

 

思考が、視界が、拾う音が、感じる全てがクリアになっていく。

 

 

古龍はもう一度引っ掻き攻撃。

だけど、私は動かないまま納刀継続へ。

なんでこんな行動をしたのかは自分でも説明できない。多分、金雷公の時と同じような勘だろう。

 

素早く繰り出された古龍の引っ掻きは、私の眼前スレスレ。寸でのところで届かず、そこから古龍は翼を叩きつけた。

だけど、それも私の背後の地面を押し潰しただけ。私には何のダメージもない。

 

納刀継続溜めをしていた私は、目の前にある古龍の頭部へ溜め斬りをぶちかます。

攻撃はうまく頭部に吸い込まれ、古龍はたまらず仰け反った。

 

 

そして…私の体を青白い光が包み込む。

 

 

 

「本気でいくからね?逃げるなら今のうちだよ?」

 

 

 

そんな言葉をかければ古龍が逃げてくれるんじゃ…?

なんて淡い期待を持ってかけた言葉は、怒り狂った様な咆哮で返事をされた。

 

…まぁそう都合のいい展開なんてないよね。

 

 

 

「はぁ…じゃあ戦いますか…。

覚悟してね…?見知らぬ古龍さん…」

 

 

ルファールの姿はだいぶ遠くにあった。

もう少し引きつけることが出来れば彼女達は安全だろう。

 

翼を大きく広げ威嚇する古龍に向かって、私は大剣を構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「クソッタレ……!何で山頂までの道が岩で塞がれてんだよ!

カ○コンてめぇ絶対許さねえかんなぁぁあ!」

「旦那さん!虚しい悪態は止めるのニャ!カプ○ンというのが何かは知らニャいけど、今は只走るべきニャ!」

 

 

悪態を吐きながら全力で走る俺達。

なんとエリア6からエリア8への道が岩で塞がれているとかいう全く嬉しくないサプライズが待ってました。

控えめにいってキレた。あんなん誰も得しねぇだろ。

そんな場合じゃないのはわかってたけど、イライラしてたので岩を殴ったら思ったより硬くて泣きそうになった。

 

ともかくエリア7を経由するルートは障害がなかったので、そちらのルートを進むことに。キープランがあるのでスタミナは無尽蔵だ。

 

 

「エリア7…!あと少しで山頂………ってあれ……?」

 

 

エリア7に入ると、誰かが倒れているのが見えた。

近づいてみると、クルルナとルファールさんの2人だった。

 

クルルナは完全に意識を失っているみたい…。ルファールさんもかなり苦しげな様子だ。体にはバチバチと赤い電気の様なものが迸っていた。龍属性やられってことは、アイツの仕業だろう。

 

 

「だ、大丈夫ですか!?早く回復を…

「あ…あぁ…君か……。私はいいから、早くレイリスの所に…ぐっ…」

 

 

ルファールさんはそこまで言うと、ガクリと頭を落とした。

 

 

「え…!?ちょっ、ルファールさん!?」

「旦那さん!まず此処は回復オトモのボクに任せておくニャ!早い所、ヒラメといっしょにレイリスさんのとこに行くべきニャ!」

「え…あ、うん…。わかった…」

 

 

ヤバイ。

この世界に来てから、こんなに危機感の様なものを覚えたのは初めてだ。

あのルファールさんでもこんな状況になってるんだ。

レイリスは1人で大丈夫なのかよ…!?

 

ルファールさん達をアマエビに任せる。

俺はオトモを1匹だけ引き連れて、レイリスと彗星野郎のいるであろう山頂へと駆け出した。

 

 

 

 

「待ってろよ……!あと少しだから……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ふっ…ふっ…!」

 

 

 

あぁ……頭ん中がチリチリする。

多分だけど、今の私みたいなすごく集中できてる状態でいることは、もの凄く体力を使うのだろう。

前回も金雷公を倒したらその場にへたりこんでしまったしね。

 

今回は初めて戦う古龍…。

相手の動きなんて初めて見るものばっかりだし、それに対してうまく反応し、攻撃を当て続けているのなんて奇跡のようなものだ。

 

 

 

だけど…体力の限界が近い。

 

 

 

いかんせん、環境が良くない。

私の体を撫でる雪風が、体力を容赦なく奪っていくのをひしひしと感じていた。

このままだと、寒さは私の体を機能停止に追い込むだろう。

 

この体力が残っているうちに、古龍にはお引き取り願いたいところ。

だけど…古龍が撤退する様子なんて全く見受けられない。

 

 

 

「じゃあ…もう一撃かまそうか……!」

 

 

 

古龍も無傷というわけではない。

何回も攻撃を当て、頭部なんかは甲殻に浅い傷が刻まれていた。

恐らく部位破壊まであと少し…。

 

 

よし、あそこに一撃ぶちかまそう。

 

 

その後のことは……まぁ今は考えないでおく。

 

 

 

「………来なよ。その綺麗な鼻っ柱、へし折ってあげるからさ」

 

 

古龍にそう声をかけると、古龍は咆哮を上げた。それをしっかりイナす。

 

う〜ん…。 最近は彼の影響を受けてなのか、言葉遣いが荒い気がする。

まぁ、彼と似てるってのは悪い気はしないからいいか…。

 

 

古龍は翼を伸ばしての突き刺し攻撃。

私はそれをすり抜けるように回避。

 

そこから古龍は、先程クルルナを攻撃した時のように大きく翼で薙ぎ払う攻撃に繋げてきた。

勘に従って、少し斜めに移動したところで大剣の抜刀溜めの体勢にはいる。

 

 

………いや、勘に従ったけれども、これはいくらなんでも危険すぎやしないか?

 

 

なんて思った次の瞬間、古龍は翼を使って辺り一帯を薙ぎ払った。

 

……薙ぎ払ったけれども、その翼は私の頭上を通過し、私に攻撃が届くことはなかった。

 

そして、翼を薙ぎ払い終わった古龍の頭が力を溜めている私の目の前に現れる。

 

 

ここだ。

 

 

 

 

「だぁぁぁああああ!!!」

 

 

 

 

渾身の力で大剣を振り抜く。

抜刀スキルの効果が乗ったその一撃は、古龍の頭をしたたかに斬りつける。

 

斬りつける…が、古龍は怯まなかった。

そして、古龍はお返しにと力を溜め始め────

 

 

 

「……ヤバいッ!!」

 

 

 

背中の噴射機構も使い、低空飛行をしつつ、馬鹿げた速度での突進に繋げてきた。

 

私は、その攻撃をギリギリでイナす。

 

あぁ…ヤバい、目の前がチカチカだ…。倒れそう……。

 

 

 

………よし、ここで決めよう。

 

 

 

一瞬のうちに古龍は私との距離を広げた。

だけど、遠くの方ですぐさま方向変換。

再び此方に狙いを定める。

 

 

…………来なよ。

 

 

すぐに大剣を抜刀。

そして身体を大きく捻って力を溜め始める。

 

古龍は再び噴射機構を用いて、凄まじい速度で突進。

 

古龍が尋常じゃない勢いで迫り来る中、私も溜め斬りの力を込め終えた。

 

 

体力は限界。

恐らくこれが最後の一撃になる。

全身全霊の一撃にしよう。

 

 

 

 

 

 

「だっ………あ、ああぁぁぁああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ここだ、というタイミングで大剣を振り抜く。

最早相手のことは見えていなかった。

 

振り抜いた大剣から、会心の手応えが伝わってくる。

 

最早、目の前は見えていない。

感じ取れるのは風の冷たさと、古龍の悲鳴らしきもの。そして、何かが地面に落ちたような音だった。

 

 

 

 

 

「がっ…だっ、あ、ぁぁぁぁぁああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

まだだ、もう一押し。

 

 

目の前で何が起きているのかはわからない。

自分の勘に従って、強溜めを放ち終えた大剣を横薙ぎに全力で薙ぎ払う。

 

 

手応えは……あった。

 

 

ここまでやれたなら、結果がどうであろうと受け入れられるかな…。

 

 

 

「あっ……ふっ」

 

 

 

身体から力が抜け、雪原に倒れ伏す私。

 

チカチカとした目が少しずつ落ち着いてきて目の前の景色が見えてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前には……怒りに震え、全身から龍属性のエネルギーを溢れさせている古龍が佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

「はは……。負けたかぁ……。強いなぁ…。

 

迷子君、ごめんね……」

 

 

 

口からそんな言葉が零れ落ちる。

 

 

そんなことはつゆ知らず。

古龍はその翼から膨大な龍属性エネルギーを溢れさせ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………空へと飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………へ?」

 

 

 

 

あ、あれ……? これは……助かったのだろうか?

 

力の入らない身体に鞭を打ち、大剣を支えにして何とか立ち上がる。

 

空を見ても、古龍の姿は見当たらなかった。

 

これは……助かったかな……。

 

 

 

「ふ、ふっはぁ……。ちょっと動けないや……」

 

 

 

もう一度倒れこみ、体を落ち着かせるために深呼吸。

数回の呼吸を繰り返して、やっと体が落ち着いてきた。

耳鳴りが残っているけれど、これくらいはへっちゃらだ。

 

 

「さて……。みんなのとこに行かないと……」

 

 

動けるくらいに回復した体を起こし、エリア7へと向かおうとする。

 

 

 

「…………ん? ……えっ、迷子君!?」

 

 

 

すると、エリア7から迷子君が走ってくるのが見えた。

ちょっと雪のせいで見えにくいけど、アスリスタ装備の外装に操虫棍のハンターなんて迷子君くらいだから見間違いではないだろう。

 

えっ…と、心配になって来てくれたのかな?

 

 

 

「迷子く〜ん…! 私は大丈夫だよ〜…!」

 

 

 

あぁ、声も出ないや…。

これは彼におんぶでもしてもらおうかな…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんて思っていたけれど、あることに気づいた。

 

彼の顔が必死だった。

 

耳鳴りが酷くて聞こえなかったけれど、なにかを叫んでいるようだった。

 

彼は空の方を指差していた。

 

 

 

 

…………空?

 

 

 

 

振り向いて、空を見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赫い彗星が、私を目掛けて落ちて来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「レイ………」

 

 

 

 

そこまで言ったところで、レイリスが攻撃に呑み込まれた。

 

空から降って来た赫い彗星が彼女を爆発の渦に巻き込み、そして塵のように吹き飛ばす。

 

 

 

「────────ぁ…」

 

 

 

レイリスが吹き飛ばされ、俺の目の前に転がる。

 

 

 

「ぁ………。おい…、おい!」

 

 

 

俺はすぐにレイリスに駆け寄り、彼女を抱える。

 

返事は無かった。意識を失っていた。

 

 

 

「…………クソッタレが」

 

 

目の前の彗星野郎を睨みつけ、背中の操虫棍に手を伸ばす。

 

いや……伸ばそうとした。

 

 

 

手はレイリスに止められていた。

意識を失ったはずの彼女に。

 

 

「………まいごく…ん、に…げ……」

 

 

 

そこまで言うと、次こそ本当にレイリスは意識を失った。

手が滑り落ち、頭をカクリと落とした。

 

 

 

 

 

 

…………ごめん、ここはちょっと退けないや。

 

 

 

 

 

「あ〜…、ヒラメ。 お前、レイリスを1人で運べるか?」

「う、うニャ? まぁ…大丈夫だけど……旦那さんはどうするのニャ?」

「俺か?まぁ………」

 

 

 

目の前の古龍────バルファルクを見据える。

 

 

 

「ちょっとコイツを懲らしめてからそっちに行くよ。

大丈夫、手負いのコイツに負けるようなハンターじゃないから」

 

 

オトモにそういって、俺はバルファルクへと歩みを進める。

 

 

「わ、わかったニャ。武運を祈ってるニャ」

 

 

ヒラメはそう言うと、レイリスを抱えていった。

足が少しだけ引き摺られているけれど、あの体格差なら致し方ないところだろう。

 

 

 

 

さて………。

 

 

 

 

 

「オイ、いたずらコメット。

お前…いったい何なんだ?俺の大事な仲間をあんな目に遭わせてさ…。どっかの天使の回し者か?」

 

 

通じることはないだろうけど、こちらを睨んでいるバルファルクにそんな言葉を投げかけながら歩みを進める。

 

 

頭に浮かべるのは、自分の持ちうる限り、最高の装備。

 

 

その装備に変更が完了した途端……左腕が燃え上がるようなオーラを纏った。

 

 

 

「お前も激おこだろうけどさ……。

俺もちょっとキレたわ」

 

 

 

背中に背負っている膨大な爆破属性を纏った操虫棍に手を伸ばし、構える。

 

 

 

「来いよ、クソ彗星野郎。

ボッコボコにしてやるからさ」

 

 

 

バルファルクが咆哮を上げ、俺は猟虫を飛ばす。

 

1vs1の戦いが静かに始まった。

 

 

 

 





最後の方に主人公が着替えた装備は…

真・黒滅龍棍【旦明】 バランス虫
S・ソルZヘルム
ギザミXRメイル
グリードXRアーム
ゴアXRフォールド
グリードXRグリーヴ
天の護石 匠5斬れ味4スロット3

発動スキルは
『切れ味レベル+2』『業物』『挑戦者+2』『弱点特効』『超会心』
です。
凄まじいですね。

感想など気軽にどうぞ。 お待ちしてます。
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