モンハン世界で狩猟ツアー【完結】   作:糸遊

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この世界はゲーム準拠だから。





第50話 恐れ見よ、赤き災厄の彗星を

 

 

 

 

いつぞやの兄との会話を思い出した。

 

 

 

「お前ってさ、出来ないことはない訳?」

「あん?出来ない事……ねぇ…」

 

 

 

そう尋ねられた兄は、のほほんとした様子で考え込む。

 

 

「運が絡まなきゃあ、大体出来るわ。

あれ…?俺って凄くねぇ?あっはっは」

「うっぜぇなぁ…」

 

 

からからと笑いながら自慢げな様子の兄。

コイツはいつだってそうだ。何気ないようでもなんだってこなしやがる。勉強、スポーツ、挙げ句の果てには娯楽のゲームまで。

何一つ勝てた覚えがない。

 

コイツに追いつこう、なんて思い続けてかれこれ20年だ。

そんなことをしているうちに、俺の体は不幸の目を引いてしまったようだけれどさ。明日からは病院行きだこのヤロー。

 

 

「あぁ、よく考えたらソレを治すのは俺でも無理だわ。まぁ俺が出来ないんだ。運が悪かったと思って逝ってくれ」

「あほくさ」

 

 

入院の前日、家のリビングでそんな会話をしていた。逝ってくれってなんだ、難病に罹った弟にかける言葉がそれか。

 

 

「このまま治んなかったらさ…お前に何一つ勝てないまま終わりなんだな」

「ん〜、まぁ相手が悪かったと思え。あっはっは」

 

 

なーにが『あっはっは』じゃ。笑えねーよ。

うぅん…今までの人生を否定された気分だ…。

この鬱憤をどう晴らすべきか…。

 

 

「まぁでも……」

「ん?」

 

 

なんて考えてたら、兄が急に喋り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれじゃね?ゲームの話だからちょっとしょーもないけど…操虫棍の使い方だけはお前の方が一枚上手だったと思う」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前の方が上だ』と兄からはっきり言われたのは、後にも先にもこれが初めてだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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狩猟が始まり、真っ先に猟虫をバルファルクの頭に飛ばす。

猟虫はまっすぐ突き進んできたバルファルクの頭にヒット、赤エキスを奪い取る。

 

歩き移動で突進を避けつつ、猟虫を戻す。

赤エキスを回収するや否や、すぐに脚へと猟虫を飛ばして白エキスも回収。赤白ダブルアップ状態へ。

 

バルファルクは引っ掻き攻撃。

だけど、範囲外ギリギリにいる俺には当たらない。

そこからホーミングを利かせて翼脚で突き下ろす攻撃に繋げてくるが、白エキス効果の乗った操虫棍の移動速度は捉えられない。

 

翼脚が地面に刺さると同時に、頭部に向かって2連薙ぎ払い。

武器の会心率15%に猟虫の会心アップ15%が乗る。さらに弱点特効で50%アップ、オマケの挑戦者+2の効果で15%が加わり、会心率の合計は95%までに上がる。

 

頭にヒットした2連薙ぎ払いは、2発とも会心の手応え。

そして爆破属性55という手数武器とは思えないほどの属性値が、バルファルクの頭で小爆発を発生させた。

 

 

「………いくら初見とはいえ、あの3人を力尽きるまでにするなんてなかなかやるじゃん。

さてはお前、姉御バルファルクか?」

 

 

爆発が起こって怯んだバルファルクにそう声をかける。

バルファルクは再び引っ掻き攻撃、それをうまく位置取りして回避。

そこから繋げてくる翼脚突き刺しも位置取り回避。

 

突き刺し攻撃の後には薙ぎ払い→飛円斬りのコンボがギリギリ入る。

次に引っ掻きを置かれたら被弾はするけど、そこまで問題ではない。

攻撃を放って隙だらけの頭部にコンボを叩き込む。

 

なんてことをしてたらバルファルクはアホみたいな出の速さの引っ掻き攻撃。クソが。

そして…結構痛い。

あぁ…これは姉御バルファルクレベルですね。レイリス達が負けたのも納得だ。

 

というわけで、引っ掻きさえ迂闊に喰らっちゃいけなくなってしまいました。

バルファルクは苦手ってわけじゃないけど…これは骨が折れますな。

 

吹っ飛ばされた俺はバルファルクを見る。

翼の噴射口が前方の方を向き、大きな爪の様になっていた。

あぁ…うん。俺としてはこっちの方がやりやすいからありがたい。

 

バルファルクは自分の足元を爆撃、その隙に歩いて頭に近づく。ただ、あまり密着し過ぎない程度に。

そして前方爆撃、近づいていた俺の後方で龍気が爆ぜる。ただ、頭はガラ空き。攻撃チャンス。

下りてきた頭に2連斬り上げ、そして飛円斬りをぶちかます。

 

あら…会心が出てない。

よく見ると、バルファルクの体から溢れ出ていたはずの龍気は止まっていた。

ありゃ、怒り状態は解除されてたのね…。

まぁ動きが遅くなると考えたら逆に楽かもしれない。

 

 

 

 

「なぁ、今からブツブツと独り言を始めるからさ。

いや…大したことじゃないんだ。冴えない1人の野郎があることに気づいただけだから。

まぁ聞いててくれよ?」

 

 

 

バルファルクは再び引っ掻き攻撃。それをフレーム回避。

いや、その技出しすぎだろう。ずっと足元爆撃してろや。

 

そこから翼爪叩きつけ、足元にいるから当たらない。踏み込み斬りから飛円斬りのコンボを叩き込む。

 

 

 

 

「この世界に来てからさ…。俺は何回もレイリスに怒られた。

『なんであんな無理をするのか』ってさ。

何回怒られてもまた繰り返して…、金雷公や青電主にはネコタク送りにもされた…。

そもそも今みたいな真似だって良くないんだろう」

 

 

 

飛円斬りを受けたバルファルクは大きく仰け反って怯む。

すぐにコロリンで距離を詰め、2連斬り上げの追撃。

 

 

 

「なんでこんな真似しちゃうんだろうなって…自分でもしっかり考えてみたんだ」

 

 

 

バルファルクは足元爆撃。

こちらからの攻撃の手を一旦止め、細かく位置取り。爆撃の当たらない正面の位置に留まって初撃を回避する。

初撃を回避した俺は頭に接近。

足元爆撃から繋げられた前方爆撃が俺の後方で炸裂する。だけど既にガラ空き。

隙だらけの頭に2連斬り上げを叩き込む。

 

 

 

「んで……改めて気がついた」

 

 

 

バルファルクはバックステップと同時に俺のいる場所を爆撃。

ちょっと回避のしようが無いのでイナシ。

だけどそれなりに体力は削られる、流石は強化個体。

 

 

そして、距離の離れたバルファルクに向かって呟いた。

 

 

 

「当たり前なんだけど……やっぱりこの世界はゲームなんだな……ってさ」

 

 

 

バルファルクは翼爪で薙ぎ払う攻撃。

それをしっかりフレーム回避。

そして2連斬り上げに繋げる。

 

 

 

「だってさ…現実なら今のもあり得ないだろう…。体がすり抜けるんだぞ? 笑っちまうよ」

 

 

 

2連斬り上げから袈裟斬り、そして後方回転攻撃につなげ、バルファルクから少し距離を稼ぐ。

バルファルクは引っ掻き攻撃、だけど後方回転で稼いだ距離が活きる。

繰り出された猫パンチは眼前スレスレで空を切る。そして翼爪叩きつけ、それも後方の地面を叩くだけ。俺には当たらない。

 

 

 

「この世界はあくまでゲーム通りの戦闘システムなんだろう。

でも、完全にそうとは思えなかった。

 

レイリスやみんなは命を懸けてハンターをしていたから。

…だから、ゲーム感覚になるなんてのはできなかった」

 

 

 

攻撃を空振って隙だらけの頭部に踏み込み斬り。そして渾身の力で飛円斬りをぶちかます。

爆破属性の粉塵が舞い散り、爆ぜる。

バルファルクは大きく仰け反り、悲鳴をあげた。

 

 

 

「きっと、心のどっかでそういう意識が根付いていたんだと思う。

『この世界は現実なんだから、力尽きたら死ぬかもしれないぞ』ってさ」

 

 

 

怯みから立ち直ったバルファルクは龍気を胸にチャージする動作に。

すぐさま距離を詰める。

 

 

 

「でもさ……。それだと、俺って力を出し切れないっぽいんだ。

俺が唯一人に自慢できるようなこと。

あのクソ兄貴に上だと言わせてやったこと。

 

それは操虫棍の扱い。

………()()()の話だからさ」

 

 

 

龍気チャージ中のバルファルクの胸部に2連斬り上げ、袈裟斬り、薙ぎ払いのコンボ。

そこから更に2連斬り上げに繋げる。

そこでバルファルクの胸部に溜まっていた龍気が暴発。

バルファルクは大きく仰け反り転倒した。

 

 

 

「自慢じゃないけどさ、操虫棍を使わせれば全然死なないんだぜ?

正直言って、超特殊の金雷公や青電主が乱入してきたって倒す自身は大アリさ」

 

 

 

転倒したバルファルクの頭部にラッシュをかける。

始まりの2連斬り上げを叩き込んだ時点で再び爆発が起こる。

 

 

 

「でも失敗したり力尽きたりしてしまった。

多分、俺がこの世界のことを半端に考えていたからだと思う。

()()()なのか()()なのか…。

どちらとも決められない半端者だったからかな」

 

 

 

斬りつけ、また斬りつけ、ひたすらに斬りつける。

爆破属性55を誇る俺の相棒は再び爆発を起こし、ダメージを加速させてくれた。

 

 

 

「まぁ…そろそろはっきりさせておこうと思ってさ。

そしたらお前が来てくれたんだ。

………まぁ、ちょいと嫌な登場だったけどさ」

 

 

 

バルファルクがダウンから復帰。

そして身体中から龍気を溢れさせ、咆哮のモーション。

怒り状態に入るらしい。

 

 

 

「決めたよ。

 

この世界はゲーム準拠だ。

だから俺もゲームと同じ感覚で戦う。

自分の力を1番出せるようにして戦うよ。

 

レイリス達には迷惑かけちゃうかもしれないけど…それじゃないと俺の全力は出せないんだ。

 

それに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここでお前を倒せばゲーム感覚でも問題ないって証明だろ?

姉御バルファルクソロか…いいじゃん。

力の証明にはもってこいだ」

 

 

 

バルファルクが怒りの咆哮をあげる。

フッと息を吐き、目を瞑ってそれをイナシ。

 

 

そして目を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前には、あの懐かしい景色……画面が映っていた。

 

 

 

何百、何千回と見たあの光景。

 

 

 

上部には体力とスタミナのゲージ表示。

 

左上には時計のマーク。今回は正式なクエストではないからか『∞』との表示。

 

その隣には紫色に光る剣のアイコン。

 

その下には時間切れ寸前の警告が出ている、三色のエキス所持の表示。

 

右下にはアイテム選択欄。

 

 

 

 

元の世界で数え切れないほど見てきた、モンハンの画面だった。

 

 

 

恐らくは幻覚みたいなもんだろう。だけど、この上ないくらいに集中できる。

 

アイテム選択欄に意識を移す。所持アイテムは秘薬多目の回復アイテム諸々、そして怪力の種、閃光玉だった。

うん、準備万端。

 

 

 

「ほんじゃあいくぞ? 自分で言うのもなんだけど、かーなり強いはずだから覚悟しろよ?」

 

 

 

咆哮をイナシた俺の体は青い光に包まれ、左腕は燃え上がるように光る。

再び挑戦者発動。

 

エキス時間が切れたので、再びバルファルクの頭部に猟虫を飛ばして赤エキスを奪う。

 

バルファルクはこちらに駆け寄り、飛び上がる。

そのまま俺のいる場所をすれ違いざまに龍気で薙ぎ払う攻撃。

猟虫を戻して赤エキスを回収しつつ、その攻撃を移動して回避。そして地面に着地したバルファルクの脚に猟虫を飛ばして白エキスも回収。すぐさま猟虫を戻して赤白ダブルアップ状態に。

 

こちらを振り向いたバルファルクは爪の様に展開した翼脚で大きく薙ぎ払う攻撃。

それをブレイヴステップのフレーム回避。そこから2連薙ぎ払い、飛円切りに繋げる。

ブレイブ状態の猟虫突進が飛円切りと共に放たれ、バルファルクの胴体から橙エキスを奪う。

 

バルファルクは力を溜めたかと思うと、翼脚から龍気を噴射させて大空に飛び立った。

発生する風圧をイナシて納刀。猟虫を戻すと同時にトリプルアップ状態に突入。

エキス所持欄が光った。

 

 

 

すぐさま意識をアイテム選択欄に。

カーソルを怪力の種に合わせる。

 

そしてアイテムポーチに手を伸ばし、何を掴んだかは確認せずに口に放り込んだ。

口の中の物を齧った途端、体から力が湧いてくる感覚に浸る。

 

視界に映っているアイテム選択欄の怪力の種の個数が10から9に減った。

 

 

 

うん、この感じだ。

俺が1番やりやすいのは、この感覚だ。

 

 

 

すぐに操虫棍を抜刀して空を見る。

赫い彗星がこちらに狙いを定めて急降下してきていた。

 

そちらを向いて納刀継続の構え。

耳が壊れるかというほどの爆音と共に衝撃が襲ってくるけど、それをイナシ。

 

視界の体力ゲージが全体の1/3弱程減った。

元々引っ掻き攻撃なんかを喰らっていた分も含めて残り体力は半分弱といったところ。

 

すぐさま意識をアイテム選択欄に。

選択したのは秘薬。

先程と同じようにアイテムポーチに手を突っ込み、掴んだアイテムを口に放り込む。

次の瞬間、視界に映っている体力ゲージがマックスまで回復した。

 

すぐに威嚇をしているバルファルクへとダッシュ。ギリギリのところで抜刀攻撃を入れる。

 

翼脚の噴射口は後ろを向いている。

バルファルクは引っ掻き攻撃、そして地面への突き刺し。

引っ掻きをブレイヴステップでフレーム回避、突き刺しは歩き移動で範囲外へ。

 

そして突き刺しが空振ると同時に、隙だらけの頭部へと2連薙ぎ払い。

ミラバル棍の爆破属性が再び小爆発を引き起こす。それでもバルファルクは怯まない。

 

バルファルクは車庫入れステップ。そこから翼脚を槍のように大きく伸ばして攻撃。それをブレイヴステップで回避。

続けて放ってきた薙ぎ払い攻撃。少し斜めに移動して攻撃の当たらない位置へ移動する。

 

そのまま2連斬り上げ、そして飛円斬りでフィニッシュ。

会心が発生してビカビカと光り、爆破性の粉塵を撒き散らしつつ、攻撃がバルファルクの頭部へと吸い込まれる。

怒涛のラッシュを受けたバルファルクはとうとう怯み……怯……いや、怯めよ。

 

怯まなかったバルファルクは、グッと後ろに下がりつつ力を溜めた。

翼脚から噴射音が聞こえ、弾丸のようにバルファルクが飛び出し────

 

 

 

 

 

滑空突進をイナした。

 

 

 

 

 

イナしたので少しだけ体力を削られたけど、視界に映るゲージには結構な量が残っている。

多分、滑空突進の直撃を受けても生き残れるくらいには。

 

 

 

即断即決。撃ち墜とすことにした。

 

 

 

遠くの方で方向転換したバルファルクは再び此方へと駆け出す。

それよりも速く、俺は抜刀攻撃。

 

駆け出したバルファルクは再び滑空、音すら置き去りにしそうなスピードで此方へと突っ込んでくる。

 

 

………今だ、来い。

 

 

抜刀攻撃から飛円斬りに繋げる。

ブレイヴ状態に入っているので、飛円斬りと同時に猟虫が回転攻撃を放つ。

 

バルファルクからは目を離さない。

向こうの目をしっかり見据え、その頭部に渾身の一撃を叩き込んだ。

 

 

 

 

手応えは会心の一撃。

 

さらに、猟虫の回転攻撃のオマケ付き。

 

さらにさらに、爆破属性の粉塵が小爆発を引き起こした。ミラバル棍万歳。

 

 

結果────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バルファルクは地面に墜落。やったぜ。

 

 

 

「…………やっぱり俺にはこんな感じの戦い方があってるよ。

この世界の人達とは根本のところで違う……当然か、違う世界から来てるんだもんな。

 

 

ありがとう。

 

 

お前みたいな強いヤツが来てくれて、本当に良かった。

これで、心置きなくこの世界で生きていけそうだ」

 

 

 

撃墜されて地面でもがくバルファルクに呟きながら、攻撃を加え続ける。

2連突き、袈裟斬り、2連薙ぎ払い、2連斬り上げ。斬って斬って斬りまくる。

 

 

 

「俺の仲間を痛い目に遭わせたのは頭に来たけど……お前に会えて良かったから、これでおあいこにしておくよ。

 

 

だから………そろそろ終わりにしよう。

 

 

ありがとな、メインモンスター」

 

 

 

最後に渾身の力で飛円斬り。

それは猟虫の回転攻撃と共にバルファルクの頭に叩き込まれる。

 

 

会心の手応えが操虫棍を通じて伝わって来て…。

 

 

 

 

 

 

悲鳴を上げてバルファルクは倒れ、動かなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

途端。

 

視界のコックピット表示が消え失せ、体が疲労感に襲われた。

 

 

 

「ぶ、ぶっへぇ……。やっぱ集中すると疲れんなぁ……」

 

 

 

倒れるまではいかないものの、その場で深呼吸が必要なくらいには体に負担をかけていたらしい。

体が訴えるままに数回の深呼吸。それを終えると体は落ち着いた。

 

倒したバルファルクから、感謝と敬意の念を込めて剥ぎ取りをさせてもらう。

戦闘システムはゲーム通り。ただ、それ以外はゲーム通りとはいかない。

頂いた命だ。無下に扱うわけにはいかないさ。

 

 

 

「よいしょっと…剥ぎ取り終わり。

 

さて……と。レイリス達の所に戻るか」

 

 

 

バルファルクからの剥ぎ取りを終え、そんなことを呟く。

エリア7………いや、あのネコ達ならレイリス達をエリア2にまで運んでくれてるかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、彼女達なら今はエリア1さ。

お仲間さん達が合流したみたいで、倒れた3人をベースキャンプに運んでるよ。

で、今は2匹いるネコのうちの1匹が此処に向かっている。心配することはないさ」

「どわぁ!?」

 

 

 

 

いきなり後ろからそう声をかけられてめちゃくちゃビックリした。

いつからいたのか、後ろにはアークS装備の天使さんがいた。

 

 

珍しく、どこか申し訳なさそうな顔をして。

 

 

 

「あ〜…まず先に謝っておくよ。

そこの龍…。君が倒したバルファルクはもう少し後に出てくる予定だった。

君がポッケ村に行って、あの『白ドレス』と話をした後にね。

君の仲間達に危害を及ぼそうなんて思ってなかった。彼女達を危険な目に遭わせたのは謝るよ」

「ん、んん? あれ? 今回のってアンタにとっても予定外なの?」

「あぁそうさ。 君達がもっと万全な状態の時に、バルファルクは登場する予定だった。

 

………まぁ、赤髪の彼女と君が予想以上に強くて驚かされたけどね」

 

 

 

どや。まぁ俺にかかれば姉御バルファルクだってチョチョイのチョイですよ。

 

 

 

「あっ、ちょっと待ってくれ。

今、話に出た『白ドレス』って一体……?」

「あぁ。ポッケ村の巨剣の洞窟で待たせておいたんだけど…先に話をつけてきたよ。

ちょっと怒られてしまった。だから今回の対処が遅れてしまった」

 

 

 

まてまて、全く話が入ってこない。

何処にいたかじゃなくて、その人が何者かを教えて欲しいんだけど……。

 

 

 

「まぁ、これに関しては直接会った方が速い。

君や彼女達には急な事で申し訳ないんだけど、今から出発だ」

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天使さんは唐突に指パッチン。

 

 

 

次の瞬間、俺の意識は闇の中へと消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………ぅ」

 

 

 

真っ暗な世界から意識を持ち上げる。

最初に感じたのは体の痛みだった。

 

 

 

「…………ぃっ、ぁ」

 

 

 

思わず呻き声を上げてしまう。

目を開けると、此処がベースキャンプのテントの中だということがわかった。

 

 

「…………起きたか?」

 

 

急に声をかけられ、そちらを向く。

そこにはルファールが力無く笑いながら、ベッドに腰掛けていた。

辺りを見回すと、クルルナはまだベッドで横になっていた。

 

 

「まだクルルナは寝てるよ。今、ラディスとセレスに薬を頼んだところさ」

「…………そっか」

 

 

テントの中には私とルファール。

まだ目を覚まさないクルルナ。

 

 

 

 

 

………………………彼は?

 

 

 

 

 

 

「あっ、レイリスも起きたんだね。薬草スープ持ってきたよ」

 

 

なんて考えていると、テントの入り口にはいつの間にかラディスが立っていた。

手に持った容器には暖かな湯気をあげる液体が。

 

 

「はい、飲んで! 薬草入りだからあんまり美味しくないかもしれないけど……」

「大丈夫。それくらい我慢するよ」

 

 

ラディスから手渡されたスープを少し口に含む。

多少は薬草の味がするけど悪くない。今の私の体には必要な味だ。

 

 

「ふぅ………」

 

 

ほっと一息。

体にじんわりと暖かさが伝わっていく。

うん、だいぶ体も落ち着いてきたみたい。

 

 

 

 

「ねえ、ラディス」

「うん?どうしたの?」

 

 

 

 

 

だから、聞いておかないといけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「迷子君は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その質問を受けたラディスの顔に動揺の色が浮かんだ。

ルファールの体もピクリと反応した。

 

 

「え、えっと………」

「ラディス、誤魔化さないで」

 

 

答えあぐねるラディスに、私は問いを続ける。

 

 

「迷子君は今どこにいるの?ねぇ、教えてよ」

「う……」

 

 

あぁ、もう……早くしろ。別に難しい質問じゃないでしょうが。

 

 

「ねぇ、黙ったままじゃわからないって…!早くしてよ!」

「う、うぁ……」

 

 

黙り続けるラディスにウンザリして、思わず立ち上がる。

その衝撃で、小さな机に置いていたスープの容器が落ちた。

パシャリとスープが地面にブチまけられるが気にしない。

私はラディスに迫る。

 

 

「ラディス、どうしたの……って、レイリスさん!?」

 

 

入り口からセレスが顔を覗かせる。

あぁもう、五月蝿いなぁ。

いいから早く質問に答えてよ。

 

 

「ラディス!迷子君は何処!?いいから答えろッ!!」

「う、ぁ……。や、やめ……ぅぐ」

 

 

ラディスの胸倉をぐい、と掴み上げる。

ラディスの目に涙が溢れるが知ったこっちゃない。

ルファールはさっきから俯いて黙ったまま。

小刻みに震えているけど、何をしてるのさ……。

 

 

「レ、レイリスさん!やめてくださいっ!」

 

 

セレスが私を止めに入る。

五月蝿い……静かにして……!

もっと大事なことがあるんだ……!!

 

 

 

「迷子君は何処なんだよ!? 誰でもいいから教えてよ!?」

 

 

私に掴み上げられ、ラディスの足が地面から浮く。とうとうラディスは泣き出した。

泣く暇があるなら早く答えろよ…!

 

 

「レイリスさんッ!それ以上はやめて!」

「うるさいッ!ならセレスが教えてよッ!彼は何処!?」

 

 

いつまでも五月蝿いセレスにそう怒鳴り返す。

すると、悲痛な表情のままセレスは黙り込んだ。

だからさぁ…黙ってちゃわからないだろうって……!

 

ラディスをテントの柱にドン、と乱暴に押し付ける。

泣いているけど知ったこっちゃない。早く質問に答えないのが悪い。

 

 

「ぅ……ぁ……。も、もうやめ……」

「何処なんだよ!?彼は何処にいるんだよ!?誰でもいいから教えろッ!」

「レイリスッ!!」

 

 

ルファールの怒声がベースキャンプのテントに響く。

気がつくと、彼女の手が私の肩に置かれていた。

 

 

「ルファールッ!知ってるんでしょ!?

早く教え────」

 

 

 

私はそう叫びながら、ルファールの方を振り向き────

 

 

 

 

 

 

ルファールが泣いているのを見て、体が固まった。

ルファールが泣いているのを見るのなんて初めてだった。

 

 

 

 

「あぁいいさ! 教えてやるよ!

 

あの後、彼のオトモ君が雪山の山頂に様子を見に行った!

だけどオトモ君がそこで見たのは、倒されて動かなくなったあの古龍だけだった!

彼の姿は何処にもなかった!いなかった!消え失せていた!

オトモ君達が探してくれているけど、今も見つかってないんだよ!

 

これで満足か!?」

 

 

 

ルファールが泣きながら言う。

徐々に私の頭が話の内容を理解していく。

 

 

 

 

 

 

 

彼が消えた。

 

今も見つかってない。

 

 

 

 

 

 

つまり────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ………あぁ………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

私はその場に崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 




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