俺の名前はルーデウス・グレイラット。
幼いながらに様々な魔術を行使できる、超3歳児であり、
気づけば、『無職転生‐異世界行ったら本気だす‐』の世界へと転生していた、
前世との累計、37歳の元サラリーマンである。
ここが、『無職転生』の世界であることに気が付いたのは、
生後1~2週間目くらいのことである。
まず、生まれてすぐの赤ん坊は目も耳も碌に機能していないので、
初めは、何らかの事故に遭い、『閉じ込め症候群』にでもなったのかと思ったのだが、
周囲に自分の意志を伝えようともがいているうちに、
周りの反応が、悲壮感漂うものでなく、
喜びに溢れたものであることを感じ、
また、食事の摂取方法(意味深)等からも考えて、
自分は現在赤ん坊となったのだと解釈することができた。
そこから1~2週間程たち、音がそれなりに鮮明となってきたころ、
両親であろう人たちの使う言語がわからないながらも、
自分の名称が「ルーデウス」。
父親の名前が「パウロ」、母親が「ゼニス」。
お手伝いさんらしき人が「リーリャ」と呼ばれていたことから、
この世界が『無職転生』の世界であることが判明したのだ。
ぶっちゃけ、超うれしい。
超・超・超・超うれしい。
前世では、俺は中小企業の社員として働いていた。
ルーデウスの前世ほど悲惨ではなく、
独り立ちしており、兄弟との仲も悪くない。
彼女もいた。
…だけど、そうなのだけれども、不満であった。
地方の三流大ではあるが、大学を卒業した。
仕事がものすごく重労働というわけでもない。
たまに兄弟や友達とも飲みにいく。
休みの日は彼女と遊びに出かけたりもする。
ちらほら結婚話も出ていたくらいだ。
恵まれていないとされる人たちからすれば、
恵まれているのだろう。
だが、俺の居場所はここじゃない。
そう心が叫んでいたのだ。
理屈ではない。
一人の時、ここではないどこかへ、
自分の居場所をネットに求めることが多かった。
そんな時に出会ったのが、ネット小説投稿サイトに掲載されていた、
『無職転生‐異世界行ったら本気だす‐』であった。
このサイトでは、異世界転生ものの小説が多く掲載されており、
大抵、お決まりの内容に沿って、世直しする類いのものが多く、
頭を空っぽにして、現実逃避気味に時間を潰すのには重宝していた。
その中でも、堂々の累計ランキング第一位。
ひときわ輝き(個人の感想です)、俺の心に残った小説が、
この『無職転生』である。
正直な話、主人公がうらやましかった。
フィクションであるにも関わらずだ。
俺と同じ34歳の主人公。
俺もこんな風に、こんな世界でやり直せたらと、
少しでも、この世界に浸れたらと、
何度も読み返していた。
そんな折、いつの間にか俺はこの世界に転生していたのである。
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生後1~2週間目、この世界に転生したことがわかった時、
俺は歓喜した。
それはもう、あたりをはばからず笑い転げたのだ。
幸い、生まれて間もない赤ん坊なので、大きい声も動作もできない。
パウロ達は、小さな身体をパタパタして笑い転げている俺を見て、幸せそうに微笑んでいた。
リーリャは少し驚いていたようだったが。
そりゃそうだ。
生後間もない赤ん坊が感情を表現するなんて普通はありえない。
しかし、幸せそうな赤ん坊をみて嫌悪感を感じる人間など、いるはずもない。
「フフッ」と小さく笑ったのち、特に気にするようでもなく、やりかけの作業へと戻っていった。
不気味がられることはなかった。
よかった。
俺はひとしきり喜んだのち、当然のごとく、魔術の行使を始めた。
この世界の魔術は、詠唱なんぞしなくとも、
イメージのみで、魔術を行使できるのだ。
少し考えたのち、現時点では魔術が使えることを、パウロたちに知られることは避けるべきであると結論付け、
皆が目を離している隙に、事に及ぶこととした。
身体に存在するであろう魔力を感じること自体はたやすかった。
しかし、『血液を送るような感じで力を溜め、ポンと吐き出す』というのが非常に難しく、しばらくの間は、
魔力を感じ、全身に魔力を循環させる練習をすることにした。
始めのうちは、魔力もほとんど感じられず、
身体の中で動かすことも、ほとんどできなかったのだが、
日を追うごとに、身体の中に感じる魔力が大きくなっていき、
循環させ、また、一部分に溜めることも可能になってきた。
体内で魔力を意識的に動かすだけでも、多少は増大するようであった。
数日、魔力で『血液を送るように』と『力を溜める』との練習を行ったのち、
パウロ達が見ていない隙を見計らい、
ばれやすいであろう『ウォーターボール』は避け、
そよ風を吹かせるイメージを思い浮かべながら、
『血液を送るような感じで力を溜め、ポンと吐き出す』という、
一連の流れを、近くの窓に向けて、行ってみた。
ひゅっと風が通り抜ける音がしたと同時に、
かたかたっと窓の立て付けが揺れる。
無事に魔術の行使は成功したようである。
そのことに喜んでいた俺は、ゼニスに
「あらあらルディ、なにか面白い事でもあったの?」
と抱き上げられつつも、
今後のルーデウス魔改造計画に思いをはせる。
(当面の目標は、打倒パウロだな。
オルステッド遭遇戦も、死にかけることなく突破したいし…)
そしてなにより、最後にはオルステッドに勝ちたい。
原作では負け越して、その後の展開へと繋がっていったが、
再戦時に、オルステッドよりも強くなっていれば、
勝ったとしても、あまり問題はないはずである。
その後の展開でオルステッドが活躍した場面は、
俺が代替えすればいいわけだし、
闘神戦も、対策さえすれば、勝てないことはないはずである。
(いざとなれば、エリナリーゼの魔力結晶をオルステッドに使えばいいわけだしな。
…まぁ、本当に効力があるかわからないし、
あったらあったで、なんで知っているのかって話になると面倒だ)
異世界転生のことが知られるのは構わないが、
原作知識をほじくられるのは勘弁である。
「あなたたちは、私の世界の物語上の登場人物です」などと言うのは、なんというか、申し訳ない気持ちになるからだ。
勝った上で、オルステッドに手を差し伸ばし、
対等な立場で、ともにヒトガミを打倒するのである。
オルステッド主体でなく、協力関係の下であれば、
他の人たちからの協力も得やすいはずであるし、
うまく良い方向に誘導もできる。
……うん。
俺はこの世界で、俺の足で立ち、歩いていこう。
前の世界でも、本気をだして取り組むことは多々あった。
だけど、それが幸せにつながることはなかった。
人に言われるがままに、高校・大学に入り、就職し…
そんな平坦な人生だった。
残り何十年生きたところで変わらなかっただろう。
人なんて、環境が変わらないとそうそう変われない。
俺はこの世界で本気で生き、
そしてこの世界に俺が生きた証を残すのだ。