シンギュラリティハウンドは、今日も調査の為、航海を続けている。
そんな中、結有と吹雪は、格納庫に黒い穴が開いているのを発見した。
一旦戻り、フル装備になって、再び格納庫に戻ると、
「何だろうね?覗いてみる?」
「危ないよ」
そう言いながら、覗き込もうとしている結有を止めようとした時、
「いっちばーん!」
どんっ!
「わっ…と」
後ろから、吹雪に体当りしてきた島風のお蔭で、そのまま結有を突き飛ばしてしまった。
「うわぁぁぁ!!!!」
結有は、咄嗟に吹雪の足を摑んで、そのまま黒い穴に吸い込まれていく。
「結有ちゃ……うわぁぁぁぁ!!!」
そのまま、すっぽりと二人を吸い込んだ黒い穴は、見る見るうちに閉じていく。
それを見守っていた島風の顔は、さぁぁぁっと青くなり、俊足で艦長室に走って行った。
―――――――――
落ちた先は山奥だった。
「うーん……ここは……?」
よく見ると、汎用艤装(綾波用)が転がっている。
汎用艤装は、人の手によるものだった為、消えずに残っていた。
「キャーッ!!」
森の奥から悲鳴が聞こえると、結有と吹雪は慌てて汎用艤装をコンパクト化させて、
悲鳴の方へと向かっていった。
悲鳴の先では、杖を持った少女が、山賊らしき男達に囲まれていた。
その周囲では、男達が血を流して死んでいた……
「やめろ!!」
結有は、腰に身に着けていた、12.5ミリ自動拳銃を抜き放つと発射する。
弾丸のHEIAP弾は、山賊の鉄鎧を貫き、内部で炸裂して燃え上がる。
「ぐぇっ!!!」
口から大量の血を吐いて、山賊Aの生命は尽きた。
吹雪も、腰から9ミリ自動拳銃を取り出して、山賊Bの後頭部を狙い撃つ。
「ギャッ!」
山賊Bも、そのまま糸が切れた人形のように、崩れ落ちた。
「貴様等、何者だ!?」
山賊の首領に問われると、結有は一気に距離を詰めて、腰からナイフを抜き、
「お前達に名乗る名前はない」
と、山賊首領の首筋にナイフを滑らせて、動脈を切り裂いた。
結局、山賊共は結有と吹雪により、全員が地面に倒れることになった。
腰を抜かしている、杖を持った少女を立たせてやると、結有が優しく問いかける。
「大丈夫?」
「は、はい……私はメルフィといいます。
冒険者と云う言葉に、結有は頭を抱えた。
「ここ、もしかして異世界!?」
「まさかぁ……?」
そう笑う吹雪だったが、メルフィの顔は
「あの……私、見習い召喚術師をしてまして…‥もしかしたら……」
そうメルフィが説明をする。
召喚魔術とは、異世界から
メルフィは、一度も召喚術に成功したことのないへっぽこ召喚士で、
今回、初めて召喚することが出来たらしい。
「初めて召喚したのが、
そう、しょんぼりするメルフィだったが、結有は、
「で、それはいいんだ。いつ帰れるの?」
その質問に、メルフィははっとする。
「もう既に魔法は解けて、帰れる筈です!」
そのへっぽこ召喚士に、二人は大きく溜め息を吐いた。
「ダメルポめ……」
「ダメルポって何ですか!?」
メルフィは反論してくるが、結有も一歩も引かない。
それを、間に立ってまあまあ、と宥める吹雪。まさに
死んでしまった仲間を埋葬すると、メルフィと使いの二人は街に戻り、冒険者の宿に戻った。
「あんた、やっぱり死神だねぇ。もううちでは、依頼はやれないね」
入るなり、そう言葉を叩き付ける女将さんに、結有は、
「どういうことだい?」
そう訊いた。
女将の話では、このメルフィという娘は、毎度毎度自分
通称
官憲に通報されて、仲間殺しの疑いも出たものの、
本当に幸運で生き残る為、死神という
「……もし、僕達と一緒に出掛けて、三人で帰って来たら、今の言葉、無しにしてくれますか?」
その結有の言葉に、女将の目はまんまるになる。
「あんた、正気かい?」
「正気を疑われるのは不愉快だけど、そのつもりです」
「私も同じ意見です!」
宿の女将は暫く考えると、首を縦に振った。
「そういえば、あんた達の名前は?
「ああっ!!!聞き忘れてました!!」
その言葉に女将は頭を抱える。その様子を見て結有と吹雪も苦笑いを浮かべる。
「それじゃあ、改めて。僕はユウ・カガミハラ」
「私はフブキ・カガミハラ」
「二人共、
ペコリと、頭を下げてから気づく。
「はっ……ユウさんって女の子だったんですか!?」
「…………女の子だよ!」
その言葉に、周囲にどっと笑いが零れる。
その後、質素な夕飯を摂って部屋に戻る。
顔を真赤にしているメルフィを、両側から抱き締めて眠る二人だった。
翌朝、依頼のあったゴブリンの群れ退治に向かう途中だった。
「一応、昨日のはあまり使わないほうがいいと思います。見た感じ、弾薬を消費すると思うので」
そうメルフィが忠告した。この世界でも銃はあるものの、後込め式なので、
その亜種だ、と考えたようだ。
「うん。可能な限り、ナイフと格闘技で何とかするよ」
「私は、このブロードソードで何とか頑張ってみます」
出発時、吹雪にはブロードソードが貸し与えられていた。
たまたま、防刃防弾チョッキを着ていた為、防具は辞退したのだ。
「私、体術はからっきしなので、お願いします」
「うん、僕達に任せて」
サムズ・アップして笑顔を見せる結有の前に、がさがさっと森から数人の男達が出てきた。
男達は、結有達の前に立ちはだかり、下っ端が近づいて来た。
「おっと。お嬢さん達、ここまでだ。身ぐるみ残らず置いて……」
言い終わる前に、結有の
そのまま地面に振り抜くと、男は後頭部から地面にめり込み、動かなくなった。
「魔力撃!?」
メルフィが驚いているも、吹雪も立ち向かい、ナイフを抜いた山賊に、霊子の軌跡を描いた一振りで、山賊を斬り伏せる。
圧倒的な力に、山賊達は腰を抜かしながら逃げ出した。
「こらー!仲間連れてけ―!!」
しかし、回り込まれてしまった。
山賊を全員捕縛すると、メルフィと吹雪に官憲を呼びに行かせて、引き渡した。
どうやら賞金が懸かっているようで、金貨袋を受け取った。
「凄いです!
その言葉に、結有と吹雪は苦笑いだ。
「そう言われても……もしかしたら、僕等の世界の「霊子」は、
「うん。逆に、魔法は無いもんね」
その言葉に、メルフィは少し納得したような顔になる。
「魔法力は精神力とも言いますから、ちょっと納得です。もしかしたら、魔術師の素質があるのかもしれません」
「そうかなあ……でも、僕はこっちのほうがいいなあ」
「そうだね」
メルフィの言葉に二人が応えると、メルフィも無理強いはする気はなかったようで頷いた。
その後、ゴブリンの集落を発見した。
一応見張りはいるものの、それより厄介なのは、木の塀で囲ってあることだった。
結有は、無言で手榴弾のピンを抜くと、門に放り投げた。
「ん?なんだこれは?」
門番のゴブリンが拾い上げたところで、ゴブリンは門ごと木っ端微塵になった。
唖然となっているメルフィを尻目に、結有と吹雪はぶっ壊れた門をくぐり抜け、ゴブリン達を蹂躙していった。
我に返ったメルフィも、簡単な攻撃魔法でサポートしている。
奇襲されたゴブリンは、抵抗らしい抵抗も出来ずに全滅した。
ボスゴブリンの首とお宝を持って引き揚げ、官憲に渡すと証明を書いてくれる。
それを冒険者の宿の女将に見せて、依頼完了である。
依頼成功に、賞金首の捕縛。
冒険者の女将も、これでは文句も言えず、メルフィの冒険者所属を認める他なかった。
「仕方がないね。約束だからね、三人部屋に変えておいてあげるよ」
その計らいに、三人は女将に頭を下げるのだった。
その日のディナーは豪勢だったが、他の冒険者に勧められたお酒を結有が飲んで、
同じくお酒が弱いメルフィと共にカオスになるのを、吹雪が収拾することになったのは、言うまでもない。
やはり貧乏くじである。
―――――――
その頃、いずも改二リペアでは、島風の報告を受け、智紀が艦長室で自問自答している。
(どう思う?新井田)
――異世界の干渉、それ以外に考えられんな。
(現段階で、俺達にできることはあるか?)
――特異点とされた場所で、
「ふぅむ……困ったもんだな」
智紀は一人ごちた。
――何れにせよ、あの空間異常は観測装置が捉えている。ミナに、もう少し解析をさせよう。
(そうなるな……)
「やれやれ、無事に帰って来いよ。でなきゃ俺が、ハーレムズに殺される」
ブランデー片手に、無事を願う智紀だった。