結有と吹雪が異世界に放り込まれたようです   作:SAMICO

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王都へ

結有達が飛ばされたのは、ディオリア王国の中堅都市フィレンツ。

瑞希や薄雲(智紀)を加えて、五人パーティーとなった。

 

村消滅事件は、冒険者の宿「暁の栄光亭」の女将さんである、ヘレンおばさんに怒られたものの、

上位魔神を操るオーガを倒した、ということで、都市の冒険者からも一目置かれる存在となっていた。

彼女等の艤装は、古代機械文明の遺産だ、ということにされており、一度文明が滅びる前に、機械文明が栄えていたということが判った。

伝説によると、魔神達が海から現れ、世界を蹂躙して行って、当時の『ヒ(・)マ(・)ラ(・)ヤ(・)山(・)脈(・)』にまで追い詰められたが、

勇者が魔神王を倒したことにより人類は救われた、という伝説が残っている。

そして魔法文明時代が始まり、300年ほどが経って、現在に至っている。

 

その話を聞いた薄雲(智紀)は、自問自答している。

(新井田、この世界は……?)

――深海棲艦に滅ぼされた未来……と云う可能性は考えていたか?)

(あぁ、だが……)

「聞いてますか?薄雲さん」

ダメルポことメルフィが顔を覗き込むと、頭を軽く振って、

「今、お前の話をちゃんと整理してるんだよ。続きを話せや、ダメルポ」

「ダメルポって言わないでください!えっとですね、それで魔法が使える人と使えない人がいて、魔力の高い人は魔法学校に通ってるんです。私は落第生でしたけど……卒業試験で、上位魔神を呼び出してしまって、学校を壊しちゃったので」

『………』

困った笑みを浮かべたメルフィに、全員が唖然とする。

「それで、冒険者になったんですけど、何(・)故(・)か(・)い(・)つ(・)も(・)私(・)だ(・)け(・)無(・)事(・)で、全滅してたんですよ」

その言葉を聞いて、コイツは絶対雪風(異能生存艦)の同位体じゃないか、と思った全員だった。

「それで、やばいと思って放った決死の召喚で、結有と吹雪を呼び出したのか?」

瑞希が腕を組んだまま聞くと、メルフィは頷いた。

「まあ、島風が突き飛ばしたんだけどな?」

そう突っ込むのは、薄雲(智紀)である。

島風は、今頃罰掃除中である。

 

そんな中、ヘレンおばさんが皆を呼んだ。

「あんた等、ちょっと護衛任務があるんだけど。貴族のフレーゲル男爵を、王都ローミアまで送ってくれないかい?」

フレーゲル男爵と聞いたメルフィは、嫌な顔をする。

何(・)故(・)か(・)、薄雲(智紀)も一緒に、嫌な顔をする。

「フレーゲル男爵ってのは評判の悪い貴族で、門閥貴族なのをいいことに、女性に言い寄って………」

――どこの世界でも、フ(・)レ(・)ー(・)ゲ(・)ル(・)男(・)爵(・)と(・)言(・)う(・)や(・)つ(・)はカスだな。

(お前が言うな、というのはあるが、同意するぜ)

世界の混乱を招いた張本人だ、ということをすっかり忘れている新井田博士に、ツッコミを入れながらメルフィに向き直る薄雲(智紀)。

「まあ、戻れる方法も、人の多い王都ならわかるだろう」

「そうだね」

智紀の言葉に、結有も同意する。

「どれどれ?三食付きで日当100G(ゴールド)に、成功報酬が500G……か」

「1日の生活費が50Gで、食費が浮くから、なかなかの報酬だな」

「そうですね」

「それじゃあ、おばさん。僕達で護衛依頼を受けます」

吹雪が依頼書に目を通して、瑞希が一日の生活費から相場を考え、メルフィが同意する。

そして、いつの間にかリーダーになった結有が、依頼を受けることを決めたのだった。

 

 

翌日、フィレンツの門の前で積み込みをしている馬車を見つけると、結有が声を掛けた。

「すみませんが、フレーゲル男爵の馬車でいらっしゃいますか?」

そう声を掛けると、「いかにも」という声が馬車の中から聞こえて、馬車の幌の窓が開き、

豪奢な装飾物に身を包んだ若い男が、結有達を舐め回すように見ている。

「ふむ。あのメルフィ嬢も来ているのか……」

そうぼそっと言うと、気を取り直したように、

「では、ローミアまでの街道の護衛を頼む。最近、魔族が出没するのでな、山越え時は特に頼む」

「はい。かしこまりました」

結有は、恭しく頭を下げた。

「早速だが、そなたの名前は?」

「ユウ・カガミハラと申します。こちらがフブキ、メルフィにミズキ、それにウスグモです」

その言葉に、フレーゲルは感嘆の声を上げた。

「おお。そなたは、ジャポネ皇国のカガミハラ家の御一門か?」

「へ?」

キョトンとしている結有に、フレーゲルは自慢そうに語り始める。

「そちの共の者には学がなさそうだから教えてやろう。 魔神襲来時に最後まで戦い抜いて鬼神と呼ばれたユージ・カガミハラの子孫が大老を務めている「天皇陛下(His Majesty the Emperor)」が治めている皇国の名門であってな………」

長いウンチクの後、娘とは言えない結有は機転を利かせ、

「残念ながら、当家は枝の枝でございまして。本家とは縁遠い家でございます」

勝手に、カガミハラ分家をでっち上げてしまった。

「そうか。では道中、カガミハラ家伝説を聞かせようぞ。共の者は、しっかり護衛に励むが良い」

と、結有を乗せて馬車は出発した……

 

出発から三日目、山中の林道で行程半ばというところだった。

「あーあ。結有はフレーゲル男爵に気に入られるし、俺達は歩きだぜ」

そうぼやく薄雲(智紀)だったが、自身は艤装を着けてホバリングしている。

同じくホバリングしている吹雪に、深海棲艦化して空を飛べる瑞希は楽をしている。

「あの。歩いてるの、私だけなんですけど……?」

杖を突きながら、不満そうに歩いているのがメルフィ。

そんな時だった。

結有は殺気に気づくと、「男爵、すみません。敵襲です!」

と飛び出ると、既に山賊に囲まれていた。

見るからに腕利きで、屈強な男達である。

飛び出る時に、フレーゲルがニヤリとしたのを、結有は見逃さなかった。

「制圧しろ!」

結有の号令で、全員が身構えた。

そして、数十秒でカタがついた。

腐ってもSハウンドの精鋭であり、薄雲(智紀)は戦艦型深海棲艦を呼び出して、敵をオーバーキルしていた。

吹雪や瑞希、結有は格闘技の達人であり、メルフィは召(・)喚(・)術(・)禁(・)止(・)で、魔法支援だけさせた。

「さて……フレーゲル男爵?」

振り向いた結有は、恐ろしい(目が笑ってない)笑みを浮かべていた。

それが歴史書に載っている、ユージ・カガミハラにそっくりな目をしていて、フレーゲルは怯え始めた。

そして聞いてもいないのに、山賊に襲わせ女性……メルフィを手篭めにしよう、としていたのを白状した。

「おいおい、フレーゲルさんよぉ。これを国王陛下に上申したらどうなるか、判ってんだろうなぁ?」

薄雲(智紀)が、ドスを効かせた声で脅す脅す。

「おそらく、ご領地はお取り潰しになろう」

「一緒に冒険者やりますか?」

瑞希と吹雪も容赦ない。唯一、手篭めにされそうになっていたメルフィだけは、

「あんまりやり過ぎない方が……御本人も反省されてますし」

と、まるで危機感がない。

「口止め料、貰おうか?」

 

こうして、ローミアまでの報酬と5000Gを分捕った一行は、ローミアへとやって来た。

 

余談ではあるが、ローミアでの下宿先はフレーゲルが、『本当のカガミハラ家分家』の、在ディオリア王国ジャポネ大使のカガミハラ分家に便宜を利かせて、お世話になることになると、結有はでっち上げとは言えず、おとなしくお世話になることになった。

そして結有も、こ(・)の(・)世(・)界(・)に疑問を持ち始めていった。

 

 

その夜、薄雲(智紀)の部屋で、自問自答が始まっていた。

――やはり、我々の予想は正しかったな。数ある平行世界の一つ……か。

(ならば、ここにも特異点は居る、ってことだな。帰るにはそれか、また恵奈に頑張ってもらうか……?)

――まずは、この世界で自由に動ける為に、名声を上げようではないか?

「全く。楽に行ってくれるぜ、新井田……」

そう呟きながら、薄雲(智紀)は眠りに就いた。

 

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