結有と吹雪が異世界に放り込まれたようです   作:SAMICO

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魔神襲来

飛行船の準備をしている間、時雨(結有)と吹雪は、魔術師学校に通うことになった。

フレーゲル男爵と夕立姫の推薦によるものである。

霊子の練り方は既にマスターしていたから、周囲の霊子、つまりマナを引き出す訓練だった。

そこから、属性と言われる方向性を付与して放つのが魔法であり、

メルフィの術は、その魔力を用いて空間に穴を開け、()()を召喚する召喚術である。

ナスタージ導師は、メルフィのことも話してくれた。

「あの子は、召喚術()()はそつなく熟す天才なのだよ。でも召喚術だけは……結局、魔神を呼んでしまったということで、放校処分になったが」

「はぁ………」

あのダメっぷりから、天才とは思えない二人は、生返事をするだけだった。

 

 

元々の綾の霊子錬成で、基礎と応用は出来ていたが、それ故に魔法を覚えるのは、一苦労だった。

()()という使い方には慣れていない為、霊子結晶を媒体に使うくらいしか出来なかったのだ。

苦心の末、()()()()()と呼ばれる、霊子つまりはマナをそのまま叩き付ける魔法……これも高度なのだが……、アルテマと呼ばれる魔法は習得できた。

霊子と魔力は、()()()()()()()()()()()だ。そう気づいた二人の出した結論が、霊子をそのまま叩き込む、という方法だった。

この、アルテマという魔法は、純粋に()()()()()()()()()()()究極魔法であり、それを見たナスタージ導師は、大きな溜め息を吐いた。

今までの魔法理論で教えても無駄だ、ということが判ったからだ。

 

 

ナスタージ導師は仕方なく、ルーン魔法を二人に伝授した。

「この魔法は、ルーンと呼ばれるカードに、魔力を込めて用いる魔法だ。まずはルーンの刻み方だが、これは魔力を必要としない。そういう形になっていれば構わずに、それを使って魔力を放つと、それに応じた魔力が放たれる、と云う仕組みだ」

『は……はぁ』

士官学校を、優秀とは言えないまでも、いい成績で卒業した二人には、チンプンカンプンだった。

概念のないものを習得する、というのは、なかなか苦労するのだ。

ただ、時雨(結有)はルーンを刻んだ刀に魔力を込める技法『魔法剣』を覚え、吹雪は空間に直接作用させる、応用法を習得した。

 

その間、瑞希とほっぽとダメルポ、もといメルフィは、夕立姫から移動に関する話を聞いていた。

今、七星(チーシン)と呼ばれる、大陸から半島に掛けて広大な領土を持っている魔神の王国と、ジャポネは戦争中であり、

移動には、反対側(あっちで言う大西洋)の、北を回るルートが必要、ということらしい。

海の向こう側には、大アメリア王国が存在しており、独自に魔神と戦っている。

領土は南北(アメリカ)大陸と、世界一の領土と武力を持っている王国らしい。

この国の国王は、キングではなく、代々プレジデント(大統領)と呼ばれている。

そしてこの周辺は、ディオリア王国とバルト王国、フラン都市同盟・ブリタニア王国・北欧連合国・ベルリン帝国の六つの国家連合が、

七星と戦争中である。

南は、アフリカ王国が独自に魔神と戦っていて、残りは南の海で孤軍奮闘中の、オーストランド王国である、

瑞希は、夕立姫の情報により、持って来た白地図に色を塗っていく。

こっちの世界で言う、大西洋ルートが安全なのがよく判った。

瑞希は、持って来ていた白地図に、大体の勢力図を書き込みながら呟いている。

 

【挿絵表示】

 

「なるほどな……()()での魔神は、国を統治する統率力を持っているのか……」

 

この世界の飛行船は、魔力石と云う石を使って空を飛ぶ。

その魔力石の充填に、かなり時間がかかる、と云う話らしい。

しかしその前に、事態の進展が起こっていた。

 

その夜、焦げ臭い匂いがして目を覚ました時雨(結有)は、真っ先に夕立姫の元に向かった。

夕立姫も目を覚ましていて、外を眺めていた。

「敵襲っぽい……」

同じく外を見ると、街が燃えていた……そして王城も……

アチラコチラで剣戟が聞こえており、木の塀を破ろうとしている魔神を、櫓から魔力弓で応戦している侍や、

刀で応戦している侍が倒れるのも、目にしていた。

直ぐに、吹雪達もそれに加わったが、囲まれるのは目に見えていた。

「大変だ!!叔父上のブラウンシュヴァイク公爵が裏切って、魔神と手を組んでいた!」

傷だらけになりながら、フレーゲル男爵も駆け込んで来た。

何れにせよ囲まれていて、周囲が敵地なのは言うまでもない。

魔法学校の方も燃え盛っており、ナスタージ導師の安否は絶望的だろう。

 

「囲まれてしまっているな」

魔神を数体倒した瑞希が戻って来て、結有に話しかける。

今は手勢と吹雪、あとはほっぽちゃんの航空隊が防いでいるところだ。

「もはやここまでっぽい」

生存の見込みはないとみた夕立姫は、懐の刀を取り出そうとしたが、時雨(結有)に奪われてしまう。

「何を……!?」

「まだ、見込みはある!メルフィ!召喚術だ!」

そう怒鳴ると、はっとして、龍をイメージしながら術を練り始めるメルフィ。

魔力がピークに高まると、空間が揺れ始める。 

「やっぱダメだったか―!?」

時雨(結有)が、頭を抱えながらその状況を見守ると……()()()()()()()()()()()が現れた……

どこかで見たような……

そう。()()()()()()()と、特別教導隊(元海兵旅団の強い方)を呼び寄せてしまったのだ。

「なんだかわからないが、深海棲艦を鎮圧せよ!!」

「オー!!」

やはり()()である。()()()()()()()と判断した裕二は、鎮圧命令を発令する。

「あ、父さ……」

言い終わる前に、裕二達は街の方へ走って行ってしまった。

 

「おっす。何か必要じゃないかと思って、霊子コンデンサを持ってきたぜ」

薄雲(智紀)が、艤装搭載型霊子コンデンサを持って戻って来た。

メルフィの召喚魔法で空間が歪み、再び薄雲化できることに気づいた智紀が、変身して戻って来てくれたのだ。

「おお!ウスグモ殿、あなたがいれば百人力だ」

「魔力石に直結させれば動くかもしれない!」

フレーゲルと時雨(結有)が声を上げる。

「囲まれているのは変わりないっぽい。裏の飛行船で、逃げれるところまで逃げるっぽい!」

夕立姫の言葉に、全員が頷いた。

家臣達は残り、フレーゲルを連れた一行は、裏の飛行船に乗り込んだ。

直ぐに、霊子コンデンサと魔力石を連結させると、魔力石が光り輝き出した。飛行可能状態になったのだ。

「出発っぽい!錘降ろせ!」

その号令に、飛行船の乗組員である家臣が錘を下ろすと、ふわりと浮かび上がって東に向かい、ディオリア王国を後にした。

もちろん追撃は受けるが、ほっぽちゃんの航空隊が迎撃を行っている。

それに、周辺国の増援や()()()()()()の足止めで、なんとか振り切ることが出来た。

 

そして、敵国を突っ切るという、結有達の逃避行が始まった。とうとうディオリア王国も陥落したのだ。

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