飛行船の準備をしている間、
フレーゲル男爵と夕立姫の推薦によるものである。
霊子の練り方は既にマスターしていたから、周囲の霊子、つまりマナを引き出す訓練だった。
そこから、属性と言われる方向性を付与して放つのが魔法であり、
メルフィの術は、その魔力を用いて空間に穴を開け、
ナスタージ導師は、メルフィのことも話してくれた。
「あの子は、召喚術
「はぁ………」
あのダメっぷりから、天才とは思えない二人は、生返事をするだけだった。
元々の綾の霊子錬成で、基礎と応用は出来ていたが、それ故に魔法を覚えるのは、一苦労だった。
苦心の末、
霊子と魔力は、
この、アルテマという魔法は、純粋に
今までの魔法理論で教えても無駄だ、ということが判ったからだ。
ナスタージ導師は仕方なく、ルーン魔法を二人に伝授した。
「この魔法は、ルーンと呼ばれるカードに、魔力を込めて用いる魔法だ。まずはルーンの刻み方だが、これは魔力を必要としない。そういう形になっていれば構わずに、それを使って魔力を放つと、それに応じた魔力が放たれる、と云う仕組みだ」
『は……はぁ』
士官学校を、優秀とは言えないまでも、いい成績で卒業した二人には、チンプンカンプンだった。
概念のないものを習得する、というのは、なかなか苦労するのだ。
ただ、
その間、瑞希とほっぽとダメルポ、もといメルフィは、夕立姫から移動に関する話を聞いていた。
今、
移動には、
海の向こう側には、大アメリア王国が存在しており、独自に魔神と戦っている。
領土は南北
この国の国王は、キングではなく、代々プレジデント(大統領)と呼ばれている。
そしてこの周辺は、ディオリア王国とバルト王国、フラン都市同盟・ブリタニア王国・北欧連合国・ベルリン帝国の六つの国家連合が、
七星と戦争中である。
南は、アフリカ王国が独自に魔神と戦っていて、残りは南の海で孤軍奮闘中の、オーストランド王国である、
瑞希は、夕立姫の情報により、持って来た白地図に色を塗っていく。
こっちの世界で言う、大西洋ルートが安全なのがよく判った。
瑞希は、持って来ていた白地図に、大体の勢力図を書き込みながら呟いている。
「なるほどな……
この世界の飛行船は、魔力石と云う石を使って空を飛ぶ。
その魔力石の充填に、かなり時間がかかる、と云う話らしい。
しかしその前に、事態の進展が起こっていた。
その夜、焦げ臭い匂いがして目を覚ました
夕立姫も目を覚ましていて、外を眺めていた。
「敵襲っぽい……」
同じく外を見ると、街が燃えていた……そして王城も……
アチラコチラで剣戟が聞こえており、木の塀を破ろうとしている魔神を、櫓から魔力弓で応戦している侍や、
刀で応戦している侍が倒れるのも、目にしていた。
直ぐに、吹雪達もそれに加わったが、囲まれるのは目に見えていた。
「大変だ!!叔父上のブラウンシュヴァイク公爵が裏切って、魔神と手を組んでいた!」
傷だらけになりながら、フレーゲル男爵も駆け込んで来た。
何れにせよ囲まれていて、周囲が敵地なのは言うまでもない。
魔法学校の方も燃え盛っており、ナスタージ導師の安否は絶望的だろう。
「囲まれてしまっているな」
魔神を数体倒した瑞希が戻って来て、結有に話しかける。
今は手勢と吹雪、あとはほっぽちゃんの航空隊が防いでいるところだ。
「もはやここまでっぽい」
生存の見込みはないとみた夕立姫は、懐の刀を取り出そうとしたが、
「何を……!?」
「まだ、見込みはある!メルフィ!召喚術だ!」
そう怒鳴ると、はっとして、龍をイメージしながら術を練り始めるメルフィ。
魔力がピークに高まると、空間が揺れ始める。
「やっぱダメだったか―!?」
どこかで見たような……
そう。
「なんだかわからないが、深海棲艦を鎮圧せよ!!」
「オー!!」
やはり
「あ、父さ……」
言い終わる前に、裕二達は街の方へ走って行ってしまった。
「おっす。何か必要じゃないかと思って、霊子コンデンサを持ってきたぜ」
メルフィの召喚魔法で空間が歪み、再び薄雲化できることに気づいた智紀が、変身して戻って来てくれたのだ。
「おお!ウスグモ殿、あなたがいれば百人力だ」
「魔力石に直結させれば動くかもしれない!」
フレーゲルと
「囲まれているのは変わりないっぽい。裏の飛行船で、逃げれるところまで逃げるっぽい!」
夕立姫の言葉に、全員が頷いた。
家臣達は残り、フレーゲルを連れた一行は、裏の飛行船に乗り込んだ。
直ぐに、霊子コンデンサと魔力石を連結させると、魔力石が光り輝き出した。飛行可能状態になったのだ。
「出発っぽい!錘降ろせ!」
その号令に、飛行船の乗組員である家臣が錘を下ろすと、ふわりと浮かび上がって東に向かい、ディオリア王国を後にした。
もちろん追撃は受けるが、ほっぽちゃんの航空隊が迎撃を行っている。
それに、周辺国の増援や
そして、敵国を突っ切るという、結有達の逃避行が始まった。とうとうディオリア王国も陥落したのだ。