結有と吹雪が異世界に放り込まれたようです   作:SAMICO

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ここから表記はE表記で統一します。


東へ

燃え盛る、ディオリア王国を眼下に飛行している飛行船。

「皆は大丈夫っぽい……?」

夕立姫は、乗船までの時間を稼ぐ為に、魔神に立ち向かった家来の身を案じていた。

 

――――――

「姫様、ここは我々が食い止めます。時雨殿、お客人殿、頼みましたぞ!」

教育係の爺である我那覇陽三をはじめ、男の家来達と()()()()()()()()()が残ることになった。

不知火登場で、Sハウンドの面々は、ここも平行世界、と云う確信を強める中、女中達と飛行船に乗り込んだ。

最後まで見送ろうとしている夕立姫の手を、時雨(結有)が軽く引くと、

「時雨、私達も行くっぽい!」

「うん!行こう!」

最後に、二人が飛行船に乗り込むと、お屋敷に火が放たれ、燃え盛っていくのが見て取れた。

「ありがとう……爺や……皆」

一粒だけ涙を見せると、夕立姫はキリッとした顔に戻り、進行方向である()()()()()()()を指示した。

西には、ブラウンシュヴァイクの領地があり、周到に準備されていることは明白だからだ。

 

―――――――

時雨(結有)が双眼鏡を覗き込むと、街では10(ヒトマル)式戦車と再び狂戦士と化した各務原裕二と愉快な海兵旅団(最強狂ってる団)達が、各務原分家の家臣団と合流して、突破口を開こうとしていた。

空へ追い縋る飛び魚戦闘機は、上空からの砲撃で落としたり、ほっぽの艦載機が次々と迎撃していった。

薄雲(智紀)は、空母型人工深海棲艦を召喚して、艦爆を順次発進させていく。

「ディオリアは終わりだな……城が落ちたぜ」

崩れ落ちる王城を眺めながら、薄雲(智紀)は溜め息を吐く。

「叔父上め!門閥貴族の誇りはどこへやったのだ!」

怒りに震えるフレーゲル男爵に、薄雲(智紀)は冷たく言い放つ。

「お前が言うなや。その門閥貴族の枝のお前が、ケチな自作自演をやっているように、既に根っこの部分は腐っていたんだよ。奴じゃねえ、奴を()()()()()()()、この国自体の()()がこれだ……」

「薄雲殿………」

「政治の腐敗の結果だ。賄賂を貰ったり、不正を行うのはそれ個人の結果であって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()にある。ブラウンシュヴァイク個人は、そのきっかけに過ぎねえ。そんなことより、今は生き残るほうが先決だ」

「………」

無力感に打ちひしがれているフレーゲルの肩を、薄雲はぽんと叩いた。

「それより、船室の女中達を頼む。こっちはこっちで手一杯なんだ」

「わかった。薄雲殿」

そう言うと、船室に駆け下りて行ったフレーゲルを見送り、自身も砲撃を開始する。

「良いこと言うじゃない」

「いや、新井田の言葉だ」

声を掛ける時雨(結有)に、それだけ言うと、薄雲(智紀)は砲撃を続ける。

その言葉に、時雨(結有)は複雑な表情になる。

 

その直後だった。

「右、右舷前方!!何か来るっぽい!!」

振り向いた全員が目にしたのは、()()()()()の深海棲艦だった、

船体に体当りすると、そのまま後方でUターンする。

 

「きゃあああっ!!!」

「姫様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

揺れた船体から放り出された夕立姫と、その手を摑んだ時雨(結有)は、中東の砂漠へと墜ちて行った。

「姫様!結有!!」

瑞希も飛び降りようとするのを、智紀と吹雪が押さえ込む。

「よせ!今は、一刻も早くジャポネに行くんだ!ここには、戦闘の出来ない女中さんもフレーゲルも居るんだ!」

「結有ちゃん達なら大丈夫、()()()()()()()()()だよ?私達はやれることをやろう!」

「ぐっ……」

「あの戦闘機姫は、オレがやる。降霊弾装填……ファイア!」

薄雲(智紀)は、冷静に振り向きざま、砲撃した。

後方から突撃する戦闘機姫は、降霊弾に骨ごと吹き飛ばされて消滅していった。

「よし、離脱だ。南に下って海に出るぞ!こちら薄雲(智紀)、結有とぽいぽい姫が転落した!大佐はそのまま東に進んで、霊子レーダーで合流を目指してくれ」

『了解だ!』

薄雲(智紀)の艤装の通信機から、裕二の返信が聞こえ、裕二の言葉にならない怒声と共に、通信が切れた。

 

砲雷撃戦は続いている。

「こっちだ!そこは危ない!!私の後ろに来るんだ!」

船内ではフレーゲルが、穴の開いていないところに女中を避難させながら、修理を開始している。

落ちないように、安全索を繋いでの作業である。

男であるフレーゲルが、()を見せて女中達のハートを射抜いていることには、本人はまだ気づいていない。

フレーゲルは、()()()()()()()男なのだ。

 

 

――――――――

……時間は遡り。

智紀は、戻ってから何もしてない訳ではなかった。

ディオリアに最強の部隊を派遣させるべく、霊子装備をフル装備した特殊部隊、()()()()()に協力を依頼していたのだ。

霊子装備の89式小銃や、霊子レーダーという、霊子を強く持った相手を捕捉するレーダー等、

夕張驚異(脅威)のテクノロジーで作り出された装備の、()()()()()()()で、初代隊長は各務原裕二大佐なのである。

部隊規模は連隊クラスで、常時800人ほどの元海兵旅団の精鋭が在籍している。

 

そんな彼等を集結させて、次元の歪み……()()()()()()()()()()()()()のを、ただじっと、待っていたのだ。

裕二は協力的で、10(ヒトマル)式戦車(霊子装備仕様)まで、出してくれたのだ。

もちろん、大垣大臣の理解もあってのことだが、

()()()()()()()()()()()()()()()には、喉から手が出るくらいの、()()()()()()()だったのだ。

()()()()の筈が、()()()()して待機している。

そして数日が経った頃、()()()()()が東富士演習場を覆った。

「よっしゃ、引っかかった!やっぱり、()()()()()()()()()ようだ」

「そのようだな。野郎共!お前等の楽しみにしていた、戦場が待ってるぞ!」

『ウォォォォォ!!!!』

もはや、裕二も()()()()()してしまっているようだ。暇とは恐ろしい……

 

 

そんな訳でやって来た、鬼神と愉快なキチガイ共は、各務原分家家臣団と合流し、深海棲艦もとい魔神相手に、殺戮を繰り広げていた。

偶々居合わせて、魔神に協力していたブラウンシュヴァイク公爵を、()()()()()戦車でミンチにすると、

薄雲(智紀)の通信が入ってきた。

『こちら薄雲、結有とぽいぽい姫が転落した。大佐はそのまま東に進んで、霊子レーダーで合流を目指してくれ』

その言葉に、裕二がプッツンした(キレた)

「了解だ!野郎共ォォォ!!私の大事な愛娘が転落した!これより東に突破し、救いに行くぞ!」

『ウォォォォ!!!!!!』

裕二の憤怒に満ちた怒声と共に、愉快なキチガイ達と家臣団は、怒声を上げて東へ突撃していった……

ディオリア王国に()()()()()()()筈の七星軍が、逆突破を食らっているおかしな状況と化している。

だが、平和という、退()()()()()()()()()()()()の溜まっていたこいつ等の頭の中には、常識とか、そういった物(理性的判断)は存在しない。

軍に残った元海兵旅団は、ただの戦闘狂(バトルジャンキー)なのだ。

 

 

 

―――――――

その頃、時雨(結有)と夕立姫は、中東の砂漠地帯を、東に向かって歩いていた。

中東は元々、七星の支配が弱い地域で、レジスタンスに拾われた彼女等は、

レジスタンスの一部と共に、東のジャポネを目指していた。

その後方から、突貫工事のごとく追いかけて来る親父達(裕二と愉快なキチガイ達)が向かっているとは知らず……

そのレジスタンスにも、支配領域から出る頃には別れを告げて、再び二人旅となった。

「大丈夫……?」

「ぽいー………」

しゅんとしょげている夕立姫をなんとか慰めながら、時には背負って、魔神のいない道を慎重に進んでいく二人。

シルクロードの砂漠をただ歩いているだけ……

夜は寒く、昼間は熱い。その過酷な状況は、二人の精神を確実に蝕んでいった。

「もうだめっぽい。ここで死なせて!!」

限界を超えた夕立姫が、自殺をしようとした時だった。

遠くから、戦車の音が聞こえた。

「待って!これは……?」

「あれは!?鉄の車に乗ってるのは、爺!?」

覗いている双眼鏡には、戦車から顔を出している、家老の我那覇陽三の姿と、

最強とはいえ、数十名の戦死者を出した、特別教導隊の姿が見えた。

「助かった!!!助かったよ!!!」

ぎゅっと、痛いくらいに抱き締めるその姿を、二人の()が目にすることになった。

 

その頃飛行船は、南に向かって進撃中である。




吹雪「あ、結有がまた女作った予感」
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