rikkaのメモ帳(短編・走り書き集)   作:rikka

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【銀魂】紅と白が並ぶとなんとなく縁起がよさそうに見える
銀魂①


 

 侍の国。俺が住むこの国がそう呼ばれていたのは今は昔。

 かつて刀を取り、この国を空の向こうからのお客さんから守ろうとした侍達は時代に取り残され、そのほとんどがテロリスト扱いだ。

 

 まぁ、俺には関係のない話だ。

 とくに、今はそれどころじゃない。

 

「見つけたぞ! その長い赤毛に女の様な顔! 攘夷浪士、比内葵(ひうちあおい)! 大人しく縛につけぃ!!」

「ざけんなこのクソ公僕共! 俺は基本悪行なんてしてねぇって言ってんだろうがぁぁぁっ!!!」

 

 なにせ、ここんとこ毎朝と毎昼と毎夜の日課――エクストリーム・ランニングの真っ最中だ。クソッタレどもめ。

 京に入ったのは一週間前。これまで――少なくとも役人相手には逃げ切れていたというのに、ついに網に引っかかっちまった。

 

「基本もなにも……お前、さっきパトカー叩っ斬っただろうが! 武器を隠し持っているのはバレバレなんだよ!!」

「それ斬ったの俺じゃねぇよ! 扱い面倒な天人(あまんと)もどきなんだよ!」

「なにを分かりやすい嘘をついておるかぁ! そんなの――駄目だぞぉ!?」

「何が『駄目だぞぉっ!?』だ、駄目なのはてめぇらの頭だコノヤロー!!」

 

 後ろから、分かりやすい役人侍の格好した公僕共が十数名追いかけてくる。

 そして目の前に、似た格好の連中がデカい装甲車やらなんやらで組まれたバリケード。

 

 普通に考えれば進む道はない。

 あるとすれば後ろの連中どうにかするか、前の壁をぶち破るのかどちらかだ。

 

 俺がそう考えるのと同じタイミングで、俺の右腕――の中――から奇妙な音がする。

 まるで、金属同士が擦れ合うような。

 

「あ、ちょ、まっ! おい止めろ! せめて人は斬るな! 斬らないように全力で頑張ってください! お願いしまっすぅ!!」

 

 傍から見たら馬鹿の極みだろう。一人で逃げている中、そこにはいない誰かに声をかけているのだから。

 だけど、今のこの必死のお願いがどれだけ大事なのか、前の連中も後ろの連中も左右の野次馬も知るべきだ。

 

『うるさい! いいから腕を使うぞ、アオイ!』

 

 恐らく俺の頭の中にしか響かない女の声がすると同時に、右腕の中から外に向けて何本もの針でぶち抜かれる様な、形容しがたい鋭い痛みが一瞬走る。そして、やはり形容しがたいむず痒い感覚が右腕を覆い――腕が勝手に動き出す。

 

 ――手のひらの中から皮膚を切り裂きながら現れた、妖しく光る紅い刀身の刀を握りしめて。

 

 気が付いたら、口を開いていた。叫んでいた。

 頭の中に響く声の主ではなく、前で行く手を阻もうとする役人に向けて。

 

「皆ぁぁぁあぁぁぁっ! 超、逃げてぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 叫びが間に合ったのか、あるいは向こう側の本能が察知したのか飛び退くようにその場を離れた瞬間――紅い斬撃が目の前のものを吹き飛ばしていった。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 なんとなく、海辺に落ちていたメチャクチャ綺麗な紅い刀身に触れたのが事の始まりだった。

 高そうな剣だから、適当な鍛冶屋に持っていって査定してもらって、それからどこか高く買い取ってくれる所に売り飛ばすつもりだった。

 

 触れた瞬間、その綺麗な刀身は、その一部を針へと変化させて俺の腕をぶっ刺しやがった。

 その瞬間俺は意識を失い――気が付いたら俺は自分の部屋の布団でグッスリ寝ていた訳だ。

 

 

――俺の右手が刀に変化してたけど。

 

 

『私としても不服だが……生き残るにはこれしかなかったのだ』

 

 そして幻聴すら聞こえて来たのだ。や、幻聴じゃなかったけど。

 語りかけてきたのは、俺の右腕。なんかぶっとい刀に変化した俺の右腕だ。

 

『私は、お前達の国で言う天人(あまんと)。エクスカリバー星から流れてきた者だ』

 

 いわゆる金属生命体だというその女……女?は言った。

 自分のいた星から、なにか奇妙な剣を作りだすための研究に攫われてきたらしい。

 本来ならば剣ではなく鞘だったらしいのだが、研究が失敗でもしたのか起こったデカい爆発に巻き込まれ、死にかかった時にその奇妙な剣の破片を取り込みなんとか身体を維持しようとした結果、今の姿になったらしい。

 

『かろうじて生き延びる事は出来たが、変わった金属や機械を取り込んだせいか、かなり身体が変異してしまってな。おかげで、生物から直接鉄分も含めた養分を、血液を介して取り入れないと一定時間以上身体を維持できない刀身(からだ)になってしまったようだ』

 

 そういう女の声に、俺はこう返した。

 どうやったら俺の体から離れてくれますか?っと。

 どうやったら俺の腕は元通りになりますか?っと。

 

 女はこう返した。

 変異が起こった所為か無理だ、悪いが諦めてくれ。むしろお前こそ無遠慮に私に触れた事を詫びろ、と

 

 それから小一時間殴り合いだ。自分の右手と。剣になった手と。

 おかげで俺は半身血まみれになった。

 

 それから諦めがついて、なんやかんやでここまでやって来た訳だが……

 ホント、とんだ同居人が出来たもんだ。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 役人どもを振り切り、ようやく京の町から抜け出せた。

 腕を普通の形に戻し、中に潜り込んだコイツを右腕ごと撫でながら、ようやくの一息を吐く。

 

『ちっ、例の鬼兵隊とかいう連中は来なかったか。奴らには借りを返したかったのだが』

「それに関しては同感だが……お前まさかそれでパトカー斬り飛ばしたんじゃないだろうな?」

『馬鹿を言うな。どう見てもお前を轢き殺そうとしていたからだ』

「そうかい」

 

 そもそも、こうして自分が追い回される人間になったのは、その鬼兵隊とかいう連中のせいだ。

 

 腕がコイツになってから、俺はコイツを隠しながら変わらずに色んな所でバイトして生活していたのだが――よりによってどっかの星の大使が傍にいる時に、鬼兵隊という攘夷浪士の集団が襲いかかってきやがった。

 その際、身を守るためにコイツが身体を乗っ取ったのだが……なぜか俺も攘夷浪士として扱われる様になってしまった。

 

 多分だが、刀を使ったために浪人と思われたのと同時に、考えたくないが大使達の誰かを吹っ飛ばしたんじゃないだろうかと思っている。――なんかそれっぽい記憶微妙に残ってるし。

 

 役人も追いかけてくるようになり、しかもなぜか鬼兵隊も俺を追いかけてくるようになり――マジあいつらぶっ飛ばしてやる。特に腐れピンク女。

 

『京――帝とやらのお膝元ならば、役人はともかく鬼兵隊の手もゆるむと思っていたが……中々にしつこいな』

 

 ちなみに、京に入った日の夜に早速襲撃かましてくれたのが奴らだ。

 

「ホント、どうしたものか」

 

 サイドアップの拳銃使い――加えて京に入ってからはグラサンかけた三味線男まで襲ってきた。

 

(あの腐れピンクはともかく、グラサン野郎はいくらなんでもチートだろうがありゃあ)

 

 コイツが取り込んだという剣の特性か、剣の使い方はなんとなくわかるし、コイツの記憶も使って現実でも夢の中でも剣の訓練を今はしている。たまに剣が暴走しそうになるけど。

 

 まぁ、そっちに関してはコイツが押さえてくれる。

 少しずつだが、剣をモノにしているらしい。完璧に制御できれば、今以上に色々と出来るようになるとか。

 

 が、それでもアイツら相手にいつまでも逃げ切れる気がしない。特にグラサン。

 右腕がコイツじゃなければ、斬り飛ばされている所だ。

 

『役人よりも、鬼兵隊の方が我々の追跡に本腰をいれている。そんな気がするな』

「あぁ。だから、お巡りさんの強い所に逃げようと思っている」

『……しかし、それは本末転倒では?』

「本気で殺しに来ているのはどちらも同じだけど、少なくとも警察が街中でバズーカやらマシンガンやらぶっ放しはしないだろうさ」

 

 一番困っているのはこれだ。いざ食うために何かしようとした時に、いきなりバズーカ撃ちこまれたり浪人の集団に斬り込まれたりするのだ。ちくしょう、アイツらマジでぶっ飛ばす。

 

「とりあえず、京からは一刻も早く離れよう」

『それで、向かう先は?』

「もう分かってんだろ」

 

 あの血まみれの殴り合いの時に決まった協定で、考えを読まない事とか、全身を乗っ取るのは生命の危機以外では禁止とか、あまりやりすぎない事とか――最後に関しては文化の違いもあってあんまり守ってもらえないけど――まぁ、色々と決めているのだが基本的に俺とコイツは一心同体。考えも微妙に漏れているし、逆にキャッチすることもある。

 

『江戸、か』

「あぁ」

 

 将軍様の御膝元、そして二大警察の縄張り。恐らく、鬼兵隊も堂々と兵を送りこんでくる事は無いだろう。

 

「行こうぜ――『紅桜(べにざくら)』」

 

 形が代わり、剣となってしまったコイツに付けた新しい名前を呼ぶ。名前を付けろと言いだしたのはコイツだった。

 

 気に入っているのか気に入らないのか分からないが、なぜかコイツがあっさり受け入れた名前を。

 

 そして俺が名前を呼ぶと、コイツはいつも軽く『ふん……っ』とぞんざいな返事を返すのだ。

 

『ふん……。江戸では下手を打つなよ? アオイ』

「その言葉、そのままバットで打ち返してやるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして一人の男と一本の刀は一心同体の身体、その足を踏み出す。

 

 

 

 江戸に向けて。――侍の街へ向けて。

 

 

 

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