rikkaのメモ帳(短編・走り書き集)   作:rikka

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銀魂⑩

「どうも~葵さん~♪ お久しぶりですぅ~♪」

 

 非番の日は九兵衛や四天王の人と道場でひたすら打ち合うか、東条さんとパパ上さんの暗殺から逃げるか、敏木斎様のゴミ屋敷の整理などで時間を潰す事が多い。

 ただ、今日は柳生家総出で江戸城に出なければならないらしく、おかげで暇を持て余していた。

 なんとなく、リーダーの所――万事屋に遊びに行こうと思って街に出ると、思いがけない顔と再開した。

 

「平子? 江戸に来ていたのか」

 

 椿(ちん)平子(ぴらこ)

 あの傘持ったクッソ強い髭もじゃを相手にした時に加勢してくれた人だ。

 元極道者だとは言っていたが、恩義がある。江戸に付いて一段落してから、一応の経緯とあの時のお礼を書いた手紙を、彼女の働いている花農園に送っていたが……。

 

「久しぶり……というか、よく分かったね」

 

 なにせ、今の格好はほぼ女だ。

 紅桜の奴、最近じゃあ嬉々として俺に服を買いに行かせようとあの手この手で策を打ってきやがる。

 最近じゃあ互いの妥協案として、せめてズボン履くか、あるいはスリット控えめの丈の長い服の中で選ぶように協定を結んだが……。

 

「分かりますよぉ。なんだかんだで、一度は互いの背と命を預けた身ですからぁ」

 

 相も変わらず間延びしたような独特の口調だけど、強さは良く知っている。

 あのクソ怪力の傘の一撃を受け流す剣の腕前だ。

 

「でも、確か見廻組(ポリ公)に入ったって手紙には書いていましたけど……なんでそんな格好を?」

「……その……囮役になったからだったんだけど……紅桜がかなり気に入ってしまって……」

「あぁ~。紅桜さん、結構女の子ですからねぇ」

 

 そういや、紅桜ってば結構平子を気に入っていたな。

 

『貴様が意識を失っている間に、筆談で会話していたからな。言っただろう、起きる間まで食事や潜伏場所を世話してくれたのは平子だ』

 

 あ、うん。そこはよく分かってる。

 まぁ、あの時は俺もお前もあの馬鹿力でへし折られそうになった所だったしなぁ。

 いや、ホント命の恩人だわ。

 

「そういう平子はどうしてこっちに?」

「あっしは、家のちょっとした野暮用で……まぁ、もう終わったので、ちょっと下見がてらにかぶき町を見て行こうかと」

 

 下見?

 もう一度来る予定でもあるんだろうか。

 

「へぇ、だったら私と一緒ですね。私もちょうどかぶき町に用事があったんです」

「……『私』?」

「ごめん、もうそこは深く突っ込まないで。……泣きそうになっちゃう」

「……江戸のポリ公って独特なんですねぇ」

 

 やめてよ、そんなしみじみ呟かないでよ。

 本気で泣くぞこら。

 

「それで、葵さんはどちらまで?」

「んーと……ここをこのまま真っ直ぐ行けば『お登勢(とせ)』って名前のスナックがあるはずなんだ」

 

 ピタッ、と平子の足が止まる。

 

「お登勢?」

「うん、まぁ、行きたいのはそこの二階なんだけどね……」

「へぇ……」

 

 ……なんでちょっと殺気立ったのこの娘? 俺、何か変な事言った?

 

『お前の顔か声か匂いが気に入らなかったのではないか?』

(それもう存在事消してくれって事になっちゃうだろうが)

 

「お登勢って店の二階に、何があるんですかぁ? オカマバーとかですか?」

「いや、私まだ心は売り渡していないから。男のまんまだから」

 

 変な目を向けてきた同僚は片っぱしから地面にめり込ませているし、女と勘違いして不埒な真似をした奴も同じく血の海に沈めてきている。

 外見はこんなんでもハートは男だ。

 

「そこに、ちょっと俺が世話になっている人がいてね。いい機会だし、ちょっと挨拶にでも行こうかと思ったのさ」

 

 あれだったら飯にでも誘おうかと思っていたが、平子と再会したのだし今回はこっちを優先させてもらおう。

 正直、また会えてうれしい。

 九兵衛ともそうだが、やはり一度互いの命を預け合うと色々と分かる物だ。

 少なくとも、自分を見捨てて逃げるという選択肢もある状況で、最後まで一緒に戦ってくれた平子と九兵衛に対しては、なんというか――特別な友情のような物を感じている。

 

「どう? ちょっと挨拶終わったら、飲みに行かない? 奢るよ」

「いいんですか?」

「せっかくまた会えたんだし、しかも休みの日なんだ。ゆっくり駄弁るのも悪くない――」

 

 ふと、聞き覚えのある軽いエンジン音がしてくる。

 と、いうか見覚えのあるスクーターがこちらに向かって走ってくる。すぐ後ろには、白くてデカイ犬――ある意味先輩とも言える――定春がリーダーを背にのせて走っている。

 

 そしてスクーターの上には当然持ち主が乗っている。

 

 

 ――なぜか、緑の髪の、女の生首を地面にこすりつけながら。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「……いない」

 

 見廻組副長、今井信女もその日は非番だった。

 別に非番だからと言っても、いつもならば日課の鍛錬の後は局長室で適当に時間を過ごしているだけなのだが、局長から暇なら保護観察対象の様子見に行けと言われていた。

 向かった先は、当然今の彼の自宅。名門柳生家の邸宅。

 だが、肝心の男がいなかった。

 てっきりいつもどおり柳生家の人間相手に剣を振りまわしているか、厨房で包丁と鍋を振りまわしていると思っていたのだが。

 

 他に行きそうな場所となると……そよ姫の友人という夜兎の少女がいる先くらいしか思いつかない。

 

「万事屋?」

 

 もし、そうだとすると――あの男、ますます佐々木異三郎にとって都合の良い人間へとなりつつある事になる。それはもちろん構わないが……。

 

「はぁ……」

 

 様子だけでも見に行こう。

 一応今は、曲がりなりにも自分の部下なのだ。

 それも保護観察中の身分だ。実質すでに形骸と化しているが……。

 

 恐らくもうしばらく任務をこなすか、大きな手柄を上げれば局長は彼を野に放つために動くだろう。

 それは結果として、彼を手に入れようとする人間の動きを活発にさせるだろう。

 

(単体で、その気になれば艦隊にも対抗できる人間兵器……)

 

 結局の所、比内葵という男は幕府中央からはそう見られている。

 現に、最近動きが活発化している一橋派は、自陣営に比内葵を取り込もうと動きを見せていた。

 見廻り組局長、佐々木異三郎がそれは防いではいたが……それは単に、飢えた獣の前で肉を上げ下げしているようなものだろう。

 

(異三郎……。本当にこれでいいの?)

 

 見廻組の中で、もっとも付き合いのある男の事だ。些細な表情の変化にも気が付く。

 家柄など関係ない庶民の出だからか、敬意はあれど名家のそれとは違う――ある意味で軽いとも取れるそれを、それなりに気に入っている事など、信女の目にはハッキリと分かっていた。

 

――ふぅ……っ

 

 普段から、何を考えているの捕らえづらいと言われる見廻組の副長は、小さくため息をつく。

 どうにも、あの女顔と関わってから普段考えない事に頭を使っている気がする。

 

「確か……かぶき町だっけ……」

 

 非番とはいえ、肌身離さず持っている長刀の鞘を腰に差し直し――今井信女は、かぶき町へと足を向ける。

 

 




平子の一人称アッシですよね?
アタシだったような私だったような気もするのですが……

※現在ここまで
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