rikkaのメモ帳(短編・走り書き集)   作:rikka

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タツミーをヒロインにしてみるテスト⑥

(そろそろ、いつ遭遇してもいい頃か……)

 

 狙撃による攻撃が無くなり、少し時間が立った。恐らく、龍宮も、狙撃による攻撃がもはや意味をなさないと判断したのだろうと、葵は考える。それはつまり、本人が直接追ってくるということだ。さすがに近距離戦になれば自分の勝ち目がかなり減ることを葵は分かっているために、少しでも時間を稼ぐために、こうして移動を続けているのだが……。

 

 残り時間は1時間20分。葵は、龍宮は既に森の中に入っていると見ていた。

 更に言うなら、恐らく、そろそろ自分の痕跡を見つけて追ってきているはずだと考えている。

 

 

「はぁ……。負けたら龍宮に何されるかわからん上に、あのクソ怖い女に血を吸われる事が確定するし……」

 

勝つしかないよなぁ。と葵は呟き、更に森の奥へと移動していく。

 

 

 

 

 

『Phase.5 異常成長』

 

 

 

 

 生い茂った森の中を龍宮は罠、あるいは葵の痕跡に警戒しながら歩いている。

 

(よくもまぁこれだけの罠を……偶然とはいえ、監視しておいて良かった)

 

 落とし穴や鳴り子といった簡単なトラップから釣り天井のような複雑なものまで森の中は、様々なトラップがそこらかしこに、しかも龍宮の目から見ても、見事にカモフラージュされて仕掛けられていた。

 葵の恐ろしい所は、これだけの罠を設置しながら、自分が引っかかるとは欠片も考えてなく、今も警戒に警戒を重ねているであろう事だと、龍宮は思う。

 二度に渡る葵との追走戦の際、龍宮は葵の粘り強さととっさの機転により一度は逃げられ、昨日こそ捕まえることは出来たがそれでも危なく逃げられる所がいくつかあった。

 

(なるほど。そう考えると、確かに先輩は普通ではないが……)

 

 だが、と龍宮は続ける。

 先ほど垣間見たあの成長速度は普通ではない等というレベルではなく、異常の一言に尽きる。

 これが、元々の『篠崎 葵』が素晴らしい運動神経の持ち主だというのなら分かる。

 体に染みついた動かし方が、徐々に今の葵の動かし方に影響を及ぼしたのだと考えられるからだ。

 まぁ、それでも1日で効果が出るかは不明だが、まだ可能性として考えられた。

 しかし『篠崎 葵』はパッとしない部活生だった。少なくとも以前は、良くも悪くも普通の生徒。

 特に目立つこともなく、特別な所など何もない普通の少年だった。

 それが、記憶を失ったというあの事故以降、彼は変わっていった。

 龍宮は部活での『彼』しか知らないが、少なくとも今のように存在感がある存在ではなかった事は確かである。

 今の彼は……それこそ以前の『篠崎 葵』を知る人間からしたら別人だろう。

 芹沢部長や佐々木副部長が一目置くほどに急成長している運動神経に、龍宮だからこそ分かることだがライフルの使い方も日々向上している。

 ただし、それはバイアスロンというスポーツのそれではなく、まるで実戦で扱っているような……。

 

(ただ単に、私の取り扱いを見て覚えたのかと思っていたが……)

 

 そこまで考えた龍宮は、その思考を一旦端の方へと追いやる。

 

「……やっと追い付いたか」

 

 龍宮が見つけたのは、付いたばかりと思われる足跡だった。足の大きさ、そして深さから推測される体重、全てが龍宮が知る篠崎葵と合致する。

 

「さてて、ようやく本番か」

 

 口の端を吊り上げ、さぞ嬉しそうに、龍宮は、そう呟いた。

 

 

 

 

*****************

 

 

 

 

(あれから結構な時間たったが……思った以上に時間を稼げているな)

 

 葵としては、龍宮との遭遇はなんとしてでも回避したい出来事であった。

 例え回避が不可能だとしても、出来るだけ時間を稼いで、追い掛けられる時間を短くしたかった。

 そのため、出来るだけ足跡が残らない所を選んで歩き、可能な限り痕跡を消して来たのだが……

 

(さすがにそろそろ限界か? さすがに深い森というだけあって、ぬかるんでる場所も多かったし……)

 

 とりあえず息を整えるために、葵は近くの少し大きい岩に軽く腰を掛ける。

 そして、残り時間を調べるために時計を見る。

 

(さて、残り1時間。本当に……本当に欲を言えば、あとせめて30分は見つかりたくないんだが……無理だろうなぁ)

 

 そもそも葵が、あまり土地勘のないこの森を、2時間に及ぶ逃走の選択したのは、自分で、昨日一日の疲労が取れていないと判断したためだった。もし昨日、エヴァンジェリンとの邂逅がなければ、今頃はもっとマシなコンディションだったのだろうが、今はどちらかと言えば不調に入る状態だった。

 そのため、こうして森の中で罠を使い、少しでも逃走時間を短くする作戦にしたのだ。

 もっとも、その作戦の第一歩が、まさかの狙撃によって崩されていたが、

 

(疲れを減らすためにこういう作戦取ったってのに、初手から走りまわされたのはちと痛かったな)

 

 葵は、龍宮の射撃の腕がかなりの……もとい、とんでもない凄腕である事は知っていたが、それはあくまで部活で使うライフルと、追い掛けてくる時に使う拳銃タイプのエアガンの腕前でしかなかった。そのため、長距離の狙撃を行ってくるのは、それこそ、まさかの想定外だったのだ。

 

 軽くため息をつきながら、葵は立ち上がり、自分なりの地図を書いたメモ帳を、持ち歩いている小さなリュックから取り出す。

 

(さてさて、仕掛けた罠も含めて、この近くで、待ちの姿勢に良さげな場所は……)

 

 少しの間、メモ帳片手に色々考え、メモ帳をリュックにしまって再び何やら考え出す。

 

(うーん、何か大事なことを忘れている気がするんだけどなぁ)

 

葵は先ほどから、何かを見落としている事に気がついてはいたのだが、肝心のそれが何かに中々行きつかない。だが、このまま、ここで待っていても仕方ないと思い、そしてようやく、彼は移動を開始した。

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 葵がたどり着いたのは、樹木の量が少し少なく、ある程度ならば見通しが効く平地だった。

 

 この辺りが、葵が一番罠を仕掛けた場所であった。単純に張り巡らせているだけの糸や鳴り子等も、相当な量を用意しているから、いつでも警戒態勢に入れる……ハズなのだが……。

 

(なんだろう、やっぱり、ものすっごい大事な事を見落としてる気がする)

 

 自分がたまにポカをやる時の、独特の気持ち悪さが、葵の頭の中に渦巻いていた。

 ひょっとして後を付けられていないか? と、周囲の気配を探り、辺りを見回すが、それらしい感じはしない。まぁ、龍宮が本気で隠れていたとしたらどうしようもないのだが……

 

 

(……ん?)

 

 

 そういえば、先ほどまで逃げるために走り廻っていたために、すっかり思考の外だったが、葵は、先ほどの龍宮の狙撃を思い出していた。

 

(時間開始と共に攻撃をしてきたって事は……あの時点ですでに準備万全の状態でこっちを見つけたって事だよな)

 

 もし、龍宮が時間開始から探しまわっていたなら、狙撃はもっと遅くなったはずだ。そもそも、このゲームも、場所はどこでスタートしても構わないと言っていたが……

 

(最初から、尾行することが前提だった? いや、龍宮の性格からして、それはないか……。どこかで偶然気がつかれてそのまま尾行されたか、あるいは、俺が選ぶ場所が分かってた?)

 

 少しづつ、辺りを歩き回りながら、葵は考えをまとめていく。

 

(そもそも、狙撃自体は恐らく偶然に偶然が重なっただけだろう。俺がたまたま、森の外側のチェックをしていたからであって、あれがさっきまでいたような森の奥だったらどうしようもない)

 

(つまり、あそこは狙撃ポイントというより、監視拠点として機能していたということか)

 

(ってことは、奥の方はともかくとして、罠を仕掛けている所のいくつかを見られていたのは間違いない。それはいつから?)

 

 ふと、葵は辺りをもう一度見まわし、今ここから見える地形を全て確認する。その中には、先ほど龍宮が狙撃してきたのであろう地点も見える。

 

(ていうか俺、ここも含めた逃走の起点になるって想定していた場所の確認は念入りにやっていたわけで……。当然、確認も数回してるよね? つまり、何度も確認してる場所って、傍から見たら大事な所になるってわけで……。しかもここってある程度見通しが――)

 

 

 

 

「あ、なんか今すっごい嫌な予感が――」

 

 

 

 

 葵の近くの樹木から、何かが飛び立つような、大きな音がする。

 

 とっさに音がした方、頭上を見た葵の目に映ったのは、

 

 

 

―― こちらに飛びかかってくる、迷彩服姿の龍宮真名の姿だった。

 

 

***********

 

(やはりここだったか!)

 

 それなりに葉が生い茂っていて、隠れるのにちょうどいい樹の中に龍宮は姿を隠しながらこちらの方に歩いてきている葵の姿を確認した。

 葵の行動を監視し始めていてから、彼が何度も確認していたのは全部で三か所、どこも樹木で覆われていて、どのような罠を仕掛けているのかは分からなかったが、その場所だけはしっかり把握していた。そして、彼を追跡している時に見つけた足跡から、大体の方向を把握し、その近くで、さっきの三か所のポイントの中で最も近い地点はどこかを瞬時に弾き出す。

そして、そのポイントに仕掛けてあった罠をいくつか、致命的に邪魔だと思ったものは、分からないように解除しておき、この場に網を張っていたのだ。

 

(半ば賭けだったが、当っていてよかった)

 

 普通に足跡や痕跡を伝って追走しようかとも思った龍宮だったが、いくつかそれを繰り返している内に、それ自体が罠への誘導だったり、ダミーだったりしたのだ。つくづく、あの先輩には妙な才能があると、龍宮は静かに息を吐く。おそらく、龍宮が監視していたということには気が付いていなかったのだろう。

これで監視されていたことに気がつかれていたら、恐らく間にあっても、残り10分程まで逃げ回られた事だろう。

 

(少し複雑だが……。貴方の逃走における才能は称賛に値するよ、葵先輩。だけど……)

 

 

 葵は、未だにこちらに気がついた様子は、辺りを見回しており、その後に何か深く考え込みながらこっちに向かって歩いている。

 

 

(ここで捕まえさせてもらう!)

 

 

 葵が真下に来るまでに、後5歩……3歩……。

 

 そこで、彼は急に立ち止り。

 

 

「あ、なんか今すっごい嫌な予感が――」

 

 

―― ここにきて気付かれたか!!

 

 そこで一気に龍宮は、樹上から飛び降りる。その音に気がついたのか、葵もこちらを見上げている。一瞬ポカンとする葵だったが、即座に反応し、バックステップで、組み伏せようとしていた龍宮の腕からギリギリで逃れる。

 

「あぁ、やっぱりぃっ!!」

 

 そう叫びながら、そのまま数回、後ろに跳んで距離を取る葵。むろん、こちらを向いたままである。ここで即座に後ろを向いて逃げようとしていれば、龍宮はそのまま飛びかかって、後ろから押し倒したのだが、葵は下手に動かず、龍宮の動きに警戒を払っている。

 

(まさかとは思っていたが……これに反応するか!!)

 

 龍宮は内心、葵の成長速度に舌を巻いていた。あの咄嗟の刹那に動けるなど、既にこの先輩は、一般人の中ではあるが、普通の枠を超えつつある―― いや、もう超えているかもしれないと。

 即座に拳銃を抜き、葵に付きつける。

 

―― 葵は、動じなかった。

 

「まさか、真上からの奇襲に対応されるなんて……。どうしたんだい、先輩。昨日までの先輩とはまるで別人じゃないか」

「ダブルの意味で命が掛かってるからだボケェ! てか、あの矢文は何だ! お前は俺をどうするつもりだ!!」

 

 一瞬、何の事だか分からない龍宮だが、すぐに思い当った。というより、思い出した、

 

「あぁ、そういえば忘れていたよ」

「てめ――!」

「なに、大したことじゃないんだ」

 

 何か叫ぼうとする葵を制し、龍宮は口を開く。

 

「私が先輩を捕まえたら、先輩に『なんでも』言うことを一つ聞いてもらおうと思ってね」

 

 龍宮が、微笑みながら「なんでも」の所を強調してそう言うと、葵は顔を引きつらせて抗議する。

 

「てめ、そんなん一つとか言っておきながら、その一つで『一生奴隷』っつったらアウトじゃねーか!!」

「……あぁ、その手があったか」

 

 思わず手をパンッと叩きたくなった龍宮。それを見て葵は顔に絶望の色を乗せて、

 

「馬鹿! 俺の馬鹿ぁ! なんでそんな余計なヒントあげちまうんだ!!」

 

 と、叫び出す。こういった状況でなければ、文字通り頭を抱えていたかもしれない。

 こうして見ると、いつもと変わらない葵に、龍宮は思わず苦笑を零す。

 

「まぁまぁ葵先輩。勝負はフェアということで、先輩が逃げ切れたら私だって何か一つ言うこと聞いてあげるよ? フフ、先ほど貴方が言ったように、私を先輩の奴隷にでもしてみるかい?」

「龍宮、てめっ! 俺をなんだと思ってるんだっ!!!?」

「ハッハハハ!」

 

 口では馬鹿な事を言い合っているが、龍宮は非常に緊張していた。万が一逃げ切られてしまった時に、目の前の男が、何を要求してくるか分からないから――ではなく。

 

(……目を逸らさない)

 

 この状況で諦めていないのは分かる。何か策を練っているのだろう事も。だが、それが読めない。

 今までのの葵だったら、その目線等でなんとなく狙いは推測できた。もっとも、たまに、龍宮の予測の斜め上を行くのが『篠崎葵』という男なのだが……。

 

(『男子三日会わざれば活目して見よ』という言葉はあるが……毎日顔を合わせているのに、たった一晩で、いきなり変わられた時はどうしたらいいんだい?)

 

 龍宮自身、誰に尋ねているのか分からない事を、内心でボヤきながら、少しずつ葵との距離を詰めていく。葵も会話を続けながら、ジリジリと後ろに後退していく。

 このまま距離を縮めていけば、いずれは龍宮が勝つ。それは葵にも分かっているはずだ。なにせ、あと5歩も歩けば、この男は樹木に阻まれ、後退できなくなるのだから。

 そして、目の前の男は、それを見逃すような人間ではないことを、龍宮はよく理解していた。

 

(さて、どう動く?)

 

 更に一歩、もう一歩、少しずつ追いつめる。残り二歩分、一歩……そして、葵の足が樹木に当る。

 

 その瞬間、龍宮は両手に持った拳銃の内、片方を迷わずに発砲する。体の中心より右寄りを撃ち、もう片方は、回避した際に即座に狙いを付けるために残しておいた。が――

 

 

―― 葵は、身体を僅かに反らしながら、一足飛びで真っ直ぐに、龍宮の方に向かってきた。

 

「なにっ!!?」

 

 咄嗟に距離を取ろうとした龍宮だが、どうにか思いとどまって、即座にもう片方の拳銃の照準を合わせようとするが、同時にその手に、自分のではない人の体温を感じた。葵が静かに手を伸ばし、そっとその手に触れて、拳銃の向きを逸らしたのだ。

 葵は、龍宮の手を押すようにして、そのまま龍宮の横を駆け抜けようとする。

 龍宮も、負けじと上半身を捻り、回し蹴りを放つが、急に脱力したかのように態勢を低くする葵の髪の毛を、掠っただけだった。

 

「あっぶね、掠ったか!」

「くっ……!」

 

 龍宮は、回し蹴りを放ち、一回転してから、身体をやわらかく使って、身体を伸ばすように葵に片手を伸ばし、そのまま組み伏せようとする。

 だが、葵は、態勢を低くした状態で足に力を入れ、最初の一歩で大きく距離をとり、2歩3歩と、ジグザグに距離を取っていき、その後に全力で走りだす。その速度は、中々に早いものである。

 即座にその後を追っていく龍宮だが、その頭の中は『驚愕』の二文字で埋められていた。

 

(最初のあの動きは――)

 

 多少雑な感じはしたが、それは、龍宮のクラスメートの一人が、以前、龍宮に見せてくれた物と非常に酷似していた。

 

(活歩……)

 

 別名、縮地法とも言う、短距離間を滑るように移動する、中国拳法における歩法術の一つである。

 

(葵先輩は部活をいくつか掛け持ちしていたが、中国武術研究会のような格闘技系の部活には入っていないし、そもそも退院以降バイアスロン以外にはほとんど行っていないはず。習っているという話も聞いていない)

 

 

 

 

―― ならば、あの人はどうやってアレを覚えた……?

 

 

 

 

**********

 

 

 

 一方、追い掛けられている葵も、自分の動きに驚いていた。自分でもあんな事が出来るとは思っていなかったのだ。

 

(最初は、後ろに仕掛けておいた罠を使おうと思ってたんだけど……まさかまさかの解除されてて使えない状態だったからな)

 

 恐らく、事前にバレていたのだろう。待ち伏せされていたことからもそれは間違いない。何かポカをやらかしているという自分の予感が正しかった事は立証されたが、もっと早く気付いてほしかったと葵は自分で自分に対して、内心ため息を吐く。

 文字通り袋のねずみになりかけた状態で葵が考えたのは、昨晩エヴァと対峙した時の動きの焼き直しだった。相手が動きを起こす一瞬の硬直を狙って、相手の脇をすり抜けていく作戦である。あの時と違って、確保しなければならない対象もいないため、頭の中で何度かシミュレートしてタイミングを測る。そして、いざ行こうとした時に――

 

(あの感覚、どう説明すりゃいいんだ……。体が勝手に、――違う。『体ごと、頭に動きが書き込まれた』?)

 

 いざ、一歩目を踏み出そうとしたその時に、突然、葵の頭のどこかに、その動きが『書き込まれた』。足の置き場所から、そこからの動かし方や流れといったものが、フッと頭に流れ、葵は、その通りに行動したのだ。

 その後は、半ば無我夢中だった。龍宮の狙いを付けてる方の手に、こちらの手を添えて、そこからひたすらに走り抜けた。ちなみに、回し蹴りを交わした際の動きは、思わぬ動きに、一瞬、自分自身付いていけず、咄嗟に足から力を抜いてしまった結果だったりする。

 龍宮が評価したように、この男、悪運の強さも尋常ではなかった。

 

(とりあえず、わかんない事は放っておこう)

 

 とりあえずは、現状を確認しようと、葵は走りながらも辺りを確認する。

 

(さっきの事も含めて、ここらへんの罠は、どうもほとんどが解除されてるみたいだし……)

 

 状況は相も変わらず最悪。正直、葵の自業自得な所が大きいのがまた微妙に情けない。

 

(残り時間を確認したい所だけど、今そんな余裕ないし……)

 

 背後からは、今も牽制として弾が飛んで来ているし、足音からして、徐々に距離を詰められている感じだ。

 

(感じからして、多分5分……いや、3分で追いつかれる。だったら!)

 

 近くに、何かないか辺りを探し、『ソレ』を見つけた葵はそちらに方向転換する。その際に、視界の端に龍宮の姿を確認する。

 葵は、そのままその地点の近くまで走り、一気に後ろを振り向く。

 既に龍宮はこちらを向けて銃を構えて、こちらと一定の距離を保ちながらジリジリと迫ってくる。

 

 

 

「ここで、決着をつけるしかないか……」

 

2時間に渡る、葵にとっては文字通り、命が掛かっている鬼ごっこ。

 

それが、この場でようやく、決着がつく。

 

 

 

 

 

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