rikkaのメモ帳(短編・走り書き集)   作:rikka

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タツミーをヒロインにしてみるテスト⑯

(どれだけ才能はあっても、所詮は10歳の子供ということか……)

 

 目の前で自分に首根っこを押さえられて苦しそうにもがくネギの顔を見ながら、エヴァは内心ため息をつく。

 

 ネギが取った作戦は二つ。

一つは自分が危機に陥った時に確実に逃げられるように、学園結界の端に位置する大橋にエヴァをおびき出して、不利になったら橋の向こう側――学園結界の外側に逃げだすというもの。

そしてもう一つは、事前に張っておいた魔法による捕縛のトラップである。

 

 一瞬焦りはしたものの、かつてネギの父親に同じような手でやられている彼女がその可能性を考慮していないわけがなかった。

 

 従者――茶々丸の補助を得てあっさりと罠を解除したエヴァは、不用意に近づいて来ていたネギの首根っこを押さえつけて地面にねじ伏せた。

 

「ぐ……あっ……!」

「はっはっ! どうした坊や、もう終わりか!?」

 

 押さえつけられているネギは、身の丈より長い杖を振るって魔法を放とうとするがそれもエヴァに見切られ、逆に杖を奪われてしまう。

 

 奪った杖を一瞥するエヴァはそれを憎々しげに睨みつけると、それをネギの手の届かない所に放り投げる。

 

「どうした坊や。魔力がある程度戻ったとはいえ、私の力はまだ完全には戻っていないぞ? ほら、その小さな体で私を払いのけて杖を手に取って見せろ」

 

 押さえつけたネギの耳元でそう囁くエヴァだが、彼女はネギがこの状態から抜け出す事が不可能な事は分かっていた。伊達に600年も生きてきたわけではないのだ。

 

(とりあえず坊やの実力は分かった。従者さえいればまた違う結果になったかも知れんが……。さてどうやって事態に収拾をつけるか)

 

 てっきり疲弊した所を葵が突いてくると思ったのだが、彼が姿を現す気配は未だにない。

 

「……あの男……篠崎葵はどこに行った?」

 

 協力して事に当っているのか、それとも葵が上手い事ネギを利用しているのかを確かめるためにエヴァは彼の顔を無理矢理こちらに向けさせて尋ねる。

ネギは悔しそうな顔でエヴァの方を見るが、その先に何かを見つけ――

 

 

 

 

 

――圧倒的に不利なはずの彼は、隠そうとして隠しきれない笑顔を顔に浮かべた。

 

 

 

 

「――っ!?」

 

 とっさにエヴァはネギから飛びのく。が、それから一拍遅れて機械が作動する時のような音が辺りを包みこむ。

 それと同時にエヴァにとってつい数時間前までずっと感じていた体の重さが蘇って来た。

 

「これは……ばかな、学園結界だと!?」

 

 目の前でゆっくりと起き上がったネギに対して『魔法の矢』を撃ち込もうとするエヴァだがその手から、その体からは魔力が上手く放出されない。出来ない。

 今まで同様、自身の魔力が上手く練れなくなっていた。

 

 

 

 

「は……はは……はっはっはっはっは!! そうか、これがお前の策か!!」

 

 

 

 

 つい先日まで自分と真正面から戦う事をそれほど想定していなかったネギには、この仕掛けはまず不可能。

 ましてや『学園長やタカミチにこの事を喋ったら、周囲の人間が危険になる』という脅し文句を真に受けていたネギに、学園側との交渉など決してできない。

 

 

 

 

 ならば残るのは――たった一人しかいなかった。

 

 

 

 

 

「待ちかねたぞ! 篠崎……篠崎葵!!」

 

 

 振り向いたエヴァの視線の先には、ここでは珍しくないブレザーを羽織り、純白の鉄扇を閉じたまま構えている葵の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

『Phase.15 イレギュラーなコンビ』

 

 

 

 

 

 

「茶々丸!!」

 

 ようやく姿を現した葵に対して、エヴァは即座に自分の従者を差し向ける。

 従者――茶々丸もそれに反応して葵に殴りかかるが、それを葵は当然のように開いた鉄扇で受け止める。

 ガツッ! と鈍い音が響き渡り、葵と茶々丸は自分の武器に、拳に力を込めて競り合うがそれが無意味であると悟ると互いに距離を取った。

 それをエヴァは「ほう……」と面白そうに見て、ゆっくりと彼に向って近づく

 

「茶々丸の一撃を難なく止めたか。どうやら本当に一か月で戦えるだけの準備はしてきたようだな、葵」

「……そういう約束だったからな。そうだろう、エヴァ?」

 

 鉄扇を手元でくるりと回して、そのままそれを広げる葵。それに対してエヴァは不敵な笑みを浮かべてみせる。

 

「まさかジジィどもを味方につけるとは思ってなかったよ。一体どんな対価を払った? 聞かせてくれないか『役者君』?」

「さぁ? これが終わったら学園長に聞いてみるといいさ」

 

 口で軽い言い合いをしていると、エヴァの背後で立ちあがって態勢を立て直したネギが呪文を唱えて杖を取り戻し、油断なくエヴァと茶々丸に向けて構えている。

 ちょうど葵とネギの二人で、エヴァと従者の茶々丸を挟み込む形である。

 

 それを尻目に見ながらエヴァは内心、一週間前になぜ葵が自分に学園結界の事を教えたのかその理由について考えていた。

 

 恐らくあの時点で、この学園結界の『模造品』の作成に目途が立っていたのだ。そこであえて学園結界についての情報を教えてそれについて調べさせるように仕向ける。

 結果、それを調べるためにこちらの吸血行為はストップし、今こうして普段よりも少し力が落ちている状態で戦う羽目になっている。加えて己の口で魔法を唱えて戦うつもりだったから、いつも携帯している魔法薬も今回は持ってきていない。

 つまり、エヴァが想定していた以上のハンディキャップを背負って戦うことになったのだ。

 

 

「くっくっく。そうだな、後でじっくり聞かせてもらうとしようか……。その口から! 貴様の記憶を消しさるその前にっ!!」

 

 

 だが、それで圧倒的に彼女が不利になったかといえばそうではない。むしろ、これだけ力を抑えられてもまだ『真祖の吸血鬼』を抑え込むには足りない。まったく足りない。

 

 

 彼女は葵を睨みつけたまま後ろに軽く跳躍し、後ろから魔法薬を使って魔法を放とうとしていたネギの首を掴んで持ち上げる。

 

 

「が……ぁ……っ」

 

「この程度のハンデで私が怯むとでも? 確かに、少しでもリスクを減らすために力を取り戻そうと吸血行為を行ってはいたが……そもそもの地力が違うということが分かるか? そして見えるか? お前達と私の間にある、600年の経験という壁の厚さがっ!!」

 

「――っち! ネギ先生!」

 

 

 ネギを解放させるために、エヴァに向かって攻撃を仕掛けようとした葵だが、エヴァはそのままネギを葵に向かって投げつけその後を追う様に走り出す。

 茶々丸も主人の後を追って来ているのが、投げ飛ばされたネギ越しに葵には見えた。

 

「く……のっ!」

 

 咄嗟にネギを抱き止めるのと同時に、エヴァの攻撃を警戒する葵。まず彼の目に入ったのは、こちらに向けて魔法を撃つかのように手を突き出しているエヴァの姿だった。

 今の彼女に、魔法薬なしでは魔法は使えないはずである。

 それを見て思考を走らせた葵の脳裏をよぎったのは、一度彼女を相手に立ち廻った時に見た不可視の攻撃。つまりは――

 

「ネギ先生すみません!!」

 

 大声で、抱えている子供先生に謝りながら彼を自分の斜め後ろに放り出し、自分も横に跳躍する。

 それと同時に、見えない何かが空を斬る音がいままで葵がいた場所に、そして今立っている所の周囲で――そこらかしこで鳴り響く。

 

(やっぱり糸か! ちくしょう、これも置いてきてくれればよかったのに!!)

 

 

 以前葵が立ち廻った時には、エヴァは糸を一本だけしか使っていなかった。そのため葵も、精々同時に使えるのは2、3本くらいまでだと予想していたのだが……

 

 いや、問題は操れる本数ではなかった。

 

 

「どうした葵。周囲に気を配るばかりでは私の従者には勝てんぞ」

 

「ここまで器用に操れるのかよ! くそが!!」

 

 

 余裕の表情を浮かべて挑発しながらも、葵の前から、後ろから、右から、左から、頭上から、足元から……ありとあらゆる場所から攻撃してくるエヴァに対し、思わず悪態をつく葵。

 直感と短いながらの特訓での経験を持ってようやく回避しきった葵の眼前には、再びこちらに向けて攻撃を放とうとしている茶々丸の姿があった。

 

 

「申し訳ありません篠崎様。マスターの命により、少々本気でいかせていただきます」

 

 

 静かだがはっきりと通る声でそう告げる茶々丸。すでに戦闘態勢の入った状態で葵の懐に飛び込んでくる。

 彼女の流れるような拳や脚技を葵は回避し、開いた鉄扇で受け流し、そして機を見て反撃を繰り出す。

 だがそのどれもが決定打とはならない。

 ロボットにしては、あるいはロボットだからこそか……。茶々丸は驚異的なバランス感覚と的確な見切りで、態勢を崩させようとする葵の目論みを全て外している。

 

 

 

(さすがはエヴァの従者だよホントに! だけど――)

 

 

 

「魔法の矢(サギタマギカ)戒めの風矢(アエール・カプトゥーラエ)!!」

 

 

 葵が放り出したネギは、装備等が無事であることを確認するとすぐに気を引き締め直し、魔法薬を使って茶々丸に向かって捕縛属性の魔法の矢を放つ。

 やはりそれを回避する茶々丸だが、確実に攻撃の手が緩みだした。そして葵の目はそれを見逃さない。

 押され気味だった葵と茶々丸達の戦いが、ネギの援護により拮抗し始める。

 

 

「ネギ先生、魔力はまだ大丈夫ですか!?」

 

「問題ありません。行きます!!」

 

 

 

 彼らの戦いは始まったばかりだった。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 エヴァンジェリンは、わずかに使える魔力を糸に込めて操って二人の行動を阻害し、時に茶々丸の隙を見て投げつけられた投擲用のナイフや魔法を回避しながら茶々丸の後ろから観察していた。

 

(ふむ、坊やが妙に魔法薬やら魔法銃といった装備を気にしているのが引っかかっていたが……。なるほど、この紛い物の結界は坊やの魔力で構成されているのか)

 

 葵がギリギリまで姿を見せなかった事まで考えると、ネギは最初から魔力を最低限戦闘に耐えうる分だけ残し、その大半を魔法薬の中に圧縮しておいたのだろうとエヴァは推測した。

 それを結界の構造・構成を理解していたのであろう葵に渡して、自分は準備が整うまでの時間稼ぎの役目を……といった所だと。

 

(ジジィめ。葵を保険に使ったか……いや、葵が自分を使わせたのか)

 

 

 口に出さずに学園長への呪詛を唱えたエヴァは、再び眼前の『戦場』に目を戻す。

 

 

(まぁいい。なんにせよ、いかに膨大な魔力を持っていようが所詮は人のソレ。この紛い物も坊やの魔力量からして……30分といった所か。そこからさらに坊やが魔力を温存したとしてもって20分)

 

 考えながらもエヴァは、念のために持ってきていた糸に己の魔力を込め、葵の首を狙い操る。が、葵は鉄扇で受け止め絡ませることでそれを回避し、その勢いで詠唱中のネギに跳びかかろうとしていた茶々丸を食い止める。

 

 結界さえなければ、純粋な魔力のみの糸と人形遣いの技でもっと自分好みの展開に事を運ぶこともできたのに……と、内心歯噛みするエヴァンジェリン。

 

「結界の魔力が切れた瞬間がお前達の敗北。それなりに策を練り、拮抗状態を作り出せた事には称賛を贈るが……決定打には欠けているこの状況。さぁ、どうする葵?」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

(結界作動時のエヴァの力は、魔法抜きでもかなりの格上。勝てるかどうかは微妙な所と見ていたけど……それでも見積もりが甘かった! 600年の経験値がどうしようもないくらいに厚い!!)

 

 麻帆良学園都市のメンテナンスは夜の八時から深夜零時までの4時間に渡って行われる。その四時間が大停電というわけだ。その間だけがエヴァが本気で戦える時間帯な訳だが、かといってその4時間の間ずっと逃げ切る、あるいは戦い続けるのは不可能だ。

 そのために葵は、ほんの数十分の間でも勝ちうる機会を作りそこに全力を注ぎこむという作戦を取ったのだが――

 

 

(従者さえ……絡繰さんの行動さえ封じられればこちらにも勝機が出来るんだけど……っ!)

 

 

 葵の最大の誤算は、エヴァが魔法を使用できなくなった時の戦闘力がどれほどのものか把握……もとい、理解をしていなかったという事だ。

 

 葵の中では、魔法使いにとっての最大の武器となる魔法を完全に取りあげれば、その戦闘力は大幅に落ちるはず。そこに付け込むはずだったのだが、エヴァンジェリンが従者並み――否、それ以上の技の持ち主だとは思っていなかった。

 

 

「篠崎さん。エヴァンジェリンさんの攻撃は一体なんなんですか!?」

 

「糸ですよ、ネギ先生。糸に気か魔力のどちらか――多分魔力でしょうが……それを通して操っているんです。ありえない機動で飛んできますから自分に任せて、先生はとにかく従者を狙ってください!」

 

 

 詠唱を中断して大声で質問してくるネギに、少しイラつきながらも答える葵。その後ネギに詠唱を促す。が、先ほどまでよりも精度を欠いている様に葵は感じた。

 何かを気を取られて集中できていないようだ。

 一瞬声をかけようかと葵は思ったが、そうしている内にも今度は茶々丸とエヴァが同時に攻撃を仕掛けてくる。

 

 

「ふははは! どうした篠崎葵? 貴様の策はネタ切れか!?」

 

「……少しばかり有利だからと調子に乗って――!」

 

 

 どうにかギリギリの所で茶々丸の拳を鉄扇で受け止め、エヴァの糸は気を纏わせた左腕に絡ませた上で掴み取る。

 

 

「状況が圧倒的に有利不利なんじゃなくて、拮抗してるっていう事がどういうことか教えてやるよ――なぁっ!!」

 

 エヴァの糸を掴んだまま体を捻り、茶々丸からの攻撃を交わしながら彼女を中心に円を描くように体を動かす葵。結果――

 

「――! 体の動作が……?」

 

 茶々丸の体にエヴァの糸がそのまま絡みつき、彼女の動きを阻害する。

 

「はぁぁぁっ!!」

 

 動きが止まった一瞬の間に歩法を使い茶々丸との間合いを詰め、手元の鉄扇を一閃させる。

 

「馬鹿が。それで糸を攻略したつもりか?」

 

 だが、結局その鉄扇は茶々丸に当る事はなかった。エヴァが不愉快そうに顔をしかめながら彼女に絡みついている糸に通してあった魔力を解き、同時にもう一本の糸でその糸を切断する。結果茶々丸はあっさりと体の自由を取り戻し、回避行動に移る。

 

 

(だけどそれでいい。俺の狙いは最初から――)

 

 

 葵の目に映るのは、茶々丸が回避行動に移ったおかげで遮るものが無くなり、しっかりとその姿を見ることが出来る少女と

 

 

 

――彼女に向かって一直線に駆けだしている少年の姿。

 

 

 

「俺の狙いは最初からお前なんだよ――ってネギせんせぇぇぇぇっ!!?」

 

 

 訓練とはまた違う圧倒的な強者との戦いで精神的に張り詰めていた葵だが、共に戦っていた人間の思わぬ行動に思わず精神状態が素のそれに戻ってしまい、茫然とネギの行動を眺めてしまった。

 

 葵の上げた声に振り向く事もなく、ネギ=スプリングフィールドは真っ直ぐに葵が狙っていた目標に――エヴァンジェリンに向かって真っ直ぐに走っていく。

 

 

「うわあぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「ふん。今度は坊やか」

 

 

 叫び声を上げながらエヴァに跳びかかるネギに対して、エヴァは軽く手元を動かす。

 その直後に、先ほどまでうるさい程にそこらかしこで鳴っていた物と同じ音がネギの目の前から鳴り響く。

 エヴァは必死の形相で向かってくるネギを退屈そうな顔で眺めながら、

 

「ほら。これでおしまいだ」

 

 エヴァはそう言って、ハエを手で追い払うような仕草でネギに向けて糸を繰り出す。

 その仕草にどこに糸が飛んでくるのか予測を着けたのか、ネギはそのまま真っ直ぐ『ちょうど糸が待ち構えている場所』目掛けて跳躍した。

 

 

 

 

――『は?』

 

 

 

 

 ネギの援護に入ろうとしていた葵も、それを待ち構えていたエヴァも同時に口をポカンと開けて、思わずネギの奇行をそのまま見てしまう。

 

 ネギは、そのまま飛び込んで魔力を纏わせた杖を糸があるであろうに向かって振るい、葵がやった様に糸を絡め取った。そのまま気合いを入れるためか、そのまま叫びながら更に杖に魔力を込めるネギ。その狙いは――

 

 

「――っ! そうか、糸の魔力に干渉をっ!」

 

 

 ネギの魔力が杖から糸へと伝わり、それを彼はわざと暴発させてエヴァンジェリンの魔力とぶつけあった。

 結果――互いの魔力が相殺し、杖に絡みついていた糸ごと互いの魔力が弾け飛んだ。

 

 ズシャアッ! と、魔力の相殺の威力に吹き飛ばされて転がりながら地面に叩きつけられたネギだが、目の前で糸が散り散りになって舞い散るのを見るやいなやガッツポーズを取って「やった!!」と喜んでいる。

 

 

 

――よくもまぁあんな無茶に踏み切れたものだ……。

 

 

 

 そう呆れながら、葵はネギの傍に駆け寄る。 

 向こうでは、ネギと同じように吹き飛ばされたエヴァを守るように茶々丸が立ち塞がっている。

 もっとも、エヴァの方はあっさりと立ちあがっている所から見て、さしたるダメージを受けていない様だった。

 唯一のダメージがあるとすれば、糸を操っていたのだろう右手の指から少し血が滴り落ちている事くらいだ。

 ともあれ、相手はこれで武器を失った。そう判断した葵は再び彼女たちに向き合い、鉄扇を構える。――前に、

 

 

「えへへ。これでもう糸は使えませんよエヴァンジェリンさん! ……あれ? 篠崎さん、なんで頭を撫でてるんですか?」

 

 葵は微笑みながら、杖を構えて自慢げにエヴァ達に向かい合っているネギの頭にそっと手を乗せると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そのまま頭を握りつぶすように鷲掴みにした。

 

 

 

 

 

「葵さん、なんで指にすっごい力入れてるんですかぁたたたたたたたたたぁっ!!!??」

 

「ネギ先生、これが終わったら後で説教です。い・い・で・す・ね?」

 

 

 

―― 事前に相談なしに心臓に悪い事しないでください。いやマジで。何かあったら龍宮に殺されるんですよ俺……っ!?

 

 

 

 半ば理不尽などうしようもない事で内心冷や汗をダラダラと流しながら、葵は満面の笑顔のままネギの頭のミシミシィッと責め続ける。

 葵の言葉にカクカクと首――というか頭を縦に振って肯定の意を示すネギに葵は満足しながら、次の一手を考える。

 

 

 

 特に、向こうで不気味な笑みを浮かべている少女の顔を見れば、そうせざるを得ない。

 

 

 

 

 

―― ヤバイ、完全にスイッチが入っちゃったみたいだ……。

 

 

 

 

 今までのどこか遊び心のあったのとは違う圧倒的な威圧に気圧されるのが理解できた。なんとかそれに耐えながら、葵は自分達の持ち札とその切り時を計算し……鉄扇越しにエヴァンジェリン達を睨みつける。

 

 その時、葵の目に橋の向こうからこちらに向かって文字通り『爆走』してくる少女の姿が見えた。

 

 

 

『こらー!! 待ちなさーい!!!』

 

 

 

 見覚えのあるオコジョを肩に乗せて、特徴的なツインテールを左右に揺らしながらこちらに向かってくる少女。

 

 

 

―― 『神楽坂明日菜』もまた、こうして舞台に上がるのだった。

 

 

 

 

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