ユフィと共に、とりあえず近くの街……というか村、ゴンガガまで辿りついた。
近くの施設が気になって観光がてら探検したら、珍しい赤いマテリア――召喚マテリアを手に入れてユフィは大喜びだったし、ご飯は美味しいしで万々歳だ。
「しかし……完全に村だな。これじゃあ仕事もなさそうだ」
「あっても農作業くらい?」
「悪くはないけど土地借りなきゃいけないからな……」
ここに辿りつくまでの道のりで、おそらくユフィの信頼は勝ち得たと思う。
かなり無防備なこの娘に対して、完全に紳士を貫いた甲斐があったというものだ。
「とりあえず目的地を決めようと思う」
「そだね、無計画にうろうろしてもなんだし。……でも、どこに?」
「あー、最初はジュノンを目指そうと思ってたんだけど」
ジュノン。ここから海を挟んだ違う大陸にある、例の神羅とかいう会社の開発によって成長した都市。ある意味でこの訳分からんファンタジー世界の縮図と言える場所。
ここならば、近くにその神羅を拒絶している村だかがあるという噂だし、色々と多角的な情報が手に入るのではないかと思ったのだが……。
「さすがにそうなると、船とかの乗り物に頼らざるを得ない」
「うっ……」
そう、一番の問題。それはユフィが乗り物全般が駄目だという事だった。
短距離ならともかく長距離――しかもユフィが嫌っている神羅に頼らないと渡れないとなるとちょっと難しい。
ユフィ自身は、俺と出会う前は密航して向こう側に渡ってミッドガルを目指していたらしいが……。
「まぁ、気にする必要はない。プランAが駄目ならプランBだ」
「つまり?」
「コスタ・デル・ソルを目指そうと思う」
そのジュノンとの航路を結ぶ港があるリゾート都市、それがコスタ・デル・ソルだ。
神羅の影響下にあるには違いないが、ここならば人も多いし探せば仕事もあるだろうし、なによりユフィへの負担は少ない。――多少の我慢はしてもらうだろうが。
「おぉーーーー!!」
やはり女の子だ。リゾート地というのは特別な響きがあるだろう。
「いいねいいね! ちょっと離れた所にあるコレル山なんかいい感じにマテリア転がってそうだし! 賛成さんせーい!」
そんな事はなかった件について。
「まぁ、賛成というならよかった。とりあえず、店で道具を確保してまずは向こう側に行くための手段を考えよう」
ジュノンやミッドガルがある大陸程ではないとはいえ、コスタ・デル・ソルのある場所まではちょっとした河を渡る必要がある。
渡し船等があればいいんだが……。
というか、この世界はあれだ。各地を移動する手段がちょっと限られ過ぎだと思う。
車がなければ他の街や村を訪れるのにも一苦労。
一番有効なあの黄色い鳥――チョコボとやらも捕まえるのには特別な野菜とマテリアが必要らしい。
鳥というか動物ならば、普通に餌付けとかで飼いならせないだろうか。
なんかこの間適当に抜いた野菜がそれだったらしいし。
「そうだ、ユフィ。ここから離れた場所に、すごく腕の立つ武器職人がいるらしいから行ってみないか?」
「いいね! この間珍しい鉱石拾ってるし、見せれば結構いい武器作ってくれるんじゃない?」
この世界は意外と拾い物でも価値の高い物が多い。ここに来るまでに拾った、ちょっと綺麗な石が宝石の原石の欠片だったりするから驚きだ。
たまたま通りかかったチョコボ馬車の行商人に――ユフィの交渉術もあって結構高値で買い取ってもらったりして、今の所正直お金には困っていない。
(まぁ、仮にお金が足りなかったらどこかで稼いでリトライすればいいか)
とりあえずはご飯にしよう。
腕を引っ張るユフィに引き摺られながら、俺はそんなことを考えていた。
――なお、用意を整えて村を出てすぐ野生の青いチョコボを2匹発見。野菜だけでどっちも懐いてくれた件について。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
故郷、ウータイを飛び出してからはあらゆることに不自由する毎日だった。
もちろん金、そしてそこから派生する装備、食糧、水、寝床の問題。
たまに心が折れそうになるほどの劣悪な環境が、今では全て遠のいた。
「どうだ、ユフィ? 自分で騎手をすればそれほど酔わないと聞いたことがあるが……」
「あ、うん。このチョコボはそんなに揺れないから大丈夫。ゴンガガでもらった鞍もいい感じだし」
自分と並走するチョコボの背から、トールが自分に声をかけてくる。
この男と出会ったあの日から、お腹を空かせる事はなくなった。
寝る場所に困る事もなくなった。
危険な目に合う事はやはりあったが、それでもその時に、頼れる人間が傍にいる。
「にしても、河チョコボなんてよく見つけたね。野生ではまず見られないって聞いてたけど」
「飼えなくなって誰かが手放したんだろう。まぁ、おかげで河を超えられるんだ。助かった」
トールのチョコボの方には、簡単な荷車が付いている。
ちょっと前、森の中で行商人を襲っていたモンスター――グランドホーンを倒した際に、その行商人からいただいた物だ。
荷物自体がほとんど駄目になったため、一度ゴンガガまで届けた後に『好きにしてくれ』と言われていたので頂いた物だ。おかげで運搬が非常に楽になった。――特に、溜めこんだマテリアが。
「とりあえず、河の浅い所を渡ったらそのままコレルを目指そう。一度ゴールドソーサーっていう所を見てみたい」
基本的に欲のない人間だけど、所々に遊び人の匂いがするのがトールという男だ。
ギャンブルとか女とか、そういう大人の遊び人ではない。
こう、なんというか――子供っぽい所があるのだ。
「いろいろ遊ぶ所一杯あるらしいね?」
「あぁ。正直、楽しみなんだ」
「30000ギルあれば、グループで使える入り放題のパスとかあるらしいよ」
「30000か。……買えるには買えるけど、さすがに悩むな」
こういう所だ。
悩む等と言っているものの、恐らく内心では買う事を決めているのだろう。
基本いつも不機嫌にも見える無表情だが、口数が多い時は大抵なにか楽しみにしている時だ。
村を見つけた時や、森などで何か面白そうな施設を見つけた時などは
「いらない物も、コレルの村である程度売って金にできる……とは思うんだが……」
「なんか、ゴールドソーサーの入り口って言う割には寂れてるって話だったっけ。どんなもんなんだろうね?」
「まぁ……道中で金になりそうな物を拾っていけばいいだろう」
トールがそう言うのと同時に、チョコボが何かに反応して速度を落とす。トールの方もだ。
前方で土煙りが上がり、やかましい喧騒が耳に入る。それに獣の咆哮も。
「誰か襲われているのか……」
目の前で誰かが傷ついている時、トールは躊躇わない。
迷わずチョコボの手綱を操り、土煙りの上る方へと真っ直ぐに走らせる。
「あ、ちょっとトール! トールってば!」
こうなると、この男は絶対に人の話を聞かないのだ。
仕方なく、自分も同じように手綱を操り後を追う。
「しょうがないなーーっ!」
コスタ・デル・ソルに到着してからどうなるかは分からないが、今は自分がこの男の相棒なのだ。
だから、力になる。
――マテリア集まるし、ギル集まるし
トールことトオル:
またこのチョコボ勝手に動いてこなくそ……
↓
え、助けたお礼に10万ギル? いいんすか?
コソ泥ことユフィ:
まーた人助けばっかして……