ゴールドソーサーの入り口、北コレル村。
かつては炭鉱としてそれなりに栄えていた村は、見るも無残な姿になっていた。
「……ひどいね、トール」
「……あぁ」
豊富な魔晄エネルギーが取れると進められ、結果魔晄炉の建設に着手し、そして全てを奪われた人間達が逃げ込んだ土地。
まともな建物はほとんどなく、気力を失った村人達が日銭を稼ぐための店を開いている……ただ、それだけの土地だった。
「神羅……くそっ」
一歩間違えれば、ウータイもこうなっていたのかもしれなかった。
ずっと、自分の故郷は誇りを失ったのだと――そう思っていた。だが、それは生温い考えだった。
ギリギリの所で、ウータイは踏みとどまったのだ。
今、目の前に広がる光景こそ、本当に誇りを失った人間の姿なのだ。
思わず、顔が歪む。地面に唾でも吐き捨てたい気分だ。
「ユフィ」
そして、そんな時に限ってアタシの肩にポンッと手を乗せてくる馬鹿がいる。
アタシの――今の相棒だ。
「ちょっとだけ――ほんの少しの間だけ、ここで足踏みしていいか?」
そして、そんな良く分からない事を言いだすのだ。
怒りとも、憐憫とも取れる目で、男は適当に辺りを見回して、そして一人の老婆に向けてこう言うのだ。
「すまない。この辺りで商売をしたいんだが、使える土地はあるか?」
これが、大体半年前の話だ。
アタシとトールも、まだゴールドソーサーに足を踏み入れていない。
今のアタシ達は、
――牧場を開いていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「トール、お前さんがくれた種の野菜は今収穫中だ……その、本当に?」
「あぁ、買い取る。収穫作業が終わった頃にこちらから迎えのチョコボ馬車を出す。それまでに運びやすいようにまとめてくれてるとありがたい」
「わ、分かった」
動くのが――いや、息をするのすら億劫だと言わんばかりだったコレル村の生き残りは、猜疑の目でこちらの様子をうかがいながらも少しずつ働き始めていた。
「いやー、これは……予想以上に儲かってるねぇトール!」
ユフィは事務室でギルの紙幣を数えながら上機嫌に笑っている。このギルを持って近くの街などでまたマテリアを買っていくのだろう。
「あぁ、拾ったマテリアの中に『チョコボよせ』が合ったのは運が良かった」
コレルの惨状を見て、ユフィの様子が変なのは一目瞭然だった。
ユフィの故郷も神羅とイザコザがあったという話だし、当然だろう。
ここまでユフィには滅茶苦茶世話になっている。この世界を案内してもらっている事もそうだし、なにより一人ぼっちの孤独を癒してもらっている。
気晴らし程度かもしれないが、出来るならなにかしたいと強く思った時、ふと思ったのが移動手段の確保だった。
ここに来るまでに散々世話になったチョコボ。来る途中にも何匹か懐いて来て、荷車引いているチョコボが疲れた時の予備として連れて来ていたのだが、そいつらを育てて増やす事が出来れば売ることが――つまりこの地に商売の種が増えるんじゃないだろうかと。
チョコボに詳しい親切な人間が立ち寄ってくれたのが大きかった。
色々と教えてくれて、実際にチョコボを育てる野菜の種までくれた。
資材なんかは、そこらに落ちている物を好きに使えと言われたのでそれらを使用。
とりあえず柵だけでも作ろうとしたら、以前助けた行商人――ゴールドソーサーへの補給の品を扱っていたらしい――がここを通りかかってくれて、人員を貸してくれただけではなく資材の洗浄や塗装のための装置までゴールドソーサーから持ってきてくれた。本当にありがたかった。
他にもチョコボの群れや生息地の移動、増加などが運良く作用し――今、野生のチョコボの調教等で数を増やしたチョコボ牧場が稼働している。
すでに商人等からの依頼も受けている。主に荷馬車用としてだ。
「魔晄炉の影響がここにはほとんどないっていうのも良かった。おかげでチョコボも生き生きと育っている」
「元コレル村の人の何人かがここで働いてくれたのもよかったねぇ。おかげでアタシはギルの方に専念できる」
「あぁ……そうだな」
正直、結構なギルをここで消費したが、少しずつこの北コレルにギルの流れが定着しつつある。
さすがに観光に使えるレベルとまでは行かないが、最終的にはそれも見据えての運用をする必要がある。
「ユフィ、地元の店は?」
「お酒や飲食の方は少しずつ拡大。だけど、マテリアとか武器、防具に関しての店は……まぁ……」
お察しレベルと言うことだろう、だがまぁ当然だ。そもそも、そっちの方は――
「マテリア商人とのパイプは持ってて悪くないだろう? 大量にとはさすがにいかないが、安くマテリアが手に入る」
「うん! ここらのモンスター狩りでレア物も育ってるし、もうちょっとしたらもっと数も揃えられるよ!」
ユフィの目的であるマテリアもかなりの量になっている。
おかげで、立ち寄った商人からもっと大きな荷馬車を購入する事になった。
チョコボ二匹で引くタイプの奴のため、ユフィ自身が御者をやらないと酔うという弱点が出来たが……。
「コレル村の人間も、仕事を覚えている人間は多い。その人に任せられるようになったら、俺達もここを動こう」
「どっちにせよ、ゴールドソーサーには行かなきゃいけないしね」
そう、商売は始めたばかりの時、地元の商人の勧めでゴールドソーサーの人間に治める金の話をするべきだとゴールドソーサーに行こうとしたのだが、園長の使いという人間が逆にこちらに来た。
どうやら寂れた地でわざわざ商売を始めるというのを面白いと思ってくれたらしく、最初の半年間は様子を見ると言う事だった。
「多分、失敗するだろうなぁって思われてたんだろうね」
「あぁ……多分な」
まだ始まったばかりで手探りの状況なのだ。現に問題も起こっている。
最近、数匹とはいえ黒いチョコボが産まれてくるのだ。卵から孵して驚いた。
青とか緑はユフィから聞いて知っていたが、黒というのは予想外だ。
ユフィも知らないと、首を横に振っていた。病気でなければいいんだが……。
「まぁ、足元見られない様に頑張ってくるさ。ユフィも、できるだけ助けてくれ」
「うん。……まぁ、足引っ張らない様に頑張る」
まずは直接出向いて今の状況の説明、その後、多分向こうの人がこっちに来て実態の調査と言った流れになるだろう。
さて、まがりなりにも神羅の施設であるゴールドソーサーの園長……一筋縄ではいかないだろうが……一勝負と行こうか。
ウチの牧場が、プロチョコボレーサー御用達の超一流チョコボ牧場としてあれよあれよと業務拡張していく事になった件について。
そしてほぼ無税で済んだ件について。
というか、今まで助けた商人の人達が集まって独立商業区域っぽいなにかに成りつつある件について。
まって、おねがいだからまって。
ラッキーマンにシリアスは似合わない