ゴールドソーサー。
数々のアトラクションやイベントが用意されている、文字通り世界最大のアミューズメント施設。
その中でもっとも目玉とされるのがチョコボレースだ。チョコボを愛する者が、それぞれが育てた
同時に、観客がその一位と二位を推理し、独自通貨のGPをかける熱いギャンブルの場でもあった。
「トール! また当たった! 当たったよ! ウチの牧場のワン・ツーフィニッシュ!」
「あぁ、そうだな」
そこで今、俺とユフィは全力で遊びまくっていた。
――買ってよかった、ゴールドチケット!
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「いやー勝った勝った! トール、せっかくだしご飯もここで食べて行こうよ!」
「あぁ、そのつもりだ」
8割勝利、しかもそのほとんどがウチで育ったチョコボというのが痛快でたまらないのだろう。
上機嫌なユフィを腕にぶら下げたまま、俺たちは園内のレストランへと向かっている。
二月前、園長ディオとの会談からウチの牧場には客が大勢来るようになった。
チョコボレーサーを目指す者からさらに上を目指すレーサー、上等なチョコボが欲しい商人と多種多様な客の要望に全力で答えるうちに、気が付いたら北コレルは徐々に復興してきた。
そろそろ俺達も出発しようと色々準備は終わらせた。
商人達の中で、この町――もう村と言うには大きくなったこの場所に根を張りだした商人と、かつてのコレル村の代表者を選出して、俺とユフィがいなくても回る様にしておいた。
まぁ、それでも俺は代表者という立場を退く訳にはいかないと言うことで、この地には俺とユフィが住まう家が建てられている。
なんで一緒に住む形になっているのか。
まぁ、ユフィが何も言わなかったし別にいいか。
ともあれ、何かあった時はここに戻る事になっている。
かつ、定期的に手紙を出してそれを待たなければならないので、これから先はどこかの街にいてもしばらくは足止めされる事になる。
「ねぇ、トール」
「ん?」
「アタシ達の生活、この数カ月で随分と変わっちゃったね」
「……そうだな」
本当に、全部変わった。
ちょっと前まで一人ぼっちで訳のわからない薬を啜ってどうにか生き延びていた俺は、こうして一つの町の代表者となっている。
「アタシね、トールはここで旅を止めるんじゃないかなって思ってたんだ」
「あぁ……。考えなかったと言えば嘘になる」
正直、コレルに留まる事はかなり本気で考えた。
「ユフィは俺の恩人だ。そんなお前の目的を放り投げて一人だけ勝手に離脱なんて、俺には出来ん」
とはいえ、ユフィにはウータイの事があるし、ここまで一緒にやってきた仲間だ。
出来る事ならば、俺もユフィの故郷であるウータイには顔を出したいし、力も貸してやりたい。
だから――
「最後まで付き合うさ。ウータイが、また強い国になるまでさ」
あるいは、ユフィが満足するまで。
マテリアもそうだが、今の自分なら経済面でもひょっとしたら力になれるかもしれない。
単純な金ではなく、もっと大きな流れに関してだ。
「……ん」
そもそも、腕っ節が立つとはいえ女の子一人を放りだせるはずがない。
俺がそう言うと少し安心したのか、ユフィは組んだ腕に力を込めて、
「トール、今日は何食べる? 出発前の景気付けなんだから好きなものパーっと食べようよ!」
と、いつもの笑顔でそう言うのだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
神羅に全てを奪われた村。コレル村。
自分の隣に立つ男は、違う形でコレルを見事に復興させた。
ここまで彼が手を貸してきた商人がまるで示し合わせたようにこの地に集まり、コレルに――いや、トールに力を貸してくれた。
牧場で育ったチョコボを実際に買っていって、そのままコレルにギルを落として行くようになったのもありがたかったし、その上村の立て直しを格安で請け負ってくれた。
その過程で人が集まり、少しずつコレル村の再建が始まった。
今はチョコボ牧場とその周辺の店舗が主となって、少しずつ村の住居がバラックからちゃんとした家へと変わりつつある。
牧場の方ではなく、ゴールドソーサーへ向かう客相手の店を始めようとする人も出ているし、このままいけば近々本当にここが町になる日も近いだろう。
「いやぁ、遊んだ遊んだ!」
もう2、3日で自分達は一度この地を立つ。
明日からはコレル山の道中の整備を行い、そのまま自分達は当初の目的地――コスタ・デル・ソルへと出発する。
「明日からは忙しくなるね」
「そうだな。モンスターはそこまで強いのはいないだろうが、問題は魔晄炉の探索だ。無人だと言う話だし、近づけるところまで近づいてみたいが……」
「あー、そうだねー」
「……マテリアがあればいいが」
「どーだろ? あのディオってオッサンが珍しいのは持ってったみたいな事言ってたし……」
もっとも、今そのマテリアは自分達の手の中にある。
先日、トールが自分が育てたチョコボでレーサーとして出場した際にチョコボレースの帝王『トウホウフハイ』との実質一騎打ちというハイレベルなレース展開を見せた事――そして、その数回あった一騎打ちの中で一度、帝王を撃ち破った事。
そして園長ディオお気に入りの闘技場アトラクション――バトルスクウェアで並いる強敵を全て打ち破った事から、トールは園長の友人であるのと同時に、ゴールドソーサーの有名人となった。
ディオの珍しいマテリアはその際、園内を盛り上げた礼として頂いた物である。
本当にトール様様である。
「どっちかっていうとしばらくして、またゴールドソーサーに戻った時の方が面白い物もらえそうだと思うなぁ。ねぇ、『雷神』様?」
「茶化すなよユフィ。俺が名乗ってるわけじゃないぞ」
「分かってる分かってる」
そう、トールは今では有名人だ。
バトルスクウェアでの闘いっぷり、そして『トウホウフハイ』を駆るジョーと人気を二分するチョコボレーサーとして。
特にバトルスクウェアは、トール自身が『練習にちょうどいい』と良く戦っていたため、その戦いぶりは大勢が目にする事に。
その名声に目を付けた園長ディオが、客寄せのために彼に付けた二つ名が『雷神』だった。
ちょうどトールが『いかづち』マテリアと、偶然手に入れた召喚マテリア『ラムゥ』を育成も兼ねて多用していたためだろうが……。
おかげでどちらか片方は常にセットする羽目になったと、この間愚痴っていたのを思い出す。
「とりあえずは山のトロッコレールの修繕作業の護衛だな……。それを見届けてから魔晄炉調べて山越えか」
「うん。……アタシ達がいない間、コレルは大丈夫かな?」
「ディオが出来るだけ便宜を図ってくれるらしいし、念のために護衛も雇っている。そもそも、ここで何かあればゴールドソーサーへの影響だってデカくなるんだ。そうそう神羅も下手な事は出来ないだろう」
そして、意図してなのかあるいはそうではないのか。
トールは表側での――つまりは会社としての神羅の対抗馬をまとめつつある。
商人勢は結束し、一応は神羅の元に居ながら着実に力を蓄えている。
(トール、アンタ……ひょっとして、ひょっとしてさ)
ウータイが強くなる日まで自分に付き合うと、トールはそう言ってくれた。
それはつまり――戦うつもりなのだろうか。
神羅と――世界を支配するあの大企業と。
自分との、ささやかな繋がりだけで。
もし、もしそうなのならば――きっとこの男はやはり大馬鹿なのだろう。
とても強くて、とても頼りになって、とっても優しい――大馬鹿野郎なのだ。
トオルことトール:いやぁ、なんか皆が色々回してくれるから楽でいいわぁ・・・