ゴールドソーサーで豪遊し、北コレルの村の人が少し前に開いた酒場でユフィと潰れるまで飲んで――そして俺たちもコレルを出た。
コレル山の魔晄炉跡で天然のマテリアを回収し、炭鉱時代のトロッコの架線を利用した鉄道の設置の手伝い。
まぁ、ようするにコレル山の危険モンスターを俺とユフィで排除しまくった。
そうしてようやく山を超えよう――と、思ったのだがここで商人から面白い話を耳にした。
ここから少し離れた岩山群の中に、この星そのものについての学問――星命学というものが発達している『コスモ・キャニオン』という集落があると言う話だ。
正直、興味がある。
自分がこのファンタジー世界に来た理由が分かるかもしれないし、そもそもこれから住むことになるだろうこの星の事を知っておくのは決して悪い事じゃない。
俺は最初、ユフィに悪いからコスタ・デル・ソルを優先して、もしユフィがジュノンに行くならその手配をしてからと思っていたのだが、ユフィが一緒に行きたいと言ってくれたのだ。
良い子だよ。やっぱこの子良い子だよ。
「トール、大丈夫? 酔ってない?」
「あぁ、問題ない。ユフィこそ大丈夫か?」
「うん、アタシは大丈夫。トールの言うとおり、自分で運転すると違うねー♪」
今、俺はゴールドソーサーの園長――ディオからもらったバギーを運転するユフィのハンドル裁きを横目で眺めている。
ゴンガガの辺りから世話になったチョコボ達は、自分達の専用チョコボとして今は牧場に預けている。
あの環境ならのびのびと育つだろうし、従業員も大事にしてくれるだろう。
「トール、このままだと日が暮れちゃいそうだし、ちょっと飛ばすよ?」
「あぁ、ユフィに任せる」
ユフィも、自分で運転する事で酔わなくなったために余裕が出てきたのか、ドライブをかなり楽しんでいるようだ。
「よぉぉっし! それじゃあ飛ばすよ!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「すげぇ場所だな、ここ」
辿りついたコスモキャニオンは、なんというか凄まじい雰囲気がする場所だった。
渓谷に囲まれた小さな村。
ゴールドソーサーなんかには、例の魔晄エネルギーなんかのせいで俺がいた所と同じような機械類がたくさんあったが、ここはそういったものが一切ない。
唯一それっぽいのは、村の中でもひときわ高い所にある天文台のような施設くらいだ。
「すごいっていうか……田舎くさい? ウータイも一応田舎っちゃ田舎だけどさ……」
正直俺は結構好きな雰囲気の場所なのでちょっと気に入っているのだが、ユフィにとっては退屈な所のようだ。
まぁ、マテリアもなさそうだしなぁ……。
なんだかんだでものすごい量のマテリアを手に入れているはずなんだが、やはりユフィはまだ満足しないようだ。
(ウータイを強い国にする。……つまりは戦争が出来るくらい欲しいってことだよなぁ)
話を聞く限り、神羅という連中は中々にヤバい連中だ。
私兵部隊を使って好き勝手やるほどの奴らならば、ぶっちゃけまた話に聞くウータイの時の様なでかい戦を起こしかねないとは思う。
そして、いつか酷い混乱を起こすだろう事も。
(……本音をいうなら、コレルで稼ぎながらゴールドソーサーで遊んで暮らしたかったけど……)
未だ見ぬコスタ・デル・ソルなんかは金持ってるだけでいい女が寄ってくるって聞いてるし、そこに家を買うのも悪くはない。が――
「力を付けるのは当然として、敵も知らなきゃいけねぇしなぁ……」
ユフィはなんだかんだで神羅と戦う事になるだろうし、それを知っていて何もせずに遊んで暮らすなんて無理だ。出来ん。この世界来てから一番世話になってるのに。
「神羅の力は全て魔晄エネルギーから産まれている。よく分からないけど――っていうか良く分からないからか、そこを知っておくべきだろう」
とりあえず、星命学について色々と尋ねてみよう。
2、3人ほど聞きこめば多分教えてくれるだろ。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
村に入ってすぐの所にある大きな焚火の前に腰を下ろして、アタシはずっと火を見つめていた。
トールはいない。ここの長老――ブーゲンハーゲンとかいうジーさんと気が合ったようで、今は二人で色々話しているらしい。
「ぶぅ……」
暇だ。退屈だ。
こうして再び旅を始めると、あのコレルでの生活が妙に恋しくなる。
ただ単に生活が楽だったから――と言う訳ではない。
ある意味一番忙しい日々だったかもしれない。
ただ、トールと二人で0から村を――それもあの神羅が滅ぼした村を復興させるために働いた毎日は、妙に充実した日々だった。
(トール……どこまでやるつもりなんだろう?)
トールは、神羅と戦う日が来ると確信しているようだ。
正確には、神羅がデカい揉め事を起こす日、か。
だからコレルを拠点に金を集め、人を集めている。
正直な話、まだ実感がない。
自分はまた誇り高いウータイをこの目で見たかった。
いつもぐーたらしてる親父ではなく、戦士としての親父をもう一度見たかった。
だけど、そうだ……。
「戦争、か……」
これから先、神羅との激しい戦いが避けられないというのなら――自分はどう動けばいいんだろうか?
「ユフィ」
じっと揺れる炎を見つめていたら、声をかけられた。
聞き慣れた声だ、振り向かなくても分かる。トールだ。
「てっきり宿か酒場にいると思ったらここにいたのか」
「……一人で飲んだってつまんないもん」
自分でも拗ねたような口調になってしまったと思った。
トールが「悪かったよ」と後ろで苦笑するのが分かる。
「ブーゲンハーゲンの爺さんから美味い酒をもらって来たんだ。宿に戻って付き合ってくれないか?」
座る訳でもなく、隣に立ったままそう言う。
「一人で酒飲んでも……つまんないしね」
自分がさっき言った言葉をまんま返して。
これだ。トールはたまに意地悪くなる時がある。
「――で、どう?」
「……飲む」