rikkaのメモ帳(短編・走り書き集)   作:rikka

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FF7⑧

「……とうとうこんなレベルになったか」

 

 この世界に来て、ユフィと出会って外に出てから、金に関して気にする事は一切なくなった。

 始めの頃は確かに不安だったが、すぐにモンスターに悩まされている商人と出会ったのを皮切りに、次から次へとお金や食糧、更には運搬・移動に使えるチョコボがバンバン手に入った。

 

 それからコレルでのチョコボ牧場の運営が始まり、クレジットカードと自分の口座を押し付けられ、更には多数の商人のまとめ役のような扱いになった。

 

 コスモキャニオンでこの星の知識を得たあと、一度コレルに戻ったらPHSを押し付けられ、たまに商人から相談や許可を求められる事が非常に増えた。

 

 で、今は――

 

「トール、こっちこっち! すっごく広いお風呂だよ! しかもジャグジー付き!!」

 

 この世界でゴールドソーサーと並ぶリゾート。コスタ・デル・ソル。

 そんな街の外れにて、俺はついにプライベートビーチ付きの別荘を購入する事になった。

 

「いやぁ、雷神様々だよねぇ。トールを見た瞬間、別荘売りたがってる連中が一斉に群がってくるんだもん」

「……そうだったな」

 

 あぁ、そうだ。

 普通にこの街に来て、とりあえず今日の宿を確保しようとしたら不動産屋の連中に囲まれて……。それも女ばっか。

 どいつもコイツも俺に別荘を買いませんか別荘を買いませんかって鬱陶しくて、適当に『じゃあそこの貴女から』ってとりあえず一番好みだった子に物件案内してもらった。

 

 その結果、予想以上にいい物件を見つけてしまったのだ。

 

 街の外れではあるが静かに泳げるビーチがあって、風呂もベッドもでかくて質が良く、プールも付いていて、更に値段も十分手を出していい範囲。

 その後も一応他の所を見せてもらったが、ここいいなっと思って……あぁそうだ、買ってしまったんだ。

 

「いやぁ、これホントいいね! ビーチは無理だけどこういう家、コレルにも作ろうよトール!」

 

 ……まぁ、ユフィが喜んでいるからいいや。

 

「ユフィ、泳がなくていいのか?」

 

 ただ、最初は海で泳ぐ事を楽しみにしていたユフィが水着を買いに行かずに部屋でダベッているのが少々不可解だ。あんなに期待していたのに。

 

「ん? あぁ、トールがこの家買ったって情報が流れたのか、最近出歯亀してる奴らいるからさ」

 

 マジでか。全然気付かんかった。

 

「でも、それで泳げないままってのも癪に障るなぁ。プールならいいか」

 

 俺のベッドの上でなぜかバタバタしているユフィは、ゴロンと仰向けになる。そして近くの椅子に皺っていた俺の顔を下から覗きこみ――

 

「水着、買いに行こ!」

「……俺もか?」

「とーぜん! ここアンタの別荘じゃん! 大丈夫大丈夫! 雷神のイメージに合う奴、ちゃーんとこのユフィちゃんが選んで上げるからさ!」

 

 お前が選ぶんかい。

 まぁ、前に買った水着は二人ともかなり適当に選んだからな……。

 

「で、俺にはお前の水着を選べと?」

「とーぜん!」

 

 先ほどと同じく、やけに自信満々に胸を張るユフィ。

 少しだけイラッとしたので額に指を押し当て『ググ~~ッ』と押し込んでやるが、結局柔らかいマットレスにコイツの頭が沈むだけで、コイツは楽しそうに笑ったまま、俺の指を押し返そうと頭と首を力を入れてやがる。

 

 こんにゃろう。

 

「まま、いーじゃんいーじゃん。水着あればお風呂も一緒に入れるし」

「……入るつもりか?」

 

 ちょっとその言葉にびっくりだぞ俺は。

 いや、構わんっていうか嬉しい所もあるが……。

 

「だって……あんな広い風呂。一人で入るの寂しいじゃん」

「…………あぁ、なるほど」

 

 確かに。

 あの中で一人ポツーンと湯に使ってたら、それはそれで寂しいというか……怖いな。

 あの不動産屋の娘に頼んで、一人用の普通の浴室も増設してもらうか。

 

「ん、そうだな。とりあえず飯も食いたいし、ちょっと外に出ないか?」

「賛成!」

 

 そう元気よく言うとユフィは、マットレスのバネの反動を利用して勢いよく飛びあがり、ベッドの脇に立って見せる!

 

「せっかくなんだし、服とかも見て行こうよ! アタシもトールもここ最近はずっと同じ服ばっかりだったし、たまにお洒落しないともったいないよ!」

「もったいない?」

「可愛い女の子と格好いい男は、たまには着飾らないと駄目ってこと!」

 

 ほう、言うじゃないか。

 いや、俺も一緒に褒められているから悪い気はしないし、ユフィが可愛い女の子ってのも否定はしない。

 

 金やマテリアが絡んだの時の交渉の悪辣っぷりに目をつぶれば、だけど。

 

「ま、しばらくはゆっくりしようよトール。ここ最近、商売やら勉強やら魔物退治やらでアタシもトールも働き詰めだったんだからさ!」

 

 …………。

 

 今、ふとこんな考えがよぎったのだが。

 ひょっとして、ユフィは俺に気を使ってくれているのだろうか?

 外で泳ぎたくないと言っていたのも、外の出歯亀にわざわざ俺が関わらない様にするためだったり?

 

「ユフィ」

「ん?」

「……せっかくコスタ・デル・ソルに来たんだし、ちょっといいレストランでパーっと派手にやるか」

 

 周りの目が億劫なのは今更だが、こういうリゾート地なら個室の用意がある店なんて珍しくもないだろう。

 せっかくだし、ユフィと二人で楽しもう。

 

「……そだね! せっかくだし思いっきり楽しもうよ!」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 そんな感じでコスタ・デル・ソルでの生活が続いている。

 と言っても遊んでいるばっかりではない。

 朝起きて、俺かユフィか当番の人間が用意した朝飯食べた後は仕事だ。

 ファックスで送られたチョコボ牧場や新コレル村関連の報告や陳情に目を通して、まぁ大体は許可を通す。

 必要ならばゴールドソーサーのディオにも電話をかけて簡単な打ち合わせ。

 それらが終わると大体昼過ぎなので、ランチがてらユフィと外に食べに出て、そのまま買い物したりブラついたり、たまに海で泳いだり浜辺で日光浴したりして晩御飯食べに行って、そのまま飲みに行くのが日課だ。

 

 今みたいに、最近できた飲み友達と席を並べて飲むのが。

 

「――ではコレル山の開発を進めていたのは物流の活性化を図るためだと?」

「あぁ。ゴールドソーサー周りはいい土地だというのに、余りにもったいない場所が多すぎる」

「なるほど、そしてその土地を有効に使うには、人的リソースが足りていないと……」

「素人考えだが……」

「いや、やはり君の考えは素晴らしい。理に適っている」

 

 ルーファウスという、どこぞの大きな会社の御曹司だ。よく酒場で目にしていたから、ちょっと声をかけてみたら意外な程に馬が合って、夜になる度にこうして飲んでいる。

 

 俺の隣にはユフィが座っていて、体面にはルーファウスの護衛役というスーツの女性が座ってユフィと談笑している。イリーナという美人さんだ。

 冷たい美人かと思いきや意外と愉快な所もあって、ユフィとは意外といい関係を築けているようだ。

 二人ともそれぞれ好みの酒が入ったグラス片手に思いっきり会話を楽しんでいる。

 

「親父も、君くらいに話の面白い人間だったら良かったのに」

「……親父さんとは、相変わらず?」

「あぁ。まぁ、放蕩息子だからな。仕方ないさ」

 

 その御曹司がなぜ、このリゾート地に留まっているかと言うと、どうやら社長である父親とはソリが合わず、栄転という名目でここに左遷させられているという話だ。

 もったいない。

 

「放蕩息子ね、俺には優秀な人間に見えるんだがな……」

 

 程良く伸ばした金髪を後ろで軽く束ねたルーファウスは控えめに行ってイケメンだし、話術にも長けている。

 強いて言うなら、自信過剰に見える所が気にかかるけど……。

 

「ほう。かの雷神にそう言われるなら、多少は箔が付くというものだ」

「よせ。園長……ディオが勝手に付けた名前だ」

「あそこの園長は私も知っている。少々変わり者ではあるが、決して無能ではない。だから実際、君を見出したのだろうさ」

「そうかね?」

「あぁ、そうだろうさ」

 

 こうしてたまにからかう時には『その名前』を出すが、基本――というか根本的な所で雷神扱いしないのもいい所だ。

 

「ま、いずれ向こうに戻る時もあるんだろうが……その時はどうせ厄介な事になっている時だろう」

「つまり、会社が親父さんの手に負えなくなった時?」

「あるいは、親父の身に何かあった時か……」

 

 

――まぁ、それまではのんびりさせてもらうさ。

 

 

 ルーファウスはそう言うと手元のグラスの中身を飲み干し、氷の音を立てる。

 ……やっぱり、親父の話になると少しペース早くなるな。

 

「少しいいか?」

 

 とりあえず、もはや顔なじみになったマスターをちょっと呼んで、良く飲んでるボトルとロックアイスのセットを頼む。

 多分、今日は長い酒になりそうだ。

 

「ルーファウス、グラスを」

「いいのか?」

「俺もちょうど飲みたかった」

 

 まぁ、最近はほぼ毎晩飲んでるけど。

 

 それを当然知っている目の前のイケメンは、どこか挑発的にニヤリと笑うと俺に向けてグラスを傾ける。

 

「ほう、それなら店を閉めるまで付き合ってもらおうか」

 

 はいはい付き合いますって。

 ついでに自分のグラスにも氷を入れて酒を注ぎ、そして掲げる。

 

「それじゃあ改めて……そうだな、『放蕩息子』に」

「ならば俺は『雷神』に」

 

 

「「乾杯」」

 

 




※現在ここまで

ふっと書きたくなったので更新~
ワトソンも書かなあかんのでクリスマス過ぎに本気出そう……
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