rikkaのメモ帳(短編・走り書き集)   作:rikka

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一方通行if―②

 LEVEL5。

 それは、この学園都市の最大の特色ともいえる能力者。その頂点に君臨する七人の事である。

 そしてその七人は序列が付けられている。一位、二位、三位というように。

 これらは能力研究から得られる利益の高さを優先してランク付けされているため、単純に能力の強弱を示すものではないがそう捉える者は少なくない。

 

 一位が最強で七位が最弱、というようにだ。

 

 その中で、元は一位(最強)だった存在が、突如として七位(最弱)に認定されたという話が流れる訳だ。それを聞いて、LEVEL5の中でも向上心の強い者、LEVEL5を目指す者、あるいはLEVEL5を妬む者はその男を大なり小なり見下した。

 

 能力に胡坐(あぐら)をかいて、研磨を怠った愚者だと。

 

 一方、本当の意味でLEVEL5を――あるいは裏を知っている人間は、含む物はともかく揃ってこう思っていた。

 

 

 

――よく踏みとどまれたものだ、と

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

一方通行(アクセラレータ)……」

「なんだァ……駒場?」

 

 窓ガラスが完全に割れて外の風が入り込む、まるで廃墟のようなビルの一室に二人の男がいた。

 一人は白髪に赤眼という特徴的すぎる少年。

 もう一人は長身で良くも悪くも年齢よりはるかに年上に見える、少年以上に無表情な男だ。

 

「いくらなんでも遅くないか?」

「…………だよなァ」

 

 吹きっ晒しの窓から、もうすぐ沈もうとしている太陽が見える。

 つまりは、完全下校時刻は近づいている。

 学生たちは、本来ならば各々が登録されている寮に帰らなくてはならない。

 

 とある事情(・・・・・)で、実質スキルアウトと呼ばれる学生の一部を管理下に置いている一方通行(アクセラレータ)は基本的には彼らを帰すか、少なくとも居場所を把握していなくてはならない。

 大体はそうなのだが、今日も後者だ。

 もっとも、行き場がない故に適当な所で過ごすのではなく、今日は一日を通して作業をしている最中なのだが。

 

「蓄電池は十分に充電済み。黒子の奴が紹介してくれた発電系の能力者数名と、技術者が即席で調整してくれた発電装置で夜の光源やその他のエネルギーは十分に確保できた……ンだけどなァ……」

「作業監視役の警備員(アンチスキル)がまだ来ないとはな……」

 

 何かと一方通行(アクセラレータ)の世話を焼きたがる警備員(アンチスキル)が、ちょうどいいのが一人いると紹介してくれたのだが、約束の時間をとうに過ぎていると言うのにこの第十学区に来ないのだ。

 

(くそがァ……ここら辺根城にしている面倒な連中になるだけ穏便に退場してもらって、6月いっぱいまでの活動計画書と関連部署や施設との誓約書やら契約書まとめてこちとら最近寝不足だっつーのに堂々と遅刻たァ……やってくれるじゃねェかよォ、黄泉川ァ……アァン?!)

 

 自分が通っている(・・・・・)学校の教師でもあるおせっかい女の顔を思い出し、思わず手に力が入る

 

「おい、キレるなよ一方通行(アクセラレータ)

「ア?」

「そうならないために、周りから罵詈雑言を浴びても足掻いて来たのがお前だろう」

「……分かってる、駒場」

 

 とはいえ、こうも滅茶苦茶遅刻されたのでは警備員とはいえ文句の一つ二つ言っても許されるだろうと一方通行(アクセラレータ)は考えていた。

 たかが学生、たかが無能力者の集まりとあまり舐められるのは今後の活動にもよろしくない。

 他に個人的な狙いがあるとはいえ、そういう軋轢を軽減するために動いている一方通行(アクセラレータ)としては面白くないのは確かだった。

 

「あぁー……この近くで見廻りに出てる奴は?」

 

 スキルアウトがどんどん(すさ)んでいくのは、人とのつながりが希薄になっていくからだと一方通行(アクセラレータ)は考えていた。

 

 そして、その考えの元にすぐさま行動・対応してみせたのは一方通行(アクセラレータ)本人と、彼と行動を共にする事を選んだ様々なタイプの学生達だった。

 

 周囲からの評判をある程度高めながら、彼らの対人関係を微量でも広げるために始めたのが、風紀委員や警備員との協力体制と治安強化のための街の見廻りだ。

 

 そう大したことではない。

 少々不審な点や落し物を発見した際の速やかな通報、報告。

 

 発生しているトラブルによっては、対応できる技術や能力を持っている人間――場合によっては一方通行(アクセラレータ)自身を――派遣する事もある。

 

 鍵の紛失や迷子、外からの見学者のトラブル対処等といった些細な物がほとんどだが、一方通行(アクセラレータ)と彼が率いるスキルアウトはそれなりに成果を挙げていた。

 

「……ここから近いのだと……例の『置き去り』(チャイルド・エラー)の保護施設の様子見も兼ねて半蔵と結標、浜面が行っているハズだ」

「あいつらかァ」

 

 初めて一方通行(アクセラレータ)がスキルアウトと関わった事件で、目の前にいる男と共に自分に立ち向かった連中、そしてそのすぐ後に共闘した連中の顔を思い浮かべ、『悪くねェ組み合わせだなァ……』と呟く。

 

 自身を飛ばす事はトラウマもあって基本しないが、テレポーターとしては破格の能力を持つ女、結標淡希。

 元々車泥棒としての技術を持っていた、手先が器用かつ判断力に優れている浜面仕上。

 よく分からないが、連絡・補佐役としては有能な服部半蔵。

 

(結標は……俺のお目付け役(・・・・・)ってのが腹立たしいが、有能な事にゃ変わりねェしなァ……)

 

 スキルアウトの統率と共に一方通行(アクセラレータ)が進めている『置き去り』(チャイルド・エラー)の保護活動。

 その活動の実質現場責任者として色々と動いてくれる結標は、同時に統括理事が一方通行(アクセラレータ)へと付けた『監視役』でもあった。

 

(ちょっとお使い頼むにはちょうどいいか?)

 

 駒場に目配せをすると、小さくため息を吐いて携帯を取り出す。

 そして電話をかけると、どうやらすぐにかかったようだ。すぐに音声をスピーカーに切り替えた駒場は、その携帯をテーブルの上に置く。

 

『駒場? ちょうどよかった、そっちに一方通行(アクセラレータ)いる?』

 

 ディスプレイに表示されている名前は『浜面仕上』だが、聞こえてくる声は女だ。

 駒場が目配せするまでもなく、一方通行(アクセラレータ)が応答する。

 

「俺だ。ちょっと頼みてェ事があったン……だが、そっちでも何かあったようだなァ?」

『えぇ、ちょっと反応に困る事が起こってて?』

「……ァン?」

 

 スピーカーの向こう側から、「おいこれどうするんだよ」という浜面の声と、なにやら騒ぎ声が聞こえてくる。

 

『よく分からないけど、馬鹿な能力者が騒ぎを起こしたあげく建物の中に立て篭もっててね……で、警備員の一人が人質になっているのよ』

 

 警備員(アンチスキル)

 対能力者様の訓練を受けている、ある意味この街の軍と警察を合わせたようなプロフェッショナル……の、ハズである。

 

「……警備員が?」

『警備員が』

 

 

 

―― 鉄装ーーーーーーっ!! 

 

 

 

―― ご、ごめんなさいせんぱーーーーいっ!!!

 

 

 

 スピーカーの向こうから、それらしい声が響いてくる。

 片方は、それこそ一方通行(アクセラレータ)が待ち続けていた女の声だ。

 

「………………」

「………………」

 

 聞こえてきた聞き覚えのある声に、一方通行(アクセラレータ)は思わず駒場と目を合わせる。

 

『…………で、どうする? 一応貴方が頭なんだから、指示を仰ごうと思ったんだけど?』

 

 そして、心なしか呆れている女の返答に、3秒ほど時間をかけてから、

 

「結標」

『決まった?』

「片付けられるか?」

『堂々と? こっそりと?』

「…………」

 

 感情面が、堂々と結標や浜面達に解決させて、普段自分や自分について来てくれる少年少女に侮蔑の目を向けてくる警備員達の面子を潰してやりたいという気持ちを膨らませていく。

 だが、その感情に理性と知性が重しをかける。

 

「分かる奴には分かる程度に。出来るか?」

 

 あからさまに面子を潰すのではなく、理解できる数人にこちら側の実力と、出しゃばるつもりはないというメッセージを示唆する。

 

『任せて。そういう匙加減は得意なのよ』

 

 そんな一方通行(アクセラレータ)の考えを察した女は、スピーカー越しでも分かるくらい自信満々に答え、そして通話を切るのだった。

 

「……一方通行(アクセラレータ)

「なンだ?」

「……結標、妙にヤル気だったが……」

「施設で気合い入ったんだろ」

「……手、出してないだろうな?」

「………………信じろ」

 

 結標という女は、子供が大好きな心優しい女であると自称している。

 そして、子供が短パンを履いていないだけで絶望できる女である。

 

「……業が深いな」

「あァ、深ェよなァ……」

 

 頭を抱えて、立ちあがる一方通行(アクセラレータ)

 風を浴びたくて窓の方へと近寄る。

 下では、男女合わせて30名ちょっとの学生が夜に向けての作業をしている。

 スキルアウト――ではない。

 いわゆるLEVEL0(無能力者)は多くいるが、彼らはスキルアウトと呼ばれる人間ほど荒んでいる訳ではない。

 

 彼らは、日雇いバイトとして今日だけ雇った、一方通行(アクセラレータ)のクラスメート達だった。

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

 一方通行(アクセラレータ)という少年は、自ら最高の設備が整った学校を切り捨てた存在である。

 それは、自らの能力開発においてわざわざ遠回りを選んだことと同意であり、そしてLEVEL5という極上の素材を巡る誘致、勧誘合戦の始まりを意味――するはずだった。

 

 少年は、決めていた。

 少なくとも、ただ能力のためになんでもするような所は絶対に断ると。

 

 そも、まだ文字通りの『子供』だった頃から、『闇』を抜け出すために全力を尽くした少年は情報の収集、精査に手を抜いていなかった。

 文字通り、自らの生命線だったからだ。

 

 闇から抜け出すためには、文字通りの後ろ盾が必要だった。

 だが、後ろ盾になろうという人間は自分を食い潰す気の奴しかいない事を良く理解していた。

 

 自分の理想の生き方をするためには、そんな奴に関わる訳にはいかない。

 自分を疎ましく思いつつも、手を貸さざるを得ない。

 有力者にそんな判断をさせるために少年が行った方法は――人質を取る事だった。

 

 だから、少年はその学校を――『とある高校』を選んだのだ。

 

 そして、結論から言えば――その選択こそ数少ない『大正解』だったのだ。

 

 ――色んな意味で。

 

 

 

 

 

 

 いくつかある廃墟風の建物のなかで、かなり綺麗に片づけられている建物の一階。

 そこには二十名前後の学生で賑わっていた。

 

「完全下校時刻まであと30分を切ったわ! 調理班は今日の夜食の用意を急いで!」

 

 祭りの賑わいではない。――そこは戦場だった。

 

「吹寄さん! 作ったのはどこに置くんだっけ!?」

「おにぎりは中身別にそれぞれのケースに入れてこっちのテーブルに積んでいって! 豚汁の寸胴は元レストラン施設の中に!! あぁ、力仕事班のために寸胴一つは表で温め続けて! 専用の野外用IHが二つ転がってるはずだから! 使い終わった鍋や炊飯器は順番に片付けて! コードの類も使っていない物は回収!!」

 

 背が高く、巨乳でスタイルがいいエプロン姿に三角巾を付けた少女が、巨大な寸胴で大量の豚汁を掻き回しながら背後で作業(おにぎり及び豚汁作製)をしている女子陣に大声で指示を出している。

 

 また、それ以外の建物では軍手に長靴の男子達が箒やちりとり、ゴミ袋等を手に動きまわっていた。

 

「あ、あかん……栄養が、小萌先生分が足りひん。完全下校時刻前には様子見に来てくれる言うてたのに……」

「にゃ~~。そろそろ、機材や資材を積んだトラックがわんさか来る時間だけど……搬入作業のスペース確保だけで随分と時間かかったにゃあ……」

 

 ここに集まっているのは、一方通行(アクセラレータ)のため……と言う訳ではない。

 

「聞けぃ! 皆の者!!」

 

 寂れた道路のど真ん中、作業班達のど真ん中。

 そこで、グッ、と学ランを羽織ったツンツン頭(・・・・・)の男子生徒が真っ直ぐ立ち、そして右手の握り拳を挙げる。

 

 

「俺たちがここにいる目的はバラバラだろう! アイツ(・・・)が用意したマネーカードに釣られた奴! 簡素とはいえ女子が作ってくれる飯に釣られた奴! 純粋に普段世話になっているアイツに義理を返すためここにいる奴! 色々いるだろう!」

 

 そしてその右手を今度は手刀にし、突撃命令でも下さんばかりに振りおろす。

 

「だが! 事情はどうあれ俺たちはアイツに現場を任せられた! 託された! 俺たちには仕事をこなす責任がある!」

 

 なお、それを文字通り見下ろしている白髪の同級生兼雇用主である少年は、その姿を見て呟いていた。

 

「あと30分で帰れるという考えは捨てろ! あと30分で全部こなさなきゃいけねぇんだ!! そうだろう、野郎ども?!」

 

 

 

 

――うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!!

 

 

 

 

 歓声を上げ、なぜか一部が号泣している集団に、周辺で作業していたスキルアウトの面々すらドン引きしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりアイツを呼ンだのは正解だったかァ」

「上条当麻か……俺たちとも上手く付き合う男だが……よく誘えたな。いつも忙しい男なのに」

「米10キロと缶詰の詰め合わせ二箱後で送るっつったら即答したぞ?」

「……………………そうか」




本格的な開発は多分次回から。
なお、時期としては4月か5月くらいかなぁと考えております。
(インさんがインする数か月前です)

……あれ? 上条さんがみさきちと関わったのっていつだっけ?
ちょっと読み返してこよう。

なお、アクセラレータは台詞の再現が大変なキャラだと思っておりましたが、今回最後のシーンで一番難しいのはデルタフォースだと認識を改めました。特に青髪ピアス。

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