サクラ大戦~宿命の血~   作:鳳凰星座
<< 前の話

4 / 4
第三話 帝都に桜が咲く頃に

side蓮

 

綺麗な桜がヒラヒラと舞う、上野駅で私はブツブツと米田さんに対しての文句を言いながらある人物を待っていた。

 

「全く……ラーメン屋にこんなこと頼むのが間違ってるな」

 

来る道中でも、「何で私が」と連呼しながら嫌々来た程だ。

確かにこの前、帝国華擊団に入るのを考えるとは言った……だが入るとまでは言ってない。

しかし米田さんはもう私が入ることを前提に話しを進めているみたいだし、今日だって本来、迎えに行く予定だった由里ちゃんが風邪を引いて行けなくなった……それで何故私が迎えに行くことになるんだ?……。

しかも米田さんがついてくるならまだしもついてこないし……。

 

「そろそろかな?」

 

汽笛が聞こえ、腕時計をチラッと見ると約束の時間だ。

渡された写真を目当てに真宮寺さくらと言う少女を探すが、見当たらない。

そこでもう一度、私は真宮寺さくらの写真と情報を頭に入れてみる。

桜色の着物に髪大きなリボンに青みがかった黒色の髪、身長は百五十五センチとそこまで大きくないし、すぐに分かりそうなものだが……。

しかし一向に機関車から、さくららしき女性が出てくる気配はない。

そしてさくらは姿を見せず、結局、機関車は次の駅に出発してしまう。

乗り間違えたか、乗り過ごしたか、はたまた日にちを間違えたか……。

 

「米田さんめ……」

 

次もその次の機関車からも、さくらの姿は発見できないでいた。

私だって暇ではない。

今日の屋台の仕込みだってあるわけだし、何より今は舞台の真っ最中で稼ぎ時だってのに……。

そもそも来るかも定かではない人を待つこと程ムダなことはないと私は思っている。

 

「た、た、た、た、た、助けてくれぇ!!」

 

私の背後から人々の悲鳴が聞こえる。

聞こえるのは上野公園の方からで悲鳴が聞こえる範囲が広範囲になっていく。

この騒ぎようは、タダゴトではないと察知した私は上野公園に急ぐ。

剣を持ってきてはいないが、まぁ何とかなるだろう。う……。

 

しかし私が駆けつける途中で悲鳴が一切聞こえなくなり、逆に拍手と歓声が上野公園から沸き起こり始めた。

一分前は悲鳴、今は歓声……いったい上野公園で何が起こっているんだ!?。

 

「これは!?」

 

人が群がり、誰かを取り囲んでいたが、その逆方向には真っ二つに切断された鎧と剣を武装したロボットが転がっていた。

 

「間違いない……鎧武者だ」

 

私は思わずそう呟いた。

何故なら私にはそのロボットに見覚えがあったから……。

このロボットと私は戦ったことがある。

それは戦国時代まで遡るのだが、天海が設計し徳川幕府がこのロボットを「鎧武者」と名付け、戦力として活用していたのだ。

その頃は民家くらいはあろうかという巨大な機体ではなく、人間と同じくらいのサイズではあったが……。

それでも普通の人間の攻撃は通用せず、倒せるのは霊力を持った人間と例外として神の力を持つ私だけ。

斬った跡を見るに日本刀で一刀両断か……この鎧武者を倒せると言うことは霊力を持っている人間だ。

私はまさか……と思い、群がる人を掻き分けてその中央に向かうが……。

 

「いやぁ凄かったなぁ!」……こういった声は聞こえて来るが一向に私が捜している少女の姿はもう、そこにはなかった。

 

「これだから人探しは苦手だ……」

 

どんな人間でも何か一つ欠点や弱点があるものだと、思っていて、私にとってはその人探しが昔から苦手だった。

まぁ人だけではなく、物などを探す時、一度探すと見当たらないことも多々……。

まぁこんだけの短時間で遠くには行ってないだろうから、探すついでに仕込みの材料でも買っておくか。

 

「まさか案内するだけが、こんなにめんどうなことになるとはな……」

 

私がまずスープのダシに使う為の鶏ガラを買い、次に葱やメンマ、もやしにチャーシュー、そして卵を続々と購入。

スープにコクを持たせるために入れる醤油と煮干しはまだあったはずだから当分大丈夫だろう……と言うか、これだけ街を回っていないって……。

とりあえず、米田さんに一言言っておくか……幸いにも公衆電話が近くにあったので連絡してみる。

 

【はい大帝国劇場です】

 

電話に出たのは受付兼事務の藤井かすみだった。

 

「いつもお世話になってます ラーメン屋蓮の主人です」

 

【あぁ蓮さん 今日はどうなさいました?】

 

「米田支配人に電話を繋いでいただけますか?」

 

【ごめんなさい……支配人も副支配人も今、外出中でもう少ししたら戻ると思いますが……緊急のご用でしょうか? それでしたら私から支配人に伝えておきますが?】

 

「そうですか……じゃあお願いします 今日、そちらに配属されることになってた真宮寺さくらさんを上野駅まで迎えに行ったんですが、辺りを探しても見当たらないので帰りますとお伝えいただけますか?」

 

【そうですか……駅の周辺以外も探されました?】

 

「ラーメンの材料を買わなければ、ならなかったのでその時に一応街中探してはみたんですが……」

 

【それは大変な思いをさせてしまいましたね……本来なら私たち帝劇スタッフのお仕事なのに本当に申し訳ありません……今のお話しは私の方から支配人に伝えておきますので……】

 

「まぁ大帝国劇場さんとは困った時はお互い様だと思ってますので……とりあえず今の話し、よろしくお願いしますね」

 

【はい!……今回は本当にありがとうございました そしてお手間とご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんでした それでは失礼致します】

 

 

今は舞台公演の期間中なのに支配人と副支配人が留守にするなんて、何を考えてるんだ……。

それはそうとちゃんと報告はした。

会えないものは仕方ないし、確か米田さんの名前と帝国劇場への住所が書いてある手紙も渡してあるらしいから変なことにはならないだろうと思った私は上野から銀座へと帰る。

 

「ムダな時間だったな……」

 

結局、さくらは見つからず、私の睡眠時間と電車賃が失われただけ……。

ため息をつきながら、かどを曲がるとそこには私の探していたさくらの姿を見つける。

慌てて、写真と見比べて見るが、十中八九私が探していた帝国華擊団の新入隊員である「真宮寺さくら」という少女で間違いない。

私は奇跡的にさくらを見つけたことに安堵すると、彼女を大帝国劇場に案内するために近づいた。

 

 

 

sideさくら

 

真宮寺さくら十七歳……私は今日、父である真宮寺一馬の意思を受け継ぎ、帝都の平和を守るために仙台からやってきました。

期待と不安でいてもたってもいられずに、乗る機関車の時間を一本早めたのですが、そのせいで帝国華擊団から迎えに来てくれる人よりかなり早く到着してしまったのです。

 

「ちょっと観光していこうかしら」

 

時間はまだあるし遠くに行かなければ大丈夫。

そんな軽い気持ちでいたのが間違い……。

 

「桜が満開でキレイ」

 

駅から上野公園まで下ると、桜が満開でとてもキレイだった。

そして何より、花見をしている人たちの幸せそうな笑顔を見ているだけで自分も幸せな気持ちになってくる。

しかしそんな時、大きな影が花見をしている人たちを包みこんでいく……。

 

「た、た、た、た、た、助けてくれぇ!!」

 

人々の悲鳴と共に現れたのは剣を持った脇侍。

今まであんなに幸せそうにしていたのパニックになり逃げ惑う人々……。

助けなきゃ!……そう思った時、私の体は反射的に動きだし、気づいたら脇侍を一刀のもとに切り捨てていたのだ。

これでも北辰一刀流免許皆伝、私は小さい頃から、ずっと剣術の修行をしてきたし、例え脇侍であろうと負ける気しない。

 

「ありがとうございます!」

 

「いえ、お怪我はなかったですか?」

 

「おかげさまで助かりました あなたは命の恩人です!」

 

脇侍から助けた人からお礼を言われると、再び上野公園に人々が集まり、私を取り囲んで拍手と歓声が起こる。

人を助けて、感謝されるのは嬉しい……でもこれからそれが私の仕事になってくるんだと思うと気が引き締まる。

 

「あっ!! いけない!!」

 

帝国華擊団から迎えの人が来る時間を大幅に過ぎてしまっていた。

群衆を掻き分け、私は慌てて上野公園に戻る……。

 

「遅れてすいません! 私が真宮寺さくらです!!」

 

ありったけの大声を出してみるが、帝国華擊団からの迎えの人からの反応はない。

 

やってしまった……。

きっと私がいなかったから迎えの人は帰ってしまったのだろう……。

どうしようかと思ったが、私はふと米田さんからの手紙を持ってきたのを思い出す。

 

「ここまで来て諦めるもんですか!」

 

手紙には米田さんのフルネームと帝国華擊団本部の住所が書いてある。

これがあれば、迎えの人がいなくても何とかたどりつけるはず……。

とりあえず上野から銀座まで行かないと……。

私は出発直前のバスを見つけると、運転手の人に尋ねる。

 

「あの銀座まで行きたいんですけど……」

 

「あぁ銀座なら停まりますよ」

 

良かった……運がいい。

私はそう思うと、バスに乗り込む……窓から眺めた景色が仙台と違いすぎて、少し戸惑った。

 

「銀座~ 銀座です ご乗車ありがとうございました~」

 

上野からの銀座まで、そう時間はかからなかった。

そして私は遂に帝都に足を踏み入れたのだ。

蒸気自動車や公衆電話……仙台では見たことないものばかりが揃い、人気も多い。

都会の凄さに圧倒されながらも、それがとても新鮮に感じられた。

 

「君、どこから来たの?」

 

「仙台から来ました!」

警察の人が私に声をかけてきたのだが、何か、悪いことでもしただろうか?。

話しが長引きそうだなぁ……と思っていたその時だった。

 

「姉ちゃん!」

 

聞き慣れない声で聞こえたと思ったら、見たことない男の子が私の手を引いて、人気のない場所へと連れていく。

ちなみに角を曲がっているので、さっきの警察の人から見えない死角となっている。

 

「今、帝都じゃ家出人の取り締まりが厳しくなってんだから気をつけろよな!」

 

「私は家出人なんかじゃありません!」

 

家出人だと思われてただなんて、心外だ。

ちょっと若いからって家出人だって決めつけるなんて酷い。

 

「ほら」

 

男の子が私に手を差し出す。

最初は男の子が手を差し出す意味が分からなかったけど、よく考えると、あのまま警察と会話が長引いていれば、厄介なことになっていたかもしれない。

きっとお礼を言ってほしいのだと思い、私は感謝の気持ちを込めて、ガッチリと握手をする。

 

「違う! そうじゃなくて、分かるだろ!」

 

違ったのだろうか……ではこの男の子は何を求めているのだろう。

 

「これだから田舎者は……で、何しに帝都に?」

 

「私は帝都の平和を守りにきたの!」

 

それを聞いて笑い転げる男の子……小さい子どもとは言え、バカにされてる気がしていい気分にはならなかった。

私が少し、イラッとした時、肩を軽く叩かれ振り向くと、大量の買い物袋を両手に持った知らないを男性が立っていた。

 

「すいません、真宮寺さくらさんですよね?」

 

私はこの男性に見覚えは全くない……。

なのに何で私の名前を知っているのだろうか。

 

「そ、そうですけど……どちら様ですか?」

 

「これは失礼……帝国華擊団からの使いです」

 

私はハッ!となる。

この人が私を上野駅に迎えに来る予定だった帝国華擊団の人だと悟り、深々と頭を下げ、謝罪した。

 

「約束の時間に駅にいなくてすいません!」

 

「怒ってませんから、顔を上げてください」

 

男の子が帝国華擊団の人を指差す。

 

「あれ?……蓮さんじゃん!」

 

「お知り合いですか?」

 

「この人、ラーメン屋の主人だよ!」

 

どういうこと?……何で帝国華擊団の人がラーメン屋さんやってるの?……。

副業でもやっているのだろうか。

 

「トラ坊か……お母さんが探してたぞ?」

 

「ゲッ!……マジで!?」

 

帝国華擊団の人がそう言うと、慌てて男の子は走りさっていってしまった。

 

「では、案内しますので着いてきてください」

 

「は、はい!」

 

私は帝国華擊団の人の後ろに着いて歩く。

髪の長さといい、身長といい、着ている和装といい後ろ姿だけ見れば、私のお父さんと瓜二つだ。

 

「お父さん?……」

 

私はそう思わず呟いてしまった。

 

「ん?……何か言いました?」

 

私は慌てて、恥ずかしさから別の質問を考える。

 

「い、いえ!……あの、ラーメン屋って?」

 

「あぁ、あれね 私、帝国華擊団の人間じゃないんですから」

 

「えっ?……」

 

私は戸惑った。

帝国華擊団の人じゃない人が何故、私を案内しているのか。

 

「今日は米田さんにどうしてもって頼まれて来ただけのしがないラーメン屋の主人さ 名前は蓮 以後お見知り置きを」

 

じゃあホントにただのラーメン屋の人なのか……。

ラーメン……そう言えば、朝から何も食べてないことを思い出した途端、空腹が私を襲う。

そしてお腹から「グゥ~」と言うはしたない音が、私の意思に反して鳴りだしてしまう。

 

「お腹、減ってるのかい?」

 

「ち、違うんです! こ、これはその……はい……」

 

恥ずかしいから、否定しようとしたが、言い訳が見つからず、認めざるえなかった。

初対面の男の人の前でお腹が鳴ってしまい、徐々に私の顔も赤くなっていく。

 

「丁度いい、ラーメン味見していくかい? お代は取らないので」

 

「えっ!? いいんですか!?」

 

ニッコリと頷く、柔らかい笑顔……この人、やっぱりお父さんにどことなく似ている気がした。

そして人気のない路地裏のような場所に案内されると、ここで待つように指示されたので、十五分ほど待っていると、蓮さんが屋台の道具と食材を持ち運んできた。

 

「もう少し、待っててください」

 

蓮さんは慣れた手つきで屋台を組み立て、椅子を置いた。

 

「せっかくなんで、座っててください」

 

そして暖簾を掲げ、後は調理。

料理が得意じゃない私には蓮さんが何をしているのかサッパリだが、それでも鶏ガラでスープのダシをとっているということだけは分かる。

 

「はいお待ち!一番人気の醤油バターラーメン! と言っても、メニューはこれしかないですが

 

これがラーメン……噂には聞いてたけど、今まで和食しか食べたことがなく、実際に食べたことは一度もない。

スープに乗っているのは卵と葱、もやし……それに謎の物体が乗っかっている。

 

「これは何ですか?」

 

「チャーシューって言って、豚の肉です」

 

「へぇ~……お、美味しい!!」

 

私はチャーシューをかじり、スープを一口注ぐと、口の中に鳥と醤油の旨味が一気に広がった。

そして麺を啜りながら、スープを飲んでいて、気づく。

あ母さんが作ってくれた味噌汁の風味がする……鳥と醤油ベースなのに何でだろう……。

 

「何か優しくて懐かしい味がします」

 

「おそらくコクを出すために使ってる煮干しの影響じゃないかな?」

 

確かにお母さん、味噌汁を作る時、煮干しでダシを取ってたっけ……。

 

「後、これがうちの新商品にしようと思っててね 味が普通すぎると言われ続けてるもので」

 

そう言うと、蓮さんはスープの上にチーズを乗せる。

 

「チーズと麺とよく絡ませて食べてみてくれ」

 

ラーメンにチーズなんて……と正直合わなそうなんて思っていたが私が間違っていた。

 

「!?……蓮さん、これ絶対売れますよ!! 本当に美味しいです!!」

 

麺にとろりとチーズがとろけ、今まで食べたことのない味に衝撃を受けた。

おそらくて毎日食べても飽きない……それくらいクセになる味だ。

 

「美味しかったぁ!! ご馳走さまでした!」

 

私はあっという間にスープまで飲みきり、間食する。

 

「そう言ってもらえるとありがたいよ ちなみに帝国華擊団の本部はあの高い建物を指して行けば大丈夫です 一人で行けますか?」

 

「はい! ありがとうございました!」

 

「大変だと思うけど、頑張ってください」

 

「はい! あの、また食べに来てもいいですか?」

 

「あぁ いつでも待ってますよ」

 

この優しそうな笑顔だ。

ラーメンもだけど、蓮さんの笑顔がお父さんとダブって見えるから……。

だから私はきっとまた会いにきたい……そう思った。







※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。