艦隊これくしょんー死ねない提督と元ブラ鎮 作:ゆっくりRUISU
朝、提督である喜一が家を出た瞬間を狙って爆殺する。
少々おかしいと思うかもしれないが、これがこの鎮守府の『普通』である。
そしてこの後、喜一は何事もなかったかのように復活する。
その筈だった。
そうでなければいけなかったのだ。
しかし彼は復活しなかった。
「…なんでか知らないけど、今日は喜一が復活しなかったわ。魔緒流さんは何かわかる?」
食堂にて、矢矧が魔緒流に尋ねる。
だが。
「わかんないなー…。昨日の夜見た限りじゃ術式に問題はなかったから師匠の術式が切れたとは思えないし」
あまり良い返事ではなかった。ただ、魔緒流曰く術式が原因ではないらしい。
「…司令は結局、死んだの?」
震える声で陽炎が尋ねる。
「…おそろしい事に、それぞれ生きてるんだよね。アレで。意識はしっかりしちゃってるし」
肉片と化した喜一を示しながら言った魔緒流の言葉に、全員が絶句する。
バラバラの破片になっても、元通りになる事なく、生き続けている。
それは、生き地獄でしかないのではないか。
「そ、それは元通り繋げたら生き返ったりとか…?」
「内臓とか脳とかその辺全部元通りに縫合できる医師団さえいれば大丈夫じゃない?…腐るまでに、って注釈がつくけど」
震える声で聞いた天龍に、魔緒流は更に絶望させる事実を突きつける。
いかに死ななくとも、すでに肉片に血は通っていない。
つまり、やがて喜一の肉体は腐る。
だが、彼は死ねない。
肉体に蝿がたかろうとも、死ぬことは許されずに生き続ける。
「…提督を復活させる方法はないの?」
鈴谷が最後の希望にすがるかのように魔緒流に聞く。が。
「流石に無理、かな。死人を蘇生させる術式なんか聞いたこともないし、回復術式はあるけどバラバラになった人を治せるか、って言われると『無理』って返すしかないや」
そう魔緒流は答えた。
魔女の術式でなんとかならないか、と期待して鈴谷は聞いたのだったが、どうにもならないらしい。
すると。
「…陽炎さん。提督が遺したあなた宛の遺書が発見されました」
封筒を持って、大淀が食堂に入ってきた。
「…どんな内容ですか?」
「それは、ご自分で読んでください」
そう言って、大淀は陽炎に封筒を渡す。
「えっと…。
『これが読まれてるって事は、俺になんかあった時だと思う。
正直、これを書いた前日、3月31日の時点で違和感はあった。
死んで復活した後に、なにか足りない気がしたら気を付けろ。俺は膵臓と右の肺、肝臓に骨のあちこちが復活しなかった。何回死に直しても無駄だった。お前の場合どうなるかわからん。何かおかしいと思ったら魔緒流の奴に頼れ』
…何よこれ。余計なお世話よ…!」
くしゃ、と手紙を握り潰し。
陽炎は封筒にもう一枚紙が入っている事に気づいた。
「『ロッカーを開けろ』って、何よこれ。殴り書きみたいな…」
呟きつつ、陽炎は食堂の端、掃除用具の入ったロッカーに手を掛け。
ロッカーの戸が内側から吹き飛んだ。
その戸と爆風に吹き飛ばされて死んだ陽炎は、復活してから叫ぶ。
「何よ!開けろって言われたロッカー開けたら爆殺されたわよ!」
「安心しろ。明石がリモートで爆破しただけだ」
「なんでわざわざリモート…で……?」
あり得ない筈の声がした。
復活しなかった筈である。
「テッテレー!…だっけ?」
『ドッキリ大成功!』と書いたプラカードを持った喜一が、そこに立っていた。
「…ふざけんなっ!」
「1回死んどけ!いや、2、3回死んどけ!」
「首と心臓っ!」
怒った陽炎と天龍の連撃で、喜一は首をはねられた上で心臓を潰された。
復活後、喜一は陽炎に尋問されていた。
場所はクレーンの上である。
「…んで?血を抜いて家の風呂に貯めといて、そこで復活したと」
「おう」
「バラバラになった破片が崩れなかったのは?」
「あれは急速に腐敗するかららしい。…何故か血は急速には腐敗しないらしいけどな。んで、ホルマリンを致死量注射してから爆死した。ホルマリンには防腐作用があるからな」
「遺書で復活しなかったって書いてたのは?」
「遺書自体デタラメ。まったく正常に復活してた」
「協力者は?」
「魔緒流と大淀、明石に間宮さん。後青葉」
「…なんで青葉を?」
「情報統制したかったから」
「動機は?」
「時期。今日はエイプリルフールだろう?」
「…言い残す事は?」
「気分爽快」
「…死んどけっ!」
喜一の体は、クレーンから落ちた。
「命綱が首にかかってるとかどんな殺人バンジーだぁぁ…」
言いながら喜一は落ちていった。
結論。
喜一は死ねない。
エイプリルフールネタでした。
嘘タイトル
『喜一死す!恐るべし首吊りバンジー!』