艦隊これくしょんー死ねない提督と元ブラ鎮 作:ゆっくりRUISU
…艦娘は陽炎が多少出るだけです。
それでは、どうぞ。
喜一の鎮守府にて、深夜。
「『インパクト』ォ!」
「ぐふぁ!」
魔緒流が突きと同時に発動した攻撃術式が、喜一を海側に吹き飛ばし、特大の水柱が立った。
「…っと、やり過ぎた。大丈夫?」
そう言いつつ、魔緒流は喜一の頭を拾い上げ。
ボロッと頭が崩れた。
喜一と陽炎は復活時、最も質量の大きい部分を核に復活するが、核でない部分は崩れるのだ。
あ、と思いつつ魔緒流は陽炎に声を掛ける。
「ごめん陽炎ちゃん、喜一探してくれる?多分胴体が丸々残ってる筈だから」
「はいはい。手伝ってね」
そう言い、陽炎は艤装を展開し、海に飛び込んだ。
…だが、見つからない。
「…こっちには無いや。陽炎ちゃん、そっちは?」
「ダメね、見つからない。探知する術式とか無いの?」
「そういえばあるや。ちょっと待ってね」
言いながら魔緒流は探知を開始する。
やがて、その額に冷や汗が浮かぶ。
「…復活の反応は拾ったけど、やけに反応が弱い。多分メチャクチャ遠い。後、反応的にはやけに分解しながら復活してるから、周りに色々あるね」
ここで小話を。
喜一と陽炎は復活する時、異物があった場合にそれを分解しながら復活する。そうでなければ、例えばギロチンにかけられたが最後、再生した瞬間に首に埋まったギロチンによって頭が再び落ちてしまう。
…まぁ首を落とした後にその断面を金庫にでも押し付けてやれば詰ませられるのだが。
閑話休題。
周りに色々ある、ということは。
「…島かなんかに埋まった?」
「…だったらいいんだけどね。
下手したら、海の中かも」
…この時の予測は、悪く当たっていた。
喜一は今、深海にまで沈んでいた。
当然、喜一の肺から空気は押し出される。
「ガボボボ、ガバボボボボ!」
(やっべぇ、沈む沈む!)
…適当な海流にでも乗って死にながら戻るか。
喜一がそう考えたとき。
波に喜一は流された。
もがいても無駄なので、死にながら無抵抗で流され続ける。
時折岩に激突して追加で死につつも流され続け。
やがて、空気のある部屋に着いた。
「10回は死んだぞ…。てか、なんで空気が」
あるんだ?とは続かなかった。
ガチャリと音を立てて、砲身が喜一に突きつけられた。
「動クナ、人間。オトナシクシテモラオウ」
「…深海棲艦に砲を突きつけられた提督は俺以外いないな。珍しい経験だ」
戦艦ル級が、喜一に敵意を向けていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「無抵抗デ捕マルトハ奇妙ナ奴ダナ」
「常人にどうやって抵抗しろと」
数分後、呆気なく喜一は捕獲され、グルグル巻きにされた上で何処かへと連行されていた。
…身体能力的には基本常人でしかない喜一では抵抗も何もないのだが。
やがて、ある扉の前に連れてこられた。
「貴様ハココデ待ッテイロ。司令ニ会ッテモラウ」
そう言ってル級は部屋に入り。
『司令!起キテ下サイ!!モウ○八○○デスヨ!!』
『…あと八時間寝かせて…』
『ソレダト夕方ニナッチャイマスヨ!ソレニ、侵入者モ来テマス!!ホラ、起キテ下サイ!』
『ふぁーい…。
って、侵入者ぁ!?』
「…俺、ここに来るまで何時間掛かったんだ?」
思わず喜一は呟いた。
やがて、ガチャという音と共に、扉が開いた。
「入レ」
「…どーも」
ごく短いやり取りの後、喜一は扉をくぐった。
しかし。
「…あ、神無月祷です」
「…どうも、永谷喜一です」
「「…」」
((気まずい…))
(侵入者って話だけどルーがグルグル巻きにしちゃってるし、なんかルーは殺さんとする視線でこの人見てるし!)
(捕虜になった経験がないから何から話せばいいのかわからん!つーか捕虜が勝手に口火切っていいのか!?後なんかル級が俺を殺さんとする視線で見てるぅ!もう俺を殺してくれ、殺して大海原にリリースしてくれぇ!)
(司令、何ヲシテイルンデスカ!早クコイツヲ始末スル命令ヲ!許可ヲ!)
と、3人で固まっていると。
ドドドド…という、地響きが3人の耳に届き。
「シレー!起キテー!」
という声と共に、ドアが吹き飛んでレー(戦艦レ級)が入ってきた。
…さてここで。
現在の室内は、奥に祷(司令)、向かい合って手前に喜一(侵入者)、祷の左後ろにルー(戦艦ル級)がいた。
だがここで、レーが入ってきた。
喜一の真後ろから。
つまり。
「ゴッハァ!?」
「グフッ!?」
…祷・喜一・レーの順にサンドイッチにされた。
ボキゴキメキャァッ!と、喜一の背骨は悲鳴を上げた。
その威力は、グルグル巻きにしていたロープが千切れ飛んだ事から推測できるだろう。
…ちなみに、この時喜一は祷の胸に飛び込む形になり、ルーからの視線に込められた殺意が更に強くなったのだが、当の本人はそれどころではなかった。
「ゲホッゲホッ…。レー、ドア壊さないで」
「…!」(悶絶)
「シレー、コノ人ダレ?」
「ん…?あぁっ!?大丈夫ですか!?」
「…尋問すんの3分待ってくれれば大丈夫」
直後、空気をぶち壊すように喜一と祷の腹の虫が鳴いた。
それを見ていたルーは、ややタメ息まじりに提案した。
「イイ時間デスシ…食堂デ食事ニシマセンカ?」
祷とレーはコクコクと頷き、喜一は親指を立てて賛成の意を示した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ということで。
祷、レー、喜一、ルーの順番で4人は食堂に来ていた。
「提督、オハヨウゴザイマス。…ソチラノ方ハ?」
「侵入者…らしいけど、さっきレーがね…まぁそういうことで。お腹も減ったし食べに来たんだ」
「あー…怪我はもう治ったんだが…」
「…結構骨カラヤベー音シテタケド?ツイ殺ッチャッタカト思ッタヨ?」
「…俺、死ねないんだよ。傷の治りも早いし。
…そもそも、ここに来たのも水圧や溺死で10回くらい死んでから偶々流れ着いたからだし」
「…って事は、侵入者じゃない?」
「世間一般で言うなら迷子だな」
「モシカシテ私、ハヤトチリシチャイマシタ?」
「…ルー、謝りなさい」
「ウッ…。
ゴ、ゴメンナサイ…」
「いや、運が悪かっただけだからいいんだけどさ…。
…あ、後でこの辺りの上昇海流案内して。流れてくから。
とりあえずB定食1つで」
「…馴染ミスギデハ?ア、私ハA定食デ。司令ハ?」
「部下が迷惑かけちゃったみたいだし、送るよ?で、私もA定食かな」
「ワタシB定食ー!」
「分カリマシタ、A定食2ツニB定食モ2ツ。デハ暫クオ待チ下サイ」
そう言うと、厨房に入っていった。
「…送ってもらえるのはありがたいけど、職場が鎮守府で艦娘がいるから遠慮しとく。適当に死にながら昇るさ」
「なんか死ぬって言葉が軽く感じ始めたけど…軽くないよね?」
「まぁ、少々狂ってるのは自覚してる。かといって地図や通信機を借りるわけにもなぁ。機密の問題もあるし。…っと、来たらしい」
喜一がそう言った時、定食が4つ運ばれてきた。
「じゃあルー、レー。手を合わせて」
祷が声を掛けると、ルーとレーは頷いて手を合わせる。喜一も当然だが倣って手を合わせる。
『いただきます(イタダキマス)』
そして、4人は朝食を食べ始めた。
数分後。
『ご馳走様でした(ゴ馳走様デシタ)』
「ハイ、オ粗末様デシタ」
4人は綺麗に朝食を食べきっていた。
食器を規定の位置に返却した時。
「ヤット見ツケタ、レー!」
「アッ、ヲー!」
ヲー(空母ヲ級)が食堂に入ってきた。
「イキナリ『司令ヲ起コシテクル』ッテ言ッタノニ、司令官ノ部屋ニハイナイシ!」
「起コシタラソノママ朝ゴハンニ行ク事ニナッチャッテ」
「全クモウ…。スイマセン、司令官」
「大丈夫だよ。ヲーは優しいね」
「ハフゥ…」
祷がヲーの頭を撫でていると、レーが不満を漏らした。
「シレー、僕モ撫デテ撫デテ!」
「はいはい、慌てないで。ちゃんと撫でるから」
「エヘヘー…。シレーノ手、暖カイ…ッ!?」
ドンッ!と、レーが押しやられた。
いつの間にか、先程厨房にいた深海棲艦の一人、泊地水鬼がレーのいた場所を奪っていた。
「…ハクキ、どうしたの?」
「ココハ譲レマセン」
「ハクキ!ソコドイテヨー!」
「アノ、レー。コッチ譲ルカラ…」
「ソッチノ手ガイイノー!」
「…俺、お邪魔か?」
保母のようになった祷を見て、喜一が呟いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「…えっと、改めて。
ここの提督、神無月祷です。元帥棲姫って言った方がいいかな?」
「…すまん、元帥棲姫って言われてもわからん。改めて、永谷喜一だ。地上の鎮守府で提督をやってる。後、さっきも言ったが死ねない身でね。こんな成りだが百歳は越えてる」
二人は応接室で向かい合っていた。
「んで、単刀直入に言わせてもらうと、俺はなるべく早く地上に戻りたい」
「…戻したいんだけど、今は無理かな。この辺りに今タイフーンが来てて海中は泳げる状態じゃないから。明日には過ぎるわ」
「…しばらく、お世話になりやす」
言いつつ、喜一はガクリと肩を落とした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
その日の夜。
喜一に割り振られた部屋に祷が訪ねてきた。
「やっほ。世間話でもしない?」
「…部下がいるだろ。なんで余所者と話すんだ?」
「皆遠慮しちゃうんだよね。それに、私と君との間じゃあ所属も違うから上下なんてないでしょ?」
「…そういうことならいいけど、話すネタがない」
「身の回りの事で!出来ればここ20年位で!」
…その晩、喜一の部屋から明かりと話し声は途絶えなかったという。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌日。
「うー、眠い…」
祷は寝ぼけ眼を擦りながら着替えていた。
結局、昨日は朝になるまで起きていてしまったのだ。
「司令!起キテ下サイ!…珍シイデスネ、モウ起キテマシタカ」
「あー、うん…。とりあえず、朝ゴハン食べたらあの人送ってくるから」
「イエ、司令ガ行カナクテモ…」
「ちょっと久し振りに体も動かしたいんだ。なるべく早く帰ってくるけど、それまでお願いね!」
そう言われ、ルーはコクリと頷いた。
で、朝食後。
「お、おぅ…。これが元帥棲姫か?」
「マァネ。…サテ、掴マッテ。出来ルダケ圧死シナイヨウ気ヲツケルカラ。水中眼鏡ト酸素ボンベハ持ッタ?」
「おう。…なんで潜水道具あったのか疑問だけどな」
「気ニシナイデクレ。デハ、行クゾ!」
そう言うと、元帥棲姫は抜錨した。
道中。
「…しっかし、今後どんな顔であいつらに『深海棲艦を討て』って命令すりゃいいんだ?もう俺の中で『深海棲艦=敵』って認識が崩れかけてるんだが」
「…人間ダカラッテ全員ガ善人トカ悪人シカイナイッテ言ウ事デモナイデショ?ソレト同ジ事ダヨ」
「そういうもんか?」
「ダカラ、気ニシナイデ。勿論私ニトッテ部下ガ一番ダケド、知リ合イガ死ヌノハ見タクナイカラ。例エ死ナナクテモ」
「…善処しよう」
「ソレト、既ニ宣言シタケド私達ノ海域ハ専守防衛ヲ貫クカラ。侵入シナカッタラ戦闘ニハナラナイヨ」
「…了解」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
数時間後、祷と喜一は海面に顔を出した。
「着イタヨ」
「おー。…死なずに深海から昇ってきたのは初めてだ。
さて、後はここからの移動手段だが…」
そう呟いた時、何かが飛んでくるのに喜一と祷は気づいた。
「おーい、生きてるー?」
「魔緒流か。ここだ!拾ってくれー!」
喜一が呼び掛けると、魔緒流は高度を下げてきた。
「昨日の早朝にこの辺りで復活の反応拾ったのが最後に反応が途切れちゃってさー。しばらく飛び回ってたよ」
「苦労かけたらしいな。すまない」
「良いって良いって。
…それより、そっちは?」
「…元帥棲姫」
「へー。
娘乙華魔緒流だよ!魔女だよ!」
「…魔女?」
「あー、特に害はない。何処ぞの魔女が深海棲艦に攻撃術式試したら無理なんだったっけ?」
「そだよー。ま、今日は喜一拾って帰るよー。じゃあね!」
「…まぁ、縁があったらまた」
「…会エルト思エナイケド、ソウダネ。マタ会エタラ、世間話シテネ」
「…ネタ考えとく。じゃあ!」
「喜一がクビにされたらこの辺に捨てに来るね!」
物騒な宣言をした直後、魔緒流は箒でかっ飛ばした。
「…サテ、私達ノ鎮守府ニ戻ロウカ!」
そう言うと、祷は潜水して行った。
「随分長く沈んでたね?」
「まぁ色々とな。しかもこの辺りにタイフーンが来てて海中が荒れたせいで収まるのを待つ羽目になった。ただ…」
「ん?」
「あそこの深海棲艦達は多分、やろうと思えば人間社会にも溶け込めるんだろうな、って事を実感したさ。人間はまぁ憎くは思ってる節があるが、着任直後のアイツらよりは敵意も薄い。信頼できる人間の司令官がいる、っていうのが大きいんだろうな」
喜一はそう言うと、後ろを振り向いた。
既に海上には、元帥棲姫の痕跡は消えている。
だが、それでも。
彼女は暮らしていくのだろう。
自分を慕う部下達と共に、深海の楽園で。
「…ところで、あの深海の基地は大本営に伝えないの?」
「知り合いを売る気はないさ。それに」
「うん?」
「『地図も無ければ座標を知る術もなかったので特定不能』だからな」
「あっはっはっ。君、昇進する気無いでしょ」
「昇進なんざしたくない。死にづらくなる」
「ザ・君!って感じの理由だね…」
呆れ気味に魔緒流は呟いた。
以上です。
では。
6/9 追記
書き忘れてた小ネタ
死にながら昇る
もしかして:昇天