艦隊これくしょんー死ねない提督と元ブラ鎮 作:ゆっくりRUISU
演習から数日後。
喜一が書類を処理していると、執務室の扉がノックされた。
返事をするより早く、陽炎が扉を開けて顔を覗かせる。
「陽炎か。何か用か?」
「嘉祢画元大佐の鎮守府から二人、ウチに転属してくるって話。もう来たわよ」
「あぁ、アレ今日か。入れてくれ」
そう言われた陽炎が促すと、二人の艦娘が執務室に入ってきた。
その内の一人には、喜一は見覚えがあった。
「…確か、こないだの演習にいたよな?」
「そうだよ。
僕は白露型駆逐艦、『時雨』。これからよろしくね」
喜一と時雨が会話をかわした、直後。
「…時雨に気安く話しかけるなっぽい」
その声を聞きながら、喜一の視界は暗転した。
理由は単純、もう一人の艦娘、夕立が力任せに喜一の首を引き千切ったからだ。
夕立はそのまま、勢いに任せて陽炎にも飛び掛かる。
「あっぶ、ない!」
辛うじて反応した陽炎が、屈む事で夕立を避ける。
追撃しようとした夕立だったが、時雨が羽交い締めにして制止する。
「こら」
その間に復活した喜一は、ハリセンをどこかから取り出して夕立を叩いた。
…ちなみに魔法の獲物ではない。強いて言うならギャグの獲物だ。
そして、喜一は口を開く。
「首を引き千切るのはやめろ。
血で書類が汚れる」
「そこなのかい!?」
時雨にハリセンでひっぱたかれた。
で。
「…とりあえず、話を聞いていいか?」
「話す事なんかないっぽい。解体でも捨て艦でも好きにしろっぽい」
「…ダメだこりゃ。嫌われてら」
肩を竦めながら、喜一は座っていた椅子から立ち上がる。
「んじゃ、一応処罰を兼ねて1つ好きにさせて貰う。
…表に出ろ。喧嘩するぞ」
「はぁ?」
「…えぇ?」
「殺し合いっぽい?」
三者三様の返事を聞きながら、喜一は一度自宅へと戻った。
流石に軍服を着たままでは動きにくいので着替えるのだ。
喜一が運動場に出ると、既に艦娘達が集まってきていた。
その中から、天龍が駆け寄ってきた。
「おい提督。なんか青葉から『提督と新入りが喧嘩する』って聞いたけど、マジなのか?」
「マジだ。てか青葉はなんでそんな情報仕入れられるんだ?」
「知らねぇよ!
…てか、普通に喧嘩したら新入りは勝てないんじゃないか?」
「今回は相手を地面に倒した回数で勝負するから問題ない。
…勝ったからどうとかはないけどな」
そこで会話を切られ、天龍は喜一から離れる。
やがて、夕立が時雨を連れて運動場にやって来た。
…艤装を背負って。
「待て、艤装は外してくれ」
「知らないっぽい」
そう言い、夕立は喜一に飛びかかり。
地面に叩きつけられた。
「…流石に、駆逐艦くらいなら艤装ありでも筋力強化で拮抗できるぞ」
投げ飛ばした張本人である喜一は、夕立から距離を取りつつ言った。
「んで、これで『一本』。さっきも言ったが十本先取だが」
どうする、と言いきる前に。
ドゴスッ!という快音と共に、喜一は殴り飛ばされた。
「一本っぽい」
制服を所々土で汚した夕立が、拳を振り抜いた状態で宣言する。
更に、右手に主砲を構えて喜一に向けて。
土煙の中から飛び出してきた剣が、主砲に突き刺さった。
「…喧嘩なんだ、得物は使うなよ」
そう言いつつ、喜一は再び夕立へと飛び掛かっていく。
そこから先は、少々省略するが、結果を言おう。
夕立、八本。
喜一、十本。
よって、一応喜一の勝利となった。
土まみれになった服をはたきながら、喜一は夕立に手を貸して立たせる。
「…さて、それじゃあ」
「好きにすればいいっぽい」
「…ん?」
夕立が、唐突に黒いセーラー服のボタンを外し始めた。
「負けたのは私だから、犯すなりすればいいっぽい」
「なんでそっちに思考向けるかな…!
魔緒流ー!昏倒させてくれー!」
喜一がそう叫んだ直後、夕立と喜一の意識は途切れた。
で、その夜。
「…んで、1つ聞くが」
「勝手に犯せっぽい」
「物理的に無理なんだが」
現在、喜一と夕立は鎖に縛られた上で椅子に座っていた。
と言うのも、先のやり取りを加味して陽炎が喜一を、時雨が夕立を拘束して対面させる事にしたのだ。
…盗聴している青葉は、真っ赤な顔でどうなるのかと身構えているが。
「いや、聞くのは単純だ。
喧嘩は楽しかったか?」
「…ぽい?」
予想の斜め上の質問に、夕立は首を傾げた。
喜一は続ける。
「執務室で首もがれた時。直感だから外れてたらすまんが、夕立が失望したように感じたんだよ。『もう終わっちゃった』って感じで」
「…そう思ったっぽい」
「だろうな。それに、喧嘩もそうだ。
本当に人間が憎いなら、喧嘩なんぞ応じずに撃てばよかったんだからな」
「…ぽい」
「…ここしばらく、本気で暴れた試しなんて無かったんじゃないか、って思ったから喧嘩吹っ掛けた訳なんだが。結構効いたらしいな」
「ぽい!喧嘩、楽しかったっぽい!」
その返事を聞いた喜一は、よっこらと言いながら立ち上がった。
「…あれ!?鎖は!?」
「手首だけ自爆した。
喧嘩の感想聞いた辺りじゃもう外してたぜ」
…無駄に器用な自爆男である。
が。
「…実は私も外してあるっぽい」
そう言って、夕立は立ち上がる。
「…待て、どうやった」
「艤装使ったっぽい!」
「…逃げるっ!」
「素敵なパーティ始めるっぽい!」
喜一が窓から飛び出した直後、執務室は爆発した。
ちなみに喜一は転落死した。
そして翌日、吹っ飛んだ書類を作り直す喜一の姿があったとかなかったとか。
本日の死因(書くの久々)
転落死 1回
爆死 2回(朝と昼)
内蔵損傷 3回(喧嘩中)
首引っこ抜かれた 1回