艦隊これくしょんー死ねない提督と元ブラ鎮 作:ゆっくりRUISU
…陽炎が不死になった経緯は後々。
陽炎が鉄パイプで喜一を殴りつける。
かに思われたが、喜一がどこかから取り出した剣が鉄パイプを受け止めていた。
云わずもがな、喜一の『魔法の得物』である。
…忘れられたかもしれないが、『魔法の得物』では、魔力がない相手には威嚇にしかならない。
しかしこの前提は『有機物』を相手にする場合にのみ成立する。
故に、『魔法の得物』で地面を陥没させられ、無機物である鉄パイプを受け止める事ができる。
閑話休題。
鉄パイプを受け止めた喜一は、剣を傾けて鉄パイプをやや強引に地面に落とさせる。
痺れを訴える手を軽く振りながら、喜一は口を開く。
「いきなり撲殺か?物騒だな」
「物騒じゃないと思ってたの?」
「そりゃそうだ」
喜一は剣を引っ込める。
「用事はこれだけか?なら…」
そう言って引き返そうとした時。
「陽炎さん!何してるんですか!」
「初霜…!」
そう叫びつつ、黒髪の艦娘が陽炎に砲口を向けていた。
たまらず、陽炎は鉄パイプを投げ捨てて逃げた。
「初霜…。
あぁ、坊の沖で無傷だったアイツか」
「…やっぱり喜一さんでしたか。雪風が嬉々として話してました」
「すまんな、助かった」
「大丈夫です。ところで、長門さんには会いましたか?」
「いや、その途中だったんだ。んじゃあ、雪風と合流して…」
「しれぇ!用事は終わりましたか?」
「…行こうと思ったが、必要なかったな。すげぇタイミング。
ちょうど終わった、案内頼む」
「はい!」
喜一と雪風は初霜と別れ、長門がいる筈の執務室に向かった。
「…貴様が、新しく配属されたという提督か?」
「あぁ。永谷喜一だ。…長門、で合ってるよな?…長門って艦はあまり知らないんだよな。乗ってた訳でもねえし」
「まるで、長門以外には乗った事があるかのような言い方だな。…いったい貴様、何歳なんだ?」
「百は越えてる。詳しくは忘れた」
喜一がそう答えると、長門の視線がいぶかしむ物に変わった。
「…ま、多分その辺はぼちぼちわかるさ。それより、鎮守府の全員を集めて欲しい。時間は任せる」
「…任せる、だと?」
「おう。…なんかおかしいか?」
「何を考えている?我々は艦娘、つまり兵器だ。任せるなどと…」
「兵器が話してたまるか。
…そもそも、俺はこの鎮守府じゃ一番若輩だ。最低限は頭に入れては来たが付け焼き刃のテンプレだ。そんなもん状況によって適宜変えるべきだ。上がアレコレ全部指示するのは愚策、任せた方がいい部分は適宜任せるさ」
喜一が言うと、長門は疑うような視線を向け始めた。
「…前任の提督も我々を『信じる』と言っていた。しかし、彼はやがて我々を恐れ、権力を盾に抑圧した!『化け物』と呼び、我々を見下した!貴様が同じことをしない保証がどこにある!」
「保証はない。見極めてくれ。…だがまぁ最低限、『化け物』とだけは呼ばねぇな。ブーメランになるし」
「…なんだと?」
「この話は終わりでいいか?多分集まってもらった時に分かるだろうしな」
そう言うと、喜一は執務室から出た。
喜一が執務室から出ると、ちょうど矢矧が立っていた。
「あら。どうだったの?」
「とりあえず時間は任せて全員を集めてもらうように頼んだ。それと、信頼できるか見極めろ、って言っといた」
「…どうなるかしらね」
矢矧がそう呟いた時、スピーカーから声が聞こえた。
『こちらは大淀です。提督代行の長門さんからの伝言を伝えます。
《鎮守府の全艦娘は、本日20:00に大食堂に集合せよ。新しく配属された提督が信じるに値するかどうか、全員で見極める》との事です』
「…仕事早いな」
「そうね。とりあえず、どんな内容を話すか考えといたら?」
首肯した喜一は、歩き回りながら考える事にした。
19:45。
喜一が大食堂に入ると、既にほとんどの艦娘が集まっていた。
その数分後、一人の艦娘が後から入ってきた。
「ぜぇ、ぜぇ…。
せ、セーフだよね!?」
「遅いぞ鈴谷!20:00とは言ったが、もう少し早く行動しろと!」
「…まぁ、いいんじゃねぇ?多少緩くないと色々固まっちまうしな」
「お、マジで?あざーす!」
「
「それは酷くない!?」
フォローしておいてから、喜一は全力で鈴谷を落としたのである。…まさに外道。
「…さて、と。提督として新しく着任した永谷喜一だ。…まぁ、いくらなんでもポッと出の奴が上司って言われても納得いかないだろうし、時間をかけながら見極めて欲しい」
喜一がそう言うと、大食堂中は静まり返っていたが。
「…ふざけないでよ」
ポツリと、ある艦娘が呟いた。
「あ、曙ちゃん…」
「今更来て、急にふざけた事言ってんじゃないわよ!」
そう叫んだ、曙と呼ばれた艦娘は立ち上がった瞬間に喜一に連装砲を向けていた。
自身に向けられた砲口を見ながら、喜一は肩を竦める。
「まぁ、ふざけた事を言ってる自覚はあるがな。かと言って砲を向けられるのはなぁ」
「黙れ!私達は、もう人間の提督なんか必要ないのよ!」
「…人間って名乗るのには抵抗があるんだがな」
喜一がそう言った直後、発砲音が響いた。
だが、曙が向けていた連装砲ではない。
その後方、立ち上がった陽炎が一瞬で連装砲を向け、隣の不知火と共に放ったのだった。
放たれた計4発の砲弾は、喜一の頭と胸元を吹き飛ばす。
一瞬で血の噴水と化した喜一に、艦娘達は騒然となる。
「陽炎、不知火!何を…」
「始末しました」
「帰れって警告はしてたわ。
…奇妙な事を言ったから、『信頼できない』って判断して撃ったわ」
「いきなり撃つ事はないだろう!これで次に来た者がもっと悪かったならばどうするつもりだ!」
「また撃つわよ!」
「落ち着きなさい!」
矢矧の声と、パァン!という音と共に、食堂中が静まり返った。
「…で、お膳立てはしたわよ」
「悪いな」
ありえない筈の声が聞こえた。
陽炎と不知火、長門が振り向くと。
「いやぁ、まさか一瞬で撃たれるとは思っていなかったな。方向も予想外だった。
…改めて名乗ろうか。提督として配属された永谷喜一だ。言っておく事はまぁ、死ねない哀れな化け物という程度だな」
「あっはははは!着任した当日にもちゃっかり死んでんだ!さっすがは喜一だね!」
「まぁ、ここに着任した俺を初めて殺したのは陽炎と不知火の奴だったな。
…っと、11:55か。魔緒流、書類を金庫に入れてくれ。番号は000で開く」
「ほいほいっと。…終わったよ」
「んじゃ、執務机に隠れるか障壁貼るかしてくれ。死ぬぜ?」
「…あぁ、日課だね?」
そう言うと、魔緒流は障壁を貼った。
そして。
『12:00。昼休憩とします』
直後、喜一は扉ごと消し飛んだ。
着任当日の喜一の死因(2/2)
砲弾 1回
4/6 追記
誤字を修正しました。
誤字に気づいたら教えてもらえると助かります。