ポケットモンスター。略してポケモン。
世界的に人気のゲームコンテンツだ。
アニメは社会現象にもなり、強いユーザーは人びとの関心を集める。
世界大会や対戦番組なども行われる。
俺も日々、レート環境で研鑽を積み、勝敗に一喜一憂する。
そんな毎日のはずだった。
だったのだ…。
「ブラッ。」
悲嘆にくれる俺を心配して母のブラッキーが声をかける。
ポケモンユーザーなら一度は夢見る、この世界へ転生して早四年。
当たり前だか、ポケモンはデータではなく生きものなのだ。
努力値?そんなものあるはずが無い。
コラッタを252体倒したとして、素早くなるのだろうか。
それなら走り込みをした方が早くなる。
ポッポとイワークの体当たり、より効くのはどっち?
体重差を考えろよ。
ゲームとして成立させる為に数値を与えているに過ぎず、現実はそんなに甘くない。
だからなのか、育成の仕方で可笑しな事になる。
バトル中ずっと続くおいかぜや音を立てずに森の中を蠢く虫ポケモン。状態異常無効なノーマル。
モチロン、本人も化物なのも多い。
千里を見通すとか半裸で声がでかいとか口上が必ずスベるとか。
中には冬も半袖半ズボンとか言う短パンおじいちゃんとか負けるたびに祠に逃げるドラゴン使いなんてのもいる。
そう、ゲームの様に甘くはないのだ。
マジで、ゲームの中の環境が天国に思える。
「ブラァ~。」
そう、甘くはないのだ。
ブラッキーが慰めてくれる。
それでも気は晴れない。
俺の腕の中にはすやすやと眠る色違いのイーブイがいる。
俺の両親(転生先)の出会いは母のブラッキーと父のエーフィが恋仲になった事から始まった。
故にちょくちょく卵を産む。
そして、4歳の誕生日に俺はイーブイの卵をもらった。
嬉しかった。そして、俺もこの子と一緒にあの舞台に立つのだと卵のこの子に誓った。
だが、現実は非情だった。
生まれたイーブイは色違いだった。
前世の記憶から俺はとても喜んだ。
だが、周りはそうではなかった。
人間に置き換えて考えよう。アルビノの方と言うのが存在する。
遺伝情報の欠損により先天的にメラニンが欠乏する遺伝子疾患がある人の事だ。
そう、遺伝子疾患なのだ。
紫外線に弱く、皮膚癌になりやすかったり、視覚に障害が現れたりするらしい。
ポケモンはどうなのだろう。
少し考えれば分かるがポケモンの色違いも遺伝子異常や欠損であり、
その多くが何らかの疾患を抱えている事が多く、知識のない者が育てる事は非常に難しい。
最悪、命の危険がある。
実際この子は他よりも体がとても小さい。それに呼吸器に異常が見られるともいっていた。
父も母も手放すように言って来た。兄もしょうがないと言うしかなかった。
イーブイがよければまた卵が生まれる。
かわいそうだがこの子はポケモンセンターに預けるしかない。
それでも俺は…。
ゲームではいくらでも逃がす事ができた。孵化厳選などどリセットボタンに何度も手をかけた。
でもここはゲームじゃない。リセットは出来ない。逃がすなんてもってのほかだ。
自分で卵を暖めた。
この子に会える日を指折数え、TV画面の先で共に戦う夢を見た。
「ブラぁ~。」
俺には腕の中のこの子を見捨てる事は出来なかった。離れるなんて考えたくなかった。
生まれたときの様に擦り寄って笑ってくれればそれでいい。
バトルなんてしなくてもチャンピオンになれなくてもそれでも…。
俺はこの子と一緒にいたい。
この状況で最もマシな事は歳の離れた兄にそれなりの権限があったこと。
「一週間以内。それまでにどうするか決めてくれ。」と
良くも悪くも俺の決断を優先すると。
離れたくない。だけど見殺しにするわけにもいかない。
だから俺は記憶にすがるしかなかった。
父は歴史研究家。母は舞妓。兄の名はマツバ。
この街の名はエンジュシティ。
そう、ルギアと対になる存在で、ジョウト地方の伝説に語られる伝説のポケモン。
ライコウ・エンテイ・スイクンを死者蘇生させたという伝説が残されており、隠れ特性は再生力。
羽もなければ資格もない。
それでも、俺は…。
マツバとイブキはジムリーダー成り立てで15くらい?
キキョウ、ヨシノ、コガネ、アサギは先代の設定。
考えるの面倒だったからタイプはそのままで。