数字では無い生身の君と   作:水色絵具

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VSスズのとう

「準備は出来た。」

 

両親の財布から抜けるだけお金を抜き、買えるだけのゴールドスプレーを買った。

 

この数日スズのとうの修行僧を監視し中に入る機会を伺った。

 

一番厄介な兄にはブラッキーがくろいまなざしをエーフィがふういんをしてくれた。

 

あの二匹も自分の子供がこのままなのは嫌なのだろう。

吠えられ、いちゃもんをつけられ、ちょうはつ、あまえる、うそなき、みがわり、リフレクターなどいろいろ妨害?していたが最後は協力してくれた。

 

ちなみにこの世界、覚える技はポケモンの資質と努力しだいなのだ。

 

ゲームでは覚えなかった技を使えたり、逆に覚えるはずの技を覚えなかったりする。

個体によってマチマチだ。

 

ジムリーダーなどオリジナル技とか普通に使ってるしね。

 

 

「さて…。」

 

本当はイーブイも連れて行くべきなのかもしれないが、あの子の体に負担はかけたくない。

ホウオウとさしで交渉するしかない。

 

そして俺はゴールドスプレーを体に吹き付ける。

 

リーリエはこれでポニの峡谷を渡りきったのだから理論上はイケルはず。

 

「しつれーしまーす。」

 

深夜2時くらい?無用心にも施錠してない扉を開ける。

壊すつもりだったから、これはありがたい。

 

薄暗い中目を凝らしてみるとゴース、ゴースト、ムウマ、コラッタ、ラッタ。

果てはゲンガーやムウマージまで。

 

「兄さんのポケモンじゃない…はず。」

 

気付いていたら絶対に止めるはずだ。

なんせジョウト地方の歴史的な建造物に無断で立ち入っているわけだし。

 

「兄さんのクビも飛ぶはずだし…。」

 

カネのとうの様にやけたとうになってしまったら目も当てられない。

 

あっ、それとこの世界、通信進化とか懐き進化とか普通に野生で出てくるからね。

実際ゲームでもニョロトノなんかは呼び出しで出てきたからね。

 

「それでもだ。」

 

ここで退くわけにはいかないのだ。

ここにホウオウがいる確証もない。薄い望みだって分かってる。下手をすれば野生のポケモンに殺される可能性だって低いわけじゃない。

 

それでもなんだ。

 

あの子と一緒にいるにはもうこれしか方法はない。俺は意を決して中に踏み込む。

 

暗い塔の中に赤い瞳や青い瞳が不気味に浮き上がってくる。

気付いているのかいないのか、動き回るその瞳を避けるように腹這いに伏せる。

 

「匍匐前進で進むしかないか。」

 

時間が掛かろうとも少しづつでも進むしかない。

俺が死んでしまえはどの道あの子は、施設行きであり施設生きしかない。

おそらく、この広い世界を見ることもかなわないだろう。

 

俺は新ためて覚悟を決めると、音を立てないように少しづつ進み始める。

 

目が慣れてくると塔の広さが身にしみて分かる。

高さはそうでもない。6階くらいだ。

ゲームの様に階段が複数あるのも見受けられない。

RPGに良くある複雑な仕掛けもなさそうだ。

 

ただ、結構な広さと多くのポケモン。主にゴーストタイプだ。

 

この世に未練がある人間やポケモンは死後、ゴースとタイプとしてこの世に留まる事があるらしい。

 

『シ、シ、シ…。』

 

どこからともなく笑うような声が聞こえる。

 

『グスぅ…、うぅ…。』

 

泣くような声も『キィゥ。』と言う、コラッタたちの声も聞こえる。

 

「はぁ…はぁ…。」

 

真っ暗の中、浮かび上がる不気味な瞳と不気味な声は二階にたどり着いても止む事はない。

 

「体力もやばいけど心が先に折れる。」

 

ゲンガーなんかはゲームでも明確に人の命を奪うと明記されてる危険な部類のポケモンだ。

でもこの世界はバトルが魔境なだけでなく野生もゲームと違い理不尽なのだ。

 

トレーナーの資格もない子供でも手持ちのポケモンをもっている理由。

そう、ポケモンの中には明確な殺意を持って人間を攻撃するものもいるのだ。

 

しかも、群れバトルであり仲間も呼ぶ。10や20できかない場合も多い。

この間など、野生のメノクラゲに集団で襲われ亡くなった海パンやろうの特集をTVでしていた。

 

ポケモンを家族の様に扱い、人に友好的なポケモンも多い。

逆にポケモンを道具の様に扱うロケット団などがいるように、人間に敵対的なポケモンもいる。

そのどちらにも属さず、一生、人と関わらない未開の地に住むポケモンもいる。

 

人それぞれ、ポケモンそれぞれなのだ。

だからこそ、死なないように対策を取らないといけない。

 

「まぁ、その対策の一つである手持ちのポケモンに入れ込みすぎて死にそうなんだが…。」

 

俺など、ここのポケモンたちにとっては餌にしかならないのだろ。

 

「でも、決めたから…。」

 

あの子の顔を思い浮かべ折れそうな心に活を入れなおす。

 

「絶対に諦めるわけにはいかないんだ。」

 

俺は再び前に進む。

諦めるくらいなら、こんな所に来てなんかいないんだから。

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