萌もんは存在しないのであしからず。
「なにをいって…。」
『私の服装を見て気付かないかな?』
巫女服だ。赤い所が青いけど…。
『そう、巫女服。神に仕える服装って事は?』
お姉さんは俺の前でクルッと一回転しながらそう応える。
「まさか…。」
『ふふ。発言次第ではもしかしたら…ね。』
望みが叶う。このお姉さんとホウオウとの繋がりは分からないが可能性があるなら…。
俺は目を閉じる。
応えは決まっている。罪悪感はある。それでも…。
「あの子を…。俺はイーブイを取る。」
『あら、多くの人はそんなの選べないって言うと思うのにね。』
俺にそれを選ぶ力はない。
羽を得る運命力もチャンピオンのような実力も…。
「俺には物語の主人公にはなれない。ヒーローの様に誰も彼も助けて守る。そんな力はない。」
今回の件で身に染みた。
ホウオウやルギア。多くの伝説の居場所を知り、今後の世界の行く末を知っている。
主人公達と協力して悪の組織を潰してやる。なんて考えた事もあった。
だが、そんな知識があっても生まれてきたイーブイ一匹、助けてあげる事ができない。
出来たのはただ、伝説に泣きつくことだけだった。
「だから、本当に大切なものだけは譲らない。」
抱きしめて、その体温を感じてしまったから…。
「他人の元に生まれてきたらこんな事はしなかったんだろうけど。俺のポケモンだから。」
その色違いの白い体毛も、恐る恐る寄り添って来るそのしぐさも…。
「皆の言う通り、手放せば楽になれるはずなのに…。どうしても見捨てれないんだよ。」
自然と涙が溢れてくる。
悔しいのか悲しいのか。どうにも言い表せない涙がただただ流れる。
『そっかぁ。』
お姉さんは始めに見せた慈しむような笑顔を浮かべる。
『ゲンガー。』
お姉さんが呼ぶとお姉さんの影からゲンガーと白い塊が出てくる。
って…。
「イーブイ!。」
俺はイーブイに駆け寄る。
よくみると、先ほどゲンガーのあくむに出てきたまんまのイーブイが出てきた。
「血が…。」
あくむのように前足の爪は割れ、血が滲んでいる。
呼吸は…。
「よかったぁ。生きてる。」
俺は泣きながら抱きしめる。
イーブイの体は温かく、確かに生きている事を実感し、また涙が溢れてくる。
『ブィ~。』
イーブイが掠れた声で俺の胸に擦り寄ってくる。
『さっきのあくむは途中までは本当なのよ。家族が心配して取り乱しているのも、消えた貴方を探して傷ついたその子もね。』
「兄さん達が…。」
『覚悟は認めてあげるけど、今度からは周りの事も考えること事ね。』
そうだよな。イーブイが居なくなるのは見過ごせないけど、俺が居なくなれば今の俺とおんなじ気持ちに周りがなるわけなんだし…。
そのせいでイーブイだって傷ついてこんな事になった訳なんだから。
『ふふ。アレなら何が何でも全部助けるなんて言える一途なのが好みだろうけど、私は君みたいに情熱的かつきちんと自身を弁えながら最善の選択を選ぶ方が好みだからね。』
最善…なのか?
『たしかに無謀な賭けだったけど、こんな真似をしなければそのイーブイ、数ヶ月で死ぬ運命だからね。』
「えっ…。」
『その子はそう長くない。』
お姉さんがそう呟く。
『ゲンガー。』
お姉さんがそう問いかけるとゲンガーは影の中から緑の石を取り出した。
「リーフの石?」
そうだ。TVで何度か見たことがある。
『今から私の力を利用してそのイーブイを強制的に進化させる。』
お姉さんが受け取ると、リーフの石が緑色に発光し始める。
『この地の伝説は巡る力を示す。輪廻を時を世界を…。そして季節を。』
ホウオウとセレビィ、そしてルギアの事か?
『春を夏を…、巡る自然の営みを。それを彩る人とポケモンの有様を見守り、管理する事こそ神に与えられた私の使命ならば…。』
その石はお姉さんの手を離れるとまるで引き合うようにイーブイの方へ近づいてきて、イーブイもまたその光に手を伸ばす。
「イーブイ?」
発光するリーフの石が触れるや否や、俺の腕の中でイーブイの体が進化の光に包まれる。ただし、映像で見たものとは違う緑色の進化の光だ。
『フリィ〜。』
眩しい光の中から出て来たのはリーフィアだった。
「リーフィア?」
『フリィ?』
イーブイだった頃より随分と大きくなった。
それでも、ウチのエーフィやブラッキーより小さい。でも、
「って、リーフィア。」
前より、元気そうに見える。前は弱々しくじゃれつくくらいだったのに、今は完全に押し倒されてる。
『もう、大丈夫そうね。』
大丈夫なのか?
「ええ、進化とは適応することなのよ。イーブイは生きていく為にリーフィアとして環境に適応したの。その身体ごとね。』
ん?要するに、リーフィアに進化する際に生きていけるように身体を作り上げたって事なのか?
『大体、そんな感じかな。まぁ、わたしの力があって出来た力技なんだけどね。』
確かに。普通、リーフの石でリーフィアに進化はしない。お姉さんが色々手を加えたのだろう。
「本当にありが…。」
俺かお礼を言おうとすると、お姉さんか人差し指を俺の唇に押し当て言葉を止める。
『お礼はまだダメ。』
そう言うと、お姉さんは懐から一枚の羽根を取り出した。
『大きくなって、私にお礼をしに来て?待ってるから。』
そう言って、俺にその羽根を渡す。
銀色の、しかしとても柔らかくしなやかな羽根だ。
「これって、銀色の羽根?」
って事は…。
羽根から視線を戻すと、そこにはもうお姉さんはいなかった。
『フリィ?』
リーフィアも不思議そうな声を上げる。
記憶を辿れば分かる事だった。異世界の神であるネクロズマを除けばポケモンの世界に神は一体。ホウオウは神ではなく伝説。神に仕えるのが各地の伝説だとすれば…。
「ありがとうございます。いつか必ず。」
俺は改めて消えたお姉さんにお礼を告げる。
ささやかな決意とともに。
「ゲンガーも本当にありがとう。君がいなかったら、俺達はどうなっていたことか。」
『キ、シ、シ…。』
ゲンガーが照れた仕草で頭を書きながら笑う。
すると景色が歪み、現れた景色は家の前だった。おそらくテレポートだろう。
「ありがとう、ゲンガー。君は俺達の命の恩人だよ。」
もう隣にはいないゲンガーに改めて感謝を伝える。それと…。
「これからよろしくな、翠。」
『フリィ?』
「俺の名が楓だろ?紅と翠、紅葉と若草。結構お似合いだろ?」
手放せと言われていたから、名前をつけることができなかった。
でも、これで俺とリーフィアはキチンとしたパートナーだ。
「よろしくな、相棒。」
『フリィ~!』
さて、今回の事で色々思う事もある。
やりたい事もしなくてはならない事もたくさん出来た。
「さて、ただいま。」
俺は家に帰る。短い旅だったが確かに旅だった。
「「「えっ?」」」
3人の家族が気の抜けた表情で出迎える。
ゲンガーのあくむから考えると俺が居なくなった事に相当慌てていたからなぁ。
まぁ、イーブイの事で俺が思い詰め過ぎていた事も要因の一つだろけどさ。
「ちょっとお願いがあるんだけど…。」
少し設定を…。
昔から思っていた事だけど、般ポケにやられる伝説って?
ウラウラ島でカプ・ブルルが軽く制裁して町一個軽く消せるのなら本気出せば準伝で島一個消えるはず…。
それで準伝説クラス。伝説や神ならいわんや地方や世界まで…。
ってことで、いくら束になった所で伝説・準伝説には勝てません。
マスボをいくら投げた所で捕まりません。
人に協力する事はあっても人の所有にはなりません。
なので、悪の組織が暴れても利用するどころか復活さえ出来ませんので、この作品では悪の組織が暴れますがその結果伝説を利用する段階で何も起きません。