【お試し連載】フューチャーカードバディファイト ~炎の剣士の輝跡~   作:巻波 彩灯

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第2話:新しい仲間とこれから

「朝から元気だなぁ~……」

 広海は呆れたような目で砂浜ではしゃぐ少女達を見つめる。まだ誰も来ていない旅館の眼前にある海辺で、千歌達は入れ替わり立ち代わり、対戦相手を変えてファイトを繰り返していた。

「これが若さというものだな」

 隣でレクセアンがからかうように呟き、階段に腰かけて眺めている広海の顔に視線を向ける。蛇にも似た顔立ちが憫笑とも取れる微笑みを浮かべていた。

「悪かったな、三十手前のおじさんでよ」

 まるで子供が拗ねたような口調で言い返し、広海は眉根を寄せていく。目の前でファイトしている少女達と十歳も離れていて、彼女らと比べて朝から元気でいられる体力はない。

 というより、千歌達が元気すぎるのではないかと思う程だ。確かに内浦は、田舎だから人が行き交う量は多くないから、その分だけ伸び伸びと活動する事ができる。

 けれど、ここまで元気に動き回るのは千歌達だけだろうと思う。早朝からファイトを何度も繰り返すのは、今のところ彼女達しか見た事ない。

「まぁ、三十手前でもこの涼風を浴びるのは気持ちいいだろ?」

「そうだな。なおかつ、面白いファイトが何度も観戦できるんだから特等席だ」

 相棒の一言に広海も眉根を開いて、実年齢よりも若く見えるぐらいな快活な笑顔で返答。まだ日差しが砂浜全体を照らしていない中、海から運ばれる潮風が体全体を包み、数少ない涼を与えてくれる。

 こんな風に早起きするのも悪くないなと思いつつ、広海は視線を少女達の方へと向けていく。

 対面しているのは、曜とみや。近い内にショップ大会があり、千歌と曜、果南の中学生組はそこに参加する予定で今はその為の特訓というところ。

「頑張れよ」

 穏やかに青の双眸を細め、静かに微笑みながら広海はそのファイトを観戦する。

 

 

 

「翼を得た勇ましい竜達は蒼き空を駆け抜ける! ルミナイズ、『蒼穹の翼』!」

「黒き竜達は死と破壊を求め、虚空を旅する! ルミナイズ、『黒の衝動』!」

 二人は元気よく「オープン・ザ・フラッグ」と叫び、フラッグを公開。浜辺に立てられた旗は、潮風で穏便に靡いている。

「ドラゴンワールド!」

 みやの手札:6/ゲージ:2/ライフ:10/バディ:蒼穹騎士団 ドラムバンカー・ドラゴン

 

「ダークネスドラゴンワールド!」

 曜の手札:6/ゲージ:2/ライフ:10/バディ:黒き死竜 アビゲール

 

「先攻は私がもらうね。チャージ&ドロー!」

 みやの手札:6→5→6/ゲージ:2→3

 

「まずは〈竜剣 ドラゴウイング〉をゲージ1払って装備!」

 翼のようにも見える黒の両手剣を握り締め、温厚な彼女の口から出たとは思えないような力強く語気で次の句を継ぐ。「次に〈蒼穹騎士団 スレインジ・ドラゴン〉をレフトにコール!」両手に注射器のような武器を携えた青い竜が姿を現す。

 

 みやの手札:6→4/ゲージ:3→2/みや:竜剣 ドラゴウイング/レフト:蒼穹騎士団 スレインジ・ドラゴン

 みや:竜剣 ドラゴウイング/攻4000/打撃2

 レフト:蒼穹騎士団 スレインジ・ドラゴン/サイズ1/攻4000/防1000/打撃1

 

「スレインジの能力で登場時にセンターが空いているからライフ+1!」

 クールな出で立ちから「こいつを受け取りな!」と陽気な語調でスレインジは注射器を一つ射出する。注射器は途中で分解され、そよ風のようにみやの周りを包み込んでいく。

「さらにライフが回復した時、このターン中、ドラゴウイングの打撃力を+1するよ!」

 そよ風を受けた翼が大きくなり、より一層頑健そうな印象を与える。穏やかな少女に無骨で堅牢な剣という一見するとアンバランスな組み合わせだが、どことなく似合っているのは彼女の裡に秘めたる闘志がドラゴウイングを通じて溢れ出ているからだろうか。

 

 みやのライフ:10→11

 みや:ドラゴウイング/打撃2→3

 

「アタックフェイズに入るよ! ドラゴウイングで曜ちゃんにアタック!」

 砂浜という悪地をものともせず力強く蹴り出し、華奢な体格から想像もできないような剽悍な動きで攻め立て、豪快にドラゴウイングを振るっていく。黒の一閃は強勢で受け止めるのには、文字通り骨が折れるかのよう。

「ここは受けるよ! うわっ!」

 両手をクロスさせて受け止める。強烈な一撃からやってくる衝撃からか、若干苦悶の表情を浮かべ、声を上げた。けれど、次の瞬間には立ち直り、楽しそうに水色の双眸を輝かせて細めていく。

 

 曜のライフ:10→7

 

「ターンエンド!」

 みやの手札:4/ゲージ:2/ライフ:11/みやドラゴウイング/レフト:スレインジ

 

「私のターンだね。ドロー、チャージ&ドロー!」

 曜の手札:6→7/ゲージ:2→3

 

「キャスト、〈ブラック・ドレイン〉! みや姉にはデッキの上から3枚をドロップゾーンに置いてもらうよ!」

 掌から黒の波動弾を生み出し、みやに向かって放出して彼女のデッキから3枚をドロップゾーンへ落としていく。「そして私のゲージを+1!」同時に曜のデッキの上から黒いエネルギーがゲージに溜まり、まるで吸収したように思わせる。

 曜の手札:7→6/ゲージ:3→4

 

「やるね、曜ちゃん……最初からデッキアウトの方も狙っている?」

「それはどうかな!」

 みやの問いに対し、にやりと不敵に笑い返したら、曜は楽しげに声音を弾ませて次の一手を打つ。

「〈黒き不夜城 ディムボルギル〉をライトにコールするよ!」

 名前に城を冠しているだけあって、彼女の右手側に雄々しい黒い竜が出現して鎮座する。「さらにみや姉のドロップゾーンが3枚以上あるから、攻撃力と防御力を+3000!」紫のオーラを纏い、戦意を昂ぶりを示すかのように静かで重々しい唸り声を立てていく。

 

 曜の手札:6→5/ライト:黒き不夜城 ディムボルギル

 ライト:黒き不夜城 ディムボルギル/サイズ2/攻3000→6000/防3000→6000/打撃2/[移動]

 

「〈死海銃 ヴァイスビロー〉をゲージ1とライフ1払って装備!」

 白銀に水色のアクセントが走るカートリッジ式のライフル銃が右手に握られている。「さらにヴァイスビローにゲージを[装填]するよ!」銃身からカートリッジを取り出し、弾倉に弾丸を込めていく。装填作業している彼女の顔はいつになく真剣で険しい。

 

 曜の手札:5→4/ゲージ:4→3→2/ライフ:7→6/曜:死海銃 ヴァイスビロー(ソウル:0→1)/ライト:ディムボルギル

 

死海銃 ヴァイスビロー

ダークネスドラゴンワールド

種類:アイテム 属性:黒竜/水/武器

攻4000/打撃2

■[装備コスト]ゲージ1とライフ1払う。

■相手のドロップゾーンの枚数が3枚以上なら、このカードの打撃力+1!

■[起動]“射撃!”君のアタックフェイズ開始時、このカードのソウルを好きなだけドロップゾーンに置いてよい。そうしたら、相手の場のモンスター1枚を破壊し、さらにドロップゾーンに置いた枚数分だけ相手にダメージを与える。「射撃」は1ターンに1回だけ使える。

[ソウルガード]/[装填3](君のメインフェイズ中、1ターンに1回だけ君のゲージから1枚選んで、このカードのソウルに入れることができる。数字はこのカードに入れられるソウルの枚数の上限を表しているぞ!)

 

「みや姉のドロップゾーンの枚数が3枚以上だからヴァイスビローの打撃力を+1!」

 装填作業を終え、普段の快活な笑みを浮かべる曜。右手のライフル銃は彼女の闘志に応え、水色のラインが光り輝く。

 

 曜:ヴァイスビロー/打撃2→3

 

「さらにキャスト、〈アビス・シンフォニア〉! ゲージ1払って、カードを2枚ドローするよ」

 曜の手札:4→3→5/ゲージ:2→1

 

「〈黒き死竜 アビゲール〉をゲージ1払って、レフトにバディコール!」

 彼女の隣で時を待っていた黒竜は力強く翼を羽ばたかせ、左手側に並び立つ。「バディギフトで私のライフを+1!」アビゲールが纏っていた紫のオーラが伝播し、曜に力を与えていく。

 

 曜の手札:5→4/ゲージ:1→0/ライフ:6→7/曜:ヴァイスビロー/レフト:黒き死竜 アビゲール/ライト:ディムボルギル

 レフト:黒き死竜 アビゲール/サイズ1/攻6000/防1000/打撃2

 

「アタックフェイズ! まずはアビゲールでみや姉にアタックだよ!」

 曜の言葉を受けて、「俺の攻撃を受けてもらうぞ」と語気を強めながらアビゲールは疾駆する。みやに迫っていく姿は、まさしく黒の弾丸そのもの。人間の目では追うの至難としか言いようがない。

「受けるよ!」

 真正面からやってくると察したのか、みやはそのままドラゴウイングを振るう。剛健なもの同士が激しくぶつかり合い、火花を散らす。アビゲールもみやも心底楽しそうな笑顔で互いを見つめ、一瞬間後には離れた。

 

 みやのライフ:11→9

 

「次はディムボルギルでみや姉にアタック!」

 重々しい響きを立て、ディムボルギルは突進していく。アビゲールと比べて速さこそないが、その分力強さがあり、見る者を圧倒するような迫力で迫り立てていく。並大抵の者ならば迫力に押し負け、足を震わせながら硬直しているだろう。

「これも受ける!」

 しかし、みやは勇敢に立ち向かい、堂々と真っ向からドラゴウイングを振り下ろして力勝負に出る。流石に力の差は歴然で、彼女の足が後ろに下がっていく。「流石に勝てないよね」分かっていたのか、苦笑いをして距離を取った。

 

 みやのライフ:9→7

 

「最後はヴァイスビローでみや姉にアタックするよ!」

 ディムボルギルが戻ったタイミングで曜は銃を構え、狙いを定めたらトリガーを引く。重厚な銃声が轟き、放たれた水色の弾丸は何の躊躇いもなくみやへと一直線に奔る。

「キャスト、〈ドラゴンシールド 青竜の盾〉! 攻撃を無効化にして、ゲージを+1!」

 水色の弾丸を阻む青い竜の頭を模った巨大な盾。鈍い音を響かせながら弾丸を受け止め、その力をみやのゲージへと変換していく。

 

 みやの手札:4→3/ゲージ:2→3

 

「ターンエンドだよ!」

 曜の手札:4/ゲージ:0/ライフ:7/曜:ヴァイスビロー/レフト:アビゲール/ライト:ディムボルギル

 

「ここからは飛ばしていくよ! ドロー、チャージ&ドロー!」

 みやの手札:3→4/ゲージ:3→4

 

「まずはライトに〈蒼穹騎士団 システミックダガー・ドラゴン〉をコールするよ!」

 背中に翼を生やした薄紫の肌が印象的な竜が静かに降り立ち、猛々しく嘯く。涼やかな空気を震わせ、熱を波及していくよう。

 

 みやの手札:4→3/みや:ドラゴウィング/レフト:スレインジ/ライト:蒼穹騎士団 システミックダガー・ドラゴン

 ライト:蒼穹騎士団 システミックダガー・ドラゴン/サイズ1/攻2000/防1000/打撃1

 

「さらにセンターに〈蒼穹騎士団 ブーメラン・ドラゴン〉をゲージ1払ってコール!」

 通常のブーメラン・ドラゴンと同じ体形だが、蒼穹を現しているかのように体色が青い。心なしか普段の姿よりも頑健に見え、一段と頼もしさを感じさせる。相も変わらず唸り声を立て、士気が高い事を示していた。

 

 みやの手札:3→2/ゲージ:4→3/みや:ドラゴウイング/レフト:スレインジ/センター:蒼穹騎士団 ブーメラン・ドラゴン/ライト:蒼穹システミックダガー

 センター:蒼穹騎士団 ブーメラン・ドラゴン/サイズ0/攻3000/防1000/打撃1

 

「システミックダガーの効果を発動するよ!」

 再び吹くそよ風。今度はシステミックダガーが生み出し、みやの服を優しく靡かせる。「蒼穹騎士団」の名前を含むモンスターが登場したからライフを+1して、カードを1枚ドロー!」空色の髪はふわりと舞い、双眸は穏やかながらも芯が熱い闘志を宿していく。

 

 みやの手札:2→3

 

「ライフが回復したから、このターン中、ドラゴウイングの打撃力を+1するよ!」

 もう一度ドラゴウイングは刀身を大きくさせ、力強さを増す。先程よりも重量が増したというのに、みやは余裕そうに一つ二つ振るい、強風を生み出して力を誇示。吊り上がった目尻は少しだけ鋭くなっていた。

 

 みや:ドラゴウイング/打撃2→3

 

「アタックフェイズに入るよ!」

 強勢な口調でみやは宣言すると、「ディムボルギルをセンターに[移動]させるよ!」曜はすぐさまディムボルギルを眼前に移動させる。

 二人の間を阻むかのようにディムボルギルは静かに佇み、堅牢な城のように聳え立つ。これ以上に頼れるものは中々いないだろう。

 

 ディムボルギル:ライト→センター

 

「それならブーメラン・ドラゴンとスレインジでセンターに連携アタック!」

 スレインジが注射器から爆弾を放っている間に、みやはブーメラン・ドラゴンの尾を掴み、ハンマー投げの要領で遠心力を利用して投擲。

 か弱そうな少女が投げたとは思えないほどの強勢を保ったままブーメラン・ドラゴンは、風を切りながらディムボルギルへと駛走する。

「キャスト、〈デビル・スティグマ〉! ディムボルギルを破壊して、ゲージを2枚置き、ライフを1点回復!」

 ディムボルギルの足元に爆弾が放り投げられ爆発する寸前に、曜がヴァイスビローで覿面にいる仲間を撃ち抜き、自身の力に変換していく。

 直後、爆発が起き、辺り一面は砂煙に覆われる。その中をブーメラン・ドラゴンが高速回転しながら突進していくが、虚空を切り裂いただけ。渾身の一撃は空振りに終わってしまう。

 

 

 曜の手札:4→3/ゲージ:0→2/ライフ:7→8/センター:ディムボルギル→なし

 

「なるほど……それなら、ゲージも増やせるね」

 曜の一手に感嘆し、みやは穏やかに笑いかける。戻ってくるブーメラン・ドラゴンの姿を見て、「ブーメラン・ドラゴンの能力でこのカードを手札に戻して、ライフ+1するよ」受け止める体勢に入り、難なく手札に戻していく。

 

 みやの手札:3→4/ライフ:8→9

 

「うわ~、みや姉のライフが徐々に回復していくよ~!」

「ふふっ、これが蒼穹騎士団の特徴だからね」

 驚嘆の声を立てる曜に、みやは穏和ながらも強気な笑みを浮かべては、「次はシステミックダガーでレフトにアタック!」次の一手を繰り出す。

 彼女の指示を受けてシステミックダガーはその翼を力強く羽ばたかせ、猛烈な勢いで疾走する。空を専門としている部隊にいるだけあって、その速さは折り紙付きだ。

「アビゲールはやらせないよ! キャスト、〈ゲイル・デストラスクション〉!」

 システミックダガーの突進を阻むようにアビゲールの顔とよく似た盾が出現。「システミックダガーを破壊して、みや姉のデッキの上から2枚をドロップゾーンに置いてもらうよ!」口が開かれ、システミックダガーを飲み込み、骨や肉を噛み砕いていく。

 そして咀嚼した分をエネルギーに変えて、黒の魔弾を生み出し、みやに向かって放出。魔弾自体はみやの一閃で弾かれたものの飛散した欠片が、彼女のデッキに直撃してドロップゾーンへと導いた。

 

 曜の手札:3→2/ゲージ:2→1

 

「私だって、そう簡単に破壊させないよ。キャスト、〈ドラゴ・ポンド〉!」

 みやの体を空色のオーラが包み込み、盾の中に飲み込まれたシステミックダガーへと伝播していく。「システミックダガーを場に残して、ライフを+2!」やがてシステミックダガーは盾を突き破り、生来の勢いをそのままにアビゲールへ隕石の如く猛進する。

 

 みやの手札:4→3/ライフ:9→11

 

「アビゲール、ごめん!」

「気にするな。必ず戻ってくる」

 曜は両手に合わせて、申し訳なさそうな表情を浮かべ、謝罪の意を告げる。水色の瞳は悔しさを滲ませ、相棒への申し訳なさを伝えているよう。

 それを感じ取ったのか、アビゲールは怒る事も落ち込む事もなく極めて平静な声音で返答し、自身の運命を受け入れて姿を消した。

 

 曜のレフト:アビゲール 撃破!

 

「ラストはドラゴウイングで曜ちゃんにアタックするよ!」

 もう一度力強く蹴り出し、みやは駛走する。華奢な見た目とは裏腹に閃く黒の太刀筋は、豪快で剛健。さらに先程よりも鋭さを増し、風を切る音がより鋭利になっていた。

「受けるよ!」

 持ち前の反射神経と瞬発力で受け止める曜。体格差やドラゴウイングの質量、みやの強勢な一閃から冷や汗を流し、攻撃を受けるのに苦労しているのが目に見えて分かる。それでも彼女の顔から笑みが消える事はなかった。

 

 曜のライフ:8→5

 

「これでターンエンド!」

 みやの手札:3/ゲージ:1/ライフ:11/みや:ドラゴウイング/レフト:スレインジ/ライト:蒼穹システミックダガー

 

「まだまだ負けないよ! ドロー、チャージ&ドロー!」

 曜の手札:2→3/ゲージ:1→2

 

「まずはキャスト、アビス・シンフォニア! ゲージ1払って、カードを2枚ドローするよ!」

 曜の手札:3→2→4/ゲージ:2→1

 

「〈黒き揺籠 クレイブル〉をライトにコールして、次に〈黒き鬱屈 バルザム〉をレフトにコール!」

 黒い体とオレンジ色の爪が目を引く四足歩行型の竜が、猛々しい咆哮を上げて姿を現す。ディムボルギルとはまた違った剛健さがあり、好戦的な目つきで獲物を探していた。

 反対側には漆黒の蛇体に翼を生やした竜が出現。鬱屈の名を冠しているだけあって、陰鬱な雰囲気を醸し出し、クレイブルとは対照的に静かに獲物がやってくるのを待っているよう。

 

 曜の手札:4→2/曜:ヴァイスビロー/レフト:黒き鬱屈 バルザム/ライト:黒き揺籠 クレイブル

 レフト:黒き鬱屈 バルザム/サイズ1/攻3000/防1000/打撃2

 ライト:黒き揺籠 クレイブル/サイズ2/攻6000/防1000/打撃1

 

「さらにバルザムの効果で、バルザムが登場した時にクレイブルがいるから、ゲージ+1!」

 曜のゲージ:1→2

 

「そして、キャスト、ブラック・ドレイン!」

 今度はヴァイスビローを構えて、狙いを定めたら引き金を引き、黒の弾丸を放つ。「もう一度、みや姉のデッキトップから3枚をドロップゾーンに置いてもらうよ!」高速で飛来していく黒の弾丸は、いとも簡単にみやの剣撃で防がれてしまったが、飛散した破片がまたもや彼女のデッキに触れて、上から3枚をドロップゾーンに置く。

「さらに私のゲージも+1!」

 始終を見届けた後、黒いオーラが曜のデッキに纏い、ゲージをチャージする。まるで名前の通り、みやのデッキからエネルギーを吸収したかのように。

 

 曜の手札:2→1/ゲージ:2→3

 

「アタックフェイズ! ヴァイスビローの“射撃!”を発動!」

 そのままのポジションで照準を変更。曜は次のターゲットに真剣な眼差しと銃口を向けて宣言する。「ソウルを1枚捨てて、システミックダガーを破壊! そして、みや姉にダメージ1だよ!」もう一度トリガーを引き、弾丸を撃つ。

 乾いた銃声と共に放たれた一発は、今までよりも重々しく、けれど今まで以上の速度で迫っていく。

 

 曜:ヴァイスビロー(ソウル:1→0)

 

「随分と強引だね……でも、どれも受けるよ!」

 みやは少しだけ苦笑を浮かべて所感を述べる。ブラウンの瞳はライトにいるシステミックダガーに向けて、申し訳なそうに謝罪の意を送っていく。彼女の対応にシステミックダガーも不満を表す事なく、むしろ自分の役目が果たせたおかげか、満足げな表情で応えて即身で弾丸を受け止めた。

 システミックダガーが弾丸に貫かれた後、水色の弾丸は意志を持ったかのように曲がり、みやの元へと走って彼女の身を穿つ。

 

 みやのライフ:11→10/ライト:蒼穹システミックダガー→なし

 

「だって、このターンで決めないと厳しいんだもん!」

 僅かな焦りを滲ませて返答し、弾丸の行方を見届けたら、水色の双眸をさらに鋭利に細めて言葉を紡ぐ。「まずはバルザムでみや姉にアタック!」バルザムはしなやかな動きでみやに迫り、口から漆黒の炎を吐き出す。

「確かにそうかもしれいないね……攻撃を受けるよ!」

 それでもみやは炎を薙ぎ払い、直接攻撃を受けないように防ぐ。しかし、流石に直に炎と対面して熱かったのか、眉間に皺を寄せて鋭利な目つきはさらに鋭さを増す。一通り攻撃が終わると嘆息を吐き、目尻も穏やかになっていった。

 

 みやのライフ:10→8

 

「次は……クレイブルでアタック!」

 右手側を一瞥して逡巡する曜。クレイブルには攻撃でモンスターを破壊すれば、相手の山札の上から数枚をドロップゾーンに置く能力がある。しかし、この状況でそれを使うべきか迷ったのだろう。

 彼女の出した答えはファイターへの直接攻撃、クレイブルも拒否する事なく、猛々しくオレンジ色の爪を振るって激しく攻め立てる。

「これも受ける!」

 オレンジ色の一閃を一つ一つ確実に捌いていく。ドラゴウイングとクレイブルの爪が衝突する音は、金属同士がぶつかったように甲高い。また激突する度に火花が激しく散り、どれだけ激烈な攻防を繰り広げているかを物語っている。

 

 みやのライフ:8→7

 

「最後はヴァイスビローでみや姉にアタックするよ!」

 力強く語勢で曜は宣言し、銃口を再びみやの方へ移す。彼女の闘志に呼応してか、銃身に走る水色のラインが光り、銃にも意思があるかのように思わせる。真剣な顔つきのまま、曜はトリガーを引いて水色の光弾を撃ち出した。

「流石に3点は……ううん、ここも受けるよ!」

 自身の手札を一瞥して、判断に迷う素振りを見せるが、結果はドラゴウイングを盾にする行動に出る。ぶつかった瞬間、水色の光弾が如何に猛烈な勢いで飛来したのか分かるぐらい鈍い音が響き、みやの表情も少しだけ歪む。

 

 みやのライフ:7→4

 

「ファイナルフェイズ! バルザムを押し出して、〈アビゲール“バニシング・デスホール!”〉をセンターに必殺コール!」

 バルザムは黒い霧の中に包まれて姿を消し、「クレイブルを破壊して、ゲージ3払うよ!」クレイブルはまるで硝子が割れたかのように体を飛散させて消失すると、強勢な風を纏ったアビゲールが上空から舞い降りた。

 

 曜の手札:1→0/ゲージ:3→0/曜:ヴァイスビロー/レフト:バルザム→アビゲール“バニシング・デスホール!”/ライト:クレイブル→なし

 レフト:アビゲール“バニシング・デスホール!”/サイズ3/攻8000/防8000/打撃3

 

「さらにファイナルフェイズに登場したから、アビゲール以外の場のモンスターを全て破壊するよ!」

「うん、いいね。ストレインジは破壊されるよ」

 強烈な突風にさらされ、スレインジは体勢を保てなくなると、次の瞬間にはアビゲールが放った真空波によって切り裂かれてしまう。名残惜しそうにスレインジはみやの方を見つめると、やがて光となってその場から消え去った。

 

 みやのレフト:スレインジ→なし

 

「さらにアビゲールは相手のドロップの枚数が6枚以上なら打撃力+3して……」

 曜はみやのドロップゾーンへ視線を向けつつ、「12枚上なら1枚での攻撃を無効化されないけど……」と不安げな表情で浮かべて、「みや姉、今ドロップゾーンの枚数は?」質問を投げかける。

「13枚だね。条件は達成しているよ」

 ドロップゾーンの枚数をカウントしたら、みやは穏やかな語勢で告げた。彼女の返答に曜は安堵したかのように、ゆkっくり大きく息を吐いて、気持ちを落ち着かせていく。

 

 曜のレフト:必殺アビゲール/打撃3→6

 

「よぉーし、アビゲール、ラストアタックを決めるよ! アビゲールでみや姉にアタック!」

「任せておけ! きっちり決めてみせる!」

 彼女の想いに応えるようにアビゲールは語気を強め、自身の翼で強勢な風を生み出して、中心に真空弾を作っては容赦なく放つ。音すら置き去りにする真空の弾丸が、飛来してきてもみやは至って平静だった。

「攻撃が無効化できないだけ……なら、そのダメージを減らすよ! キャスト、〈ドラゴンシールド 飛竜の盾〉!」

 彼女の覿面に先程現れた青い竜の盾と似たような盾が現れ、「ゲージ1払って、次に受けるダメージを0に減らし、私のライフを+1!」目に映らない真空弾をいとも簡単に防いでは、持ち主の傷を癒していく。

 

 みやの手札:3→2/ゲージ:1→0/ライフ:4→5

 

「うそー!? このタイミングで!?」

 これで決まると確信してらしく、曜は酷く動揺して驚く。声音や表情からして予想外という事が伝わり、みやを含めた他の人間達は苦笑いを浮かべるばかり。

「ふふっ、ごめんね。結構良い感じにライフが調整できそうだったから、温存していたの」

 あまりの驚きようにみやは眉尻を下げて苦笑しながら言葉を返す。そして手札をもう一度一瞥し、盤面を見て状況を確認していく。その眼差しは熱誠を湛えており、元来の真面目さを表してるかのよう。

「で、でも、まだアビゲールがいるから……な、何とかなるはず」

 想定外の出来事に狼狽えながらも何とか冷静さを取り戻し、「ターンエンドだよ」とみやと目を合わせるように正面を見据えて告げた。

 

 曜の手札:0/ゲージ:0/ライフ:5/曜:ヴァイスビロー/センター:必殺アビゲール

 

「私もそろそろ畳み掛けないと厳しいね。ドロー、チャージ&ドロー!」

 みやの手札:2→3/ゲージ:0→1

 

「まずはブーメラン・ドラゴンをゲージ1払ってレフトにコールするよ」

 もう一度青いブーメラン状の竜が登場する。変わらず低い唸り声を立て、威嚇するように喉を震わせていた。

 

 みやの手札:3→2/ゲージ:1→0/みや:ドラゴウイング/レフト:蒼穹ブーメラン・ドラゴン

 

「キャスト、〈ドラゴニック・チャージ〉! デッキの上からゲージを2枚置くね」

 みやの手札:2→1/ゲージ:0→2

 

「さらに続けて、キャスト、〈ドラゴニック・グリモ 背水の牌文〉!」

 通常のドラゴニック・グリモとはまた違う雰囲気の石板が目の前に出現し、「手札を全て捨てて、ゲージ+2、カードを2枚引くよ!」空色の風が優しく吹き渡り、みやの手札とゲージを整えていく。

 みやの手札:1→0→2/ゲージ:2→4

 

「お待たせ、出番だよ! 〈蒼穹騎士団 ドラムバンカー・ドラゴン〉をゲージ1払ってライトにバディコール!」

 ずっと彼女の隣で立っていた蒼穹ドラムは「ようやく暴れられるぜ!」と意気揚々にドリルバンカーを持って、右手側に並び立つ。赤い体に青い鎧と色鮮やかな出で立ちと背中に生えている翼が目を引く。

「バディギフトで1点回復、さらにこのターン中のドラゴウイングの打撃力を+1!」

 そよ風がまた吹き渡ると、今度はドラゴウイングの刀身が大きくなる。相棒の翼に負けず劣らず雄々しく力強い。

 

 みやの手札:2→1/ゲージ:4→3/ライフ:5→6/みや:ドラゴウイング/レフト:蒼穹ブーメラン・ドラゴン/ライト:蒼穹騎士団 ドラムバンカー・ドラゴン

 みや:ドラゴウィング/打撃2→3

 ライト:蒼穹騎士団 ドラムバンカー・ドラゴン/サイズ2/攻5000/防3000/打撃2/[ソウルガード]

 

「アタックフェイズ! ドラムとブーメラン・ドラゴンでセンターにアタック!」

 蒼穹ドラムが先陣を切って疾駆。ドリルは持ち主の闘志に応えるかのように甲高い音を響かせ、まるで竜巻を起こさんとばかりに高速で回転する。

 後を追うようにブーメラン・ドラゴンも横回転を行いながら風を切り、雄叫びを上げながらドラムを援護するように突進していった。

「ドラムが攻撃した時、ライフ+1するよ!」

剽悍な動きで接近していき、自慢の得物を突き出してアビゲールの肉体を貫こうと試みるながら相方に力を与えていく。

 

 みやのライフ:6→7

 

「ごめん、アビゲール! また何もできなくて……」

「仕方のない事さ。そういう時もある」

 手札がない状況ではどうしようもできず、曜はまた謝罪の句を述べるだけ。それでもアビゲールは泰然とした態度で返し、迫りくるドラムのドリルを躱す。

 しかし、避けた先にブーメラン・ドラゴンが飛来しており、回避する間もなく体を真っ二つに切り裂かれて消失した。

 

 曜のセンター:必殺アビゲール 撃破!

 

「ブーメラン・ドラゴンの効果で、ブーメラン・ドラゴンを手札に戻して、ライフを+1!」

 強勢を保ったままブーメラン・ドラゴンは帰還。みやにまた一つ力を与え、彼女の手札へと収まる。

 

 みやのライフ:7→8/レフト:蒼穹ブーメラン・ドラゴン→なし

 

「次はドラゴウイングで曜ちゃんにアタックするよ!」

 相棒の蒼穹ドラムに劣らないほどの剽悍な足取りで地面を蹴り、黒い翼の大剣を激しく振るって強烈な一撃を生み出していく。風を切る音が今までよりも力強く鋭利。彼女の剣撃がどれほど重たいかを示しているかのよう。

「受ける!」

 またもや手札がない為、ヴァイスビローで黒の剣撃を受け止める。あまりにも一撃が重たいせいか、ヴァイスビローの銃身が軋むような音が耳朶を打つ。それでも懸命に捌き、何とか攻撃を受け切った。

 

 曜のライフ:5→2

 

「ファイナルフェイズ! 〈蒼穹騎士団 ドラムバンカー・ドラゴン“ブルーインパルス・ハリケーン!”〉をドラムに重ねて必殺コール!」

 しかし、ここで止まる彼女ではない。みやは蒼穹ドラムと目を合わせた後に必殺コールを宣言し、「コストとしてゲージ3払うよ」先程より深い青色の鎧を身に纏ったドラムが出現する。

「流石、オイラのバディだ!」

 不敵な笑みを浮かべ、ドラムはみやともう一度アイコンタクトを交わす。みやも自信に溢れた笑顔で頷き、信頼の眼差しを彼に向けた。

 

 みやの手札:1→0/ゲージ:3→0/ライト:蒼穹ドラム→蒼穹騎士団 ドラムバンカー・ドラゴン“ブルーインパルス・ハリケーン!”(ソウル:1)

 

蒼穹騎士団 ドラムバンカー・ドラゴン“ブルーインパルス・ハリケーン!”

ドラゴンワールド

種類:必殺モンスター 属性:武装騎竜/赤竜

サイズ3/攻6000/防4000/打撃3

■[コールコスト]君の場のカード名に「蒼穹騎士団」を含むモンスター1枚の上に重ね、ゲージ3払う。

■このカードが攻撃か効果で相手にダメージを与えた時、君のライフを+1する!

[移動]/[貫通]/[ソウルガード]

 

「行くよ! ドラムでラストアタック!」

「わりぃな……今回もぶっ放すぜぇぇぇ!!」

 エンジンが唸りを上げ、さっきの倍以上にドリルが回転する。そして蒼い竜巻が発生し、雷も帯びた一撃を曜に向けて放つ。

 その場の空気を一変させる程の力を持つ竜巻が曜を巻き込んでいき、「うわあああああ!?」彼女の悲鳴が木霊する時には辺り一面は竜巻が砂塵を巻き上げて跡形もなく吹き飛ばしていた。

 

 曜のライフ:2→0

 

WINNER:紀道みや

 

 

 

 ファイトを眺めていた広海は「うわぁ、えげつねえ」と零し、曜に対して憐みの籠った眼差しを向ける。流石にここ一番の一撃を全て封じられてしまっては、手も足も出ないと。こればっかりは彼女に同情するしかない。

「凄いファイトでしたね」

 唐突に声が掛けられ、後ろを振り返るとカーキのシャツジャケットと紺色のワークキャップが目を引く少年が立っていた。

 恵まれている体格から高校生ぐらいに見えそうだが顔つきは意外と幼い。……案外千歌達と同い年ぐらいだろうか。

「ああ、そうだな」

 料簡を立てながら返答し、広海は視線を少女達の方へと向けていく。あまりにも不憫なファイトだった故にか、曜が周りから慰められていた。

 曜の後半の追い上げも良かったと思うが、土壇場でダメージを与えなかったのは、流石みやと言うべきか。ただ苦笑いを浮かべるしかない。

「ところで、あなたはファイトしないんですか?」

 少年に訊ねられ、一瞬言葉が詰まる広海だが「そういうお前こそ混ざってきたらどうだ?」と返し、口元を吊り上げていたずらっぽい笑顔を浮かべる。自分はあの中に混ざる事なんてできない。心中にある過去の負債が胸を締め付けていく。

「俺は……良いですよ。ちょっと気が引けるし」

「別に男だからって、気にするような連中じゃねえよ」

 千歌達に目線を向けた少年が参加に渋る反応を見せ、広海は軽く笑い飛ばすような口調で答えて、「それどころか誰でも引き込むような奴らだぞ」語弊がありそうな言葉を付け足す。

 実際、本当に誰であろうと関係なく誘う人間しか揃っていない。だから、いつも広海は体力の限界まで付き合わせられる羽目になるのだが。

 少年と言葉を交わしていく内に千歌と曜が走って近づいて来る。そして千歌が開口一番に「あなたは誰?」と訊ね、「もし良かったら私達とファイトしようよ!」蜜柑色のショートヘアーを揺らして元気よく誘い、彼の手を引く。

 彼女の隣にいる曜も「早くファイトしようよ」と同調する。広海に顔を合わせ、「おじさんも一緒に」とやや浅黒い彼の腕を持つ。広海は断ろうかと思ったが、千歌に強引に引かれていく少年の姿を見て、放っておけないという気持ちに駆られ一緒に合流していく。

 

 ファイトは千歌と少年の二人で行われる事となり、二人は向き合って話を進める。

「俺は鎬山(こうやま)鉄大(てつひろ)。君は?」

「私、高海千歌! よろしくね、鉄大君!」

 威勢よく返答する千歌の圧に少し気圧されるかのように「よ、よろしく」と鉄大の声が震えていた。人見知りではないだろうが、流石に千歌の元気の良さには負けるか。広海は二人のやり取りに苦笑いしながら耳を傾ける。

「バル、今日も頑張るよ!」

 千歌の呼びかけにバルも「バル、がんバル!」と快活に返答し、両腕に力こぶを作ってやる気を示す。何度もファイトしていたというのに、疲労と言う疲労を感じさせない。

「俺も負けない」

 彼女らに影響されてか、鉄大も静かに闘志を燃やして言葉を紡ぐ。黒茶の瞳は力強い光を宿し、真っ直ぐに覿面の少女へと向けられていた。

「んじゃ、お前ら準備はいいな?」

 二人が同時に頷いて了承の意を示す。彼らの意思を視認すると広海は「バディ―、ファイッ!」掛け声をかけてファイトをスタートさせる合図を送った。

 

 

 

「俺達の鋼の意志はまだ見ぬ果てへと挑み続ける! ルミナイズ、『鋼の剣王』!」

「太陽の煌めきを背に、私達の心はいつだって燃えているよ! 『爆熱の必殺竜』!」

 千歌は活発な声音で、鉄大は落ち着いた語調で「オープン・ザ・フラッグ」と言い、互いのフラッグを公開する。

「エンシェントワールド!」

 鉄大の手札:6/ゲージ:2/ライフ:10/バディ:鋼剣竜王 ブレイズ・ダルキス

 

「ドラゴンワールド!」

 千歌の手札:6/ゲージ:2/ライフ:10/バディ:太陽の竜 バルドラゴン

 

「先攻は俺がもらうぞ。チャージ&ドロー!」

 鉄大の手札:6→5→6/ゲージ:2→3

 

「まずはキャスト、〈天竜開闢〉! ライフ2払って、カードを2枚ドロー」

 鉄大の手札:6→5→7/ライフ:10→8

 

「次にキャスト、〈竜王伝〉! ゲージとライフを+1して、カードを1枚引く」

 鉄大の手札:7→6→7/ゲージ:3→4/ライフ:8→9

 

「〈シュロスドラゴン ヴァンシュタイン〉をゲージ2払ってライトにコール!」

 青い鱗が如何にも堅牢そうな印象を覚えさせる竜が出現し、静かに悠然と佇む。その出で立ちは、さながら古くからある城の番人かのよう。

 

 鉄大の手札:7→6/ゲージ:4→2/ライト:シュロスドラゴン ヴァンシュタイン

 ライト:ヴァンシュタイン/サイズ3/攻8000/防5000/打撃3/[移動]/[ライフリンク1]

 

「さらに〈宝輪 始源のホノオ〉をゲージ1払って装備!」

 右手にオレンジと青が混ざったチャクラムを持ち、軽く振るって炎を発する。「始原のホノオの能力でヴァンシュタインの攻撃力と防御力をそれぞれ+1000だ」オレンジと青の炎はヴァンシュタインに力を与えるかように包み込み、動き合わせて変幻自在に姿を変えていく。

 

 鉄大の手札:6→5/ゲージ:2→1/鉄大:宝輪 始原のホノオ/ライト:ヴァンシュタイン

 鉄大:宝輪 始原のホノオ/攻2000/打撃2

 ライト:ヴァンシュタイン/攻8000→9000/防5000→6000

 

「アタックフェイズ! ヴァンシュタインでファイターにアタックだ」

 ヴァンシュタインは平静に唸り声を立て、自身を覆う炎を操り、猛火を千歌へと走らせる。見ているだけ火傷しそうなぐらい猛々しく燃え盛る炎は千歌を飲み込まんとばかりに勢いを増し、大きく広がっていく。

「受けるよ!」

 炎の渦に巻き込まれながらも無事に生還した千歌。けれど、よほど熱かったのか、Tシャツの襟を摘まんでは仰いで体を冷やそうとしていた。

 

 千歌のライフ:10→7

 

「ターンエンドだ」

 鉄大の手札:5/ゲージ:1/ライフ:9/鉄大:始原のホノオ/ライト:ヴァンシュタイン

 

「私のターンだね。ドロー、チャージ&ドロー!」

 千歌の手札:6→7/ゲージ:2→3

 

「まずはキャスト、〈プロミネンス・ピース〉! 私のゲージとライフを+1するよ!」

 右手に赤く静かに燃え上がる炎が現れ、空に掲げると炎は飛び散って、千歌の周りを優しく照らしつつ力を与える。

 

 千歌の手札:7→6/ゲージ:3→4/ライフ:7→8

 

「よし、バル行くよ! ライトに〈太陽の竜 バルドラゴン〉をゲージ1払ってバディコール!」

 準備万端と言った様子で構えていたバルに声をかけ、相棒を右手側に出るように指示。「バディギフトで1点回復!」蜜柑色のオーラがバルの体から発せられると千歌の体を包み込み、穏和に彼女のダメージを癒す。

 

 千歌の手札:6→5/ゲージ:4→3/ライフ:8→9/ライト:太陽の竜 バルドラゴン

 ライト:太陽の竜 バルドラゴン/サイズ2/攻5000/防3000/打撃2/[貫通]

 

「次はレフトに〈フレアファング・ドラゴン〉をコール! そして“フレアギフト”を発動するよ」

 二本の牙に炎を宿させた竜が勇ましく登場して嘯き声を上げ、「登場時にバルがいるからゲージ+1して、カード1枚ドロー!」彼が発した炎により、ゲージにカードが溜まっては千歌の手札が増える。

 

 千歌の手札:5→4→5/ゲージ:3→4/レフト:フレアファング・ドラゴン/ライト:バルドラゴン

 レフト:フレアファング・ドラゴン/サイズ1/攻3000/防1000/打撃1

 

「さらに〈太陽剣 デイライト〉を装備!」

 黄金に輝く剣が千歌の前に現れ、彼女は柄を両手で握り締め、力強く振って感触を確かめた。刀身は太陽の光に反射して、さらに眩い光を放ち、見る者に太陽のような輝きだと思わせるには充分。

 

 千歌の手札:5→4/千歌:太陽剣 デイライト/レフト:フレアファング/ライト:バルドラゴン

 太陽剣 デイライト/攻3000/打撃2

 

「アタックフェイズに入るよ!」

「なら、ヴァンシュタインをセンターに[移動]! さらにヴァンシュタインの能力を使う」

 鉄大を庇うようにヴァンシュタインは彼の眼前に聳え立ち、番人の如く立ちはだかる。「ライフ1払い、手札から〈マウントドラゴン シャウジゥロン〉を捨てて、次に破壊される場合は場に残す」さらに身に纏う炎が激しさを増して、彼の鎧のように厚さを増す。「またこのターン中、ヴァンシュタインは[反撃]も得る」オレンジと青の炎は剣のような形を模り、ヴァンシュタインの両手に収まっていく。

 

 鉄大の手札:5→4/ライフ:9→8

 ヴァンシュタイン:ライト→センター/[反撃]

 

「さらに手札から捨てたシャウジゥロンを能力でライフ1払って、ゲージを+2する!」

 鉄大のゲージ:1→3/ライフ:8→7

 

「うえええ!? って事は破壊しても、場に残っちゃうって事だよね!?」

「そうだ。1回分だけだが、場に残って[反撃]できる」

「う~ん、どうしよう……」

 まさかの事態に千歌は盤面を見回しつつ考えあぐねる様子を見せる。確定的に[反撃]があるのなら、連携攻撃しても自分の場のモンスターを1体破壊されてしまうだろう。

 ふと視線をバディであるバルに向ける。「ここはバルに任せるバル!」頼もしい言葉を吐き、胸を叩くバルを見て、千歌は決意を決めた表情をして次の句を継ぐ。

「……ならバルでセンターにアタック! バルが攻撃している時、バルの攻撃力は+5000されるよ!」

 彼女の言葉を受けて、バルは力強く地面を蹴り飛ばして疾走する。「ちょーがんバル!」と言いつつ、右手に激しく燃えさかる赤い炎を宿させて、ヴァンシュタインの体に正拳を叩き込む。

「さっき使った能力でヴァンシュタインは場に残って、バルドラゴンに[反撃]だ」

 バルの右拳をそのまま受け止め、相手の炎を吸収しては自身の力に変え、両手に握っている炎の剣をバルの胴体へ突き刺す。バルは為す術もなく炎に包まれ消えていくが、「破壊したから[貫通]で2点受けてもらうよ!」自分で放った炎が鉄大の元へ飛び火して、彼の体を包み込んでは燃やす。

 しかし、炎に包まれても鉄大は眉一つ微動だにせず消えるのを待ち続け、炎が消えた後も平然と立っていた。

 

 千歌のライト:バルドラゴン 撃破

 鉄大のライフ:7→5

 

「次は……フレアファングとデイライトでセンターにアタックだよ!」

 フレアファングとアイコンタクトを交わしたら、同時に地面を蹴って疾駆。デイライトの輝きが相手の視界を奪い、フレアファングの獰猛な牙がヴァンシュタインの堅牢な肉体を噛み砕かんとばかり剥き出しになる。

「キャスト、〈竜胆不敵〉! ヴァンシュタインの攻撃力と防御力を+3000!」

 自身が纏う炎の勢いが増し、千歌とフレアファングを迎え撃つかのように炎を放つ。さらに手足の筋肉は膨張し、まるで大木のような太さに変化すると、そのまま突進してフレアファングの牙を折ろうと試みる。

 

 鉄大の手札:4→3

 センター:ヴァンシュタイン/攻9000→12000/防6000→9000

 

 

「私もまだあるよ! キャスト、〈シャインエナジー〉! フレアファングの攻撃力と防御力を+3000!」

 燦然と輝く蜜柑色のオーラを纏ったフレアファングは口から轟然と燃え盛る炎を吐き出し、自分達に向かってくる炎を打ち消した。そして突進してきたヴァンシュタインの右腕を噛み、牙に宿した炎で火傷させながら骨ものとも噛み砕く。

 ヴァンシュタインが痛みに呻いている間に、千歌が大きくデイライトを振り上げ、勢いよく黄金一閃を奔らせて体を真っ二つに切り裂いた。

 

 千歌の手札:4→3

 レフト:フレアファング/攻3000→6000/防1000→4000

 

「なら、始原のホノオでライフリンクで受けるダメージを1減らす!」

 手元にあるチャクラムがヴァンシュタインが倒された瞬間に輝き出し、鉄大が共有している痛みを和らげるかのように淡い光で場を照らす。「ヴァンシュタインのライフリンクは1点だから実質ノーダメだ」特に苦悶の表情を浮かべる事なく、落ち着いた語調で鉄大は言葉を紡いだ。

 

 鉄大のセンター:ヴァンシュタイン 撃破!

 

「ファイナルフェイズ!」

 力強く宣言して、手札から1枚のカードを取り出す。「〈バルドラゴン“バルバースト・スマッシャー!!”〉をフレアファングに重ねてレフトに必殺コール!」ハンマーを携えたバルが姿を現し、「コストとして、ゲージ3払うよ」血気盛んに振り回して力を誇示。一撃が重そうな印象を与え、誰もが警戒する程の迫力に満ちていた。

 

 千歌の手札:3→2/ゲージ:4→1/レフト:フレアファング→バルドラゴン“バルバースト・スマッシャー!!”(ソウル:1)

 レフト:バルドラゴン“バルバースト・スマッシャー!!”/サイズ2/攻11000/防6000/打撃4/[ソウルガード]

 

「バルバーストでファイターにアタック! バルバーストだけで攻撃している時は攻撃を無効化されないよ!」

 バルは体全身を使ってハンマーを大きく振り回し、遠心力と自身が持てるパワー全てを利用して、鉄大に一撃を叩き込む。生半可な盾など通用しないのが一目で分かるぐらい質量と勢いがあり、防ぐのは困難なのは火を見るよりも明らか。

「もう早くもこれを使うとはな。キャスト、〈オペレーション・レストレイン〉!」

 それでも鉄大は冷静さを失わず、手札から1枚のカードを取り出して透明なシールドを展開する。「手札から〈レイクドラゴン テスタリア〉を捨て、次に受けるダメージを0に減らす!」ハンマーは透明なシールドと衝突した瞬間、いきなり力を失って地面に落ちて砂柱を上げていく。威勢よく飛び散る砂を被っても鉄大は、顔色一つ変えずに真剣な眼差しで千歌と目を合わせていた。

 

 鉄大の手札:3→2→1

 

「さらにテスタリアの能力を使う。ライフ1払って、カードを1枚ドロー!」

 鉄大の手札:1→2/ライフ:5→4

 

「うう……これでターンエンドだよ」

 千歌の手札:2/ゲージ:1/ライフ:9/千歌:太陽剣 デイライト/レフト:必殺バル(ソウル:1)

 

「かなり危なかったな……ドロー、チャージ&ドロー!」

 鉄大の手札:2→3/ゲージ:3→4

 

「こんな状況だが、やるしかない。〈鋼剣竜王 ブレイズ・ダルキス〉をライトにバディコール!」

 無言のままダルキスは鉄大の右側に並び立ち、両手に生えている鋼の剣を大きく振って強勢な風を起こし、砂塵を巻き上げる。「ドロップゾーンから〈アルティメットバディ!〉と竜王伝をソウルイン!」「コストでゲージ2払い、手札を1枚捨てる。さらにバディギフトで1点回復だ」緑色のオーラが鉄大に伝播し、彼のダメージを癒していく。

 

 鉄大の手札:3→1/ゲージ:4→2/ライフ:4→5/鉄大:始原のホノオ/ライト:鋼剣竜王 ブレイズ・ダルキス(ソウル:2)

 

鋼剣竜王 ブレイズ・ダルキス

エンシェントワールド

種類:モンスター 属性:ドラゴンロード/ネイキッドドラゴン/地

サイズ3/攻15000/防15000/打撃3

■[コールコスト]君のドロップゾーンからカード2枚までをソウルに入れ、ゲージ2払い、君の手札1枚を捨てる。

[3回攻撃]/[移動]/[ソウルガード]/[ライフリンク即死]

 

「ソウルにあるアルティメットバディの効果で攻撃力+5000、さらに始原のホノオで攻撃力と防御力を+1000する」

 さらに緑色のオーラの輝きを強め、自身が持っている鋼剣を巨大化させる。満身の鋼は強度を増して、如何なる攻撃も弾いてしまうかのように堅牢な重圧を与え、相手の戦意を損なわせるかのよう。

 

 ライト:ダルキス/攻15000→21000/防16000

 

「キャスト、〈起死竜生〉! 手札を全て捨てて、カードを3枚引く」

 鉄大の手札:1→0→3

 

「始原のホノオをドロップゾーンに置いて、〈破弓 ウィルトス・テッラ〉をゲージ1払い、手札1枚捨てて装備!」

 新たに鉄大の手に握られたのは、剛健な造りをした長弓。華美な装飾は一切なく、ただひたすらに機能を求めたが故の美しさが際立ち、見る者を圧巻させる。彼の腰には長弓で射る為の矢が入っている矢筒が装備されており、そこからいつでも矢を取り出せる状態だ。

「さらに手札から捨てたテスタリアの能力を使って、ライフ1払ってカードを1枚ドロー!」

 鉄大の手札:3→2→1→2/ゲージ:2→1/ライフ:5→4/鉄大:始原のホノオ→破弓 ウィルトス・テッラ/ライト:ダルキス

 

破弓 ウィルトス・テッラ

エンシェントワールド

種類:アイテム 属性:ネイキッドドラゴン/ドラゴンロード/武器

攻2000/打撃3

■[装備コスト]ゲージ1払い、君の手札を1枚捨てる。

■【対抗】君の場のサイズ3の<エンシェントワールド>のモンスターが相手の場のモンスターとバトルしている時、ライフ1払い、君の手札から1枚捨ててよい。そうしたら、バトルしている相手のモンスター1枚を破壊する。この能力は1ターンに1回だけ使える。

 

「始原のホノオがなくなったから、ダルキスの攻撃力と防御力は-1000する」

 ライト:ダルキス/攻21000→20000/防16000→15000

 

「キャスト、竜王伝! ゲージとライフを+1して、カードを1枚引く!」

 鉄大の手札:2→1→2/ゲージ:1→2/ライフ:4→5

 

「このままアタックフェイズだ! ダルキスでレフトにアタック!」

 重々しい背中の翼で風を受けて飛び立ち、巨大な体躯に見合わない速さでバルへと猛進していく。「さらにウィルトス・テッラの能力を発動!」矢筒から一本取り出し、つがえて弦の限界まで引く。狙いは左目で定め、中心を穿つように集中する。「ライフ1を払い、手札を1枚捨てて、レフトのモンスターを破壊!」僅かなブレが収まった瞬間に矢を放ち、目にも止まらないスピードで風を切って疾走。剽悍に迫る一矢は、並みのモンスターでも躱す事は困難だろう。

「そして、手札から捨てたシャウジゥロンの能力で、さらにライフ1払い、ゲージ+2する」

 鉄大の手札:2→1/ゲージ:2→4/ライフ:5→4→3

 

「キャスト、〈ドラゴンシールド 太陽の盾〉! 攻撃を無効化にして、ライフとゲージを+1するよ!」

 バルの顔に似た盾が出現し、ダルキスの重々しくも猛烈な剣撃を弾き飛ばす。「効果破壊は無効化できないから、バルは[ソウルガード]で残す!」けれど、ダルキスの攻撃を受け止めた後に砕け散り、後から迫る矢を防ぐ事はできない。

 容赦なく矢はバルの胸を突き刺し、心臓の鼓動を止めるかのように深く侵入。バルは苦しみながらも筋肉で矢が深く刺さらないように締め、勢いが止まったら矢を抜いて傍らに放り投げた。

 

 千歌の手札:2→1/ゲージ:1→2/ライフ:9→10/レフト:必殺バル(ソウル:1→0)

 

「ダルキスをもう1回スタンドして、今度はファイターにアタックだ!」

 自分が元いた場所に戻る事なく、ダルキスは素早く千歌に接近し、右腕の剣を振り下ろす。一閃は鋭利で生半可な防御なら簡単に断ち切ってしまうだろう。

「受けるよ! うわぁ!」

 剣は見事に千歌を捉え、彼女の体を真っ二つに割る。しかし、彼女の体は本当に真っ二つになった訳ではない。その分だけ衝撃が走り、千歌の体を吹き飛ばしていくのだが。

 

 千歌のライフ:10→7

 

「さらにダルキスをスタンド! 3回目もファイターにアタック!」

 今度は左腕を矢をつがえるように限界まで引き、弾丸のように空気を貫きながら強勢な一突きを放つ。破裂音が轟き、一突きの速さと力が如何に尋常ではないかを教えている。

「これも受ける! うぐっ!」

 体を貫かれ、満腔にとてつもない衝撃が彼女を襲う。それでも何とか耐えきり、赤い双眸を細めて楽しそうな笑みを浮かべていた。 

 

 千歌のライフ:7→4

 

「ウィルトス・テッラでファイターにアタック……通ってくれよ!」

 少しだけ愁眉を寄せたが、彼女の楽しそうな笑みを見て、もう一度平静に戻って矢をつがえる。最後に呟いた言葉は、誰の耳に届く事なく潮風の中に消えていく。後に続いたのは、放たれた矢の風切り音だけ。

「これも受け止めるよ!」

 デイライトを盾のように構え、常人が視認できないような速さで迫り立てる矢を受け止める。衝突したのが矢だと思えない程の鈍い音が響き渡り、まるで鈍器を殴りつけられたよう。これには千歌も驚きを隠せず、目を大きく見開く。

 

 千歌のライフ:4→1

 

「ファイナルフェイズ! キャスト、〈怒竜爆炎掌!〉!」

 一通りの攻撃を終え、鉄大は大きく息を吐いて必殺技を取り出して、「ゲージ3払って、相手の場のモンスターを全て破壊して、相手にダメージ2だ!」炎に変換するとダルキスの右腕に生えている鋼剣に纏わせる。

 ダルキスは右腕を豪快に振り上げ、轟々と燃え盛る炎を叩きつけるかのように勢いよく振り下ろした。千歌達の元へ轟然と燃える深紅の炎が迸り、辺り一面を焦がしていく。

 

 鉄大の手札:1→0/ゲージ:4→0

 

「ふ、防げないよぉ!? う、うわあああ!?」

 手札を見て慌てふためている間にバル共々、烈火に飲み込まれてしまい、ライフを焼き尽くされてしまった。

 

 千歌のライフ:1→0/レフト:必殺バル→なし

 

WINNER:鎬山鉄大

 

 

 

 ファイトの始終を見届けた広海は、「これまたえげつねえな」と口の中で呟く。千歌のファイトも悪くなかった。けれど、それ以上に相手の動きが良かったのだ。

 近くで観戦していた美渡やみや、果南や曜もそれぞれ苦笑いや憫笑を浮かべている程。当の千歌は相当悔しかったのか、もう一戦しようとせがみ、バルと一緒に鉄大にしがみつく。

「分かったから離してくれ!」

 千歌達の猛チャージに根を上げ、鉄大は何とか引き剥がすように千歌の顔を押しのける。「ちょっと母さん達に連絡したいから!」この言葉を聞いて、ようやく千歌とバルは離れ、彼の行動を待つ。

 それから電話でしばらく千歌達と同行する許可をもらった鉄大を加え、広海達は海辺で遊んだり、海の家の手伝いをしたりして一日中ほぼ海で過ごした。

 

「いや、すみません。晩御飯までお世話になってしまって」

「別に良いんじゃねえの? 俺も世話になってるし」

「酔っ払いが何偉そうに言ってんのよ」

「美渡ちゃん、ちょっと言いすぎなんじゃ……」

 夕餉(ゆうげ)を囲み、今日海で遊んでいたメンバーで志満の手料理に舌鼓を打ちつつ、話をしていく。広海はその中で銀色の缶からビールをコップに注ぎ、苦みとキレのある辛さを堪能しながら箸を進める。

 お酒を飲みながらご飯を食べるというのは実に楽しい。なおかつ、大人数で会話を弾ませながら飲み食いするからもっと楽しくなり、弁舌も軽やかになる。

「間違っちゃいねえよ、みや。確かに今の俺は酔っ払いだよ」

 気の強い美渡の一言にめげる事なく、広海は大らかに笑い飛ばして無言で箸を進める鉄大に視線を向ける。「お前はこの近所の奴か?」ビールを一口飲んだ後、朗らかに質問を投げかけた。

「いえ、東京から……お盆も含めて祖父母の家に泊まっていたんです」

 少しだけ顔を強張らせながら鉄大は丁寧に返答。「今日はたまたま散歩していたらファイトしている子を見かけて……」日中ワークキャップで見えなかった黒茶の短髪を掻いてはにかむ。

「んな固くならなくて良いって! ここには同い年ぐらいのと、ちょっと年上がしかいねえんだから!」

「でも、おじさんは美渡姉やみや姉よりもっと年上だよね?」

 曜の鋭い一撃で閉口。確かに女子高生の美渡達とさえ、十歳は離れている。その事実はいつ聞いても衝撃が凄まじいもので、何度聞いても認めたくない。

 残酷な現実を何としてでも飲み込む為に、ビールを一気に喉へ流し込む。苦味が喉元にあった言葉を流して、その先の言葉を胃に戻す。ビールを飲み保してコップをテーブルの上に置き、話題を切り換える。

「東京と言えば、今度みや達が遊びに行くよな?」

 あからさまな話題転換に苦笑しつつもみやは頷き、「明後日には出発しますね」とブラウンの双眸を穏やかに細めた。

「いいなぁ~、東京~。千歌も行きた~い!」

 駄々をこね始める千歌に対し、みやは申し訳なそうに「ごめんね。千歌ちゃんの分も出せなくて」眉尻を下げて言葉を述べる。すかさず、鉄大が「そんなに東京に行きたいのか?」千歌に向かって疑問をぶつける。

「千歌達はずっとこの田舎で育ったから、東京は憧れなの!」

「そうなのか……俺は逆に内浦みたいな所が憧れるんだけど」

「そりゃ、隣の芝生が青いってヤツだろ」

 広海はご飯を頬張り、咀嚼して飲み込んだ後に「都会の奴は田舎に、田舎の奴は都会に憧れる話は少なくねえからな」かつて住んでいた東京の地を思い出しつつ言葉を吐いた。

 初めて東京に来た時は人や時間が流れる速さに驚いたような気がする。内浦ののんびりとした空気が肌に合っているのが身に染みている程に。

「かもしれないですね。俺、生まれも育ちも東京だから」

 納得したように鉄大は頷き、また箸を進める。「年に一回か二回ぐらいしかここに来ませんからね」天ぷらを口の中に放り込み、咀嚼して喉に流し込んだ後に黒茶の瞳に憧憬の念を宿しながら弁舌を動かす。

「まぁ、ゆっくりしていけよ。ここには育ち盛りのお転婆娘が勢揃いしているからよ」

 愉快げに喉を鳴らし、広海は穏やかな笑いかけながら次の缶ビールを開けて、コップを黄金色に染めていく。

 思った以上に賑やかになる周りを見て、過去の自分達を映すかのように青い瞳はどこか不安げに揺れていた。

 

 夕食も終え、就寝するまでの穏やかな時間、広海はもう一度旅館前の浜辺で流木に腰かけていた。

 煙草の箱から一本取り出して口に咥えつつ、ジッポライターの蓋を軽やかに開け、火を灯す。煙草を火に近づけさせながら煙草の箱をズボンのポケットにしまい、紫煙をくゆらせる。

「また新しい子が来たな」

 這い出てくるかのように、レクセアンは音もなく隣に姿を現す。SDサイズの小柄な体躯をしているが、顔つきは鋭く可愛らしさなど微塵もない。

「そうだな、また子供が一人増えたな」

 口から煙を吐き出し、「一層賑やかになるぜ」楽しげに双眸を細めて笑う。賑々しい彼女達に新しい友人ができた事は非常に喜ばしい。自分の子ではないが、自分の子のように嬉しい限り。

「それでもファイトをしないのか?」

 楽しげな雰囲気から一変、レクセアンの怜悧な言葉に広海は青瞳を後悔一色に染めて揺るがす。「……しない」無理やり煙を吸い込み、過去の事を思い出さないように押し込めてから、煙と同時に言葉を吐く。

 先程よりも重々しく、けれど力強さはない。脳裏に浮かぶ火の海と片腕を失くした少女が思い起こされ、それを振り払うかのように頭を緩く横に振って「俺にその権利はねえからな」と述べる。

「怖いだけだろ? 大丈夫、あの子達は強いさ」

 楽観的なレクセアンの言葉。だが、広海の心をささくれ立たせ、青の双眸を鋭く細めさせる。鋭利な目つきは相棒ではなく自身の足元に向け、自責の念を激しく露わにしながら言葉を紡ぐ。

「純粋に楽しむ事なんざ、最も許されねえ事なんだよ」

 刺々しい口調と裏腹に、広海の顔は今にも泣きそうなぐらい酷く歪んでいた。




 お待たせしました。沼津編の2話目です。

 今回はいつもより文字数少なめで送りしています。視点となっているキャラの都合上、ファイト中の心理描写が書けないんですよ……ずらしてよかったけど、ごちゃごちゃになりかねないので止めました。

 そして今回から、東京編と同じような形で連載していきます。単純にこっちの方が書きやすいからです。台本形式で書くのがしんどくなったというのもありますけど。

 今回初登場したオリキャラについては、次回以降にプロフィールを公開したいなと思っています。

 ……あれ? 果南ちゃん、今回一言も喋ってなくね?

 では、この辺りで筆を休めたいと思います。感想やオリカ・オリキャラの提案などお待ちしております。
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