タイトルのアイデアは頂き物です。アニメ12話のお泊まり会いいよね……。
それはそれとして、最近バンドリの小説増えてるのは喜ばしい事ですよね。読める物の種類が増えるのは嬉しいことです。
でもおたえのSSが増えてないのは不具合ですよね?そうだといってよ。
「優人、入るよ」
「ノックしてからワンテンポは置いてくれないか」
テスト初日が終わり、午後が完全に自由時間となった日。ノックと同時に扉を開けるという、ノックの意味が無い行動と共に部屋に入って来やがった、たえに俺はジト目を向けた。
失礼極まる行動だが、たえは全く悪びれない様子で俺の横に座る。そして動きを止めたゲーム画面を眺めながら言った。
「遊びに来た。構って」
いきなり何を言い出すかと思えば、暇なのか?
「ギターの練習とテスト勉強はどうした?」
「今は休憩。それより構って」
ぐいっと、俺の手からコントローラーを取り上げて適当な場所に置いたかと思うと、胡座をかいてゲームをしていた俺に抱き着いてきた。
「なんだよ急に。また寂しくなったとか?」
「……エスパーなの?」
「前に言ってたじゃねーか。休み時間に、わざわざ電話で」
たえが抱き着きながら体重をこっちに掛けてくるから、倒れまいと自然と俺も抵抗するように体重をたえの方に掛けてしまう。
完全に均衡状態となった時、俺達は夏場だというのに隙間もないくらいピッタリべったりとくっついていた。
「…………扇風機が無かったら、暑くてやってられんな」
「優人、シャンプー変えた?」
「いや別に」
……密着しているから当然だが、たえの髪とかは目と鼻の先どころか鼻に乗っかってさえいる。
そんなだから、たえが使っているであろうシャンプーとか洗濯洗剤の香りとかが鼻腔いっぱいに広がっていた。
「……もういいか?」
「もういいよ」
そんな状況が5分くらい続いて、たえも満足したのだろう。あっさり離れて今度は俺の右隣へ。
「右手借りるね」
「何すんだよ」
「ぎゅって」
言葉通りに、右手を両手で包み込むように握りだす。何が楽しいかは分からないが、たえはずっとニコニコ顔だ。
「…………楽しいか?」
「何して遊ぼっか」
「話を聞け」
たえは右手を握ったまま、キョロキョロと周囲を見渡しはじめた。しかし、どれだけ見渡しても普段通りの俺の部屋なんだけどな。
「うーん……」
「言っとくけど、2人で出来る遊びなんてロクに揃えてないからな」
まさか人生ゲームとか、unoとかを2人でやる訳にもいかないだろう。いや、昔やったけどさ。
何を思ったのか2人でunoを持ち寄って、それを組み合わせて2人で無限unoなんてやった事があるが、3時間経っても終わる気配がなかった記憶がある。
振り返ってみれば、あれはもう修行の領域に足を突っ込んでいた。最後は無言でカードを叩きつけるだけの遊びと化していたしな。
「いや、そうだけどそうじゃなくて……」
と、思ったのだが、たえは何やら違う理由で部屋を見渡している様子。意図が分からなかったので黙って見ていると、やがて俺を見て言った。
「そうだ。写真撮ろうよ」
「なに?」
「はい、そっちに座って」
有無を言わせず俺をベッドの真ん中に座らせて、たえも俺の真横、肩と肩がピッタリくっつくポジションに座ってスマホを構えた。
「撮るよー」
「ちょっと待て、おい、おま」
カシャっとシャッター音がして、顔を隠す間も無く写真を撮られてしまう。一体なにに使うつもりなのかは知らないが、これは宜しくない。
「おいたえ。急に写真なんか撮って何に使うつもりなんだよ。消せ」
「グループチャットにペタリ、と」
「止めろー!」
たえの手からスマホを取り上げようとした時には既に遅く、無情にもポピパのグループチャットに何の脈絡もなく俺達のツーショットが貼られたのだった。
「あ、有咲から返事きた。お前ら何やってんの?だって」
「……俺が聞きたいよ、それ」
説明も何も無かったからな。その言葉は俺がたえに1番使いたい。まあ、多分なんとなくって返事が来るのがオチだろうが。
「そうだ優人。今夜は家に泊まってってよ」
「また唐突な……隣だし、手間も掛からないから構わないけど。でもなんで?」
「今夜は香澄達も来るから」
「は?これから来んの?」
明日も平日だぜ。正気か?という思いを込めた目を向けて見るが、たえは何をどう受け取ったのか露骨に照れやがる。
「……大丈夫。明日は、ちゃんと時間作るから」
「やっぱ正気じゃねーや」
ちげーよ馬鹿。
「ところで、その話っていつ決まったんだ?俺が覚える限りだと、そんな話は微塵も無かったんだけど」
少なくとも、昨日テスト勉強をしていた時は聞かなかった話題だ。俺が忘れているという可能性もあるけど、こんな騒がしいイベントを忘れるというのは現実的じゃない。
だからそれより前、つまり先週の学校で話が持ち上がったのかと思ったが……
「今だよ」
「はい?」
「だから、今。ポピパのグルチャで決まったの。ほら」
たえが見せてきたスマホの画面。脈絡の無いツーショット写真で話の流れが叩き切られているものの、確かにそんな話が持ち上がっていた。
「…………たえのお母さんに話はして、ないよな。今決まったんだし」
「うん」
こういうのって、事前に話を通しとくもんだよな。俺がおかしいのか?いやいやまさか、たえとか香澄の常識が消し飛んでるだけだよな。そうだと思いたい。
…………自信無くなって来たぞ!
「……話に行くぞ。俺も行ってやるから」
「ありがと」
「どういたしまして」
「ん〜〜〜…………困ったわねぇ」
そんな経緯で、たえのお母さんに話をしてみた反応がコレであった。見て分かるくらい考え込んでいて、非常に宜しくない雲行きである。
「お母さん、困ってる」
「そりゃそうだろ。急に言われたら誰だってこうなるに決まってる」
当然だろう。急に言われても準備とかもあるし、困るのは容易に想像がつく事だ。
「香澄達には悪いけど、今回は諦め……」
「ねえ優人君」
香澄達には悪いが素直に諦めて貰うべきか。と思っていたら、たえのお母さんに声をかけられた。
「はい?」
凄く深刻そうな表情で、いかにも悩んでますと言いたげだ。香澄達が泊まりに来ると聞いただけで、こんな表情になるかと言われると疑問が残る。
次の瞬間には、その疑問が解決出来るんだが、代わりに大きな衝撃を残していった。
「オッちゃんのお嫁さんって、誰が良いかしらね?さっきから悩んでるんだけど決まらなくて」
「アンタそんなこと考えてたのか!?」
思わず敬語を捨てざるをえない強烈な一撃だった。
そうだよ。たえの天然の八割は、このお母さんから受け継がれてるんだから、たえと同じ心持ちで相対しないといけないのは当然じゃないか。
ちなみに残りの二割はお父さんからである。
「そろそろ決めないとーって思ってたんだけど、でも中々決められなくて……困ってたのよね〜」
「こっちは貴女の考えに困ってるんですが……というか、話聞いてました?」
「まあ、お母さん天然だし」
「お前が言うな」
どっちもどっちというか、やっぱ親子なんだなぁというか。この母親にしてこの娘アリというか。
流石だよ花園家、常人には厳しい環境だ。
「それで、さっきから何の話をしてたのかしら?」
「やっぱり聞いてなかった!」
「いやいや、もちろん聞いてたわよ。たえちゃん、おめでたなのよね!」
「ちげーし一文字しか合ってねぇ!!」
しかもそれアンタの願望だろうが。俺の母さんと2人で子供の名前考えてんの俺は知ってるんだからな。
……なんで俺達の母親は揃って子供作るの奨励してやがんだよ。普通は逆だろ、俺達まだ高校生なんだぞ。
「そうじゃなくて、香澄達が……」
「言わなくても分かってるわ。香澄ちゃん達からもお祝いをもらうのね?」
「いやだから」
「今夜はお赤飯炊くわよ〜」
「だあああああーーっ!話が全く通じねぇーーー!」
「あ、今の有咲みたい。やっぱり2人は似てるね」
嬉しいんだか嬉しくないんだか微妙な評価をたえから貰った時、俺の精神は凄い疲労を感じていた。やっぱり常識人じゃ花園家の相手をするのは困難だと痛感する。
「なーんて、冗談よ。冗談。いっつ花園ジョーク♪」
「じょ、冗談になってねぇっすよ……」
この人、というか花園家の人達は冗談と本気の境界線がマジで分からないから、会話一つを取っても非常に疲れる。
ぶっちゃけると、もう何が冗談なのかも分かっていない。話の流れと倫理的には子供云々が冗談だろうけどさ。
「それで優人君、さっきの話なんだけど……」
「まだ続けるんですか……?」
「大事な問題なのよー。このままだと、おやつも少ししか食べられないわ」
「そ、それは大変……!」
「でしょー?」
あ、だめだ。マジで話が進まない。
心が折れかけるなんて、多分小学生のころ以来の経験だ。たえも将来こうなるんだとしたら、俺はついていけるだろうか?
おやつを少ししか食べられないという所に戦慄しているたえには悪いけど、たえが将来こんな感じになるんなら俺の精神が持つ気がしない。
しかし、オッちゃんも愛されてるなぁ……。うさぎだけど、やっぱり家族の一員って事なんだろう。感性はズレてるけど、お嫁さん探しは真面目にやってるだろうし。
現実逃避気味に、俺は考えた。
「……………………じゃあ、香澄達にも決めるの手伝って貰いましょうか。7人で考えれば流石に決まるでしょう?」
「あら良い考え。さすが優人君、たえちゃんが選んだだけの事はあるわ〜」
……すまんな香澄達。だけど俺も背に腹はかえられないんだ。諦めて生贄になってくれ。
「それで思い出したけど、お母さん。香澄達、今夜泊まりたいって」
「そうなの?なら急いで準備しないといけないわね。2人とも手伝ってくれる?」
「うん」
「……はい」
話自体はすんなり通ったのに、何故だろう。俺は凄く疲れてもう眠りたい衝動に襲われていたのだった。
「いやー、幾つか
「…………名前?考えた?」
おい待て。まさか──
「ええ。子供の名前」
「ちょまっ!?"さっきの話"ってオッちゃんのお嫁さんの話じゃなかったんですか?!」
「あら?そっちは冗談って言ったはずだけど……」
「優人、疲れてる?」
そっちが冗談かよ。
◇◇
右にもふもふ。左にもふもふ。そして前にもふもふもふ。多分後ろももふもふしてる。
うさぎの相手を任された俺は、合計21羽のウサギの相手を1人で請け負っていた。
任された、とは言ったけど、実際は俺が立候補して任されたという経緯があったりする。
本当の目的は、さっきのやり取りで荒んだ心を癒すためだ。
「ああ……もふもふって、癒されるなぁ」
1匹抱いては撫で回して、下ろしたら別の奴を抱いて撫で回す。やってる事は単純だけど、とにかく数をこなさないと暴動が起きるから急いで、しかし丁寧にやらなきゃいけない。
大変だけど、たえの母さんとたえの2人に挟まれてツッコミ疲れでぶっ倒れるよりはマシだ。
「よーし次、ドロちゃ……おおう。嬉しいのは分かったから飛び付くな」
名残惜しそうにぶうぶう鳴いてるユウト(うさぎ)を下ろすと、待ちきれないと言わんばかりに飛び付いてきた。しかもぶうって鳴きながら。
「よーしよし……そこのパープル。鳩尾に来るなら後回しにするぞ」
ピタッと動きを止めたパープルを見て、俺はドロちゃんに意識を戻す。これで鳩尾アタックは封じたから、意識を外しても問題な……
「ん?」
ぺちぺちと軽いもので叩かれているような感覚が、俺の足に伝わった。
何事かとそっちを見てみると、パープルが俺を見上げながら一心不乱に前足の片方を使ってぺちぺちと叩いているのだ。
「パープル、お前……」
俺は今、その姿に感動を覚えた。なにせ今まで頑張って注意しても鳩尾アタックを止めなかったパープルが、別のアプローチで撫でろとせがんでいるのだから。
その被害を受けまくってた俺からすれば、それは大きな前進だった。
「成長したんだな……よっしゃ来い!」
ぴょいーん。撫で撫でしたドロちゃんを下ろして広げた両手に、パープルが飛び込んで来る。
本当はいけないんだけど、鳩尾アタックしかしなかったパープルが成長した事に感動して、思わずやってしまったのだ。
それがミスだと気が付いたのは、直後のウサギ達の行動を見てからだった。
ぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺち
それを見て、他のウサギも"こうすれば先に撫でて貰える"とでも思ったのか、全員で一斉に俺の身体を前足の片方でぺちぺちやり始めたのだ。
「あーっ……わかったわかった。今から全員撫でてやるから待てって」
これ以降、うさぎが撫でて欲しい時は決まってぺちぺちやるという新習慣が生まれたのだった。
この作品のどの部分を見に来てるんですか?
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会話(いわゆる花園節・おたえ節)
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デレてるおたえ(申し訳程度の恋愛要素)
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うさぎ(説明不要)
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その他