大晦日に投げようと思ってたら遅刻しました()
皆さん、あけましておめでとうございます。今年こそはおたえのssが増えますように。
あ、おたえは引けました。何故かピュアりみも付いてきました。
でん、とテーブルに敷かれた粘土板の上に鎮座している、真っ白い紙粘土。
それは小さな山のような存在感を発揮しながら、俺とたえの目の前に存在していた。
「…………本当にやるのか?」
「もちろん。今年もやるよ」
むふーとやる気を迸らせているたえは、そう言って早速紙粘土を手に取りはじめた。そして適当な大きさにちぎってから、手元にもある粘土板の上で形を整えていく。
俺も同じようにちぎって、特に何も考えずに捏ねていく事にした。しばらく捏ねてれば、それっぽくなるだろう。
「いい加減、クリスマスの飾り付けくらいは買ったほうが良いんじゃないか」
「それだと味気ないよ。せっかくサンタさんが来るんだから、飾り付けは心を込めなきゃ」
「……まあ、お前が良いなら良いけどさ」
この紙粘土を使ったクリスマスの飾り付け作りは花園家の毎年恒例行事である。
これは、たえが幼稚園生の頃くらいに紙粘土で名状しがたき物をクリスマスツリーに飾るために作ったのが始まり。そしてそれ以来、俺も巻き添えにして毎年2人で作っているのだ。
「ところで優人。サンタさんへのお供え物って、今年は何がいいかな?」
「にんじん1本とコーラでも置いとけば?」
そして、毎年プレゼントを届けにやって来るサンタさんにお供え物を置いておくのも花園家の恒例行事の一つだ。
たえは大真面目にサンタさんの存在を信じていて、一夜に全ての子供たちの家を回るというハードワークをこなすサンタさんへの感謝の気持ちを表すためにやっているんだとか。
「真面目に考えてよ」
「考えたさ。ソリを引くトナカイは多分にんじん食うだろ。そんでサンタさんはCMでコーラ飲んでたじゃないか」
「……さすが優人。これから花園家を背負うだけの事はあるね」
「なんでお供え物を答えただけで花園家を背負わされるんだ」
しかも婿入りなのね。いや、どっちでも変わらないとは思うんだけどさ。どの道たえを背負ってこれから生きていくんだろうし。
「……よし、できた。まずは一つ」
「もう出来たのか?早いな、流石たえ」
話している間に、たえは早くも一つ完成させたらしい。今日という休日を利用してこの紙粘土の山を消費しきると張り切っていたからか、かなり早いタイムだ。
対する俺のは丸い球体になっていた。考えながら取り敢えず手を動かしていたら、いつの間にか立派な球体になってしまっていたのだ。
「手馴れてるからね、これくらい楽勝だよ」
「ちょっと見せてくれ。まだイメージが固まらなくてさ」
「いいよ、はい」
さて、たえは一体どんな飾りを作ったのか……?
ん?
「なんだこれ」
「なにって、見れば分かるでしょ?」
うん。そりゃ分かる。いくら独特なゲテモノを作るたえでも、流石にこれは分かるんだけど……
「……なぜにウサギ?」
「優人、クリスマスだよ?」
作っていたのは、クリスマスとは特に何の関係も無さそうなウサギだった。良い出来だとは思うが、どうしてトナカイではないのか。
「クリスマスはトナカイだろ」
「そっか。そういう考えもあるんだね」
「本気で言ってんの?」
「じゃあ優人はトナカイお願い」
「…………分かったよ。じゃあ、お前はサンタ作ってくれ」
いちいちツッコミを入れていたら終わらないので、スルーできるものはスルーしてトナカイ作りに取り掛かる。しかし、こいつはウサギがソリを引いて来るとでも思っているのか?
手元の丸い球体は横に置いてトナカイを作り始める。球体の方は色つければ、そういう飾りとして誤魔化せそうだ。
ちなみに、ただ形を整えるだけではなく、ちゃんと絵の具を使って彩色まで済ませるのが花園家のルールである。
「だけどトナカイって、なんの資料も無く作るのマジで難しいな……。たえ、そっちは平気か?自分で言っといてアレだけど、サンタも相当難しいだろ」
「いい感じだよ。ほら、二羽目」
「サンタはどうした?」
サンタではなくウサギの量産に取り掛かっているたえにそう言うと、たえは無言で次の紙粘土をちぎった。スルーする気か。
「……サンタさんといえば、プレゼントは何をお願いするの?」
「俺か?俺はー……どうするかな」
サンタさんの正体というか、現実を知ってしまっている俺は、何かお願いしたところで叶わないとは知っている。
だけど隣の
「……そう言うお前は何を頼むんだ?」
「私?私は……まず健康長寿。次に金運アップ。後はー、子宝?」
「それ正月に頼むものだぞ。ていうか子宝って……」
だが、たえが並べたのは凡そクリスマスらしくない願い事ばかり。こいつはサンタさんを神様か何かだと思ってるんじゃないだろうな。
「……お正月にサンタさんは来ないよ?」
「そりゃそうだよ。……そうじゃなくて、健康長寿とかは初詣でお願いするような願い事だって言ってんの」
俺がそれを指摘すると、たえは漸く気づいたらしい。「あっ、そっか」と納得していた。納得するところがおかしいとか、そんな事にはもう突っ込まない。
「初詣でお願いする神様はサンタさんだったんだね」
「ちげーって言ってんだろうが」
「じゃあサンタさんを迎える為に、紙粘土で門松を作ろっか」
「話聞いて」
もしかして、クリスマスツリーに飾る飾り付けだって事を忘れてないか?
しかも、たえはそこで終わらない。そこで何かを閃いたらしいく、たえは急に立ち上がり近くの紙とペンを持って来た。
「そうだ!この際だから、サンタさんにお願いする物を紙に書いて一緒に飾っておこうよ」
「それ七夕の時にやる奴だろ!?」
「問題ないよ、半年までなら!」
「なにを基準に言ってやがる!」
たえは早速、短冊もどきに何かを書き始めている。こんなのに付き合ってられんと言いたいが、そんな事を言ってしまえば間違いなくたえは落ち込む。
…………仕方ない、やるか。
せっかく年に一度のクリスマスなのだし、最初から最後まで笑顔で終わらせたいしな。
「健康長寿、けんこうちょうじゅ……ゆうとー。健康長寿の"じゅ"の漢字って、どう書くんだっけ?」
「ああ、それなら……こうだ」
「ああそうだった。思い出した思い出した、ありがと」
「あいよ。さて、俺はどうするか……」
ぶっちゃけ何も考えてない。どうせ自腹で自分に買うことになるだろうから、適当な物で良いんだろうけど……
「(わくわく)」
横でこっちをガン見してやがる奴がいるから、あんまり適当すぎるのも問題だ。変な物にすると後悔する事になる。間違いなく。
「…………マジックキットとか、かな」
「マジックかぁ、いいね。目指せ、うさぎのサーカス団」
「……何か勘違いしてないか?」
たえの勘違いはさておき、まあまあ雑にマジックキットと書いた。あんまり雑すぎると「サンタさんが読めない」なんて、たえに言われたりするから、こういう時は完全に雑には書けないのだ。
「よし、書けた」
「私も書けた。先に飾っちゃおうか」
「いいぞ。放置してると無くしそうだもんな」
まだ物寂しい感じのツリーに、一足先に短冊もどきが飾られる。しっかり文字を手前側に向けて、たえ曰くサンタさんが見られるようにした。
「しっかしまあ、子宝とか……なんて直球ダイナミックな願い事だ」
「家族が増えればオッちゃん達も喜ぶもん。あ、そうなればユウトもお姉さんになるんだね」
「ああ、子宝ってそういう……。
……え?ユウトってメスだったのか!?」
「言ってなかったっけ?」
俺が1枚、たえが3枚も飾ったその内容を見ていると、ある事に気づいた。
「……そういえばさ、これって全部自分の事ばっかだな。ポピパがどうこうとか書いてそうだと思ったけど」
「書かないよ。そんなこと」
「なんで。ポピパのこと好きなんだろ?」
「うん。だから書かない」
たえはテーブルに戻って紙粘土を再び捏ねながらそう言った。俺もイスに座って紙粘土いじりを再開すると、たえが続けて言った。
「ポピパは私達のバンドで、それは私達で何とかするものだから。だからサンタさんに頼るわけにはいかないよ」
「……ごもっとも」
「──よしっ。できた」
たえが作っていたのはランダムスターっぽい形のギターと、たえのっぽい形のギター。ベースやキーボードにドラム。
こういう市販してるか怪しい形の飾りまで用意できるのは手作りの利点だなと思う。
「ランダムスターはてっぺんに飾ろっか」
「なら大きさが足りなくないか?てっぺんに飾るんだったら、もっと大きくてもいいだろ」
「そっか、それもそうだね。じゃあ残りを全部……」
「いや待て待て。流石にそれはデカすぎるだろ」
確かに大きい方がいいとは言ったけど、そこまで大きくしろとは言ってないのに。
「ちょっとは残しとかないと、他にも飾り作らなきゃいけないだろ」
「じゃあ半分くらい残す」
「……まあ、それくらいの大きさならセーフか?」
たえと俺で半分ずつ分けて、たえはランダムスター作り。俺はトナカイ作りの再開。
サンタを作るのは無理だからサンタ帽で妥協するとして、残りはどうしようか……。
「優人、すっごく楽しそうだね」
「そうか?そんな事ないさ」
「私も楽しんでるよ」
「だから、別に楽しんでないって」
ニヤけてなんてないし、楽しんでもない。口端がつり上がっているような気がするのは気の所為、あるいは目の錯覚だ。そうに決まっている。
「……ねえ優人。これ作り終わったら神社行こう」
「良いけど、まだお正月は少し先だぞ」
「だけど行かなきゃ。行って、そしてサンタさんにお願いしなきゃ。子宝くださいって」
「ええ……」
なんでいい雰囲気のまま終われないんだお前。
「しかも本気で行くとか……」
ちょっと神社行ってくるね。なんてたえの母さんに言って俺を連れ出したたえは、本当に近くの神社までやって来た。
「……しかもここって」
「そう。有咲の秘密の場所」
誰もいない静かな場所。もう神社としての役割は果たしていない寂れた所だ。
あの時は花火に夢中で気付かなかったが、こうして改めて見れば人気が無いのも納得の廃墟具合である。
現に、今こうして此処に居るのも俺達だけだ。他には誰も居ないし──来る気配すらもない。
「なんで此処に来たんだ?もう少し先に行けば、それなりに人がいる神社もあっただろ」
「まあそうなんだけど、こっちに来たかったんだ。せっかく有咲が見つけてくれた場所だし」
「そっか」
空は雲で覆われていて、まだ4時だっていうのにもうかなり暗い。ぽつりぽつりと街明かりが見えるほどだ。
そして、電灯なんて当然のように無い此処は、どんどん闇に沈んでいく。その感じが昔に感じた薄ら寒いものと似通っていて、俺は誤魔化すように白い息を吐いた。
「にしても、本当に寒いな。息も白くなってるし、これ雪降るんじゃねぇの?」
「そうかもね」
賽銭箱は壊れてこそいないものの、手入れがされていない事から神社と同じく放置されて久しいのだろう。
そして、賽銭箱の前に本来ならある鈴と、それを鳴らすための縄も撤去されていた。
「賽銭は」
「もちろん5円」
だろうと思ったから、聞いた時点で5円を用意してある。たえと俺は顔を見合わせて殆ど同時に賽銭箱へと5円を投げ、柏手を2回叩いて目を閉じた。
今日はクリスマスだから、こんな事をするのはまだ早いのだろうが……まあ一足早い初詣という事にした。
言ってる自分でも意味があまり分かってないが、つまりそういうことだ。
それが終われば、もう此処に用事は無い。踵を返して市ヶ谷さんの秘密の場所を後にする。
足下に気をつけながら階段を下りていく。めっちゃ寒いんだが、たえが早く歩かないから置いていくわけにもいかない。
仕方なく歩幅を合わせて帰る途中、階段と階段の間の踊り場と呼ばれる場所で、たえは徐ろに足を止めた。
「優人」
「ん?」
「寒い」
分かってる事を何度も繰り返すほど、たえはアホではない。こういう時は大体なにかしらの意図があるが……服の袖を引っ張られてたら丸分かりだ。
望まれているまま、無言で手を引いて身体を寄せる。何の問題もなく、当たり前のように身体と身体の距離が縮まった。
「…………人肌って、こんなに温かいんだね」
「手だけだけどな」
コートを着て来ているのだから、そこから人肌の温もりなんて伝わるわけもなく。だから必然的に、人肌が触れ合うのは手だけだった。
そよそよと小さな風が、身を切るような寒さを連れて手に当たる。かじかんだ指先が痛くなってきたが、俺が手を包むように握ったたえの手には風は届いていないだろう。
ちょっとの間そうしていると、たえは懐かしむような声を出した。
「ねえ、覚えてる?」
「迷子のことか」
「ああ。やっぱり忘れてないんだ」
「そりゃあな。あの時は本気で死を覚悟したし」
まだ幼かった頃。俺が今より、たえに振り回されていた頃の話。
たえの好奇心に引きずられるように付いて行っていたら帰れなくなったという、今となっては笑い話の一つ。
確か、あの時も冬だった。そして今みたいに電灯も無い暗い場所で、迫り来る恐怖と寒さを相手に戦っていた。
まだ子供だったから明かり一つ無い暗闇が異様に怖くて、迷子になった場所から1歩も動けなくなって。でもそこは冬の寒い風が吹き抜ける場所だったから、凄い寒かったのを忘れない。
「あの時は私も怖かった。優人が居たから、なんとか泣かないで済んでたけど。1人だったら絶対に泣いてたよ」
「俺は半泣きだったけどな。暗闇からお化けが出るって、本気で信じてたから」
その影響か、今でも暗闇には苦手意識が残ってしまっている。1人でトイレに行けない程ではないが、出来るなら行きたくはない。というくらいには苦手だ。
「ああ。だからホラー映画も苦手なんだ」
「それはお前が最初にチョイスした映画のせいだ。ホラーに限らず暗闇系全般が苦手になったの、あのクソ映画のせいもあるんだぞ」
「死霊の○踊りの何処がダメなのさ。私、アレ見てから踊る映画にハマったくらい好きなのに」
「世間一般ではアレはクソ映画って評価だし、俺もそう思う」
……思えば、小さい時から既にたえのセンスは変わっていたのか。昔っから大のウサギ好きで、小学生からギターを始めて、言動は宙にふわふわ浮いているヤベー奴。
だけどそれでこそ花園たえだ。ちょっと変わったコイツだから、俺は昔から目を離せなかったのかもしれない。
「……あっ」
「おお……」
これだけ寒ければ、そりゃ降るか。
僅かにチラつきはじめた雪を見ながら俺はそう思った。天気予報では降らない筈だったが……なんとまあ都合が良い。
「なにか温かい物……おしるこ食べたくなってきたかも」
「雪見て真っ先にそんな感想でるのは、お前くらいだろうな。白玉入りか?」
「ううん。お餅が入ってる奴」
「どっちも似たようなもんだろ……」
僅かに零れた笑みは普段とは少し違って苦さなんてなく、むしろ甘く感じられた。
ロマンチックなんて言葉は、こいつには縁遠かったか。
「いやいやいや、凄い違うよ。例えるなら…………そう、ただ大好きって口に出すだけなのと──」
そこで引き寄せられるように顔が近づいてきて、触れ合う程度の軽いキス。
まさに不意打ちだった。俺の顔も、たえの顔も、今は間違いなく燃え盛るくらい熱くなっている。
「……こうやって、体で表現するくらい違う」
「そっ、そうか……!」
たえの手が動いた。俺が包んでいた手を離してやると、たえは俺の左手を左手で掴んで先を歩き始める。
「帰ろう。もうお腹も減ってきちゃったし、お母さんも心配するしさ」
真っ赤な顔を見られたくないのか、たえにしては珍しい露骨な照れ隠し。市ヶ谷さんのは見慣れてるけど、たえのは何か新鮮だ。
俺は敢えてそれを指摘しないで、何も気づいていないかのように話を合わせる事にした。
「もう真っ暗だしな……いつの間にか、日が落ちるのも早くなった」
ぽつりぽつりだった街の光は、ちょっと目を離した隙にイルミネーションのように煌めいていた。まだ6時にもなってないのに、もう夜に変わっている。
すっかり夜の帳が降りきった帰り道を歩いていると、たえが再び口を開いた。
「……あの時は、こうして帰れなかったけど。でも今回は帰ってこれたね」
「もう子供じゃないしな。ちゃんと帰れるだろ」
「そうだね、私達はもう大人だもん。色んな意味で」
空いてる右手で、なぜ意味深にお腹の辺りをさすったのかは分かりたくないが、色々変わったのは確かだ。
「さ、帰って盛大に祝わなくちゃ。朝までパーリナイッだよ」
「どうせ体力持たないだろうけど、寝落ちするまで付き合ってやる」
「ふふん、言ったね?なら今夜は寝かさないよ。さっきの続きもするんだから」
「あー……分かった。言葉は取り消さない」
……性夜って言葉、縁遠いと思ってたんだけどなぁ。
この作品のどの部分を見に来てるんですか?
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会話(いわゆる花園節・おたえ節)
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デレてるおたえ(申し訳程度の恋愛要素)
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うさぎ(説明不要)
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その他