報酬おたえの可愛さにやられたので初投稿です。
どうでもいいですけど、20時に取得した段階で7000人以上も報酬おたえ取ってるって、アクティブユーザーの数凄くないですか?
春といえば、出会いとか別れとかの季節である。
卒業、及び入学シーズンは春だし、日本では1年の区切りを春にしているような節が見受けられる。
斯く言う俺も、新学期といえば春を思い浮かべるのだから、日本人は全員そうなんじゃないだろうか。
それ以外に春と聞いてイメージ出来るのは、やはり桜だろう。日本を象徴する花と言っても過言ではないはずだ。
満開の桜の木の下で行う、お花見なんかも春ならではの行事として人々に親しまれている。
そういえば、近年では外国の人もお花見をしに来るとか聞いたな。
「………………なあ、たえ」
「なに?」
「いくらなんでも、2人で花見ってのは流石にキツいんじゃねーかな……?」
そんな花見は近年では街の祭りとして扱われる事も多く、花咲川もまたそうだった。
地名の通りに花が咲き乱れている川の側には、幾つもの出店と多くの人ごみ。そんな中に俺達は居た。
「嫌だった?」
「嫌じゃねーけど。でもこういう祭りって、ポピパの4人と行った方が良かったんじゃねーか?」
女子高生なら、こういうイベントは友達同士で来るものだという認識があるのだが、たえはこうして俺と2人きり。
自分で言うのもアレだが、俺は女子をエスコートする能力に欠けている。そんな俺と居て、こいつは楽しいんだろうか。
「私は優人と来たかったから」
「…………まあ、お前が良いなら別に構わないけど」
「それに、香澄達もお花見に来てるって連絡があったし。運が良ければ会えるよ」
香澄達は別口か。そうなるならば、出会えるかは運次第という事になるだろう。
「んじゃあ、それまでは2人で行くか」
「私、綿あめ食べたい」
「はいはい。じゃあ、そっちから行くか」
たえと俺は、はぐれないように手を繋いで人混みの中に入っていった。
「やっぱり人が多いな」
「お祭りだもん」
この近辺からだけでなく、わざわざ遠出して来る人もいるくらい有名な、この祭り。出店のレベルも、地域の祭りより一段階くらい上な気がする。
「ふわふわしてる」
「綿あめだからな」
綿あめにキラッキラした目を向ける子供らしい一面を見せる、たえと一緒に歩く。
昔から、たえは綿あめが大好きで、祭りで見かける度に買っている。気に入っているのは、見た目がウサギに似ているからなのだろうか。
「食べる?」
「貰う」
一口。どこまでも普通な綿あめの味だ。俺はあまり好きではない、ちょっとベタつく甘さだけど、これでこそという気もするから難しい。
口の中に残る甘さに微妙に嫌な思いをしながら周囲を見渡せば、ここは食べ物系の屋台が多いようである。
「たえ、次は何を買う?」
「うーん」
悩みながら綿あめを齧り、それが半分以上無くなったくらいで言った。
「ロップイヤー、かなぁ」
「誰がウサギの話をしろと言った」
しかもまだ増やす気なのか。もう20羽も飼っているのに、こいつは庭をどうしたいんだろう。
「しかもロップイヤーなんて売ってねぇし」
「それは良く見てないからじゃない?」
「俺は、この祭りで買う物を聞いてるんだが?」
「優人、さっきから何を言ってるの?お祭りでウサギなんて売ってるわけないのに」
さっきから全く会話が成立している気がしない。いつものことだけど、何か間違えてる気がする。
「……俺さ。この祭りで、次に何を食うのかを聞いてるんだけど」
「…………あっ、そっちなの?私はてっきり、次に飼うウサギの種類を聞いてるのかと思ったよ」
「……どうせ、そんな事だろうと思ったよ……」
どうやら増やす気満々のようだ。いつか庭が、足の踏み場も無いくらいのウサギで埋め尽くされる日も、そう遠くはないのではないだろうか。
「じゃあ改めて聞くけど、次は何を買うんだ?」
「無難にタコ焼きとか?」
「いや俺に聞くなよ。しかも何処見て言ってんだ」
焼きそばの方を見ながらタコ焼きと言われても、どっちが良いんだかまるで分からない。
まあ、それならそれで両方とも買えば良いかと思いながら、一先ずは近い場所にあったタコ焼きの屋台に寄ることにした。
「前から思ってたんだけど、焼きそばにタコを入れて、それから麺を抜けばタコ焼きになるよね」
「それは唯のタコ入り野菜炒めだ」
屋台クオリティで値段が高いタコ焼きと焼きそばを持ちながら、たえと俺は桜並木の下を歩いている。
「はい優人、あーん」
「はいはい、あーん…………」
はぐれないように片手を繋いだままの俺達は、それぞれ片手ずつしか空いていない。
なので俺が片手でタコ焼きのパックを持って、たえが片手で箸を操るスタイルに自然となった。ちなみに、買った残りの物はビニール袋に入れて腕にぶら下げている。
「大体、それってチャーハンの飯抜きとか、餃子の皮抜きって頼んでるような物だぞ」
「ご馳走してくれるの?」
「店で頼んだ時点で蹴り出されるわ阿呆が」
「じゃあ私が作る。そして香澄達にも、ご馳走しよう」
「やめろ。果てしなく微妙な雰囲気になるのが分かるから」
そんな事を言いながら歩いていると、やがて食べ物系の屋台が軒を連ねていたエリアを抜けたらしい。祭りの為に即席で用意された休憩所が俺達の前に広がった。
「休んでいくか。食べ歩きも悪くはないけど、やっぱり腰を落ち着けて食べたいよな」
「そだね。食べよっか」
空いてるところに座って、もうもう1パック買ってあったタコ焼きと2パック買ってある焼きそばをテーブルに広げる。
「タコ焼きは半分ずつでいいとして、焼きそばから……ん?たえ、どうした?」
たえはさっきまで使っていた割り箸の先を、じっと見つめて動かない。俺が首を傾げていると、たえはタコ焼きを1つ摘んで俺に向けた。
「はい、あーん」
「…………なにしてんの?」
「なにって、あーん。だよ?」
そんなのは見れば分かる。俺が分からないのは、なぜ手が自由になった今でも、あーん。とやってくるのかという事だ。
「いや、やらねぇよ?」
「えっ」
「なんでショック受けてんだ」
さっきまで俺が甘んじて、あーん。を受けていたのは、手が塞がっていたからだ。
しかし手が塞がらなくなった今、俺が、あーん。なんて受けてやる理由はない。
「まあいいや。はい、あーん」
「なに何事も無かったかのようにしてるわけ?」
しかし、たえは一向に退く気配がない。それどころか寧ろ強い意志を感じる目で「食え」と告げてきている。
「…………分かったよ。あーん」
「素直じゃないなぁ」
「…………(誰のせいだ誰の)」
しかし、このままやられっぱなしというのは何か嫌だ。俺も箸でタコ焼きを摘んで、たえに向けた。
「じゃあ俺も。ほら、口開けろ」
「あーん」
………………たえに羞恥心とかを求めるのは間違っていた。躊躇いなくタコ焼きを食べて咀嚼している、たえを見ながら俺はそう思った。
「うん、美味しい」
「そりゃ良かった……」
☆☆
さて、腹ごしらえが済んだら今度は遊びたくなるのが人の性だろう。
「じゃあ遊ぼう。お待ちかねの屋台巡りタイムだね」
「色々とあるもんな、この祭り」
というか、本来の目的はこっちだ。型抜きのような、お祭りでしか見ない遊びをする為に、俺達は今日、此処にいる。
「じゃあ最初は型抜きで勝負」
「よし、やってやろうじゃないか」
という訳で型抜きである。屋台の近くには俺達の他にも、それなりの数の人達が黙々と型抜きに興じていた。
「抜く形は?」
「うさぎ」
勝負は平等性を保つ為に同じ形を使う。お金を払って型を貰って、隣合って爪楊枝を構える。
「よーい、スタート」
型抜きは集中力の他にも、何処から抜くかという判断力も必要だと思っている。俺はウサギの耳から、たえは後ろ足から抜き始めた。
「…………」
「…………」
互いに何も話さず黙々と抜き続ける。この勝負のルールは、割ればその時点で負けが決まってしまうので、少しでも気を抜くと危ない。
「…………」
「…………ねえ優人」
ところでこの勝負、直接的な妨害はダメだが、心理戦は禁止されていない。
たえが話しかけてきたのは、俺の心を揺さぶるためだろう。もちろん答える義理はないので無視する。
「花園 優人って、似合うと思わない?」
何言ってんだこいつ。たえの横顔をチラッと覗いて見たが、真顔で型に意識を向けている。
しまった、コレが狙いか。一時でも手が止まってしまうと、再び集中するのにも精神力を使う。たえの奴はそれが狙いだったのだろう。
だけど、俺だってタダではやられない。
「そうかな。俺は伊世 たえの方が……似合わねぇな」
たえがズッコケた。こいつ、自分が仕掛けた心理戦で自爆してやがる。
しかしそれでも勢い余って型を割らないのは流石だ。伊達に長年、俺と縁日で死闘を繰り広げていない。
「びっくりしたぁ」
「それもこれも、花園っていう名字がカッコイイのが悪い」
これで状況は五分と五分。いや、集中しなおすのが若干早かった分、少し俺が有利か。
「じゃあ花園 優人だね」
「だな」
そこから再びの無言。もう半分くらいは抜けている。状況は未だに俺が少し有利だ。
「…………そういえばさ」
「…………」
俺は何も言葉を返さない。たえも分かっているのか、俺の返答を待たずに言葉を続ける。
「近くに射的の屋台があるんだけど、次はそこにしない?」
「……そうだな」
「…………」
「…………」
なんだ、これで終わりか?
型抜きも終盤、ラストスパートに入っている。このままの勢いをキープするのなら、たえは俺に勝てない。
だから今のが起死回生の一手かと思ったんだが……いや、そう思わせて作業効率を落とすのが策略かもしれない。
「優人のこと好きだよ。大好き」
そんな風に、ごちゃごちゃ考えていたからか、ストレートな言葉が普段以上に胸に刺さった。
(しまった、手が──)
かなりブレた。割れなかったのは不幸中の幸いだが、たえに逆転されてしまった。散々警戒しておいて、たえの作戦にまんまと引っ掛かってしまったのだ。
…………仕方ない。そっちがその気なら、俺だってやってやる。
「俺も愛してるよ、たえ」
「──ッ!?」
めっちゃ恥ずかしいんだけど、どうやら効果はあったようだ。たえの手も明らかにブレた。
精神に多大なダメージを負ったが、これで状況は五分に持ち直した。ここから先は、己の実力だけが物を言う世界だ。
速度を上げる。最後の直線、これで決める!
「…………っ!」
「…………ッ!」
たえと俺の勝負の行方は────
ぱきっ
「「あっ」」
…………どうやら、思ったより精神にダメージが入っていたようだ。勢い余って割ってしまった型を見て、たえと俺は無言で顔を見合わせた。
「この場合は……」
「……ノーカンだな」
徒労に終わった型の前で、俺達は肩を落とした。
「気を取り直して、次は射的」
たえが型抜きの最中に言っていた通り、次の勝負内容は射的となった。
「勝敗は取った景品の量と質で判断。先攻、後攻は?」
「どっちでも。強いて言うなら先攻が良いかな」
「じゃあ後攻で」
たえの後ろで、射的をやっているのを俺は観る事にした。お金を払って銃と弾を受け取った、たえは慣れた手つきで銃を構えると、一発放つ。
ぱんっ
小さい箱のガム四個セットを撃ち抜いた。
「やるな」
「このくらいなら準備運動だよ。本命は……」
たえが目を向けたのは、某心がぴょんぴょんするアニメのウサギのぬいぐるみ。アンゴラウサギの方だ。
「あれ、抱き心地良さそうだよね」
「ふわふわしてるからな」
ぱんっ
片手で銃を構えて引き金を引く。弾はぬいぐるみに当たり、僅かに揺らす。
「落ちるね」
「落ちるな」
今の揺れ方的に、もう一押しで落ちそうな事を俺達は見逃さない。ずっと縁日遊びをやってきているからか、揺れ方で落ちるか落ちないかを見抜けるように、いつしか俺達はなっていた。
「あと何発かな……えいっ」
ぱんっ ぱんっ ぱんっ
3発全てを当てた所で、ぬいぐるみの揺れ具合が強くなる。もう落ちるな、アレは。
「これで終わりかな」
ぱんっ
たえの宣言通り、弾が直撃したウサギのぬいぐるみは、最後の抵抗とばかりにグラりと揺れてから倒れた。
「やったな」
「これで大きなリードを広げたよ」
たえがぬいぐるみを取ったのは素直に嬉しいが、喜んでばかりもいられない。たえの言う通り、今のぬいぐるみで大幅に差をつけられたのだから。
「後は適当に……それっ」
たえは残りの弾で、お菓子を幾つか取って終わった。全弾ハズレ無し、流石だ。
「じゃあ次は俺だな」
屋台のおっちゃんにお金を払って弾と銃を受け取る。先ずは一発、キャラメルを狙うか。
ぱんっ
「とりあえずは1個」
「やるね」
「たえだって、これくらいなら余裕だろ」
勝敗は質も見るが、何より数は必要だ。戦いは数だって誰かも言ってたじゃないか。
だから小物を狙い撃つ。そして先攻でかなり取っていった、たえに少しでも追いつく。男の癖にセコいとか、ちっちゃいとか言うなよ。これも立派な戦略なんだからな。
「次は……」
目に付いたのは、あからさまなトラップアイテムであるペアリングだ。
見るからに高そうで、取れれば勝利はほぼ確定だが、ああいうのは取れないと相場が決まっている。狙うだけ無駄だろう。
「……そっちの奴にするか」
お菓子のラムネを狙う。
ぱんっ
「当てるねえ」
「負けられないからな」
とは言っても、このままでは負けは確実だ。たえの対抗する為には、どこかで大物を取る必要がある。
(たえが一発も外さなかったからな)
何発か外していれば、まだ安全策の取りようもあったのだが、一発すら外さなかった事で、少し危ない橋を渡る必要が出てきた。
「何かあるか……」
だが、ぬいぐるみと同じくらいの物は見当たらない。残っているのはお菓子のような数を稼ぐ物か、あるいはぬいぐるみより高価な物のみ。
「負けを認めても良いんだよ?」
「誰が認めるか」
………………仕方ない。あのペアリングを狙うか。
流石にゲーム機本体なんて取れる気がしないし、まだペアリングの方が可能性は上だと考えての事だ。
「まあ、ほぼ間違いなく取れないだろうけどさっ……」
望みは薄いだろうと考えての一発。それほど期待はしない。
ぱんっ
「…………っ!?」
だが、その揺れ方を見て、俺の目は思わず見開かれた。可能性のある揺れ方をしたのだ。
前に誰かが狙って、でも取れなかったのだろうか。とにかく、チャンスである事に変わりはない。
「なら、狙い撃つ」
一発、二発、三発、四発。
一心不乱に撃ち込んでいくにつれて、段々と揺れは大きくなった。
「これは、もしかして……」
たえも固唾を呑んで見守っているのが分かる。俺は無心で狙い撃った。
「どうだっ……!」
ラスト一発。外れる事はありえない。それは分かっている。だから後は、落ちるように祈るのみ。
ぱんっ
弾は当然のように命中し、大きく揺れた。それを見た俺は、自分が勝った事を察したのだった。
☆☆
「俺の勝ちかな」
「だね。私の負け」
ベンチに座って戦利品を確かめる。その結果は俺の勝ちだ。主な要因は、やはりペアリングである。
このペアリング、やっぱり高い代物だったのだ。前に何人が犠牲になったのかは知らないが、その人達には心の片隅で感謝しておこう。
「ふぅ、それにしても凄い疲れたな。たえ、次はもう少し疲れない遊びを…………たえ?」
たえはペアリングを手に取って動かない。そして指をさしながら言った。
「くれるの?」
「へ?ああ……そうだな。ペアリングなんだし、1人じゃ着けられないわな。いいぜ、やるよ」
俺がそう言うと、たえは驚いたような顔で俺を見た。
「これは……つまり……そういう事なんだよね?」
「どういう事だ」
「給料の3ヶ月分?」
言い直した、たえの言葉の意味を頭が受け入れて…………意識した途端に顔が赤くなった。確かに言われてみれば、そうとも取れる渡し方だ。
「ばっ、おま、そういう意味を込めた訳じゃ……!?」
「嬉しい……」
「聞いて?!」
たえは話を聞かずに、ペアリングを俺に渡してきた。そして言う。
「これ、はめて。私に」
「ま、まぁ、あげるって言ったのは俺だから良いけど……ほら、指出せ」
たえは左手を出した。俺が人差し指辺りに、はめようとすると、何故か左手が動いて薬指がやって来る。
「…………」
たえを見た。ちょっと顔が赤くなっていた。
リングを左にずらせば、左手も動く。右にずらせば、左手が動く。
「……………………分かったよ」
負けを認めよう。なぜだ、勝負に勝ったのは俺なのに、どうして敗北感を味わう羽目になるんだろう。
そんな事を考えながら俺は、たえの薬指にリングを通した。
「……っ」
なんでだ。リングをはめるだけなのに、異常に気恥ずかしい。薬指にリングを通すのは僅か数秒で事足りる筈なのに、長い時間が経過したような錯覚さえ覚えた。
「…………ほら」
「…………うん。じゃあ今度は私の番だね」
立場が入れ替わる。俺がはめられる側になって、たえがはめる側になる。
「今更、こんな事を言うのもどうかと思うんだけど……」
リングをはめる手が止まった。
「私って、結構重くない?」
「なにが」
「幼稚園の頃の約束とか未だに引きずってるの。優人だって、他に好きな人とか出来るかもしれないのに」
たえの目は不安で揺れていた。俺にも滅多に見せない不安を、今は隠すことなく見せていた。
「……もし、俺が他の誰かを好きになった。あるいは、たえと出会わなかったとする」
「うん」
「もしそうなると、たえは1人になるって事だ」
出来ない仮定の話をしている事に、たえも気がついているのだろう。ただ黙って頷いていた。
「だって、お前は癖が強いからな。高校まで俺以外の交友関係が皆無だった事も、それを証明してる。
そんなお前を長い間、近くで支えてくれる奴は、果たして見つかるのか?もちろん異性でだ。同性は香澄達が居るからな」
「……分からない」
「俺は可能性は低いと考えてる。それくらい、お前の花園節は強烈なんだぜ?」
容姿に惹かれて集まった男子が、少し話しただけで全員去っていくという伝説さえあるコイツだ。そんな物好き、そうは見つからないだろう。
「なら、知り合った俺が見てやるしかないだろ。幸か不幸か、お前とは長くやってこれたんだからな」
「そう、だね。もう10年近くなるんだよね」
「知り合ったのも何かの縁だ。仕方ないから、一緒にいてやるよ」
ほとんど毎日たえの言動に振り回されているけど、おかげで退屈はしない。気苦労もあるが、たえと居た方が楽しい事も多い。
……言うと調子に乗るのは分かってるから、こんな事は絶対に言わないけどな。
「優人、やっぱり有咲に似てる」
「そうか?」
「うん。そうやって他人を思いやる所とか、特に似てるよ」
それはつまり、俺がツンデレだと言いたいのか。
そんな俺の抗議の言葉は、たえの顔を見た瞬間に飲み込まれた。
たえが顔を真っ赤にしていた。初めて見るかもしれない、恥じらいの表情だ。
(たえって、こんな可愛い表情も出来るのか)
普段は表情があまり動かないだけに、それがとても新鮮で、可愛いと思った。
「はい、はめたよ」
リングは日光を受けて光り輝いていた。たえの左手を見れば、同じリングが輝いている。
「ああ。じゃあ、次に行こうか」
まだ屋台巡りは終わっていない。勝負はまだこれからだ。
「そうだね。あっ、でも……」
たえは珍しくモジモジとした後、左手を俺に向けて言った。
「手、繋ごうよ」
「折角のお祭りなのに、はぐれちゃったら嫌だから」
顔を真っ赤にしながら言われても説得力は欠片だって無い。だけど、今はそういう事にしておこう。
「そうだな。はぐれたら大変だもんな」
ぎゅっと手を繋いで、その流れで自然と腕を組んで。そうして桜並木を歩く俺達の顔は、きっとどちらも真っ赤になっていただろう。
─翌日のポピパの会話(補習により香澄不在)─
「…………お前らさ、人前で良くあんなこと出来たよな」
「あんなことって?」
「指輪だよ、指輪。その薬指の、事実上の結婚指輪のことだ。アレもう完全に結婚式でやる指輪交換みたいになってたじゃん」
「凄かったよね〜」
「……盗撮?」
「あんな目立つ場所でやっといて盗撮も何もねーよ!マジで注目の的だったじゃねーか!」
「……もしかして。周りの人からの暖かい目線とか、全く気付いてなかったの?」
「そうだったんだ」
「完全に二人の世界だったって事かぁ…………」
「あの近辺だけ、花見っていう祭りの趣旨が無くなってたからな。私達は何時から結婚式に迷い込んだんだと、自問自答した回数はマジで数知れずだったぞ」
「でも良かったなー。私も将来は、あんな風に指輪を貰ってみたいかも」
「……あげないよ?」
「おたえちゃん。そんなに左手を隠して威嚇しなくても、優人君なら盗らないよ……?」
この作品のどの部分を見に来てるんですか?
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会話(いわゆる花園節・おたえ節)
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デレてるおたえ(申し訳程度の恋愛要素)
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うさぎ(説明不要)
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その他