私がこんな気持ちなのはどう考えても黒木が悪い! 作:昼間ネル
今回は皆さんお待ちかねの修羅場が、ちょっとだけあります。
「お待たせ」
私は今、智貴君とのデートに来ている。
一週間前、私は智貴君から告白を受け付き合う事になった。
自分でもどうして付き合う事になったのか不思議だった。智貴君が嫌いな訳じゃない。ここ数週間の付き合いで彼の人となりを知り、むしろ好きになってしまった。
だが、私が智貴君を好きな気持ちと同じ位の罪悪感が常に付きまとっている。
…私は琴を裏切っている。
元々は智貴君が琴をどう思っているのかを知りたかっただけだったのに…。気が付けば彼から告白を受け、それをとても嬉しく思う自分がいた。
そして今、初めて…じゃないけど二度目のデートをしている。
もしこんな所を琴に見られたらどうなるだろう…。
そんな事ばかり考えてる。
「でも、意外でしたよ」
「え…何が?」
「いえ、その…光先輩、俺の事はあまり興味無いんじゃないかって思ってたんで…」
「あ~うん…そんな訳じゃないんだけど。その…智貴君、普通に格好いいと思うし、私みたいな地味な子でいいのかなと思って…」
「そんな事ないと思いますけど…」
「ふふっ、ありがと」
その日は私の買い物に付き合う形でデパートを回った。
二回もデートしたお陰か、智貴君についても少し分かってきた。
智貴君は意外と喋る。どちらかと言うと社交的には見えない感じだったけど、二人になると色々話してくれる。自分の事、私についての事…。
多分、琴にはこんなに話したりはしたいだろうな…そう思うとちょっと嬉しい…かな。
「実は…小宮山先輩から付き合ってほしいって言われたんすよ」
え…?
そっか…琴、とうとう告白したんだ。
智貴君とデートしたから自分に気があると思ったのかな。…実は私がデートしてあげてって頼んだって知ったら、きっと傷付くだろうな…。
「智貴君は…何て答えたの?」
「断ろうとしたんすけど…少し待ってほしいって言っちゃって…すんません」
「…?どうして謝るの?」
「だって俺、もう光先輩と付き合ってるじゃないすか。でも、その事言えなくて…」
「そっか…。うん、実は私も智貴君と付き合ってるって、まだ言ってないんだ」
「先輩と…小宮山先輩って友達なんすよね?」
「うん。多分、一番の親友かな。それに智貴君の事好きなのも知ってるから、言えなくて…」
「…ですよね」
そうは言っても、まさか卒業まで隠し通せる訳もないし、いつかはバレる。それは私も解ってる。
でももし琴がこの事を知れば、琴は間違いなく私を許さないだろう。琴にしてみれば、自分の好きな相手とこっそり付き合ってるんだもん。当然だよ…。
「あのね…伊藤さん。私、智貴君に…告白したんだ」
翌日、琴は嬉しそうに告白した事を教えてくれた。
「そ、そうなんだ…」
「うん!…でも、すぐには返事くれなくて。少し待ってほしいって」
それは、分かったなんて言えないし智貴君もそう答えるしかないよね。
まさか私と付き合ってるなんて言えないだろうし。
「で、でも…どうして急に告白なんてしようと思ったの?」
「前にさ…智貴君からデート誘われたでしょ?それで脈あるんじゃないかって…。それにもう3年でしょ?卒業したらもう会えないから、今しかないかなって」
「そ、そう…」
琴の事だから卒業しても高校に来そう…。
「智貴君と付き合ったら、ク…黒木の事、お
だから気が早いよ…。別に結婚する訳じゃないんだから。
「伊藤さん」
「な、何?」
「私、頑張るからさ…応援してね」
「う、うん…」
「何か…今日の伊藤さん、元気無いね」
「そ、そんな事…ないよ」
「そう?ならいいけど」
どうしよう…。
今さら付き合ってますなんて言えないし。まさかずっと黙ってるなんて訳にもいかないし。
どうすれば…
「何か…今日は元気無いっすね。どうしたんすか?」
「知ってる癖に…」
「まぁ…小宮山先輩ですよね」
日曜日、私は智貴君と会っていた。智貴君は開口一番私に聞いてきた。そう、私達共通の問題に付いて。
「ねぇ…智貴君。私達、別れた方がいいんじゃないかな?」
「え…どうして」
「別に智貴君が嫌いとかじゃないんだけど…私達の事、いずれは琴にもバレるし…。私も出来るだけ琴の事傷付けたくないから」
「…それは…ちょっとおかしいんじゃないですか?」
「え…おかしいって、どうして?」
「確かに小宮山先輩が俺の事好きなのは知ってますけど…俺は光先輩が好きな訳だし、光先輩もそれに答えてくれたんですから、小宮山先輩の顔色を気にする必要は無いんじゃないかと」
「そ、そうだけど…」
「もし言いづらいんなら、俺の方からハッキリ言いますよ。もう光先輩と付き合ってるからって」
「そ、それは止めてくれないかな。お願いだから」
「でも…まさか隠し通すって訳には。もうそろそろ小宮山先輩にも答えなきゃいけないし」
「そうなんだけど…」
私が一番恐れてるのは琴に嫌われる事だ。ちょっと変わっているけど、あんないい子はそう居ないと思う。
ただ単に喧嘩しただけなら、ここまで悩んだりはしない。今回ばっかりは私に原因がある。琴が智貴君の事を好きなのを知った上で、尚付き合っているんだから。例え殴られたって文句は言えない。もし殴られて許してもらえるなら何回殴られてもいい。
でも、琴は許してくれないだろう。やっぱり私は智貴君と付き合うべきじゃなかったのかな…。
「光先輩」
「な、何?」
「その…俺が何とかしますから、少し待ってもらえますか?」
「何とかって…どうするの?」
「それは…とにかく少し待って下さい」
「…」
結局その日は、そのまま帰宅した。
もし、この後に起こる事を知っていたら、私は智貴君を止めたのに…。
〈琴、休みなんだ。珍しいな〉
翌日、私がクラスに入ると、いつもは私より先に来ている事が多い琴が居なかった。たまにはそんな日もあるだろうと思っていたが、結局、琴は学校に来なかった。
「あの…伊藤さん」
「え?」
見れば黒木さんが、何やら申し訳なさそうにしていた。黒木さんから私に話し掛けてくるなんて珍しいな。どうしたんだろ。
「そ、その…弟の所為で…ごめん」
「…?何の事?」
「え、だ、だから…小宮山さんの事で…」
琴?琴がどうかしたのかな。
「あ、あの…もしかして、まだ話、聞いてない?」
「う、うん。黒木さんが何話してるか解らないし…」
「そ、そう…」
黒木さんと話している途中、私のスマホに着信があった。相手は…琴だった。
『今日、学校が終わったら側の公園に来て』
「後で琴と会うから、その時に聞いてみるね」
どうしたんだろう。学校は休みなのに。学校では話しずらい事なのかな。
もしかして…
とにかく行ってみよう。
放課後、公園に行くと既に琴は来ていた。
「琴…」
私の声に琴は顔を上げるが、何も言わずにうつ向いてしまった。
私は恐る恐る、琴の隣のベンチへ座った。
「今日はどうしたの?具合でも悪かったの?」
「うん、そうじゃなくて…少しショックで学校行く気無くて…」
ショック?やっぱり話って…。
「伊藤さん、正直に答えて。智貴君と…付き合ってるの?」
「こ、琴…私の話を聞いて」
「…智貴君の言った事、本当だったんだ」
「智貴君?琴、その事、智貴君から聞いたの?」
「うん、昨日聞いた」
智貴君、自分が何とかするって言ってたけど…言っちゃったんだ。
「昨日、智貴君から会えないかって連絡があって、告白の返事が貰えると思ってたんだ。そしたらさ、もう伊藤さんと付き合ってるからって…」
「…」
「いつから付き合ってるの?」
「琴、お願いだから私の話を…」
「うん、分かってる。智貴君の方から付き合ってって言われたんでしょ?」
「う、うん」
「そっか…。智貴君、私より伊藤さんが好きだったんだ…。ハハ…何が駄目だったんだろ…」
「こ、琴…」
「大丈夫だよ、伊藤さん。こんな事で私、伊藤さんの事嫌いになったりしないから」
「…」
「でも…ちょっとショックかな…」
「…」
「話はそれだけ…明日は学校に「琴!!」
「な、何?」
「…私、智貴君と別れるよ」
「…!?な、何で?」
「だって私、琴の方が大事だもん」
「い、伊藤さん…駄目だよ。せっかく智貴君が付き合おうって言ったんだよ。それを…」
「確かに、男の子にそんな事言われたの初めてだから嬉しかったけど…でも今は琴と一緒に居る時間を大事にしたいの」
「い、伊藤さんは…智貴君の事が好きじゃないの?」
「智貴君の事は好きだけど…琴の事はもっと好きだよ」
「ま、待って!そ、そんなの駄目だよ。別に私、智貴君と別れてって言ってるんじゃないの。ただ、智貴君の話が本当か確認したかっただけで…」
「私も…智貴君に付き合ってって言われた時、琴の事裏切ってるって思った。でも今、琴と話してて少し違うかなって…。
「琴の事、裏切ってるんじゃなくて…琴ともっと一緒に居たかったからだったんじゃないかなって…」
「…伊藤さんって…女の子の方が好きなの?」
「…友情って言ってほしかった」
「ほ、本当に別れるつもりなの?」
「うん。やっぱり琴の方が大事だから…」
そうだよ。それが一番いい。智貴君には悪いけど…また前みたいに戻るだけだよ。それが…
「伊藤さん、私からもお願い。これからも智貴君と付き合ってあげて」
「こ、琴?」
「伊藤さんが私の事、気遣ってくれるのは嬉しいけど…それじゃ私一人の所為で二人共不幸になっちゃうからさ。
「だからお願い。これからも智貴君と仲良くやって」
琴…。
本当に…本当にそれでいいの?
あんなに智貴君の事好きだったのに…。
「う…ううっ…」
「い、伊藤さん!」
「琴っ…琴ぉっ…」
「伊藤さん…」
「ごめんね、裏切って。琴が智貴君の事好きなの知ってるのに…付き合うなんて言っちゃって!」
「そ、そんな事…智貴君が決めた事だもん」
「本当に…本当に付き合って…いいの?」
「うん。…でも伊藤さんの方が先に大人になっちゃったのは悔しいけど…」
「え…どういう事?」
「だ、だから…もうしたんでしょ?S○X」
「…してないよ」
「え?そ、そうなの?」
「…まだ付き合って一週間しか経ってないし」
「じゃ、じゃあ…智貴君、まだ童貞!?」
「それは…本人に聞かないと解らないけど」
「そ、そっか~!智貴君、まだ…♪」
「何で嬉しそうなの?」
「い、いや~別に!と、智貴君がまだ他のメス…女を知らないのかなって思ったら、何か嬉しくって♪」
「…私もそのメス…何とかに入るのかな」
「ち、違うよ!伊藤さんは…うん!そんな事ないよ!」
もし琴に彼氏出来たら、大変だろうな。
それ以前に琴の性格、受け入れてくれる人居るのかな?
今さらだけど、心配になってきたよ…。
「何か…ゴタゴタしちゃって…すんません」
「あ~うん…もう大丈夫だから」
翌日、私は智貴君に事の顛末を話した。
智貴君も自分の所為で、私と琴が喧嘩になったんじゃないかと心配していたらしい。
まぁ私もそうなるのは覚悟していたけど…結局、琴に助けられた様な物かな。
自分が好きな男の子が、自分の親友と付き合うなんて…。私だったら許せたかな。もし許せても、きっと気まずいだろうな…。
私も暫くは、琴と会うの気まずいけど…。
「ところで…小宮山先輩の言ってた事なんすけど」
「うん。暫くはぎこちないと思うけど…琴は私達が付き合うの歓迎してくれるって」
「そっすか…」
「智貴君」
「はい?」
「その…改めて…よろしくね」
「…ええ。こちらこそ」
「…ところで…智貴君って、私以外に誰かと付き合った事ある?」
「無いですよ。先輩が初めてです」
「そっか…じゃあさ…その…女の子と…エッチの経験とかは…」
「…何か先輩、小宮山先輩に似てきましたね」
「そ、そうかな…」
「…無いですよ。それも先輩が初めてです」
「…え?わ、私が初めてって…智貴君、わ、私と…したいの?」
「まあ…俺も男ですから…」
「あ~…う、うん、そうだよね。うん…そっか。私としたいんだ」
「先輩は経験あるんですか?」
「な、無いよ。男の子と付き合うのも初めてだし」
「ですよね」
「…それはどういう意味?」
「あ、別にモテないとかじゃなくて…すんません」
「いいよ。自分が地味なのは知ってるし」
「…じゃあ、よろしくお願いします」
「え…いきなり?別に嫌じゃないけど…まだ早いんじゃ…」
「…いえ、お付き合い、お願いしますって意味ですけど」
「…そ、そうだよね」
「先輩、やっぱ小宮山先輩に似てますよ」
「…」
この日から、私と智貴君は晴れて付き合う事になった。琴には少し悪い気がするけど。
それから私と智貴君は、私が卒業するまで付き合う事になった。
その後、私も琴も別々の大学に進学し、会う機会も少なくなり、就職が決まると、ほとんど連絡も取らなくなった。
私は看護婦になり、忙しい毎日が続いた。
そんなある日、私の勤務する病院に懐かしい知り合いが訪れた。
智貴君だ。
最後に会ったのは高校の卒業式だから、もう何年振りになるだろう。
私は思わぬ再会に喜び、智貴君と話した。聞けば彼も働いているそうだが、結婚はまだらしい。
そして智貴君から、もう一度付き合わないかと言われた。私も智貴君の事はまだ好きだったし、私と智貴君は再び付き合う事になった。
その一年後、私が妊娠したのを切っ掛けに正式に籍を入れる事になった。
因みに琴は、智貴君から聞いた話だと姉の智子さんと同じ大学に進んだらしい。大学で同じ野球好きの彼氏が出来たそうで、智子さんが大層羨ましがっていたそうだ。
智子さんは…誰と付き合ってる気配も無いそうだ。
「光…来たみたいだぞ」
「あ、は~い」
今日、琴と久し振りに再会する。結婚式の時に会ったから、一年振りかな?
ふふっ、琴が来るって聞いただけで、高校に戻ったみたい。色々聞いてみたい事もある。今は誰かと付き合っているのか?智子さんはどうしてるのか?
「いらっしゃい、琴。待ってたよ…」
最後はハッピーエンドにするか迷ったんですが、好きなキャラには幸せになってほしいのでこうしました。
こみちゃんは、智貴君と一回付き合ってもいいけど、野球好きの彼氏が出来た方が絶対幸せなんじゃないかなと思います。一緒にマリンスタジアムデートとかも出来るし。
原作でもありそうで無かった、伊藤さんと智貴君の絡みがあって、凄くタイムリーで嬉しかったです。
次は暫くおいて、ギャグ書きたいです。
それではまた。