私がこんな気持ちなのはどう考えても黒木が悪い! 作:昼間ネル
それでもっ…!
6時間目も終わり、担任の荻野先生が短い連絡事項を伝えると、生徒達は帰宅し始めた。
(さて、と…)
智子は笑美莉との約束を思い出した。
昨夜のメールで、何故か放課後に公園に来てほしいと言われた。正直学校で言ってくれればとも思うが、わざわざ呼び出すと言うからには人には聞かれたくない事なのだろうか?と言っても、当の智子にも皆目検討が付かなかった。
(アイツと絡んだ事なんてほとんど無いしなぁ。人に聞かれたくないならメールでもいいのに…)
智子が重い腰を上げようとすると、ゆりと真子が智子の机の前に来た。
「黒木さん、帰ろ」
最近はゆりと真子の3人で帰るのが当たり前になりつつあった。真子は電車ではないので駅で別れるが、ゆりとは途中の駅まで一緒に帰る事が多い。
「あっ、ごめん、今日は寄る所あるから先に帰っても大丈夫だよ…」
「誰かと待ち合わせでもしてるの?」
「あっ、いや、そういうわけじゃないんだけど…。やる事あって」
「そうなんだ、じゃあ黒木さん、またね」
「う、うん田中さん」
「…」
智子は鞄を背負うと真子に会釈して教室を出て行った。
「…」
「どうしたの、ゆり?私達も帰ろ」
「…うん」
「あ、ごめん。忘れ物しちゃったみたい。皆、先に帰ってて」
「え、そうなの?」
「あ、うっちー」
笑美莉は駅の前まで来ると、わざとらしい言い訳をして皆と別れた。一旦学校に戻るふりをして、皆の姿が見えなくなると駅前の公園に向かった。
とりあえずベンチに座り辺りを見回すが、まだ智子は来ていない様だった。
(あいつ、約束すっぽかしたりしないわよね)
(…)
(あいつ来たら、何話そう…)
実の所、笑美莉はメールを送った後に、送らなくてもよかったかと後悔していた。
そもそも今日、公園に呼び出したのも、単純に昨日の学食で思ったより話が出来なかっただけで、とりたてて火急の用があるわけでも無かった。
(田村が邪魔しなければ、もっと話せたのに…!)
(…)
(話す、か…)
最近の自分は少しおかしいと笑美莉も自覚はあった。
智子は自分を性的な目で見る変な奴。あまつさえ彼女をつけ回している節さえある。そんな智子の視線から逃れようと警戒していたつもりが、気が付けば自分が智子の一挙一動を、目で追いかけていた。
智子もそんな笑美莉の動向に気付いたかの様に、自分には目を向けなくなった。
ただ変な奴だと思っていたが、こちらの手紙にはきちんと返事をよこしたりと、変な所で礼儀正しかったりもする。
最近は、かつてのクラスメートだった田村や真子、根元と話している姿をよく見かける。
その度に、何故かイラッとする自分がいた。
(何で他の奴と楽しそうに喋ってるの!?女なら誰でもいいの!?)
そう思う度に、ハッと我に帰る。
(何で私怒ってんの?これじゃ私、まるで黒木の事が好きみたいじゃん…)
3年生も当然の様に同じクラスだと疑いもしなかった。どうせ2年の時の様に自分を視姦してくるのだろう…。そんな事を考えながら何故かニヤニヤしている自分がいた。そんな想いを打ち消す様に別のクラスになった時は、思わず感情が爆発してしまった。
何より驚いたのは、別のクラスになってホッとするより、悲しむ自分を再認識した事だ。
(私、何で悲しんでるんだろ…)
そんな自分の気持ちを認める事が出来ないものの、遠足では仲の良い友達と別行動を取ってまで、智子と行動を共にした。
別に自分は同性愛の気はある訳ではない。
それは分かっている。
…分かっている筈だった。
じゃあ、どうして自分はこんなにも黒木と接しようとしているのか…。
それを確かめる為にも、もう少し黒木と話してみたい。そう思った彼女は、気が付けば放課後に会いたいとメールを送っていた。
(あっ!)
公園の入り口に智子が立っていた。智子はベンチに座る笑美莉と目が合うとペコッと頭を下げ、近付いて来た。
(本当に来た。ま、まぁ来るのは分かってたけどさ!
(でも、あいつ最近田村達と帰ってなかったっけ?わざわざ断って来てくれたのかな…)
「ど、どうも。…もしかして待った?」
「う、ううん!私も今来たとこ!」
「そ、そう…」
智子は少し距離を置くと、笑美莉の横に座った。
「…」
「…」
(やべぇ…。やっぱ怒ってんのかな。別に私悪くないけど、ひとまず謝った方がいいのかな。面倒くさいな)
「あ、あの…。昨日はごめん」
「へっ?」
「わ、私と二人で食べたかったみたいだけど、邪魔が入っちゃって。田村さん達、弁当だったから学食に来ると思わなくて」
「え?あ、あぁ、そうなの?」
(あれ?怒ってない?この事で呼び出したんじゃないの?)
「あ、あの…今日は何で呼び出されたのかな?」
「あ、う~ん。そ、それなんだけど…」
(何だ?他に怒らせる事はしてない筈だけど…)
「わ、私達メールしてるじゃない?」
「え?う、うん」
「その…た、たまには直接話したいって思って…」
(へ?そんな事?田村さんに聞かれちゃマズい事ってわけじゃないの?)
「く、黒木は…直接話すのは、嫌?」
「べ、別に嫌じゃないけど。…てっきり私とは話したくないのかと思ってたから」
「そ、そんな事ない!私は…出来れば黒木とは、友達になりたいと思ってるし」
「友達?」
「う、うん。ホラ、私達クラス違っちゃったからさ。あまり喋る機会も無いし…」
「そ、そっか。良かった。怒ってるのかと思ってた」
「別に、昨日の事は何とも思ってないよ。まぁもうちょっと話したかったけど、こっちの方が却って良かったし」
「…」
「…ふふっ」
(あ~何だ。昨日の事じゃないのか。びっくりさせんなよ)
智子は一呼吸すると公園を見渡した。公園には自分達と同じ様な通学帰りであろう中高生や親子連れが、思い思いに談笑していた。
笑美莉も同じ公園の風景を眺めながら、智子に話し掛けた。
「黒木…と、こうして喋るの京都以来だね」
「えっ?あぁ、そう言えばそうだっけ」
「さっき言ってたけどさ…。黒木、私が黒木の事避けてるって思ってたの?」
「うん、まぁ…。ちょうど京都から帰って来た辺りから私の事避けてたでしょ?」
「…まぁちょっとね」
「もしかして、私何か怒らせる事しちゃったかな?」
「…かなり、してるけど」
「えっ?ほ、本当に?」
「別にいいわよ。今更気にしてなんかないからさ」
「そ、そう…。あの、一応、念のためなんだけどさ…。何したか、教えてくれないかな?」
「へ?何で?別に気にしてないって…。そ、その…あんたがそういう事する人だって事は、もう分かってるし///」
(そういう事?え、何?まるで覚えが無いんだが…。もしかして何か誤解されてる?)
「ごめん、もしかしたら私覚えてないかもしれないから。間違いだったらちゃんと謝りたいし…」
「覚えてないって…。まぁ1年前だけど。ほら、私と黒木、最後の日に同じ部屋だったでしょ?」
「う、うん。流石にそれは覚えてるけど」
「あの時さ、黒木、わ、私のシャワー…覗いてたでしょ」
「え!…あぁ、言われてみればした様な…」
「おまけに私の下着、漁ってたでしょ?」
「え!?そ、そんな事してない」
「別に今更隠さなくったって大丈夫だから。私の下着、黒木のベッドに隠してあったわよ。知ってるんだから…!」
(いや、流石にそれはしない…ん?そう言えばコイツの鞄に躓いた時に慌てて服の下に何か隠したな。アレ、パンツだったの?)
「何か女の子同士でイチャイチャするアニメ見始めるし」
「あ、あれはテレビ付けたら偶然で…」
「私の寝顔見てたし…」
「あ、何か面白い顔しないかなって思って…」
(でも、何でそんな事したんだっけ?)
「今だから聞きたいんだけど…。く、黒木って女の子の方が…す、好きだったりするの?」
「えっ?べ、別にそんな事ないけど…。どうして?」
「あんた、体育祭の時、私のチア姿見ながらご飯食べてたじゃない」
「体育祭…。え…あ、あれ、内さんだったの?」
「…へ?私を見てたんじゃ…」
「ごめん、そ、その…誰だったかは分からなかった」
「ト、トイレ…。わざわざ私の隣に入ってオシッ…音聞いて…」
「そ、それも只の偶然で…」
「わ、私、バレンタインの余ったヤツあげたよね?それのお返しでウン…!くれたよね?」
「あ、それも田村さん達と作ったヤツ余ったから、お返しに入れただけで…。ウンコ型じゃなくて、売ってるのにしようと思ったんだけど…」
「…私の事、つけ回してたんじゃ…ないの?」
「いや、全然そんな気は…」
(でも何で京都でそんな事…あーっ、思い出したっ!確か処女でハブられてそうだから、仲良くしてやろうと思ったんだ!)
「く、黒木、もう一度聞くけど…。あんた可愛い女の子が好き…なんでしょ?」
「いや、そんな趣味はないけど…(ゆうちゃんにセクハラするし、全くない訳じゃないけど…。アレ?私もしかしてそっちの気あるのかな?)」
「じゃあ、どうして私の事付け回してっ!」
「そ、それは本当に偶然で…」
「で、でも私の下着盗んで…!」
「あ、それは下の毛処理してんの見られたから、言いふらさない様に弱み握れないかって思っただけで…。本当にごめん」
「…私の事、好きなんじゃ…」
「も、もちろん嫌いじゃないけど…。まだ内さんの事知らないし…で、でもいい人だとは思うけど」
「…」
(え?え?どういう事?
こいつ私の事好きなんじゃないの?
だから私の事付け回してたんじゃないの?
え?たまたま偶然だったの?
え?あんなにタイミングよく?
そんな偶然あるの?
え?私が可愛いから付きまとってたんじゃないの?
え?黒木?え?え?)
笑美莉はポカンと口を開けて放心状態になった。頭の中で同じ言葉を反芻する。
「あの…内さん?うわっ!!」
心配した智子が笑美莉の顔を覗き込んだ瞬間、笑美莉が智子の両肩に掴み掛かった。
「黒木…。あんたは私の事が好きなんでしょ。そうでしょ?」
「痛てて、だ、だからそういう意味の好きじゃ…痛たたっ!」
智子の言葉に笑美莉はスッと手を離す。
「いきなり何すん…えっ?」
智子が笑美莉を睨み付けると、笑美莉は両目に涙を貯めていた。
(えっ?何で泣いてんの?弱み握ろうとしたのがショックだったの?)
「ごめん、今日は帰る」
「えっ?あ、あの…」
笑美莉はクルッと背を向けると、鞄を握り走り出した。
一人残された智子は、妙な罪悪感と共に、笑美莉の後ろ姿を見つめていた。
(今日は早く帰れそう。琴には先に帰ってもらったけど、待っててもらえば良かったな)
琴美の友人の伊藤が、一人帰宅の徒に就いていた。いつもの様に吹奏楽部の練習に参加したが、担任の急用の為、部活は中止になった。部活に出る時は琴美に先に帰ってもらっているが、こんな事なら一緒に帰れたのにと、ため息を付いた。
(ん?あの人、確か昨日…)
駅に続く公園沿いを歩いていると、何度か見知った顔の女子高生が公園から出て来た。チラッと顔が見えたが、その顔は真っ赤で泣いている様にも見えた。
(あの人って、確か琴の友達と学食にいた人だったよね。何か泣いてる様に見えたけど…)
不思議に思いながら公園の入り口に差し掛かり、何気無く公園を覗くと、智子がポツンと間の抜けた表情で立っているのが見えた。
(あれ、確か琴の友達の…黒木さん?どうしたんだろ。…もしかして今の人と話してたのかな)
「…」
智子は伊藤に気付いているのかいないのか、その場を動こうとしなかった。そんな智子を何があったんだろう、と思いながらも伊藤は駅へ向かった。
家に帰り、いつもの様にダラダラとスマホを見ている智子だったが、全く頭に入ってこなかった。今日の笑美莉の言動が何度も頭の中を反復する。
『あんたがそういう事する人だって事は…もう分かってるし』
『あんた可愛い女の子が好き…なんでしょ?』
『どうして私の事付け回してっ…!』
『あんたは私の事が好きなんでしょ。そうでしょ?』
(もしかして…いや、絶対私が付け回してると思ってるな…
(全然意識してなかったけど…そういえば体育祭のチアって内さんも出てた気がするし…。そうか、体育館で飯食ってる時、前にいたの内さんだったのか…。
(言われてみれば、ほとんど話した事無い割には、随分と濃い思い出があるな…。ギャルゲーだったら間違いなくフラグ立ってるわ。
(…そっか。それで私が好きだって勘違いしたのか。
(でも私、女だぞ…。同じ女の私に好かれてるって知って、それでも友達になろうって事は…。やっぱりそういう関係を望んでるかな。
(内さんの事は嫌いじゃないけど…。よく見りゃゆうちゃんに似て可愛いし…)
「…」
智子は見ていた動画を切ると、笑美莉にメールを打った。
『黒木です。
今、メール出来ますか?
今日のお詫びも兼ねて
お話したいんですが…』
数秒、送るべきか迷った智子だったが、思いきって送信ボタンを押した。
新宿のメロンブックス行って、やっとわたモテの同人誌見つけました。…と思ったら秋葉にもあったよ、同じのが!
ファンアートは直ぐ様保存してるんですが、本は売ってないんですよね。やはりイベントじゃないと駄目なんでしょうか…。
どこか取り扱っている所知っていたら、教えて下さい。