私がこんな気持ちなのはどう考えても黒木が悪い! 作:昼間ネル
何はともあれ最終回です。どうぞ。
昼休みも残り5分程となり、グラウンドに出ていた生徒達も校舎へと戻り始めた。
ついさっき笑美莉と別れた智子はと言うと、トイレに座っていた。
涙でぐしゃぐしゃになった顔を洗い、頭の中を整理していた。
(よく考えれば凄い事になったな。あの内さんと友達になるだけならともかく、付き合う事になるなんて。一年前からは想像も付かなかったわ)
本来なら、智子は笑美莉に今まで楽しかったと別れを告げ、またいつも通りの日常に戻る筈だった。
ところが実際は笑美莉にまさかの告白を受けた。
何より驚いたのは自分の反応だった。智子は彼女の告白が嫌では無かった。むしろこんな自分に、同性と言う越えがたい壁を越えてまで好意を示してくれた彼女が堪らなくいとおしかった。
(まさか自分が女と付き合う事になるとはな…)
そう言いながらも、智子は自分がにやけているのに気付いた。
(よく見れば内さんって、ゆうちゃんに似てるな。もしかしてそんな所も好きになった理由なのかな)
心を整理し、そろそろトイレから出ようと考えていた時、扉の外に足音が聞こえた。
「あ、あの!」
(ん?この声はコオロギ?それに…もう一人いるのか?)
「…何?」
(えっ?内さん!?)
どうやら琴美が話しかけた相手は笑美莉らしかった。今、智子がいるトイレは3年の教室のある階。先に戻った智子に遅れて笑美莉も戻って来たのだろう。
「内さん、だったよね?」
「そうだけど…。新しいクラスの人だっけ?」
「あ、クラスは違うんだけど。その…あいつ、黒木…さんと同じクラスの小宮山って言うんだけど」
「黒木の…?」
「う、うん。黒木の事で、ちょっとだけ話いいかな?」
「黒木の事?いいけど…」
(おいおい、コオロギの奴、余計な事言うつもりじゃねーだろうな!)
「友達から聞いたんだけど、内さん最近あいつと仲良いよね?」
「…まぁね。それがどうかしたの?」
「あ、悪口とかじゃないから安心して!あいつの事で、ちょっと知っておいてほしい事があるんだ」
「知っておいて…?」
(私の事で知っておいて…って、まさか私の中学の時の事とかバラすんじゃねーだろな!)
「私とあいつ、同じ中学でさ。恥ずかしいんだけど…あいつも私もあまり友達いなくてさ」
(友達いねーのはオメーだろ!私にはゆうちゃんって友達がいるわ!…ゆうちゃんしかいないけど)
「ただ、共通の友達いたからあいつともつるむ事が多くて…」
(私はそんな気無かったけどな!)
「…ごめん、何が言いたいのか分かんない」
「あっ、そ、そうだね!ごめん。じゃあはっきり言うけどさ」
(…何言う気だ?)
「あいつと…これからも仲良くしてやってくれないかな」
「…」
(…へ?)
「さっきも言ったけど、私もあいつも元ぼっちみたいな物でさ。…そりゃああいつの事はあまり好きじゃないけど、あいつのおかげで中学はそれなりに楽しかったからさ。
「もし、あいつと(正確には成瀬さんだけど)知り合わなかったら私、どうなってたか分からないんだ。
「だから、お願い。あんな奴でも傷付ける様な事はしないでやってほしいんだ」
(…あいつ)
「えっと、名前何だっけ?」
「あ、小宮山。小宮山 琴美」
「傷付けるな、ってのは無理かも」
「え?」
「私も結構あいつに傷付けられてるし」
「え?もしかしてあいつに何かされたの?」
「まぁね」
「ご、こめん!…って私が謝る事じゃないけど。何だったら私からそれとなく言うから許してやってくれないかな?」
「…もう気にしてないから大丈夫よ。それに私、黒木とはもう友達じゃないから」
「え?」
(ちょっ…内さん!?)
「私達付き合ってるから」
「(…へ?)」
「ご、ごめん。言ってる事よく解らないん…だけど」
「私と黒木付き合う事になったから。だから只の友達じゃないって事」
「…え、あの、内さん。二人共、女だよね。それって…」
「うん、そうなるかもね」
「…」
「小宮山さん、だっけ?後でメルアド教えてくれる?」
「えっ!い、いいけど…どうして?」
「私、黒木の事あんまり知らないからさ。あいつがどんな奴なのか教えてほしいの」
「…あっ、う、うん!分かった!」
「確か黒木と同じクラスだったよね?後でそっち行くからさ。じゃあね」
「う、うん。また後で」
笑美莉の足音が去って行くのを聞くと、智子はゆっくりとドアを開けた。
「…おい」
「うおっ!!」
ギィーと不吉な音を立て出てきた智子は、琴美にはその髪型からさながら貞子に見えた。
「お、おまえいたのかよ!って言うか聞いてたのか!?」
「どういうつもりだよ」
「どうって…」
「何であんな事言ったんだよ」
「…」
智子も本気で怒ってる訳では無かった。そんな智子を見た琴美もほんの少し、寂しそうな顔をする。
「おまえまさか、私の事好きなのか?」
「そんな訳ねーだろ!」
「じょ、冗談だよ。そんなムキになるなよ…」
「ったく。人が心配してやってんのに。…その、さっき内さんが言ってた…付き合うってホントか?」
「…まあ、結果的にそうなった」
「…良かったな」
「はぁ?」
智子は琴美がてっきり嫌味の一つでも言ってくるだろうと思っていた。だが、琴美の口から出たのは、意外にも祝辞の言葉だった。
「何で良かったんだよ。女同士だぞ?変だと思わないのかよ」
「おまえ、内さんと付き合うの、本当は嫌なのか?」
「そ、そんなわけねーだろ!あっ…!」
「んだよ。嬉しいんじゃねーか♪」
「っ、うるせー///」
照れる智子をニヤニヤしながら見つめる琴美は、軽く溜め息を付く。
「おまえの事は別にどうでもいいけど、何だかんだで付き合い長いからな。正直心配してたんだよ。
「私は伊藤さんって友達が出来たけど、おまえ修学旅行の時一人だったろ?だから大丈夫かって思ってさ」
「…」
「そりゃあ、まさかそんな関係になってるなんてびっくりしたけど、成瀬さん以外でおまえの事好きになる奴いんのかってな」
「余計なお世話だ、便所コオロギ」
「あぁ?何だそりゃ!人が心配してやってんのに!」
「うるせー!おまえに心配される程落ちぶれてねぇよ!」
「こいつ…!」
「…!」
ワナワナと肩を震わせる琴美を見た智子は、急に熱が冷めた様に冷静になった。
「…あんがとな」
「へっ?」
「心配してくれて、ありがとうって言ってんだよ!」
「…ちっ、初めからそう素直に言やぁいいんだよ」
「誰にも言うなよ!」
「え?あ、内さんと付き合う事?」
「あぁ。クラスの奴らには内緒にしとくつもりだったけど、内さんが言っちまったからおまえは仕方ない。でも、もしバレたら内さんも変な目で見られるから黙っとけよ!」
「あぁ…そうだな。黙っとくよ」
教室に戻ると、やはり気になっていたのか、早速ゆりと真子が心配そうに智子に寄って来た。
「黒木さん、どう…あっ」
智子の目が充血しているのに気付いた真子は、喧嘩でもしてしまったのかと察し、言葉に詰まってしまった。
「あ、大丈夫。喧嘩した訳じゃないから。まぁ仲直りはできた…と思う」
「そ、そうなんだ」
「…」
じゃあ何故、目が腫れてるの?そんな視線を投げ掛けるゆりに智子は気付いた。
「さっきは言う事聞けなくてごめんね。でも田村さん…ゆりも内さんと同じ位、大事な友達だって思ってるから」
「うん。それはいいけど、その…」
「…後で話すよ。上手く話せるか分かんないけど」
「…そう」
5時間目のチャイムが鳴った。
放課後。
帰宅準備をしている教室に、笑美莉とその友達がやって来た。
(あ、内さんと…友達か。もしかして一緒に帰ろうって事かな)
笑美莉はてっきり自分に用があるのだと思っていた智子だったが、自分の下へは来ず、伊藤と話している琴美の方へ向かった。
(あ、そう言えばメルアドがどうとか言ってたな)
いつも通りゆり達と帰るか、笑美莉が自分に話し掛けてくるのを待つべきか迷っていると、意外な事に笑美莉の友達が智子の席へやって来た。
(え、え?何でこっち来んの?)
「あ、あの黒木さん」
「は、はい」
「その…良かったら、私達とも友達にならない?」
「…へ?」
琴美とアドレスを交換しながら、笑美莉はその様子を眺めていた。
『え、どうしたのうっちー…きゃっ!』
『ちょっ…うっちー!?』
『ごめん。でもそれ違うから』
『え?ち、違うって…』
『私、黒木の事がぼっちでかわいそうだから友達になったんじゃないの。あいつの事が、皆と同じ位好きになったから、一緒にいて楽しいって思ったから友達になろうと思ったの。
『肩押したのは謝る。でももし黒木が皆の事そんなふうに言ったら、私同じ事するから。だから黒木の事、もうそんな目で見ないで』
『うっちー…』
「実はさ…黒木さんの事、少し誤解してたみたいで、うっちーにそんな事ないって怒られちゃって」
「うっちーが友達になりたいって言うから、私達も友達になりたいな~なんて…だ、駄目かな?」
「えっ、べ、別にいいけど…」
「やった~!あ、じゃあ自己紹介するね。私が宮崎で、こっちが…」
「黒木さん、今日は私達先に帰るね」
宮崎達に捕まった智子を見ていたゆりと真子は、微笑みながら手を振って教室を後にした。
その後、笑美莉に今日は黒木と帰るからと言われた宮崎達は先に帰り、智子は笑美莉と一緒に帰る事になった。
「何かやつれた顔してるわね」
肩を落として歩く智子に、笑美莉は呆れていた。
「そりゃそうだよ。内さんと付き合う事になって、それだけでも驚いてるのに、5人も友達できたんだから。脳の処理が追い付かない…」
「ふふっ、あんた元ぼっちだもんね」
「なっ!そ、それは関係無いだろ!って言うか何で知って…。そうか、トイレであいつに言われたっけ」
「トイレ?えっ、な、何で知ってるの?」
「あ…私、トイレ入ってた」
「ちょっ…!何で盗み聞きしてんのよ!」
「べ、別にしたくてしたんじゃないよ!たまたまトイレ入ってたら内さん達が入って来たから、出るに出られなかったんだよ!」
「あんた、また私のオシッ…トイレの音聞こうとしてたわね!?キモい!」
「な!だからあれは誤解だって言ってんだろ!」
「小宮山が来なかったら聞くつもりだったんでしょ!」
「聞かねえよ!だいたい入って来たの内さんって分かんねーだろ!」
「…笑美莉」
「あん?」
「名前よ。そ、その…。私達もう付き合ってるんでしょ?だったらいつまでも内さんなんて止めてよ。…名前で呼びなさいよ」
「そ、それはその…まだ恥ずかしいと言うか」
「私の方が恥ずかしかったんだからね。初めての告白を同じ女相手にするはめになったんだから。本来なら、あんたの方がするべきでしょ?私の事好きなんだから…」
「いや、す、好きだけど…。今日好きになったと言うか…」
「あんたまさか…実は田村の方が好きとか言うんじゃないでしょうね?」
「な、何でそこで田村さんが出てくんだよ!」
「くしゅんっ!」
「どうしたのゆり、風邪?」
「あんたネズミーの時も田村と一緒だったじゃない!」
「あ、あれはたまたま一緒の班だっただけで…」
「じゃあ言ってよ」
「え?な、何を?」
「田村より私の方が好きって」
「ちょっ…!周りに人いるから」
笑美莉は急にキョロキョロと辺りを見回すと、智子の手を引っ張って狭い路地へと入って行く。
「お、おいっ!どこ行くん…んんっ!?」
誰もいない日陰の路地へ連れ込まれた智子の口を、笑美莉の口が塞いだ。
「ん、んん~っ!!」
「…っはぁ。ど、どう?わ、私は好きだから、この位できるわよ///」
「だ、だからっていきなり…。初めてだったのに…(舌まで入れやがって)」
「わ、私だって初めてよ。でもこれで私は本気だって分かったでしょ?だ、だから今度はそっちが言いなさいよ。私の事好きって…」
「…」
「あんた、私がここまで…んっ!?」
笑美莉の言葉を止める様に、今度は智子が彼女の口を塞いだ。
「…ッッ!んっ、んんっ///」
「…はぁっ!こ、これでいいだろ。私も…笑美莉が好きだよ///」
「ちょっ、わ、私は好きって言いなさいって言ったのよ!べ、別にキスしろなんて言ってない…でしょ」
「な、何だよ。自分はした癖に。こっちからするのは嫌なのかよ」
「そ、そうじゃない!…そうじゃないけど。く、黒木の癖に生意気よ!」
「なっ!さっきは名前で呼べって言って、自分は黒木かよ!」
「う、うるさい!あんたが悪いのよ!あんたがキモいから悪いのよ!だからもう一回しなさいよ!」
「や、やだよ!もう2回もしたんだからいいだろ!」
「い、いいじゃない!もう付き合ってるんだから。お願い、ねぇしてよ!もう一回チューしてよぉっ!!」
この後、滅茶苦茶接吻した(された)。
その日の夜、智子は夜中の2時迄迷った挙げ句、ゆりと真子に笑美莉と付き合う事になったとLINEで伝えた。
翌朝、智子からのLINEを確認した二人から、怒涛の質問責めに合う事になった。
「黒木さん、今日はいつにもまして眠そうだね」
まだ一時間目が終わったばかりにも関わらず、寝ぼけ眼の智子をゆりと真子の二人が心配する。
「またスマホでも見てたの?」
「あ、それもあるんだけど…」
「あるけど?」
「その、内さん(束縛が)激しくて…」
「えっ!?そ、それって…///」
「昨日も、いっぱい(電話)かけてって…。今日は(電話)したくないって言ってるのに」
「…っ!!」
(かける?何を?え、オシッコ?え?)
「く、黒木さん、もしかして…内さんとはもうそんな関係なの?」
「え?うん、そうだけど…(私達が付き合ってるって知ってるよね?)」
「ひゃあ~///」
「ま、まあ…付き合ってるんだし、問題無いよ。ねぇ真子」
「う、うん!全然変じゃないよ!」
「…?」
この後、二人が誤解している事に気付いて慌てて弁明するが、その数日後、それが現実になる事を智子はまだ知らない。
-完-
\や、やめて!そんなの入らない!/
とりあえず終わらせる事が出来ました。
原作の新入生回もうっちーが締めだったりと俺得な内容でした。ネズミー回収録の13巻も7月と意外と早く出るみたいで今から楽しみです。
少し先になりますが、短編のギャグを書ければと思ってます。期待してね!
?「あんまり調子乗らないでね」
!?