(あいさんたちが言ってたのって、どういうことなんだろう)
きらりは杏を膝の上に乗せて唸る。
昨日のことがあってから、杏のもとに帰ってきてから、ずっとこの調子。あの違和感が何だったのか、どうして二人のイケメンはわざわざきらりに違和感を感じさせるようなことをしたのか、そのことを考えていた。杏ちゃんを心配させないよう、表面上は普段通りにしながら。
でも、何だろう。この違和感を自分で探れば探るほど、何かが自分の中で疼いている。何かが、塞いだ蓋を破って噴出しようとしているけど、いたずらに周囲にひび割れを作っているだけのような。
「きらり、何か隠し事してる?」
が、杏に隠し事は通じないようで。
「にょわっ⁉︎ な、なんにもしてないゆぉ?」
「……絶対してるやつじゃん、それ」
一度こうなれば、きらりに勝ち目は無い。
「んも〜……杏ちゃん、何でわかったの?」
「いや、きらりはわかりやすいよ、基本的に。少なくともうちにいる時はさ」
「うちにいる時は? きらり、そんなに外にいる時と違ってゆ?」
きらりとしては、基本的にはこのシェアハウスにいる時でも封ずるべきものは封じているつもりだ。だって、一番破壊したくない人がいるのだから。
「違うよ。いや、言動は違わないんだけどさ……。なんていうか、時々疲れが見える。無理して何かを我慢してるのがわかる。一緒に暮らしてれば、ね」
だらけているように見える杏は、きらりの些細な変化を全て見透かしていた。
きらりは杏のリアクションを前に焦ったが、落ち着くとすぐに、言葉では言い表せない深い安心感が代わりに心の中を満たしていく。
「きらりはさ、溜め込まない方がいいタイプだと思うよ。杏なんかよりよっぽど素直だから。素直な人は、溜め込まないで吐き出した方が自分の中での整理もつきやすいんだ、私なんかと違ってね」
杏はきらりの膝から気怠げに立ち上がった。そしてゆっくりと振り返りながら腰を下ろし、きらりに向かい合って胡座をかく。動作はニートアイドルの双葉杏らしく怠慢な風だが、いざ向き合ってみればその瞳は真剣そのもの。自ら身を粉にしてでも親友の一助になろうと決めた少女であった。
「なんかあったの? 悪いこと?」
「ううん、悪いことじゃなくて……だから、杏ちゃんに心配かけるのは……」
「世の中には、悪いことでも良いことでもないことが、良いことのはずなのに悪い影響を与えちゃうことや、その逆のこともあるんだよ。そういうのを最適化するには、とりあえず話してみるのが手っ取り早いんじゃない?」
確かにそうかな。杏に心配をかけたくない、その一心で平穏を装うことがかえって彼女に気を遣わせているのなら、言った方がが良いのかもしれない。
「実は、昨日……」
きらりは、ことの顛末を話した。