「ふぅん、普通の優しさに、あまりに普通過ぎる優しさに違和感、ね。んで、きらりは実際のところどう感じてるのさ。イケメン2人からそんな優しさを受けてさ。嫌だったの?」
きらりの話を聞いた杏は、改めてきらりに向き直って問答を始めた。自分の親友が感じた違和感、その正体と、それが意味することを探るべく。
「ううん、全然嫌とかそういうのじゃなくて……」
「じゃあ虚無感は感じた? 真奈美が言ってたようなのは」
「それも特には……」
「じゃあストレートに。嬉しかった? イエスかノーか」
きらりは、少し頬を染める。
「それは……嬉しかったよ、嬉しかったに決まってるにぃ。温かさも、頼もしさも、確かに感じたよ。でも、それでも……」
それでも、どうしてそんな優しさが自分に与えられることになったのかがわからない。それが、きらりの違和感だ。
「なるほど……うん、少なくとも、そういうのが揃ってる限りは、きらりはそういう優しさを望んでないってことは無かったんだと思うな」
「……そうなの?」
「そうだと思うよ。じゃあ最後の確認ね。今、私にそうやって色々吐き出しててさ、その中で感じる気持ちはどんな感じなの? できれば、相手がこの私、双葉杏ってことを抜きにしても言えそうなこと」
「……」
きらりは、目をつぶって深く息を吸った。自らの胸の内を、改めて確認するために。
「……すごく落ち着くにぃ。……嬉しいに、落ち着くに決まってるよ、杏ちゃん。だって、心を縛らなくても良いんだもん」
「そう。そうだよね、きらり。よく頑張った。じゃあ、それと同じ気持ち、少しでも昨日の一件の時には感じた?」
「え……?」
「あいと真奈美に優しくしてもらった時、感じたのは本当に違和感だけだったの? 違和感に混じって、他に感じたことは無かった? 特に、今感じてるのに似たような……」
「……」
無音の間。
それが破れる時、きらりの瞳は僅かながら潤んでいた。何かを思い出したように、時を経て封印を解かれたように、潤みだしていた。
「……あれ? 感じた、感じてたよ? 杏ちゃんと今こうして話してるのと同じ感覚……なんで、なんでだろう? この懐かしい、でも温かなで自然な安堵感は……何?」
「……そうか」
杏はよっこらせ、と立ち上がった。
そしてきらりの両肩を叩くと、そのまま彼女を抱きしめたい。
今は杏の方が視線が高い。その状態から、きらりを柔らかく抱擁した。普段とは逆だ。でも、きらりが今ここで感ずるべきは、この状況こそであった。
「……杏ちゃん……きらりは……私は……!」
「……よし、きらり。よく頑張った。ここまで来たら、あと少しだよ。その殻を破るまで」
杏はきらりを、彼女の身にその温かさが染み渡るまで抱いた後、改めて立ち上がった。その手にはスマートフォンがある。
「きらり、自分のこの気持ちが何なのか知りたい?」
「うん」
「……わかった。じゃあ私なりに言ってみるね。でも、その代わりに交換条件。教えてあげるから、もう自分をごまかさないように」
双葉杏は、諸星きらりの殻を外から透かす。