今回の話はまあ、前回や前々回などに引き続いてしーたんとルイズのすれ違い系の話です。まあ、12話のギーシュ編終了までは大体こんな感じですけどね。でも山場は次回かもしれないな。
それではどうぞ。
豪華絢爛過ぎるといっていいほどの朝食の時間は終わりを告げ、ルイズは使い魔となった青年であるうちはシスイを連れて一時限目の授業へと向かっていった。
2年生に進級した生徒は原則として最初の授業に使い魔を連れて行くことになっているからだ。まあ、何事にも例外はあるもので、使い魔を連れず授業に出ることになる生徒もういないというわけではないのだが。
それは教室に入れない大きさの使い魔を召喚した魔法使い……例を挙げるなら数少ない学生トライアングルメイジの、ガリアからの留学生であるタバサの召喚した風竜の幼生などがこれにあたるが、そんな大物を召喚してみせる例外など滅多にはいない。
なのでほとんどすべての使い魔が二年生に進級した授業で顔を合わせることとなる。
メイジを見るには使い魔を見ろという言葉がある。そのメイジの素質は使い魔に反映されているとされるからだ。中にはハツカネズミが使い魔でありながら偉大な魔法使いとされるオールド・オスマンのような例外もあることはあるが、原則はそうだ。
自分の力を端的に示す秤、それが使い魔なのだ。
ゆえに、使い魔が一堂集まる二年生に進級してからの初の授業に対してそのことに緊張を覚えるのは、メイジとしておかしなことでもないだろう。
そしてルイズの連れている使い魔は、人故に彼も知らず緊張はしていた。
なにせ、彼はもっとも精神的に状態が悪いタイミングで召喚された上に、この世界のルールなど知らないし、ハルケギニアは地球の中世ヨーロッパ時代によく似ているが同じわけでもなく、見るものすべてが彼にとっては物珍しかった。
この世界にいる間はルイズの使い魔になる件を引き受けたからには、元の世界に帰れるその時までは責任を持ってちゃんとやるつもりだが、それでも動物でも幻獣でもない人間の使い魔は己だけなのだ。忍びとして過去いろんな任務に携わったことがあるとはいえ、緊張しないほうがおかしかった。
そして、ルイズとシスイの二人は教室へと足を踏み入れた。
彼が最初に受けた魔法学院の教室の印象は「懐かしい」と「新鮮」だった。
なにせトリステイン魔法学園の教室の作りは、中心に教壇があり、それを囲むようにして段々に席が設けられている大学の講堂のような造りとなっている。そして、その懐かしすぎるほどの造りの教室には、様々な生徒たちや多種多様な使い魔達の姿があって、思い思いに過ごしているのだ。そんな光景にシスイは思わず感心してしまった。
前世では、両親の死をきっかけに中退して卒業せず仕舞いだったとはいえ、大学によく似たその造りは彼にしてみれば郷愁を誘うものですらある。それを見ているうちに彼女と戯れたことや友と語り合ったあの日、仲間内みんなで盛り上がったサークル活動などの楽しかった思い出が走馬灯のように浮かび上がる。
そんなことを思わせる場所なのに関わらず、バクベアーやバジリスクにスキュアなどなど前世どころか、NARUTO世界とでも呼ぶべき自分が15年育ってきた世界ですら見たことがないような、そんなファンタジーな生き物が暴れるでもなくおとなしくしているというのは、とても不思議でなんだかくすぐったいような感慨がある光景だ。
勿論使い魔の全てがファンタジー生物なわけはなく、中にはカラスや猫などのお馴染みの動物も使い魔としてその空間には鎮座していたが、それでも新鮮な光景には違いがない。
とはいえ、彼の心からの感心はそこまで長持ちしなかった。
何故なら、自分……正確には自分の主となった少女であるルイズに対してであろうか、に向けられる視線がとてもじゃないが紳士淑女として褒められたものではなかったからだ。
彼らはヒソヒソと自分とルイズを見ながら何事かを言っている。
もしかしたら彼らはそれらが聞こえていないのだと思っているのかもしれないが、生憎忍びとして研鑽を積み生きてきた青年の耳からすれば、それらの言葉を拾えない筈がなかった。
曰く……。
「おい、ゼロのやつ本当に人間なんか召喚したのかよ」
「ていうか、あいつ本当に昨日の奴か? 別人じゃね? なんかパッとしない顔してるし」
「本当は使い魔に逃げられたんじゃないの? それで替え玉まで用意するなんて嫌に用意周到ね」
「ああ見えて傭兵だって聞いたぜ」
「傭兵だって? 汚らわしい。そんなのを神聖な学び舎にまで連れてくるなんて、本当あいつはメイジの面汚しだな」
などなど。正直信じがたいほどに並べられた言葉は侮蔑に満ちている。
チラリとシスイはルイズの顔を見る。
彼女は噂など気にも留めていないかのように、凛と胸を張って立っている。それが強がりなのか本当に気にしていないだけなのかは、昨日今日の付き合いである青年にはわからない。しかしその姿は小さいながらも、気高く誇りある姿に見えた。
(本人が何も言わないんなら、オレの出る幕じゃないか)
そう思って口を挟むのは止めた。
ルイズが席の一つに座ると、シスイは講堂の後ろにある壁に身を任せた。生徒でもない自分が席に座るのはまずかろうと思ってのことだったし、後ろからなら全体が見えたというのもあった。だが、その自分の選択肢は間違っていたのか、ルイズはジト目でシスイを見上げると、「なんでそんな離れたとこにいるのよ、こっち来なさい」といってそれを嗜めた。
その言葉に従い、青年がポリと頬を掻きながら彼女の隣に立つと、彼女はどこか抑えたような声音で言った。
「なんで、あんな後ろに行ったの」
「邪魔になるなら後ろにいたほうがいいのかと……いけなかったのか?」
自分なりには気を使ったつもりだったのだが、それ自体がまずかったのかそう尋ねると、ルイズはどこか苛立ちの滲んでいる声で言う。
「使い魔がメイジと離れてどうするのよ。隣にいなさい。あんたは……わたしの使い魔、でしょう」
最後のほうの声音は小声でどこか苦しげにさえ聞こえた。
何故そんな辛そうに聞こえる声でそんなことを言うのだろう。それがわからず困惑しながらもシスイは言う。
「いや、しかしオレがここで立っていたら後ろの生徒の邪魔にならないか? ここの生徒でもないオレが椅子を使うわけにもいかないだろ」
シスイは忍びとして鍛えてきただけあってそれなりにガタイがいい。床に座って授業をやり過ごすのは体格的に難しいものがあった。そんなシスイをチラと見て、ルイズは感情を抑えたような声で言った。
「いいわよ、使い魔だけどあんたは人なんだから特別に椅子に座っても。だから、隣にいなさい」
やがて、授業時間になったのだろう。扉が開かれ、中から紫色のローブに身を包んだ中年くらいの優しげな女性が入ってきた。
自らをシュヴルーズと名乗ったその女性教師は、毎年新学期に様々な使い魔を見ることが楽しみなんだとおっとり笑った。多分悪い人じゃない。寧ろ善人ではあるんだろうとは思ったが、しかしシスイはその直後に彼女が放った言葉で、空気の読めないご婦人だなと彼女のことを評さずにはいられなかった。
「おやおや、変わった使い魔を召喚したものですね。ミス・ヴァリエール」
そのミセス・シュヴルーズの言葉がキッカケで、教室中があの……先の中傷を思わせる笑いに包まれたからだ。
「ゼロのルイズ! 召喚出来ないからって、傭兵を金で雇って連れてくるなんて卑怯だぞ!」
「いや、傭兵とかいってるけど、本当はそいつはただの平民なんだろ、そうだろゼロのルイズ!」
「所詮、ゼロだもんな! 『サモン・サーヴァント』が出来なかったんだろ」
そんな野次が教室中に飛び交う。
それを聞きながらシスイは思う。
(まるで小学生のいじめレベルだな)
こんな小さくて可愛い女の子を1人捕まえて、生徒みんなでよってたかって罵倒して恥ずかしくないのだろうか? よくもまあこんな程度の低い中傷を恥ずかしげもなく口に出来るものだ。本当にこいつらは貴族……一流の教育を受けてきたような奴らなのか? とは思うが、シスイがそれらを口にして言うことはなかった。
何故なら彼は異邦人だ。
この世界の常識など彼は知らない。彼が知っているのは日本の常識と木の葉隠れの里での常識だけだ。そんなこの世界では世間知らずといえる自分が何か言うのも筋違いな気がしたし、それに身分上自分は平民であり、彼らは貴族だ。
そういった人種に接する機会は、それこそ火の国の大名親戚に対する護衛任務のときとかくらいしかなかったが、それでも下の者が発言を許可されてもいないのに上の者同士の口争いに口出しすることが許されていないということくらい知っている。この世界について殆ど知らない身であるが、その辺のルールは多分この世界でも同じだろう。
この世界のルールや常識がわかっていないのに下手に口出しすればそれは、「貴族同士の会話に平民を割り込ませるなんて、何を考えているんだ」「躾けくらいちゃんとしろ」と己を抑制出来なかった主であるルイズの不手際となり、余計彼女に対する謗りが激しくなる恐れもあったし、なにより彼はここの生徒たちの教師ではないのだ。この場面でこれを鎮めるべき人間がいるとすれば、それは教師であるシュヴルーズの役割であり、自分のものではない。
とはいえ、彼らの誹謗中傷は聞いてて気持ちいいものではない。自分がもしこの学校の教師だったら真っ先に彼らを叱り飛ばしていただろうし、この場はミセス・シュヴルーズに任せるべきだとは思うが、彼女が何も言わないようだったらルイズに怒られるようなことになったとしても、一言言わせてもらおうと、そう考えていた。
「ミセス・シュヴルーズ! 侮辱されました! かぜっぴきのマリコンヌがわたしを侮辱したわ!」
一方でルイズは、罵倒に関しそう返しながらグルグルと煮えたぎった思考で考え込んでいた。
(なんで、わたしを庇ってくれないのよ)
自分の使い魔になった男は、うちはシスイは主である自分が罵倒されているというのに、なんの行動も起こさず、なんの発言もしなかった。それはルイズの立場を彼なりに考慮したものでさえあったが、ルイズにそんなことわかるわけがなかった。
(あんたは、あんなに力があるくせに……!)
今朝の男を思い出す。風のスクウェア級の技と火のライン級の技を使い、人間とは思えぬほど高い身体能力を見せつけ、自分に劣等感を植え付けた男。
(そうよね、わたしなんて、あんたからみたら取るに足らない存在だものね)
卑屈に凝り固まった思考のルイズはそれを疑わない。けれど、そんな自分の思考にますます彼女の心は傷ついていく。悪循環だった。どうしようもなく、苦しくて、彼女は泣きたい気持ちでいっぱいだった。いつもは耐えているゼロの中傷もきつくて、きつすぎて泣いてしまいそうだ。
でも……。
(泣くものですか)
泣いたら、本当に自分がゼロなんだって認めてしまう。そんなの許せなかった。
だって、彼女は、己はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールだ。ヴァリエール公爵家の息女なのだ。そんな自分が人前で涙なんて見せられるわけがない。いや、見せたくなんてない。もう彼女に残されたのはヴァリエールの娘としての、貴族としての意地と誇りだけなのだから、それだけは手放したくはなかった。
やがて教師であるシュヴルーズはルイズと生徒たち両方に口論と中傷を止めるよう注意を促し、それでも「ルイズのゼロは事実」だと答えたマリコンヌと、それを聞いて笑った生徒たちの口に赤土の粘土を押し込め、それを黙らせた。
そうして授業が始まった。
「私の二つ名は『赤土』のシュヴルーズです。『土』系統の魔法を、これから一年、皆さんに講義します」
そんな言葉を合図に、シスイは彼女の言葉に深く耳を傾け始めた。
(自分の二つ名から紹介……この世界では二つ名を自分で紹介するのが当然なのか?)
そういえばルイズは『ゼロ』とずっと呼ばれているし、今朝出会った赤毛の女の子も自らのことを『微熱のキュルケ』とそう名乗った。また、早朝の鍛錬終了後もルイズが真っ先に尋ねたのは「二つ名はあるのか」という質問で、どうやらメイジの世界では二つ名は第二の自分の名の如く大事なものらしいと、シスイはそれまでのことを回想しながら納得した。
(ということはオレもこれから人に自己紹介するときは『瞬身のシスイです』と言ったほうがいいのか?)
自分で自分の二つ名を自ら紹介するなんて、なんだか押し付けがましいような自慢しいのような感じがしてなんだか嫌だなあ、自意識過剰野郎みたいで恥ずかしいし、などとぼんやり思いつつも興味深く授業内容に拝聴を続けていく。
その結果、いろいろこの世界の魔法について判明がした。
曰く、魔法の属性は『火』『水』『土』『風』『虚無』の五つから成り立っており、虚無の系統は失われている。土の魔法はさまざまな金属を作り出し、加工することが出来る。ほかにも農作物の収穫にもかかわっているらしい。
つまり、鍛冶屋や石工業、ベルトコンベアとかの役割を土系統の魔法と魔法使いが担っているらしい。
(……便利だなあ)
ひょっとしてNARUTO世界の初代火影であった唯一の木遁忍術使い、千手柱間の木遁忍術並みに便利なんじゃないか? などと思いながら授業風景に見入っていた。
そして錬金の授業が始まり、ミセス・シュヴルーズが杖を一振りすると、石ころは光る金属へと姿を変えた。キュルケがゴールドを練成したのかとどもりながら吃驚した声を上げると、ミセスは気恥ずげに、しかしどこか誇らしそうな態度で、練成したのはゴールドではなく、真鍮であり、金を練成できるのはスクウェアだけで、自分はトライアングルなのだと答えた。
(そういえば、ルイズもスクウェアメイジがどうのとか言ってたな)
そうして今朝のやりとりを思い出した。
(スクウェア……四角って意味だよな? で、トライアングルは三角……つまり、角の数が増えるほどすごい魔法使いって意味なのか?)
しかし、ルイズとこの中年女性教師の言い分から判断するならどうやら最上位はスクウェアのようである。
(ということは、他には一角と二角があって、メイジのランクは4段階あるってわけか……)
そんなことを思いながら、感心したように授業を聞いていると、「ミス・ヴァリエール」そう土魔法の教師は主の名を上げて、「次はあなたにやってもらいましょう」そういってルイズを指名した。
途端、教室中に緊張が走る。
(なんだ?)
それは先ほどまでの、明らかな侮蔑と中傷をルイズに投げかけていたそれではなく、不安や恐怖といった感情が混ざったような緊張だ。その理由を、シスイは知っているような気はしたが、生憎というべきなのか、覚えているわけではなかった。
ルイズは固まっている。教師に指名されたというのに、困ったような態度で縮こまっていた。
もちろん、シュヴルーズは何故ルイズが立ちもしないのかわからず、嗜めるような声で少女に呼びかける。
「ミス・ヴァリエール! どうしたのですか?」
それに対して答えたのはルイズではなく、困った顔と声をしたキュルケだった。
「先生、やめといた方がいいと思いますけど……」
当然、それにシュヴルーズは何故と尋ねる。それに赤毛の褐色の肌がグラマラスな少女は「危険です」と答えた。そしてそれに教室中の生徒たちが頷いた。
しかし、ルイズの授業を見るのがこれが始めてなシュヴルーズに「危険だからやめといたほうがいい」と言ったところで、通じるわけがなかった。
それは当然といえば当然だった。ルイズの魔法の成績はともかく、この中年女性教師は同僚から彼女はとても努力家だということを聞いていたし、錬金の授業で危険なことなど普通はないからだ。
何故なら錬金の授業とは石ころを別の物質に変えるというだけの内容であり、失敗したところでその場に残るのは何の変哲もない石ころだけだ。失敗を恐れたら人は進化を止めてしまう。失敗をいくらしてでも、大切なのはやろうとチャレンジする精神なのだ、とそういう意味ではミセス・シュヴルーズは大層立派な教育者であった。
……ただ、今回に限ってはそれが悪いほうに作用することになるのだが、この時点では彼女はそんな未来も知らなければ、これまでのルイズの授業を見たことがなかったのだからどうしようもなかったのだが。
そして天敵とまで思っていた赤毛の少女による「やめて」という嘆願への対抗心と反感から、ルイズはその『錬金』に挑む決意をついに固めてしまう。
小さな体に大きな勇気を称えて、形のいい珊瑚色の唇をきゅっと引き締めながら、まるで魔王に挑む勇者のような顔をしながら杖を掲げる少女ははっとするほど美しく可愛らしかったが、周囲の生徒たちは寧ろそんなルイズの姿に慌てて椅子や机の下に体を隠した。
(なんだ? 何が起きる?)
同時にシスイの忍びとしての第六感も嫌なものを感じ取って、ザワザワと胸が騒ぐ。
自然体がいつでも動ける戦闘態勢のものに移行する。
そんな中でルイズ錬金のルーンを唱えた。
……それに気づき、現象が起こるよりも早く動くことが出来たのはチャクラの流れを見る目……写輪眼をもっていたのと、彼が瞬身の異名をもち、第三次忍界大戦まで経験して戦闘経験が豊富だったから、といえる。
あの時、錬金のルーンを唱え、ルイズが杖を振り下ろしてしまった瞬間、彼はその赤き巴模様の浮かんだ目で見てしまったのだ。魔力が膨張していくところを。
危険と判ずるのと回避は同等の早さだった。
彼は瞬身のシスイという二つ名の由来にもなったその足でもって、おそらく爆心地になるだろう教壇の最も近くにいた、ルイズとシュヴルーズの二人を脇に抱えてそのまま廊下へと一瞬で退避した。刹那、教室から響く爆音。
「な、何事ですか!?」
シュヴルーズとしてはもうわけがわからない。つい、ほんの1秒に満たないほど前まで、ルイズの錬金を見るために教壇の前に自分は立っていた筈なのに、気づけばよく知らない生徒の使い魔となった男に抱えられて廊下に自分がいる上に、教室からは擬音で表すなら「ドォン!」といった感じのすさまじい音が響いたのだ。ひょっとして何かのテロかと思った彼女はきっと悪くないだろう。
彼女は急いでシスイの腕から抜けると教室の扉を開き、それを見た。
教室内はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図であった。
まるで爆弾でも食らったように教壇は吹っ飛び、驚いた使い魔達は炎を吐くわ、窓ガラスを破って飛んでいく使い魔はいるわ、中には自分の使い魔を別の使い魔に食われたものまでいた。
その混乱に包まれた光景に、自分が先ほどまで立っていた教壇の結末に、ミセスはフラァと眩暈のあまり意識が飛びそうになった。
「大丈夫ですか」
「ああ、あなた……ええ……ありがとう」
倒れかけた自分の肩を支えながら言った青年の言葉に、乾いた声で力なくそう礼をいうシュヴルーズの目は動揺に泳いで笑っていなかった。
そんな土魔法教師の様子を心配そうに伺いつつ、青年は酷い事になった教室を見渡す。
(しかし、こりゃ凄いな……)
まるで起爆札で吹っ飛ばされたかのようだ。まったく、恐ろしい火力だ。
(戦争にでも出させられたら、恐ろしいことになるぞ、この子……)
そう思いながらそんな感想を胸の奥に仕舞い込む。
まだ、短い付き合いで彼女のことについて理解したなど嘘でも言えないが、それでも昨日今日と接した限りの印象では、ルイズは多少意地っ張りでも素直で可愛い普通の女の子だ。そんな子が人間兵器として戦場に行かされる光景は想像するだけでも罪深い気がした。
やがて、教室の外にいたルイズの姿に気づいたのだろう。生徒たちは怒りが篭った声をあげて、口々に彼女を罵倒した。
「だから言ったのよ! あいつにやらせるなって!」
「もう! ヴァリエールは退学にしてくれよ!」
「……ルイズ?」
それにルイズは……事件を起こした張本人でありながら、使い魔に救出されて傷や埃一つ負ってない彼女は、答える術をなくし、青ざめた顔でただ呆然と震えていた。
続く