瞬身の使い魔   作:EKAWARI

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ばんははろ、EKAWARIです。
今回はとうとうルイズさん爆発回その1です。
ちなみに今回はおまけであとがきで前世しーたんイラスト載せてみたよ。
そんな感じです。ではどうぞ。


9話

 

 

 ルイズが『錬金』の魔法によって爆発を起こした事件より数時間の時間が経った。

 あれだけの惨事を起こしたのだ、当然残り時間をもってしても授業になるはずがなく、かの地獄絵図を見てしまったシュヴルーズは、ルイズの使い魔の男によって怪我をする前に教室から離されていたため、怪我こそしていなかったが、青い顔をしてルイズに片づけを命じると保健室へとフラフラとした足取りで向かっていった。その間ルイズに目を合わせることは一度もなかったあたり、どうやら、あの光景がトラウマになってしまっていたようだ。

 そしてルイズは……見ているほうが痛々しいほどに無言で、愛らしい顔を青白く染めながら、きつく唇をかみ締めて雑巾でシスイが教室に運んできた机を拭いていた。

 

 彼女は、ルイズは罪悪感と自己嫌悪で胸がいっぱいだった。

(どうして……いつもこうなの……?)

 彼女は決して高望みをしていたわけではない。

 ただ、普通に他の子のように魔法を使いたい、それだけだ。

 なのに、なぜかいつもこうして自分の魔法は爆発という名の失敗という結果ばかりを出す。

(なんで……)

 それでも、そのことにくじけたことはなかった。

 たとえどれほど落ちこぼれといわれても、それでも自分はヴァリエール家の娘なのだ。いつか他の子のように魔法を使える日を夢見て努力を怠ったことはなかった。それが結果を出すこともまたなかったが。

 それでも、魔法を普通に使えるようになりたいという夢をあきらめたくはなかった。諦められるわけがなかった。

 だってルイズは貴族だ。貴族じゃないメイジはこの世にいても、魔法の使えない貴族なんて普通はいない。自分の血にはヴァリエールの誇りある青き血が流れているのだ。今は使えなくても、きっと自分の系統に目覚めたら、そう出来たなら魔法を使えるようになるはずだ。それまでくじけるもんですか、とそれを合言葉にして、どんな中傷を受けても前向きに頑張ってきたのだ。

 魔法を使えない劣等生だからこそ、誰よりもせめてその心だけでも貴族らしく誇り高くあらんとしてきた、いつかの未来のために。それがルイズだ。

 だから、いつもはたとえ失敗しても、その負けん気と気丈な心で「ちょっと失敗した」として流してきたのだ。

 級友達の「ゼロのルイズ」という不名誉な呼び声にもいつか見返してやると、そう思うことで耐えてきたし、その生来の負けん気からゼロではないといつか証明してやると思っていたからこそ、全ての人間に魔法が使えないというだけで憐れまれ、蔑まれ見下され続けるこの環境にも耐えられたのだ。

 けれど、彼女は今日、使い魔となった男に助けられてしまった。

 自分がしたのに。自分が教室を無茶苦茶にしたのに、なのに自分だけはぬくぬくと使い魔に守られ、傷一つつかず無傷で助かってしまった。あの教壇のように吹っ飛ばされていたのは本来自分だった筈なのに。

 自分が、己こそがあの惨状を引き起こした犯人なのに、なのに怪我一つさえすることなく。

 自分の起こした失敗魔法のせいで、使い魔を失った級友だっているのに。

 悪いのは、失敗した己なのに。

 なのに、あの惨事を引き起こした元凶である己は助けられてしまった、あの黒い青年に。

 

 自分の使い魔……異世界からきた傭兵と名乗る、うちはシスイとかいう男。

 圧倒的な力をルイズに見せ付けた……異彩の使い魔。

 正直、ルイズの男に対する印象はいいものとはいえない。

 有能な男なのだろうと思う。平民とはいっていたけど、それでも自分よりもよっぽど魔法を使いこなす姿は、己よりも余程貴族にふさわしいんじゃないかとルイズは思ってしまった。

 言動や立ち振る舞いも貴族のそれとは比べ物にはならないけれど、平民の割には品がある。おそらくはそれなりに裕福な家庭で育ち、教養も与えられてきたのだろう。言葉遣いと服装さえ改めさせれば、もしかしたら自慢の従者として紹介出来るレベルにあるのかもしれない。

 己には過ぎたるほどに有能だ。

 けれど、だからこそ彼の存在は何よりも不快だったのだ。

 自分は何も出来ないのに使い魔は自分が出来ない事が軽々出来るなんてと、ルイズにとって彼は劣等感を刺激する存在でしかない。

(だってわたしはコモン・マジックさえ出来ないのに、使い魔だけが有能だなんて釣り合ってないじゃない)

 そう自嘲するように思う。

 本来メイジと使い魔というのは、パートナーであり、互いに足りないものを補う存在だ。無論主従の別はしっかり区別されているが、それでもメイジにとって使い魔は特別なものであり、使い魔にとってもメイジは特別なものなのだ。

 メイジは使い魔を守り、使い魔もまたメイジを守る。そうして使い魔とメイジの関係は成り立っている。

 そして春の使い魔召喚の儀式で召喚される生物は、通常そのメイジにとってもっとも相応しいものが召喚されるのだ。その召喚主である魔法使いとバランスのとれたパートナーが。

 使い魔と魔法使い。その能力バランスがどちらか一方に偏っていることなんて普通は無い。

 無いものを補い合うために、互いの存在はあるのだ。

 だけど……ルイズは自分と自分が召喚した男が、とてもじゃないが釣り合っている相手だとは思えなかった。

 

 いつも他者に比べられ、魔法も使えない劣等生として扱われ育ってきたルイズは、その負けん気と貴族としての誇り高くあらんとする精神のおかげであまり発覚していないだけで、酷く自己評価が低く己が無能であるという自認が強い。

 強がりの負けん気走った言動は、他者に否定されることに慣れているが故に後天的に備わった自信の無さと、そのことで打ち崩れないように心の平衡をカバーするために発達した自己防衛本能だ。

 そんな自分に、いくら平民とはいえ、軽々と魔法が使えるような男が文句を言わず従っているというのが彼女には信じられなかった。従順な態度に逆に男の誠意を疑った。

 そして、そんな男に救われ、守られた事実が「お前は所詮ゼロなんだから、おとなしくしておけばいい」と言われたみたいで苦痛でとてつもなくショックだった。

 それくらいなら、放っておかれるほうがよかった。それで自分の失敗で怪我を負ったとしても、それは自己責任だ。そうしてボロボロになったとしても、自分もダメージを負ったのなら、被害を受けた生徒たちとお相子だ。それなら「ちょっと失敗みたいね」なんて言って笑って、そうして受け流せた。いつかの成功を夢見てまだ頑張れた。

 なのに……。

(どうして、あんたはわたしを助けたの)

 守ってくれなかったくせに、ゼロという中傷からは庇ってくれなかったくせに、どうして自分を助けたのかルイズにはまったくわからなかった。

(助けなければ良かったじゃない)

 ギリと唇を破れそうなほどかみ締めそう思う。

(どうせ、わたしみたいな小娘のお守りなんて嫌なんでしょ)

 だって、いつだってそうだった。

 最初は公爵家の娘だっていい気でみな近寄ってきた。ルイズではなく、彼女の背景にある家に擦り寄ってきた。ルイズを見てはいなかった。

 そして失望するのだ。

 公爵家の娘でありながらルイズが魔法を使えないということに。

 ルイズが『ゼロ』だったということに。

 魔法成功率ゼロ、ゼロのルイズ、その名はいつだって彼女についてまわったのだから。

『ルイズお嬢様は難儀だねぇ』

『上の二人のお嬢様はあんなに魔法がおできになるっていうのに……』

 そんな陰口を使用人にまで何度も叩かれてきた。

 皆、どんなにいい顔をしても、自分がゼロだと知るなり失望してきた。

 

 だというのにこの男は……うちはシスイは、何を言うでもなく、黙々とルイズの放った失敗魔法の片づけを……教室の修繕を続けている。まるでいつもと変わらない態度で、何事もなかったかのように。

 彼が今こうして窓ガラスを運んできて張り替えているのも、重たい机を運んできて並べているのも、煤だらけになった教室を雑巾がけすることになったのも、全部彼の主人となったルイズの責任なのに。

 なのに、男は文句一つ言わない。

 どうしてなのか、ルイズにはわからない。もともと1人でも生きていけると公言していた男だ、衣食住を取り上げられることを恐れて言えないというわけではないのだろう。

 けれど、文句一つ言わないそのまるで従順な従者か何かのような態度が、余計に今のルイズを傷つけていた。

 この男は見たはずだ。知ってしまった筈だ。

 自分のゼロの、二つ名の由来を。

(いい気味だと、笑えばよかったでしょ! そうして見下せばいいじゃない! 他の人みたいに!)

 知らないとは言わせない。

 この期に及んで、自分につけられたゼロの意味がわからないなんて言わせない。

(それとも……わたしは見下す価値すらないというの?)

 そうして思い出す、今朝の男を。

 あの、自分に劣等感を植え付けた光景を。

 遠すぎて遠すぎて眩暈がするほど、羨望してやまない今の自分からは最も遠い光景を。

 

「ルイズ」

 男は穏やかな声音で心配そうな顔をして少女に話しかける。

 しかし、そんな心配そうな顔も今の彼女からしたら憐れみから自分に優しくして、心で嘲笑っているようにしか思えなかった。

「何よ」

 そうして言葉を返しながら見上げて気づく。あれほど滅茶苦茶になった教室はほぼ綺麗に修繕し終わっているようだった。終ったから声をかけたのだろう。

「……大丈夫か?」

 そんな何気ない一言が、ルイズのこれまで溜め込んできた憎悪を呼び覚ました。

 

「大丈夫って、何?」

 昏く胡乱な鳶色の目と表情で吐かれたそれは、憎悪と自嘲が滲んだ酷く虚ろな声だった。

 その変化に、黒の青年は戸惑う。

 少女はそんな男の反応に気づいているのか、それとも気づいていて尚そんなところが苛立たしいのか、もう一度「大丈夫って、何?」そう口にした。

「あんた、わたしを馬鹿にしてるの?」

「オレはそんなつもりじゃ……」

 シスイとしてはただ純粋に、様子のおかしいルイズが気になって、落ち込んでいるんじゃないかと気にかかり声をかけただけだ。しかし、怒りと屈辱とコンプレックスでグチャグチャになっているルイズはそれを「嘘」と断じて声を上げて言った。

「本当はあんたもわたしに失望したんでしょ! そうよ、わたしのゼロの由来は、魔法成功率ゼロの『ゼロ』よ! それとも何? 媚を売っておこうと思ったの? 可哀想な子だから優しくしてやろうって? 大した偽善魂ね、そんなのこっちから願い下げだわ、真っ平ごめんよ!」

 そうやって叫んでいる姿は、まるで泣いているようで、シスイは言葉を失う。

「あんたはいいわね、すごいわよね! あんなスクウェア級の魔法をポンポン使えるんだもんね! 流石1人でも生きていけるって自分でいうだけあるわよね! きっとわたしの気持ちなんて一生わかんないんでしょうね! それに引き換えわたしはゼロ、ゼロのルイズ! 公爵家の娘ということ以外なんの取り得もない娘! さぞかしこんなのが主人で失望したんでしょうね。 国に帰りたいというのも、本当はわたしが主ってことが嫌だからなんでしょ?」

 自分の言葉で自分を傷つけながら、それでもルイズはそう叫びながら、男の胸倉を掴み上げ、苦しげに笑った。

「普通じゃないくせに、普通の平民のフリなんてしないでよ! 凄いなら、それ相応に振舞えばいいでしょ! あんたのそういうところが癪に障るのよ!」

 先の授業での内容をルイズは思い出す。学友たちが自分を馬鹿にするのはいつものことだったが、彼らはシスイに対しても昨日とは違って、ただの平民として馬鹿にした態度を取っていた。けれど……ルイズは知っている。誰が知らなくても彼女は知っている。彼に、うちはシスイに敵うものなんてこの学院の生徒でいるはずがないんだって。

 非常に腹が立つし、自分の劣等感を刺激する男で、不愉快ではあるが、それでもうちはシスイは自分の使い魔なのだ。自分より格上のメイジと思った相手なので尚更に、自分への使い魔に対する暴言もルイズには不快に感じるものだった。

 けれど、自分に投げかけられた言葉がわかっていないはずがないだろうに、男は気にしていないようだった。そこもまたルイズの気に障ったのだ。あれほど凄いくせにプライドがないのか、と。

 そして今も自分に胸元を掴み上げられて、怒鳴りつけられて、理不尽だろうに、腹が立つだろうに、ただどこか悲しげなような、怒りの欠片も見えない顔をして自分を見ている。

(なんて……腹の立つ男)

「あんたなんかにわたしの気持ちはわからない!」

 

 シスイは目の前の泣きそうな顔をして自分に怒鳴りつける少女に対し、掛ける言葉を失って呆然と立ち尽くしていた。

 そもそも、ルイズに言われた台詞はどれもが彼も思ってもみなかった、完全に想定外の台詞ばかりだったのだ。

 元よりシスイにルイズを見下す気はないが、まさか彼女が己如きに嫉妬していたなど想像すらしていなかった。

 そもそも彼は自分が恵まれているという意識こそあるが、自分が凄い人間であるなどという考えは無い。

 むしろどちらかというと自分が大した人間ではないという自覚をしている。

 というのも、彼は前世の人生においては家族や友人などの周囲の人間にこそ恵まれていたが、生まれた家は父親の収入は月収27万、母親はパートで10万くらいの極普通の中流家庭に生まれ育った為、貧乏ではないけど金持ちというほどじゃなかったし、ギターは出来ても、成績はあまりよくなくて高校なんて偏差値48くらいの学校だったというのに、成績はいつも赤点ギリギリでいい点数を取れるのは音楽くらいのものだった。

 運動神経だって男子20人いたら下から5番目くらいのもので、運動神経は悪いほうに属したし、顔も普通なら、身長も160cm台後半と平均よりやや低めなくらいだった。

 ギターや歌に関しては、人生で初めて出来た彼女に惚れられた経緯と告白された内容が、文化祭で自分たちの学生バンドを見て「歌とギターがいいなと思ったから」というものだったので音楽方面はあまり悪くはなかったんだろうが、所詮は学生バンドレベルであってプロになれるほど優れていたわけでもない。

 そのことからも自分は凡人だという意識が彼にはあったし、人間関係には恵まれていたので、充実していたし楽しい学生生活を送ってきたから、出来ないことが多くてもそれで卑屈になったりコンプレックスを覚えることもなかったが、それでも勉強も運動も駄目な自分は底辺だという自覚はあった。

 現世ではうちはシスイという高スペックの人間になってしまったため、本来のうちはシスイに劣るとしても、身体能力はかなり高かったし、座学は苦手といっても前世の自分と比べれば、比べることもおこがましいくらいには物覚えもよくなった。外見も地味な普通顔ど真ん中だった前世と違って、わりと端正な顔立ちをしているし、背や体格も悪くない。16歳で上忍に昇格したあたりからしても、周囲に比べて能力的にも恵まれているほうだろう。うちは一族のみんなとだって、彼らを殺すその日までは良好な関係を築いていたのだ。

 だが、確かにシスイは木の葉でも上位の実力を持つとはいえ、彼のすぐ傍には『アカデミー始まって以来の天才』と呼ばれていたうちはイタチがいた。

 早熟で、幼くしてまるで火影のように里と平和を愛し憂いていた、才能だけでなく人格面まで立派なイタチに比べたら自分なんて十分凡人と呼べたし、なにより二点特化で幻術と瞬身術だけ特出していて火力不足なシスイより格上の存在など、あの世界では探せばいくらでもゴロゴロしていた、それがあの世界での現実なのである。

 故にシスイは自分が弱いわけではないことは知っていても、自分が特別強いわけでもないことも同時に理解していたのだ。上には上がいる。そのこと自体は悔しいという気持ちがないというわけではないが、まあそれはしょうがないことだ。前世では充実した底辺人生を送っていたこともあってそのあたりシスイはおおらかだった。

 

 故にこそ、自分などに嫉妬する存在がいるとは思っていなかったのだ。

 ていうか、自分なんかに嫉妬されるような要素があるとさえ思っていなかった。

 彼自身、そこまで嫉妬深いタイプではないので余計に。基本的に彼は「出来ないことはしょうがないから、出来ることを頑張ろう」という思考の持ち主だった。

 だからこそ驚いた。

 ルイズがそんなに己に対してコンプレックスをもっていたことに。その原因は今朝の鍛錬を見せたことにあったのだが、彼自身は本当に「自分の主なのに、自分という道具の性能も知らず、適当に命令されたりしたら困る。彼女にだけは知ってて貰ったほうがいいだろう」と思ったのと、「口で説明するよりああいうのは見せたほうが早いだろう」という思考で見せただけで、他意はなかった。

 しかし、その結果はこれである。

 

 

 ルイズは可愛い。

 その容姿と気品は一級品で愛くるしく、西洋人形のように整っている。家柄も公爵家の娘で、貴族の中でも最上位のお嬢様だ。勉強家のようだし、シスイの目から見たルイズは十分すぎるほど恵まれた……将来を約束された夢のような少女に思えた。

 性格も気位が高いようだが、大貴族の娘なのだからこんなものだろう。それにルイズの魔力量は他の子と比べてみても桁外れに抜きん出ている。あの爆発を起こした能力もコントロール法を身につければ恐ろしいことになる。それくらい低コストで火力が高い能力のように彼には見受けられた。

 それに今は目覚めていないようだけど、ここが本当に小説ゼロの使い魔の平行世界であるのならば彼女はそのうち伝説の系統……多分失われたとかいう「虚無」のことなんだろう、に目覚めるだろう。

 正直、自分なんかよりよっぽど凄い気がする、彼女に嫉妬される意味がわからない。

 というか、なんでそんなに自分を卑下しているのかも理解し難い。

 けれど、彼の脳裏にルイズに中傷を投げかけた彼女の級友たちの姿が浮かび上がって、そうでもないかと思い直す。

『ゼロのルイズ』

 そういって中傷されてきたルイズ。

 おそらくそれが1年以上に渡って続いてきたのだろう。

 彼女はまっすぐな少女だと思うが、どれほど真っ直ぐな心根のものでも、罵倒が続けば心が折れる、自信は喪失していく。ゼロと蔑まれ続けて歪まないほうがおかしい。いや、あれだけ日常的に言われてこれだけの歪みですんでいるあたり、彼女は強い人間なのだろう。

 それでも、耐えられないものはあり、そして自分の言葉をきっかけに爆発した。これはそういうことだ。

 だけど、それを理解しても、どうしろというのだろう。

 

『あんたなんかにわたしの気持ちはわからない!』

 そうルイズは叫んだ。

 その通りだ。

 彼には、シスイにはルイズの気持ちなどわかりやしない。

 だって、彼は事実恵まれてきた。

 必ずしも能力に関しては恵まれていたというわけではなく、前世では寧ろ落ちこぼれだったけれど、そんなこと些細なことだと笑い飛ばしてくれ、愛してくれる仲間や家族がいつだって彼の傍にはいた。

 家庭も学校も、彼にとっては暖かく優しい場所だった。

 たとえ駄目なところがあっても、ルイズのように日常的に罵倒されたり中傷されたりすることはなかった。一度もなかったのだ。

 軽口交じりに言われることくらいはあっても、母親に「もうちょっと勉強も頑張りなさいね」と苦笑されても、それでもそこには確かに親愛と自分の将来に対する心配が透けて見えた。

 そんな風に人間関係において誰よりも恵まれてきた彼に、ルイズの気持ちがわかるはずがない。

 だから青年は何も答えることが出来なかった。

 嘘でも、『気持ちはわかる』なんて口先だけの慰めなんて言えるはずがなかった。

 

 一方でルイズは、何も言わない目の前の男に傷ついていた。

「何よ……」

 どうして何も言わないのか、なんでそんな顔をしているのかルイズにはシスイのことが理解出来ない。

(怒ればいいでしょ、言いたいことがあるのなら言えばいいでしょ)

 自分がひどいことを言ってしまった自覚くらいルイズにだってある。

「なんで、何も言わないのよ……」

 そしてルイズの卑屈に凝り固まった思考はその答を弾き出す。

「それとも……答える価値もないほど、わたしの存在はあんたにとってなんの意味もないってわけ?」

 そういってルイズは、引き攣った笑みを口元に浮かべた。

 ジワリと彼女の大きな眼が潤む。

 何か言わねばと焦るように青年は思う。

 けれど口が動かない。何を言えばいいのか、わからない。

 何を言っても傷つけてしまいそうで動けない。

 けれど、少女はそれを自分の思考が生み出した答えへの肯定だとそう思った。

 

 ルイズは自分の使い魔たる青年に背を向け、駆け出した。

「ルイズ!」

 それを見て、焦るような声を上げてシスイが手を伸ばす。

「来ないで!」

 その悲鳴のような少女の声に、ピタリと青年の動きが止まる。

「あんたなんて……顔も見たくない!」

 そう言って彼女は、ほぼ片づけが完了した教室を飛び出した。

 シスイはその小さな少女の背に、手を伸ばすことさえ出来なかった。

 

 

 続く

 

 




いつもご覧頂きありがとうございます。
今回のは前世しーたんの設定画です。

【挿絵表示】

ちなみに前世しーたんの視力は0,2か0,3くらいで、筋肉ついてないせいで見た目の体格よりは軽く、高校大学時代は(中退する前は)仲間に合わせて金茶髪に染めていました。が、派手なのは好きじゃないので、髪型は変わってなくて、服装も地味系、シャツはズボンの中に入れる派で、友人とのバンド活動では仲間にあわせてエレキギターとジャズとかやってたけど、彼自身の好みはクラシックギターとケルト音楽やイギリス民謡あたりのほうが趣味だったりします。グリーンスリーヴスとかわりとよく歌っているよ。因みにクラッシックギターは親戚からのお下がりですが、エレキギターは高1の時自分でバイトして購入したけど、両親死んで大学中退し、働きに出る際売ったようだよ。
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