今回の話は王都編……別名仕込みデルフ編です。
まあ、しーたんは剣士じゃないので、原作のような活躍をデルフが出来るかといったら無理だけどな。
それではどうぞ。
トリステイン王国の城下町であるブンドンネ街に踏み入れて、彼の心にまず浮かんだ感想は少しの懐かしさだった。
道端で声を張り上げて様々な食品などの商品を売る商人達の威勢の良い声に、ごったがえした人々、道幅は5メートルすらなく、そんな中をわいわいと人が押し押されしながら歩いていく。その光景は、西洋ヨーロッパ風ではあったが、火の国の宿場町の様子を思い出す。
しかしそんな郷愁に浸るのは1秒に満たない時間だけだった。
すっと写輪眼にその眼を切り替え、耳を澄ませながら、彼、うちはシスイは雑踏へと意識を集中させた。数多の音と情報をその眼と耳で拾う。リンゴ売りの声がその値段と安さをアピールし、それに負けじとライバル店がその値段を告げる。
そもそも武器の補充も嘘ではないが、ルイズにわざわざ街に連れてきてもらった本当の目的は……。
「…………シスイ?」
そんな数秒前とどこか様子が変わった使い魔の雰囲気に、少しだけ不安げにピンクブロンドの少女は声をかけた。それが合図だったように、男はにっこりと人懐っこい笑みを浮かべて「なに?」と返す。
「いえ……なんでもないわ。それよりはぐれないでよ」
「うん」
そういって彼女は言葉を濁した。
こうも綺麗に切り替えられては、ルイズとしても聞いて良い物かわからなくなってしまう。それ故に結局彼女は自分が抱いた少しの不安と疑問を追求することは出来なかった。一番大きなわだかまりは解けたとはいえ、結局彼女はまだシスイとの距離のはかり方を掴みかねているのだ。
そんなどこか歯切れの悪いルイズの言葉に素直に頷く青年。いつも通りの……やりとりだ。
ルイズの抱いている少しの気まずさ、それに気付いているのかは定かではないが、飄々とした声でシスイはルイズへと次にこんな言葉をかけた。
「ところでさ、ルイズ。オレ、ここに来たの始めてなわけだし、まだ時間あるだろ? ちょっと見てまわっても構わないか? 良ければ案内してくれると助かるんだけど」
そういっておどけた態度で頭を下げる青年であったが、それはルイズにしてみれば意外なお願いだった。この男が自ら何かを乞うなどこの10日強の期間でそう多いことじゃなかった。だというにも関わらず、武器が欲しいとのことに加えて今度は街の案内まで頼むとは……。
「頼むよ」
だけど少し眉根を下げるようにして、パンと手を合わせて頼み込む姿は先ほど見た顔と違って、いつも通りのシスイだったから、だからルイズは「少しだけよ」とそれを許可した。
シスイが突如として走り出したのは、その20分後のことだった。
それまでは大人しく、ルイズに教えられるままに「あれは酒場」「あれは衛士の詰め所」などの看板の役割についての説明を聞いていたシスイだったが、その良すぎるほどに良い眼によってあるものを見つけ出したとき、「ごめん、ちょっと行ってくる。すぐ戻るから」といって、ある露天に向かって駆け出した。
ルイズが吃驚している合間にも、その表情に人懐っこい笑みを貼り付けた青年は「なあ、おっちゃん、ちょっといい?」とか言ってあるものを指さしながら、店の親父に向かって話しかけていた。
「ん? ああん、なんだ坊主? 変わった服装だな」
その店主の言葉に苦笑しながらも、愛想良く穏やかな声でシスイは言う。
「んー、ま、ちょっと遠いところから来たんで。それより聞きたいんだけどさ、これ、どこで手に入れたの?」
「なんだ坊主、それに興味あるのか」
「そ」
そんな会話を繰り広げるシスイと店の親父の前に近寄ってルイズが見たのは、黒い4つの角で出来ている変わった形をしたよくわからない物体だった。薄くて真ん中に指を通すみたいな穴が空いている。
けれど、ルイズはそれを見た覚えがあった。確か、シスイが毎日手入れしている武器の中にこの奇妙な代物も2つほどなかったか。
がらくた売り場に突っ込まれていたそれは、所謂、手裏剣と呼ばれる異世界の武器だったが、そんなものこの青年にお目に掛かるまで見たことがなかったルイズは勿論、これを売りに出している親父とてその名を知らないだろう。故にそれは用途不明の奇妙な物体としか言いようがなかった。
「まあ、変わった品だな。しかしこんなわけのわからんもんに関心をもつとは変わってんな、坊主」
「いやあ、変わってるからっしょ、そこは。そういうの知的好奇心刺激されたりしない? 制作者とかどうなってんのかなーって」
そういってシスイがおどけた態度で笑ってみせると、店の親父はプカリと煙管を吹かしながら、顎をポリポリとかいて言った。
「制作者ねえ。しらねえよ、どうせこれも「場違いな工芸品」なんだろうし、作者なんてもんいるのかねえ。ていうか、そんなに興味あんのか。なら、どこから来たのかくらいは教えてやってもいいけど、なあ? わかるだろ」
そう言って後半は潜められた声と、袖の下で伸ばされた手は、つまりは「これ以上知りたければ金を出せ」という意味に他ならない。
それに少し距離を取り間違えたか、と内心舌打ちしつつもシスイは思考する。
一応厨房で働いているので、当初の約束通り給料はのちに払われることになっているが、まだシスイは魔法学院に来て11日目だ。給料はいまだ支払われていない。そのためこの世界の金銭を持たない今の彼は一文無し状態なのである。
故にシスイは相変わらず人好きのする笑みを浮かべながら、「ううん、ちょっと気になっただけだから。そこまではいいや。おっちゃん、ありがとうな」そういってそっとその場から離れた。
「ごめん、ルイズ、待たせたな」
そういって再び、シスイはルイズが「子犬みたいだ」と思った笑みを向けて彼女の元に戻る。けれど、その前の一瞬の空白期間で見せた無表情を、ルイズは見逃さなかった。
そして彼女はそれを思い知らされた。
(そうだ、忘れてた)
この男は、人殺しなのだということを。
あまりにそれっぽくなくて、忘れかけていた。
けれど、こうして笑う彼はやはりそうは見えなくて、凄腕の傭兵にすら見えなくて、ルイズはそれを追求していいものかわからなくなってしまう。
(ねえ、あんたは一体わたしが召喚する前は何をしていたのよ。なんであの時、わたしに召喚されて泣きそうな顔で笑ったの?)
とそんな疑問を胸の奥にしまい込んで、ルイズは別の言葉を口にした。
「いいの?」
それにシスイはあっけらかんとした態度で訊ね返す。
「何が」
「あれ、あんたの世界の……よくわからないけど、多分武器なんでしょ? あんたが帰る手がかりになるんじゃないの」
この青年がいつか元の世界に帰ると決めていることはルイズとて知っているし、容認していた。
本当は自分の使い魔が別の世界に戻り、消えてしまうことは、自分が行った魔法が始めて成功した証拠が消えることとイコールでもあったし、嫌といえば嫌だったのだけれど、それでもこいつが帰るのも、帰る方法を探すことも、当初の約束通りのことだったのだ。
期間限定の主従。それがルイズとシスイの関係だ。
だからシスイが帰る方法を探すのであれば、ルイズに邪魔をする意志はなかった。
彼女がそんな風に自分を慮ってくれたことを察したからだろう、シスイはそんな感情の機微を読むと彼女の頭をくしゃりと撫でて、彼は微笑みながらさらりと次のようなことを口にした。
「今はいいよ」
(「今は」……ね)
つまり、それは後では探る気があるということだ。
ルイズは別に馬鹿ではない。寧ろ座学においては学年一位を保持出来るくらいには頭が良い。故に彼女も男のその言葉に含まれた意味についてそう察した。
「それより行こう。今日は他に服屋と武器屋を廻るんだろう。ならあんまりモタモタしてもられないし、この話はここでおしまい。それでいいよな?」
「もう、いいの?」
街について案内して欲しいと青年が言い出したあれからまだ30分ほどしか経っていない。故にルイズがそう訊ねると、シスイは「いいよ」と答えて再び安心させるように笑いつつ、思考する。
(もう市場の紙幣価値については大体把握したしな……)
それもシスイが街にきた目的の1つだった。
売り場にある商品の値段と自分が普段国で聞いている品物の値段を脳内ですり合わせて、大体の貨幣価値を推測理解するという作業は、流石に口寄せ動物である鳩越しじゃよくわからないため、自分で見聞きして理解しておきたい事柄だった。
ついでに自分が召喚されたことを考えてみても、あるだろうとは思っていたので、この世界にとって異世界と繋がっている確実な証拠品が見つかれば万々歳だなと思っていたら、こんな初っぱなから遭遇するとは僥倖だった。
(ともかく、この世界は異世界と繋がっている)
とりあえず帰る指針はこれで立ったようなものだ。どこからあれが来たのか、他にも似たような品がないか、そっち方面から調べていくことは自分があの世界に帰るヒントとなるだろう。
(どちらにせよ、今は元手になる金が必要だな)
一文無しでは何も成せない。
しかし、まあ、いい。焦っては事をし損じる。
それに、情報収集は忍びの本分だ。焦らず、着実に1つずつやっていこう。
そんなことを思いながら、シスイはルイズが懇意にしている服屋への道のりを、彼女のすぐ後ろを歩きながら考えていた。
「へぇ? 中々悪くないんじゃない?」
それが、服屋で見本品の式服を身に纏ったシスイに対するルイズの第一声だった。
マジマジと眼をせわしなく動かしている鳶色の瞳は本当にそう思っているらしくて、それに苦笑しながらシスイは「そりゃ、どうも」と口から零す。
黒を基調に、従者らしく派手すぎずに、けれど袖口に銀糸を使うなど、安物ではありえないその作りの服は、ルイズ曰く「子犬っぽい」ふにゃっとした顔をよくしているために目立たないが、シスイの何気に整った顔立ちと、まっすぐ伸ばされた背筋に、平民のわりには品のある仕草や落ち着きのある雰囲気のおかげで中々に嵌っていた。
それを満足そうに一瞥すると、ルイズは小切手に金額を書き込んで、店員に手渡しながら言った。
「じゃあ、これを仕立て上げて頂戴」
「は、かしこまりました。ルイズお嬢様」
そういって、店員はルイズに向かって礼儀正しく頭を下げた。
因みに舞踏会が行われるのは数日後であることを考慮して、シスイの衣装は1から作るのではなく、見本品を買い取り、サイズを採寸したあと、シスイの大きさに合わせて手直しさせて、フリッグの舞踏会当日の夜に魔法学院へと届けるようにする契約だった。
「しかし、こんな高そうな服、本当にいいのか?」
採寸を取られながら、少しだけ落ち着かなさそうな声で、密かに主へと尋ねるシスイ。
その使い魔の様子にフフンと鼻を鳴らして立ちながら、得意げに彼女は言った。
「いいのよ。使い魔を必要以上に甘やかすのはよくないけど、働きに報いるのも主人の務めだもの。それに、そんな珍妙な格好でパーティー会場に出られるほうが迷惑だわ」
とかルイズはいうが、別にそれオレがパーティーにいかず裏方で引っ込んで、厨房手伝いしていたら良いだけなんじゃとその言葉でシスイは思ったが、口に出して言うヘマを犯すことはなかった。
折角の機嫌に水を差すほど、馬鹿ではないのである。
それから服屋を出ると、2人で適当な店で昼飯を食べた。
勿論ルイズの奢りであるのだが、シスイが遠慮してあまり値段の張らないものを注文すると、そんな控えめなシスイの対応がお気に召したらしい、彼女は「もう1品頼んで良いわ」と上機嫌に笑って、注文のクックベリーパイをそれは幸せそうに美味しそうに、その小さな口で啄んでいた。
それから店を出ると、武器屋へと向かう。
「こっちよ」
そういって先導するルイズが狭い路地裏に向かったことに、シスイは密かに眉を顰める。
その先はゴミや汚物が散乱しており、悪臭が端についてお世辞でも衛生的とはとても言えなかったからだ。
(こんなところに住んでいると病気になんぞ……ペストの温床になったりするんじゃないのか、此処)
流行病の発症地点というのは衛生環境の悪い場所と相場が決まっている。地球の中世ヨーロッパであれほどペストが流行ったのも、その時代の常識として、風呂に何日も入らないことが当たり前だったことや、トイレや下水道が碌に配備されておらず、汚物は路地裏にポイ捨て状態だったこと等、不衛生な環境も原因に大いに関係している。
かの有名なヴェルサイユ宮殿だって、トイレなどなく、長年王侯貴族ですらおまるで排泄し、その辺に捨てていた過去があるわけで、その諸々の酷い悪臭を隠すために香水技術が発達していったのだ。
任務中や戦場では「しょうがない」で割り切っているとはいえ、根が潔癖症というほどでなくとも、綺麗好きで清潔好きなシスイとしては、こんな汚くして何も思わないここに住んでいるだろう人々の感性は、信じがたいものだ。正直、なんで平気でいられるのかわからない。
汚いのを見たら綺麗にしたいとは思わないのだろうか。病気の温床になるとは思わないのだろうか。……いや、思わないから汚いのだろうけれど。それに、中世ヨーロッパに似ているこの世界では、汚物をそのまま放置していたら病気にかかる原因になるなんて知識は貴族でさえまともにないのかもしれない。そう考えると、この汚さには嫌悪しか感じないが、仕方ないのかもしれないとシスイは思った。
そうこうしているうちに、剣の看板が垂れ下がった一軒の店……まあ、十中八九武器屋なのだろう、にたどり着き、ルイズとシスイの2人は揃って店へと入っていった。
「旦那。貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまさあ。お上に目を付けられることなんか、これっぽっちもありませんや」
それが店の奥でパイプをふかせていた店主の、ルイズを見て放った第一声だった。数瞬前まで胡散臭そうな眼差しを寄越し、それを隠しもしなかったというのに、ルイズの胸元にあるマントを止めた五芒星の紐留めを見た途端の猫撫で声なのだから、随分と変わり身の早い親父である。
「客よ」
それにつまらなさそうにルイズはそう返した。
すると、親父は「こりゃおったまげた! 貴族が剣を!」とか叫び、それを皮切りに、なんだか調子が良いんだか皮肉っているのだかわからない言葉をポンポンと並べ出すが、それらを聞いていられなくなったのだろう、ルイズは店主に冷たい視線を送りながら「使うのはわたしじゃないわ。使い魔よ」と言ってシスイを一瞥してきた。
そのルイズからの視線を、前に出てもいい許可と受け取ったシスイは、「悪いけど、欲しいのは剣じゃないんだ。使い捨て用のダガーナイフが欲しい。刃渡りは10㎝……10サントほどで扱いやすければ切れ味が多少悪くてもかまわない」と答えると、親父はころっと愛想の良い顔をかなぐり捨てて「なんでぇ、鴨だと思ったのによ」とボソリと呟いた。
(いや、客の前でそういうこというなよ……)
と、心の中で苦笑しながら思いつつも、まあ鍛えているからそこそこガタイは良い方だし、剣使いと誤解されてもしょうがないのかなとシスイが思っていると、気っ風の良い男の声が後方から聞こえてきて、声の主は次のようなことを愉快そうに言い出した。
「だっはっは! アテが外れたな! 親父」
「うるせえ! 黙ってろ、デル公!」
そう親父が怒鳴りつけた先にあったのは、乱雑に剣が積んである一角であった。
シスイはすっと足音を立てずに近づく。そしてそれを見つけた。
それは剣だった。錆がビッシリと浮いている刀身が細く長い大剣だ。その鍔の部分がカタカタとなって声を出している。そして剣は自分の前に現れ、己が喋っているということに気付いた青年に向かって、カラカラと笑いながら、おもしろおかしそうに笑った声で言った。
「しかし、おめえ、イイ体してんのに、剣はやらねえのか。勿体ねえ! その体で剣を使わないとは、こりゃ逆におでれーたぞ!」
そういって笑う剣の声に、「え? どこよ、どこから聞こえてくるのよ、この声」と戸惑うルイズ。
そんな彼女を前にして、シスイは「ルイズ、喋ってるのはこの剣だ」と答えると、ルイズは益々困惑した声で呟いた。
「それって、インテリジェンスソード?」
その言葉に店の親父が反応を返す。
「そうでさ、若奥様。意志を持つ魔剣、インテリジェスソードでさ。いったい、どこの魔術師が始めたんでしょうかねえ、剣をしゃべらせるなんて……」
とそう店主は答え、それからブツブツとデル公と呼んだその剣についての愚痴をこぼした。この剣が口が悪いからか、それとも他の要因か、どうやらこの剣にはほとほと手を焼かれているらしい。
そしてそんな店主の言葉を耳ざとく聞きつけ、やがて店主とその魔剣は売り言葉に買い言葉で「溶かすぞ!」「やってみろ!」と口喧嘩を始めた。それらを聞きながらシスイは考え込む。
(意志を持つ魔剣……か)
そういや、そんなものが「ゼロの使い魔」には出てきていたような気はする。主人公が剣使いだったってことを覚えてたくらいで、剣のことについてまではよく覚えていなかったが。となるとこれが主人公の相棒の剣か、という感慨はあるが、そのこと自体はわりとどうでもよかった。そもそもシスイは剣士ではないのだから。しかし、彼がこの魔剣に対して注目するべきところは別にある。
(この錆……100年やそこらじゃないな。それだけ永い時を生きてきたということか)
それは即ち、それだけの情報を持っているということ。そして情報とは時に金貨に等しい。各国のことについてや、この世界の人には聞きづらい常識等についてだって、この世界で永く生きてきたのなら剣とはいえ知っているだろうし、ひょっとすれば、異世界に通じる手段も知っているかも知れない。
故にシスイは訊ねた。
「デル公っていったか」
「ちがわ! デルフリンガーさまだ!」
「そうか、デルフリンガー。それでちょっと聞きたいんだが、お前、いくつだ?」
魔剣は即座に自分の名前を訂正してきたが、それをさらっと聞き流して、そう青年は訊ねた。
「あん?」
それに自分の質問の意味がわからなかったのかと思って、シスイは言葉を言い直した。
「お前が作られて何年ぐらい経っているんだ? って聞いたんだよ」
「ふん、聞いて驚け、坊主。俺ぁ六千歳よ! どうだ、おでれーたか!」
そんなことを、人間ならふんぞりかえっていそうな声でデルフリンガーは誇らしげに告げた。その返答にシスイの口元にふっと笑みが綻ぶ。それから、ルイズを振り返り、訊ねた。
「ルイズ、悪いんだけど、あれも買ってもらっていいか?」
「え? あれ? 買うのはいいけど、あんな汚くて煩いのよしなさいよ」
「いや、喋るから意味があるんだ」
その言葉と、青年の含み笑いに、なんとなく事情を察したルイズは口を噤んだ。
「なんなら、給料が入った後、あの剣の代金はルイズに後で支払うから、貸してくれるだけでもかまわない」
「買うわよ。気が利くのはいいけどね、そういうのは時と場合があるのよ。余計な気を遣うのはやめなさい。使い魔の武器代すらケチる主人だと思われたらたまらないわ」
そういってむすっとした顔で答える少女に苦笑しながら、「助かる、ありがとう」と返してシスイは親父相手に「主人、それとこれとこれを買うから、この剣をおまけしてくれないか?」と交渉を開始した。
最終的にあの手この手で値切り、其の日、ダガーナイフ5本とデルフリンガーを手に入れたシスイであったが、この日、この買い物で使った代金はエキュー金貨100ぽっきりだったという。
そして、購入のさいデルフリンガーを握りしめたシスイに対して、「おでれーた! おめ、「使い手」じゃねえか! なあ、おめえの名前はなんだ、相棒!」とか騒いで、ルイズに煩いと怒鳴られ、鞘に収め強制的に黙らされていたのは、余談である。
続く