瞬身の使い魔   作:EKAWARI

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ばんははろ、EKAWARIです。
お待たせしました、瞬身の使い魔遅れながら今回から実質連載スタートです。
それではどうぞ。


1話

 

 

 ―――――最初、彼はそれを理解出来なかった。

 

 目の前に広がるのは、青い匂い沸き立つ草原に大きな青空、そして黒いマントをつけて、白いブラウスとプリッツスカート、或いはズボンを身につけている少年少女達。

 ……何処か既視感を覚える、古い記憶に訴えかけるような組み合わせだ。どこかで見たような気がする。

 そして、その風の匂いも、大地の匂いも嗅ぎ覚えのないものだ。あまりに数秒前まで彼がいた場所とは違い過ぎる。そもそも、先ほどまで、昼ではなかった(・・・・・・・)。それは確かだ。

 やはり、先ほどの、足を取られた際に何かに飲み込まれた感じがしたあれは転移系の忍具か何かだったのだろうか。

 しかし、目の前の少年少女達は忍者というよりは、どちらかといえば……。

 古い記憶を探る彼の前に、一人の少女がやがて進み出た。

 それはクリクリとした鳶色の瞳に、傷一つない透き通るような白い肌、量が多くフワフワとした長い光に透けるようなピンクブロンドの髪をした少女。愛くるしいが日本人の顔立ちでも無ければ、木の葉の人間の顔立ちでもない。その姿を前に既視感が益々強まる。

 どこかで見た特徴な気がする。

 どこで?

 こんな子、会ったことはないはずだ。そう、会ったことは。だが、この特徴は覚えがある。

 そして、少女は言葉を放った。

「あんた……誰?」

 と。

 その言葉を聞いた瞬間、古い記憶がカチリと噛み合う。

 嗚呼、わかった。思い出した。

 これは、この世界は、『ゼロの使い魔』、その召喚の儀式の場面にそっくりなのだと。

 

 1体これはどういう性質の悪い冗談だというのだろうか。

 遙か昔に日本人の青年としての記憶を宿し、NARUTO世界とよく似た平行世界を『うちはシスイ』として15年生きてきた青年は、そのあまりに悪趣味な現実を前に声を張り上げて、嘲笑(わら)った。

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 瞬身の使い魔 1話

 

 

「あは、あははは、あははははっ」

 まるで壊れたような声で彼は大声を上げて笑う。それにぎょっとしたような気配が四方から伝わってくるが彼にはそれに構うような心の余裕などどこにもない。

 そもそもこの世界に来た切っ掛けだろう、何かに足を取られたようなあの感覚……その失敗もまた、彼の余裕の喪失から来た弊害だったとさえ言えるだろう。とてもじゃないが、今の彼は心を穏やかにするなど出来ようはずがない。ほんの、数十分前だったのだ、あの事件を、自らの手で起こしたのは。

 彼は今宵……今生にして生み育ててくれた血族のうちは一族を、二人を除いて皆殺しにした。

 

 彼が『うちはシスイ』となったのは今から15年ほど前のことだ。

 それ以前は日本人の青年として日本という国で生まれ育ち、そして27歳の時、妹が就職の内定も決まり、来週の誕生日にご馳走を作りに帰ってくるとそんなメールを貰った矢先、夜勤明けに階段を登っている所を足を滑らせ……おそらくは死んだ。

 そして次に気付けば彼は、見知らぬ家で、見知らぬ女性に『シスイ』と呼ばれ、彼女は自分を『お母さん』だと名乗っていた。わけがわからなかったけれど、それでもその家の家紋でまさかとは思っていたが、そうして知ったのは、その世界が、漫画NARUTOの世界にそっくりな世界で、自分もまたその漫画NARUTOの登場人物であった、3歳の『うちはシスイ』という人物に成り代わってしまっていたというそんな事実だった。

 漫画の世界の人物に成り代わる。それが中学生くらいの子供なら嬉しいのかもしれないが、元社会人だった彼としてはなんというタチの悪い冗談だ、とその時も思ったものだ。

 それでも今更事実は変わらない。現実逃避してもなにも変わらないのだ。

 既に賽は投げられたのだから。

 だから、彼は原作のシスイにはなれないし、なる気もなかったけれど、その世界で自分なりには一生懸命に生きてきた。

 最初は、漫画の世界に来てしまったということで、その世界や人々にも情はあまりなかったけれど、それでも長く住み、色々な人々と接するうちに情もまた湧いた。

 とくに、原作でも重要人物だったうちはイタチのことは、前世でNARUTOではイタチファンだったことを差し引いても、自分に懐くイタチは可愛くて仕方なかった。

 だからこそ、原作のように、この世界で生きるイタチもまた影の道を歩み、やがて泣きながら両親を殺め21の身空で命を散らす運命を辿って欲しくないとそう思っていた。

 彼はイタチに夢を見た。

 誰でもない、うちはイタチにこそ火影……木の葉の里を治めて欲しいとそう思っていた。

 だから、それが邪魔だったのだ。

 うちは一族が里に対して起こそうとしているクーデター事件が。

 うちは一族は木の葉の里に不満を持っていた。

 上役にうちは一族の人間が選ばれることがないことや、常に火影直属である暗部が数人一族の集落の見張りについていること、うちはの集落が里の端に固められていることなどがその理由だろう。それだけでなく、4代目火影である波風ミナトが命を落とした7年前の九尾事件によって、上層部との仲が特にこじれているというのも理由にはあったのだろうが。

 だが、それは里からしたらうちはを怪しむのは仕方ない面があったと思う。

 何故なら実際にうちは一族は、過去に反逆者を出している。

 最初に万華鏡写輪眼を開眼したという開祖、うちはマダラは初代火影千手柱間と手を組み木の葉の里を作った後、火影争いに敗れ、里と一族両方を捨て(捨てられ?)、九尾の狐を操り幾度も里を襲い、千手柱間と死闘を繰り広げたという。

 そしてNARUTO知識があるからこそシスイは知っているのだが、実際に7年前の九尾事件の際に里を襲ったのも『うちはマダラ』を名乗るうちはオビトが起こした事件だったのだ。

 実際問題として、疑いなんてレベルでなく、うちは一族出身の人間が事件に関わっていたのだから、里が一族を監視するのは当然だろう。マダラが襲撃してきた時点で一族皆粛清とかされていない辺りかなり寛容なくらいだとそうシスイは思っていた。

 そもそも、うちは一族が上手くいってないのは上層部とだけであり、一般の里人にはうちは一族は『エリート』と呼ばれていたし、木の葉警務部隊とかいう里人の治安維持部隊を丸々うちは一族に預けて貰っていたという実情もある。

 これのどこが冷遇されているんだ? と首を傾げざるを得ないのだが、それでもうちは一族の人間は一族に対しては情が深いのとは裏腹に、それ以外のものに対してはクールと言えば聞こえはいいが、一線を引いて接するクセがあった。ついでにプライドもやたらと高い。そんな彼らからすると今の状況は冷遇されているに値するものらしい。その辺は、うちは一族として15年育ったといえど、元日本人である彼からすれば理解出来ない価値観としかいえなかった。

 それでも、クーデターなど未遂でも犯されたら困る。

 実際にクーデターを起こされたら女子供まで全員粛清の憂き目にあうし、それより可能性が高いのは原作通りダブルスパイであったうちはイタチが一族皆殺しの命を受け、実行し、弟のサスケの保護を火影に頼み彼だけを生かして、両親までも手にかけ、里を抜け、事実を知らぬ周囲に罵倒されながらS級犯罪者として生きて死ぬそんな未来だ。

 それに万が一クーデターに成功して里を取ったとしても、1体誰が無理矢理力で頂点を奪った一族についていくというのだろうか?

 それに、どちらにせよ、未遂だろうとうちは一族ほどの力ある一族がクーデター事件を起こせば、それを切っ掛けとして戦争を誘発する可能性が高かった。

 たとえ未遂だろうと、クーデター事件など起こすわけにはいかないのだ。

 だから、彼は一族に対して説得を続けた。

 正直、クーデターを起こそうとする一族の考えについては理解し難かったが、それでも15年彼は此処で生まれ育ったのだ。情もあった。今生の両親が第三次忍界大戦で死に一人になっても寂しくなかったのも、彼らが実の家族のように暖かく接してくれたおかげでもあるのだ。死んで欲しいわけがない。

 それでもシスイにとって、優先するのは一族よりイタチの未来だったといえよう。

 うちは一族はもうどうしようもないレベルに来ていた。これ以上の説得は無意味だ。もうクーデターは止まらない。

 彼は三代目火影である猿飛ヒルゼンに土下座をして頼み込んだ。

 うちは一族皆殺しの任はどうか自分にしてほしいと、禍根など残らないよう他はみんなちゃんと殺すから、イタチとサスケの二人を助けて欲しいと、イタチに親殺しをして欲しくない、と。

 ……その願いは秘密裏に叶えられた。

 役目だけを見るのなら、まんま原作のイタチの役となりかわるようなものだろう。

 だが、見た目の役目は同じでも、一族を殺すその動機はイタチと自分ではあまりに違っていた。

 イタチは優しい子だった。

 僅か4歳で戦争を経験したイタチは平和を愛し、里を愛し、木の葉を愛し、幼くてもまるで火影のように未来と里の安寧を見据えているかのような、そんな子だった。

 戦争ではもっと多くの人が死ぬ。それをイタチはよくわかっていた。

 イタチは里を愛していた、だからこそ自分を犠牲にしてでも里と何も知らない弟を守ろうとしたのだ。

 シスイとは違う。

 彼はイタチに親殺しをしてほしくなかった。いつか火影になってほしかった。イタチが治める里を見たかった。だから、クーデターを起こそうとする一族を切り捨てることにしただけだ。自分の夢のために、一族が『邪魔』だったから。そんな理由で、今宵彼は自分を産み愛し育ててくれた一族を殺したのだ。

 自分を信頼していただろう彼らに痺れ毒を仕込み、動けなくしたところを1人1人殺して回った。

 みんな、殺した。

 いつも明るくまるで自分もまた家族のように迎えてくれたうちはミコトも、イタチの父にして厳格ながら不器用な愛情を見せてくれていたうちはフガクも、実の子供のように自分を可愛がってくれた煎餅屋のテヤキとウルチ夫妻も、男も女も、幼い赤子まで。

 サスケとイタチを除いて皆、殺した。

 途中、異変に気付いていたのか任務を早々に切り上げ帰ってきたイタチを幻術にかけ、壁に縫い止め、そんな姿を修行から帰ってきたばかりのサスケに見せ、自分が事件の犯人であると見せ、憎ませるよう仕向けたりもした。そうして里を出た。

 それが、今からほんの5分程前の出来事だ。

『いつか、絶対にお前を殺してやるッ!』

 そう口にしたサスケの幼い憎しみの声が強く耳に残っている。

 自分がやった行為が行為だ、憎まれるのも当然だろう。自分はサスケの両親を殺し、イタチをも襲った最低の男なのだから。それでも、シスイにとってサスケは可愛い弟のような存在だったし、殺した一族への情もあった、それもまた事実だった。一族の暗部もおそらくは自分の気持ちも知っているのはイタチだけだ。

 彼らの『どうして』という声も、殺した感触もこれでもかというほど、耳と手に残っている。  

 だから、今だけだ、今だけはとそう自分に言い聞かせ、シスイは涙した。

 後悔はしていない。

 それでも、苦しくて、痛くて、数々の想い出と共に涙が次々に溢れた。

 だから、気付かなかったのだ。

 その足が踏み抜いた先にあったそれに。サモン・サーヴァントの儀で生じた召喚の門に。

 結局彼は全くもって、冷静ではなかったのだから。

 

 

「あは、あははは、あははははっ」

 まるで壊れたような声を上げて、泣くような声で笑う目の前の青年を前に、学園の引率教師であるジャン・コルベールはどうしたものか、とそう思っていた。

 これがもし、この場で召喚された存在が、ただの『平民』だったのならば、コルベールはさっさとルイズにコントラスト・サーヴァントを行うよう進言しただろう。

 何故ならば、春の使い魔召喚の儀式は伝統ある神聖な儀式なのだから。

 ここで召喚に応じた使い魔によってその魔法使い(メイジ)の属性が固定され、専門課程へと進むことになる。だからこそ、たとえばネズミやモグラであろうとなんだろうと此処で召喚された使い魔とどうあっても術者は契約しなければならない。

 しかし、人間が召喚されるなど前代未聞だ。コルベールも人間の召喚など聞いたことはない。

 それでも相手が平民ならば、契約するよう言うだろう、『平民』ならば、だ。

 しかし、コルベールの眼からみて……否、他の誰から見ても目の前の人間はただの平民とは言い難かった。

 目の前の青年はどう見ても普通ではなかった。

 四方に跳ねた短い黒髪に見たことのない模様の描かれた額宛を巻き、首から膝まですっぽりと覆う見たことのない意匠の黒いコートを身に纏っている。若干黄色がかった肌に黒い瞳、男が履いているブーツもまた独特で今まで見たことのないデザインのものだ。全体的に見たことのないデザインの服を纏っているが、その全身黒づくめの男は、なんとなく暗殺者を思わせる格好をしているといえる。

 そして、何より重要な問題は、ディテクト・マジックをかけた結果、魔力反応があったことと、強い血の臭いが目の前の青年から匂うことだ。これほどの血の臭いは1人2人殺したくらいでは付かない。それもこれは新鮮な血の臭いだ。殺してから何時間も経っているとは思えない。怪我1つしていないようだから目の前の男の血という線もあり得ない。

 おそらくこの目の前の男はメイジ……それも魔力量他から推測するならばトライアングル級相応だと思われる。それがコルベールの判断だった。

 コルベールにとって優先順位は伝統ある使い魔召喚の儀よりも、生徒達の命のほうが高い。

 それは当然だ、コルベールは学園の教師であり、この場でこの男に対抗し、生徒達を守れる存在がいるとしたら、それは自分に相違ないのだから。

 ジリリとコルベールの中で知らず緊張と警戒が走る。

 けれど、この……おそらくは20歳前後といったところだろうか。顔立ちや体つきからして中々若い、な青年に対し完全に敵対モードに入るというところまではいけなかったのは、相手に敵意や殺意がないからか、それとも……泣いてるような声を上げて狂ったように笑うこの男が、いつか見た鏡の向こうの自分に似ていたからなのか、それはコルベールにもわからない。

 おそらくは、服装雰囲気その他諸々から察してこの男はメイジで暗殺者なのだろう、とコルベールは思った。

 血の臭いがするのは仕事帰りだったのかもしれない。健康的な肉の付き方とかを見ても、快楽殺人鬼や野党、盗賊の類とは思えない。人殺しを好んでする人間はこういう顔をしないだろう。

 ならば、言葉が通じるかもしれないとコルベールはそう判断した。それでも、警戒も解かないし、隙を見せたりもしないあたり、昔取った杵柄は今も健在と言ったところだろうか、コルベールは男に声をかけることにした。

「失礼、ミスタ。私はトリステイン魔法学院の教師ジャン・コルベールと言います。貴方は今の自分の状況がお分かりか?」

 自分にかけられたその言葉を合図のように、ピタリと彼は笑うのを止めた。

 静かな空気が周囲を漂う。笑みが剥がれ、無表情じみた顔の中に覗く漆黒の瞳の闇に、思わずその刹那コルベールは飲み込まれた。打ちひしがれ、縋るものさえ無くしたかのような、そんな虚無の瞳だ。

 一瞬、言葉が通じないのではないかと危惧したコルベールだったが、やがてゆっくりと青年は己に瞳を合わせ、コクリと小さく頷いた。そんなことに少しほっとした。

「……オレは、その子に召喚されたんだな……?」

 どこか疲れたような諦めたような、そんな若い男の声だった。

 そんな男の姿に若干コルベールは罪悪感を覚えたが、それでも彼は学園の教師だ、この場の代表として彼は凛と背筋を伸ばしてまっすぐ男を見ながら言った。

「ええ、そうです。貴方は春の使い魔召喚の儀式で、こちらのミス・ヴァリエールに召喚されました」

 そう言ってピンクブロンドの少女、ルイズのほうに視線を送ると、男もまた彼女へと視線を移した。ルイズは状況についていけないのだろう「え、わたし……?」といいながら狼狽えていた。そんな少女の状態を確認すると、黒尽くめの暗殺者らしき男は再びコルベールへと視線を戻す。

「故に貴方には彼女の使い魔になって貰わねばこちらとしては困るのですが……なにせ人間が召喚されたことなどこれが初めてです。正直私にもどうしていいのか……なので貴方にはご足労おかけしますが、共に学園長の元へ行ってはもらえないでしょうか?」

 そう穏やかに安心させるように笑いながら口にするが、まあここで断られた場合無理矢理連れて行くしかないとコルベールは思っていたし、その手段も頭の中で10通りほど考えていた。全く、とんだくじをひいたものだ。出来れば横暴な手段は取りたくないんですけどね、とか無理矢理連れて行くのは骨が折れるかもしれません、などと思っていたのだが、そんなコルベールの内心の思いさえ読んだようにだろう、いつの間にか黒から赤に色が変わった瞳で……何故色が変わるのかコルベールにはわからなかったが興味深いと思った、で男はじっとコルベールを見ると、やがて諦めたようにため息を一つ吐いて「わかった」とそう口にして男はコルベールについていくことを了承した。

 それにコルベールは安堵した。相手の強さもわからないし、出来るだけ流血沙汰は避けたかったからだ。

 次いでコルベールはルイズに向き合い、言った。

「ミス・ヴァリエール」

「は、はい」

 ルイズは慌てたような声で返事を返した。

「これから彼と私と君の3人でオールド・オスマンの元に向かいます。コントラスト・サーヴァントがまだ残っていますが、それらは学園長の指示を仰いだ後に延期です。良いですね?」

「わかりました」

 使い魔召喚の義の引率はコルベールだ。ルイズはその指示に従うことにした。

 それを確認すると、コルベールは後ろで雰囲気に飲み込まれてヤジを飛ばす余裕すら無くしている背後の生徒たちに向かって指示を飛ばした。

「使い魔召喚の儀式はこれで終わりだ。次の授業ももうすぐだし、私は用事が出来てしまったのでついていけないが、みんなもう教室に戻ってくれ」

 それを合図に生徒達はレビテーションとフライの魔法を駆使して、宙に浮かび上がり、学園へと戻っていった。

 残ったのは、緊張して不安そうな顔をしているルイズと、はげ上がった頭が印象的な教師コルベールと、黒尽くめの格好をした謎の男の3人だけだ。

 この中でまともに場を取り仕切れるのはコルベールだけだ。

「さて」

 そういうとコルベールは朗らかな周囲を安心させるような笑みを浮かべて、言った。

「行きましょうか」

 それにコクリと青年は頷く。先ほどからやけに大人しい。こうしてみるとさっきあんなに泣きそうな顔で大笑いしていた人物とは思えない。そんな青年に向かってふと、コルベールは尋ね忘れていたと思って言った。

「ところで、ミスタ、貴方の名前は?」

 それに青年……シスイは考え込んだ。

 

 うちはシスイという名前は、この体の名前であり、正確には『彼』の名前ではない。

 それでも15年彼が育った世界ではうちはシスイは己しかいなかったから、シスイとそう名乗っていたが、それでも本当は自分はシスイではないのだ。その自分があの世界でもないのに、果たしてシスイと名乗っていいものか?

 しかし、15年以上前の日本人として27年生きて死んだ前世の自分の名などとっくに忘れてしまった。

 そりゃそうだろう。古い情報を人は忘れる生き物だ。今でも彼が前世について覚えていることなど、妹のことや元彼女のことや学生時代に友人と組んでやっていたバンドのことなど、印象深く残っていることくらいだ。なにせ15年も彼はNARUTO世界でうちはシスイという人物として生きてきたのだ。

 ゼロの使い魔は、前世で友人に勧められ読んだ小説がそれだったが、それについて少々の情報として思い出せたことさえ奇跡的なくらいだ。それでも知っていたからし、そういう世界にきてしまうのがこれで2回目だからこそ錯乱せずにすんだと思えば、それだけでもありがたいのかもしれないが。

 それでもどちらにせよ、前世の生来の自分の名などない。

 己にあるのはたった一つの借り物の名だけだ。

 借り物、そうわかっていてもそれしか今の彼にはない。

 だから、彼は名乗った。

「うちはシスイ」

 と。

 

 

 

 続く

 




とりあえず、前回いってた通り主人公のスペックです。

【挿絵表示】

 うちはシスイ憑依オリ主。
 18歳、男。
 身長177㎝ 体重59㎏
 好きな食べ物:和菓子、タクアン。
 嫌いな食べ物:納豆、なめこ。
 好きな言葉:可愛いは正義。
 趣味:子供の面倒見ること(←本人は否定)

 幻術全般と瞬身術(高速移動術)に関しては超一流、スクウェア級と思っとけばいい。目を合わせたり、指の動きだけで幻術にかけられる。
 毒薬・薬草の知識や調合に関しては2流~3流レベル。ランクをつけるならばトライアングル級。(フーケではなく、シュヴルーズやキュルケ寄りの)
 火遁術。ドット~ラインの間くらいの火メイジレベル。
 医療忍術。応急処置レベルの医療忍術が使える。ドットの学生水メイジレベルの治療術と思っておけばいい。
 写輪眼。赤く巴模様の浮かんだ瞳。うちは一族でも一部の家系のもののみが開眼することが出来る瞳。幻術をかけたり、チャクラ(魔力のようなもの)の流れを見たり、幻術を解除したり、筆跡をコピーしたり、様々なことが出来るが、強い力を使う分チャクラの消費量も大きい。彼の場合、『別天神』と呼ばれる万華鏡写輪眼に目覚めているため、その瞳術でやろうと思えば動物や妖魔の類も操ることは出来る。
 しかし、別天神の本当の能力は「相手の意志を操っているという自覚を与えず、術者の思い通りにする最強幻術」というもので、1度使えば再発動に10年以上の時間がかかる上に、使えば使うほど視力を失っていくため、この物語の中で、別天神の本来の能力を彼が使うことはない。

 戦闘スタイル。
 奇襲・サポートタイプ。
 スピードと幻術が得意な反面、防御力や火力に不安があり、正面突破を避ける傾向がある。
 敵わないと判断するや否やの引き際の潔さはいっそ鮮やか。
 逃げるが勝ちを体現するかのように、あっさり逃げに判じる傾向がある反面、取れる時はしっかりと敵の首をとる。単体で戦うときは毒と罠と瞬身術を使っての暗殺・奇襲が基本。殺す気が無いときは幻術でお茶を濁す。ただし、戦い方が戦い方なので、個人で多数を相手にするには決定打に欠けるため、あまり向いていない。そのため、自分が不利な状況になったら仲間を抱えて逃げる。
 ガンダールヴのルーンで武器の扱い方が下手という弱点は改善されたが、武器の扱い方が上手くなってもそれで戦い方をわざわざ変えたりはしない。
 主戦力ではなく、支援役に徹したら幻術とスピードがチートレベルなのも相俟って鬼性能発揮する。
 引き際が上手いため撤退戦も得意。
 だが、どっちにしろ正面突破を避けるアサシンな戦い方といい、火力不足なところといい、主戦力としてはあまり期待してはいけない。強いことは強いが物語の勇者にはなれないタイプ。
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