瞬身の使い魔   作:EKAWARI

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ばんははろ、EKAWARIです。
今回の話は閑話というわけで、7話と8話の間の話もとい番外編になります。
それではどうぞ。


閑話:好みの女の子の話

 

 

 キュルケとの邂逅から間もなく、ルイズは己が自分の使い魔となったうちはシスイと名乗る男の腕を掴んだまま廊下を歩いていたということに、5分ほど後に漸く気付いた。

 正直、劣等感全開で鬱々とした気分を持て余していたルイズは、自分が男の腕を掴んでいたことさえ意識の端にもなかったのだ。

 とりあえず、気づいたのにいつまでも貴族の子女たる己が男の腕を掴んだままというのはまずい、とわずかに冷静な思考を取り戻した彼女は、なんとかそこまで考えた後、男の腕を放して彼の青年を見上げた。

 男は相変わらず今朝自分にあれだけの劣等感を植え付けた男とは思えないほど、人畜無害そうな顔をしてルイズの反応を待っている。しかし、そんな態度さえ今の少女には目障りな反応でしかない。

(こいつ、なんで、何も言わないのよ)

 まるで従順な(しもべ)のような態度をとって、馬鹿にしているんじゃないの。あんたはあんなに力があるくせに、公爵家の娘という名だけで主を名乗る自分に不満があるんじゃないの、と卑屈な彼女の思考はそんな考えをはじき出すが、同時に冷静に戻ったルイズはわかってもいたのだ、それがただの……自分を圧倒させた力を見せたこの男に対する嫉妬と羨望と八つ当たりでしかないということに。

 そんな感情をぶつけるなんて、みっともない。

 公爵家の娘としてふさわしくない。

 そう思ったから、ルイズはふぅ、と大きく深呼吸して、一旦沸き立ったその嫉妬や八つ当たりじみた感情を胸の奥にしまいこんだ。

 それから先ほどキュルケと遭遇した際の男の態度について思い起こした。

(そういえば……)

 キュルケは男にモテる。

 それは誰が見てもそう判ずるだろう事実であり、ルイズにとってキュルケは気に食わない天敵のような女であったが、それでも世間的に見てキュルケのほうが男受けがいいということくらい事実として認識している。

 あの色ボケ女のどこがいいのよ、媚売ってるだけじゃないと思うし、実際そう口にもするけど、その一方でルイズもわかっていたのだ。自分のような可愛気のない意地っ張りで、魔法もろくに使えない小娘が、いくらヴァリエール公爵家の息女とはいえモテるわけがないわよね、と。

 確かに男にチヤホヤされたいわけじゃない。彼女にとって優先的な願いとは、たとえドットレベルでもいいから人並に魔法が使えるようになって、両親にも認められ、自慢の娘だといつか言ってもらえるようになれたら、と、それが彼女にとってはなによりの願いだ。

 だけど、それでもルイズも花の盛りの16歳だ。素敵な男の子や恋への憧れだってないわけじゃない。昔から褒められ慣れてない分、褒められることを誰よりも望んでいるといっていい。

 だから、いくら口で強がっていても、キュルケに「女としてもあなたはダメね、ルイズ」といわんばかりの態度を取られると悔しくてしょうがないのだ。自分がモテるわけがないと思っていても、それで悔しさが消えるわけじゃない。

 だけど……。

(こいつ、キュルケに興味を示さなかったわね)

 ふと、冷静に先ほどのことを思い出したらそんなことに気付いた。

 今まで学園の生徒たちだけでなく、平民の男からの視線まで奪っていたキュルケ。まあ、あれほどのプロポーションと美貌があれば当然と言えば当然である。

 そして男の目はたいていキュルケのむき出しの胸の谷間や、ミニスカートから覗く太ももに釘付けになっていた。そんな露骨な男の視線とかを見るたび、潔癖な年頃の少女としてルイズは嫌悪を覚えていたが、男とは大抵そういう生き物なんだ、とも同時に理解もしていたのだ。

 しかし、シスイは全くキュルケの胸の谷間や太ももなどに興味を示さなかった。キュルケの体をジロジロ見たりすることもなく、自分にかけられた誘いの言葉に対し、返す言葉にはすまなさそうな響きはあったが、どこまでも落ち着いた平素の口調と態度だった。

 そのことに少し興味が沸いた。

 

「ねえ」

「ん? なんだ」

 手を離したかと思ったら、じっと考え込むように自分の顔を見て何事かを話しかけた主に対し、青年は落ち着いた声で何を聞きたいのかを尋ねかえす。そんなシスイに対してルイズは心底不思議そうな顔をして、彼にしてみれば予想外の質問を投げかけた。

「あんたは、キュルケを見てもなんにも思わないの?」

「へ?」

 確かキュルケってさっきの赤毛の女の子のことだよな? と思い返しながら、シスイは困惑した顔を浮かべてポリポリと側頭部のあたりを掻きながら、「そりゃまたいきなりな質問だな」と苦笑じみた声で言った。

「だってあいつの言葉を肯定するのは癪だけど、たいていの男の子はあいつの体をジロジロ見るのよ、実際。でもあんたは違ったじゃない」

 自分で言いつつ、あれ? あそこまでキュルケに興味ないなんてひょっとしてこいつゲイだったりする? なんて結構失礼なことをルイズは考えたりしながら聞いたわけだが、そのルイズの脳裏をよぎった不埒な思考を否定するように男は答えた。

「いや、だってなぁ……別に彼女はオレの好みじゃないし」

 それはある意味当たり前といえば当たり前のことだった。

 すべての男がキュルケのようなタイプを好むとは限らない。しかし、そう言い切る人物に出会ったことのなかったルイズとしては、そんなシスイの返答がなんだか新鮮で、少し驚いた。

「まあ、世間一般的に見れば色気のある美人で十分魅力的な女性なんだろうが、ああいう女性の性的魅力を前面に出しているタイプはちょっと……苦手だ」

 そういって本当に苦手そうに笑うから、ルイズの中で恋や愛に憧れを覚える年頃の少女としての好奇心が沸いてきた。

「じゃあ、あんたはどんな子が好みなのよ」

 

 正直、会って昨日今日でこう評するのは失礼なことなのかもしれないが、このうちはシスイと名乗った男は女の子にあまり興味がなさそうだなあとルイズは思っていた。

 しかし、あくまでキュルケは好みじゃないというだけなら、逆をいえば好みの女の子には興味があるというわけで、この男がどんな女の子が好きだというのか興味が沸いた。

 そんな好奇心で大きな鳶色の瞳をやや輝かせている小さな主を前に、男はちょっとだけ照れくさそうな顔をして、頬をポリポリ掻きながら言った。

「そうだなあ、やっぱり一緒に居て楽しい子がいいなあ」

「……意外と平凡ね」

 男の返答はルイズにとって逆方向に意外といえば意外だった。

「あとは普段は素っ気無くてもいいけど、オレにだけ甘えてくれたりしたらクラッといくかも。惚れっぽいタイプとかヒステリックなタイプは苦手だ」

 ああ、惚れっぽいタイプが苦手なら確かにキュルケは苦手でしょうね、となんだか呆れたような気分で思いつつも、元は自分で振った話題だ、既に拍子抜けしたような気分だがルイズは質問を続けた。

「あんたは、外見とかにはこだわりはないの?」

 たいてい男や女に限らず、理想の異性像は性格面だけでなく、外見にもこだわりがあったりするものだ。いくら口で性格がよければそれでいいといっても、実際そうであるのかというとそうでもないことが多い。

「外見か? 指が綺麗な人だと嬉しいけど、胸や身長の大小には興味ないな。顔もまあ、平均くらいあればそれでいいと思っているし、体型も一見してわかるくらい極端に太りすぎてたり痩せ過ぎてたりしてなきゃそれで別にいいけど」

「……つまり、普通が好きなのね? あんたは」

 胸の大小に興味がないとなれば、そりゃキュルケの胸に反応しないはずだ、と思いつつも呆れた心境でルイズがそう纏めると、シスイは歯切れ悪く「うん……まあ、そうなんのか」とか言いながら耳を赤く染めていた。自分で答えておいてなんだが、恥ずかしいらしい。

「あ、でも明るい髪色より黒とか落ち着いた髪色の女性が好きかも。短い髪より長い髪のが惹かれるものはあるな。子供っぽい女性は可愛いと思うけど、付き合うんなら大人びた落ち着いた女性のほうが理想ではあるな」

「へ、へえ~……」

 と続けながら、あれ? なんでオレこんな出会って1日しか経ってない相手に素直に答えてんだ? とふと自分に対してシスイは疑問を浮かべた。

(ひょっとしてこれって、ルーンの効果だったりしないよな?)

 正直、この世界が本当に小説「ゼロの使い魔」の平行世界だったとしても、原作の内容について殆ど記憶から消えている彼からしてみたら、自分が持っている知識はあまり頼りにならない。このルーンについてわかっていることも、武器を持ったら身体能力が向上して、武器の適切な使い方がわかる効果があるというくらいのものだ。

 そのため多少首をかしげながらそんなことを思うが、そんなシスイに対してルイズはちょっと思ってなかったことを言った。

「最初は気づかなかったけど、あんたの好みの女の子像って結構具体的よね。ひょっとしてそういう(ヒト)いるの?」

 その言葉に少し固まった。

 彼もつい気づいてしまったからだ。

 黒髪長髪で指が綺麗で、一緒にいて楽しくて、惚れっぽいタイプでもヒステリックなタイプでもなくて、普段は澄ましているように見られがちだけど無表情を装いながら自分に何気に懐いている、とっても大人っぽい子が身近にいたような……と。

 気づくのと同時に婚約者でもあった彼女の顔が脳裏をよぎる。

 しかし、シスイはその考えを慌てて振り払った。

(いやいや、あいつは妹みたいなもんだし、そもそも子供だし、何考えてんだ。相手は12歳のガキだぞ)

 ……その12歳のガキ相手に、数ヶ月前うっかり抱き枕にしてしまった挙句ドギマギしてしまったわけだが。

 ついでに12歳といっても、どうみても目の前のルイズ(16歳)よりもいろんな意味で大人っぽく見える相手ではあるのだが。

 しかし、いくら大人びていても相手は子供。基本的には彼の許容範囲は18~30歳くらいの女性なのである。12歳なんて子供もいいところだ、犯罪だ。ゆえに、自分の想像が弾き出した相手にシスイは落ち込み、ブツブツと「違う、勘違いだ、オレはロリコンじゃない」などと呟き出した。

 突然何かに気づいたように目を見開いたかと思えば、そんな言葉を呟き出している姿はまあ、不気味そのもので。

「なんなのよ、もう」

 いきなり赤くなったり青くなったりを繰り返し始めた目の前の男に対し、ルイズは若干引きながら他人のフリをしたいと強く願うのであった。

 

 

 了

 

 




ちなみにしーたんの女の子の許容範囲は年齢は18~30歳、胸の大きさはAAA~Hカップ、ウエストは55cm~80cm、身長は145cm~185cmくらいまでが許容範囲だよ。それ以下かそれ以上は流石にきついらしいよ。でも、好きになったらこの範囲に限らないようだよ。
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