水底のカタルシス―艦隊これくしょん異聞録   作:憲兵隊長J

10 / 10
第玖話:護衛ト怒声

ナデシコ達を見送ったあと、私はへ級と二人っきり(?)になる。

「あー................今更だが、ほんとに私で良かったのか?単純な戦力なら、ナデシコやライラの方が上だと思うけど。」

「イエ、私ヲ呼ビ出シタノハ御前(おんまえ)ニ居ル、ソラ様。アナタデハアリマセヌカ。故ニ、私ハコノ身ガ朽チ果テルマデソラ様ニオ仕エ致シマス。」

そう言って深々と頭(?)を下げる。................い、いや、そんなに畏まられても困るんだけど................

「................そ、そう................。なら、駆逐の世話................と言うのか?........いや、指揮と言うか躾と言うか................とにかくその辺のこと、頼むな。」

「ハッ、御身ニ変エテモ。」

その時、海面から泡(あぶく)が一つ、コポリと湧き上がる。咄嗟に身体を引いて手探りで爆雷を探すと、へ級もいつの間にか両手に爆雷を構えている。

「................ちょ、待って待って待って!!あたしは味方だっつーの!?」

ザバッと海面が盛り上がって、酸素マスクのようなものを付けた顔が浮かび上がってくる。

「........................味方?」

................そう言えば、『潜水艦による回収班』ってたな。左手でへ級を制して、自分も抜きかけていた爆雷の信管を元通りに................はできなかったので、彼方へとぶん投げて主砲で処理した。

「................なるほど。これは失礼しま。私はツ級のflag――」

「あー知ってますよ、................最も、今は『ソラ』さんでしたか。」

「................ふむ?前にどこかで会ったか?」

「あー、覚えてないっすかー。自分っすよ、海底に転がってたソラさんを見つけてあの二人に引き渡したの。」

「ふむ、そうだったのか。................すまない、気絶してたもんで。」

「あーいいっすよいいっすよ。それよりも護衛の方、頼んます。」

「うむ、わかった。................しかし、護衛は必要なのか?見たところ敵の姿は見えないようだが――」

「................あー、そっか。ソラさんの頃は無かったか。」

潜水艦は頭をかく。................私の『頃』?

「実はですね、厄介なことに対潜哨戒&爆撃機なんてものが開発されたんすよ。しかもかなーり高精度の。だもんで仕事がやりにくいのなんの。あと向こうの潜水艦の性能も上がってましてね。水の動きでしか存在が分からないんすよ〜................そういうわけで、護衛の方お願いしまっす。」

「........................な、なんか大変なんだな。」

................私が『天龍』だった頃にゃ、そんなモン聞いたことも無かったんだが................はー、時代は変わるんだな。

「任せてくださいよっ。あ、対潜する時は一応一声断ってくださいよ?こっちまで吹っ飛ばされちゃ叶わないっすからね。................あ、言い忘れましたけど、自分、イルマって言います。他のは................いいや、名前無いんで『潜水艦その1・2』ってことで。あ、その辺に輸送隊もいるんでそのうち紹介しますよっ。それじゃっ」

つらつらと喋り倒した挙句にまた水底へと潜っていく。................ふーむ、面白い、................のか?

「................ソラ様、ヨカッタノデスカ?アンナ簡単二引キ受ケテシマッテ。」

「んー、まぁ、悪い奴じゃ無さそうだし................っと、それよりも警戒警戒っと。」

私は、伏せていた目線を空へと向ける。曇り始めた空には、何一つ動きはなくて................いや、ある。微かにエンジンの音が聞こえてくる。へ級も気がついて主砲を空へと向ける。................む?あれは................。

エンジン音は次第に近づいてきて、私達の頭の上で旋回する。................間違いない、あれは私達の使う艦載機。ってことは................

「................む、友軍であったか。」

重武装の『艦』が重々しく近づいてくる。

「................あなた方は?」

「これは失礼した。我は第2艦隊旗艦、ル級改と申すもの。................して、そちらは今何をしておる?」

武人風の雰囲気に、思わずこちらの背筋もシャンとする。

「................戦後処理、とでも言いましょうか。潜水部隊の作戦の護衛であります。」

「................なに、死体漁りだと?」

ル級の目尻が釣り上がる。へ級が主砲を構える音が、後ろから聞こえてくる。

「................敵から剥ぎ取った資材など不要。恥を知れ。」

それだけ言い捨てると、ル級は踵を返して走り去っていく。

................な、何だったんだ、一体........................

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。