ナデシコ達を見送ったあと、私はへ級と二人っきり(?)になる。
「あー................今更だが、ほんとに私で良かったのか?単純な戦力なら、ナデシコやライラの方が上だと思うけど。」
「イエ、私ヲ呼ビ出シタノハ御前(おんまえ)ニ居ル、ソラ様。アナタデハアリマセヌカ。故ニ、私ハコノ身ガ朽チ果テルマデソラ様ニオ仕エ致シマス。」
そう言って深々と頭(?)を下げる。................い、いや、そんなに畏まられても困るんだけど................
「................そ、そう................。なら、駆逐の世話................と言うのか?........いや、指揮と言うか躾と言うか................とにかくその辺のこと、頼むな。」
「ハッ、御身ニ変エテモ。」
その時、海面から泡(あぶく)が一つ、コポリと湧き上がる。咄嗟に身体を引いて手探りで爆雷を探すと、へ級もいつの間にか両手に爆雷を構えている。
「................ちょ、待って待って待って!!あたしは味方だっつーの!?」
ザバッと海面が盛り上がって、酸素マスクのようなものを付けた顔が浮かび上がってくる。
「........................味方?」
................そう言えば、『潜水艦による回収班』ってたな。左手でへ級を制して、自分も抜きかけていた爆雷の信管を元通りに................はできなかったので、彼方へとぶん投げて主砲で処理した。
「................なるほど。これは失礼しま。私はツ級のflag――」
「あー知ってますよ、................最も、今は『ソラ』さんでしたか。」
「................ふむ?前にどこかで会ったか?」
「あー、覚えてないっすかー。自分っすよ、海底に転がってたソラさんを見つけてあの二人に引き渡したの。」
「ふむ、そうだったのか。................すまない、気絶してたもんで。」
「あーいいっすよいいっすよ。それよりも護衛の方、頼んます。」
「うむ、わかった。................しかし、護衛は必要なのか?見たところ敵の姿は見えないようだが――」
「................あー、そっか。ソラさんの頃は無かったか。」
潜水艦は頭をかく。................私の『頃』?
「実はですね、厄介なことに対潜哨戒&爆撃機なんてものが開発されたんすよ。しかもかなーり高精度の。だもんで仕事がやりにくいのなんの。あと向こうの潜水艦の性能も上がってましてね。水の動きでしか存在が分からないんすよ〜................そういうわけで、護衛の方お願いしまっす。」
「........................な、なんか大変なんだな。」
................私が『天龍』だった頃にゃ、そんなモン聞いたことも無かったんだが................はー、時代は変わるんだな。
「任せてくださいよっ。あ、対潜する時は一応一声断ってくださいよ?こっちまで吹っ飛ばされちゃ叶わないっすからね。................あ、言い忘れましたけど、自分、イルマって言います。他のは................いいや、名前無いんで『潜水艦その1・2』ってことで。あ、その辺に輸送隊もいるんでそのうち紹介しますよっ。それじゃっ」
つらつらと喋り倒した挙句にまた水底へと潜っていく。................ふーむ、面白い、................のか?
「................ソラ様、ヨカッタノデスカ?アンナ簡単二引キ受ケテシマッテ。」
「んー、まぁ、悪い奴じゃ無さそうだし................っと、それよりも警戒警戒っと。」
私は、伏せていた目線を空へと向ける。曇り始めた空には、何一つ動きはなくて................いや、ある。微かにエンジンの音が聞こえてくる。へ級も気がついて主砲を空へと向ける。................む?あれは................。
エンジン音は次第に近づいてきて、私達の頭の上で旋回する。................間違いない、あれは私達の使う艦載機。ってことは................
「................む、友軍であったか。」
重武装の『艦』が重々しく近づいてくる。
「................あなた方は?」
「これは失礼した。我は第2艦隊旗艦、ル級改と申すもの。................して、そちらは今何をしておる?」
武人風の雰囲気に、思わずこちらの背筋もシャンとする。
「................戦後処理、とでも言いましょうか。潜水部隊の作戦の護衛であります。」
「................なに、死体漁りだと?」
ル級の目尻が釣り上がる。へ級が主砲を構える音が、後ろから聞こえてくる。
「................敵から剥ぎ取った資材など不要。恥を知れ。」
それだけ言い捨てると、ル級は踵を返して走り去っていく。
................な、何だったんだ、一体........................