「................どうだ?準備できたか?」
「準備も何も................私はこれしか持ってないし。」
「ハハッ、確かにそうだよな。................さて、ヲ級も準備できたみたいだし................行こっか。」
リ級が両腕の砲を仕舞うと同時に、部屋のドアがノックされる。
「................お、来たか?」
それを返答と捉えたのか、ドアが静かに開く。
「準備、できたかしら?」
そこに立っていたのは、
「ヲ級................?」
私の横に立つヲ級と、瓜二つの姿をしたヲ級................いや、目の色が蒼い................?
「................あらあら?」
新しく入ってきた方のヲ級は、私のことを上から下まで一通り眺める。................えと、何か?
「................まぁ。あなたが新しく配属された船?」
「................はい。ツ級flagship改、と申します。」
「ふふっ、そんなに堅苦しくならなくてもいいから。私はヲ級flagship改................そうね、ちょうどそこに改もいて紛らわしいから、私のことは『ナデシコ』と呼んで。」
その瞬間、赤い目のヲ級が色めき立つ。
「................ヲ級さん。ソウル・ネームを簡単に教えては................」
「相変わらず固いわね、ランカちゃん。」
「なっ................」
「........................ランカ?」
「ん?ああ、こいつのソウル・ネーム。................ってそっか、まずソウル・ネームのことについて教えないとダメか。んーとね、ソウル・ネームってのは、簡単に言えば私達の『名前』かな。ほら、私たちは見た目が同じ個体ばっかりだから。................その中で、『自分』を忘れないように、って名付けられたのがソウル・ネーム。仲のいい相手だったらソウル・ネームで呼び合うこともあるんだけど................」
私の疑問に、隣にいたリ級が答える。
「................別に隠しとく必要もないと思うんだけどねぇ。........................一度『真名』を『喪った』私達だからこそ、新しい名前が必要なのに。」
「........................そうですね。これから作戦行動する上で同型艦との作戦も多くなるので支障が出るかもしれません。................ツ級、私のソウル・ネームは『ランカ』だ。覚えておいてくれ。」
「あ、ちなみに私は『ライラ』ね。」
と、リ級が付け足す。
「................んで、そちらのヲ級さんが『ナデシコ』さん、と。」
「そうよ~。................あ、そういえばあなたのソウル・ネームは................」
「................てん................いや、『ソラ』でお願いします。」
................『前』は届かなかった、『ソラ』。名前こそ『天』翔ける『龍』なんてかっこ良かったくせに、現実はずっと海の上をノロノロと進むだけだった。................むしろ『ソラ』は、敵の支配下で。時折爆弾や銃弾が降ってくる、死の世界だった。けど................けど、今なら。いや、今だからこそ........................『ソラ』に、なりたい。
「........................『ソラ』、ね。うん、いい名前じゃない。」
「................なるほどな。................っと、こうしてのんびりもしていられないな。早くしないと夜になってしまう。」
「あら、それは大変ね。」
「................どういうことだ?」
「................あー、ランカ達空母はな、夜になると艦載機が飛ばせないんだわ。だからなるべくなら昼間に襲撃をかけたいってわけ。........................あ、ナデシコさんみたいなベテランになると夜でもお構い無しに急降下爆撃できる、らしい。」
「................むしろ夜は、お前ら巡洋艦の独壇場だな。夜の雷撃は................考えただけでも恐ろしい。」
ランカが身を震わせる。
「................さ、行きましょっか。ランカちゃん、ポイントは?」
「................今日は、南西海域の北、B地点あたりにしようかと。」
「こないだみたいに空振りは嫌だからね?」
「わ、わかってる................」
(........................いよいよ、初めての戦い。)
私――『ソラ』は、小さく身震いした。