水底のカタルシス―艦隊これくしょん異聞録   作:憲兵隊長J

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第陸話:戦場(ヰクサバ)

三人(?)の後に続いて、施設の外れに出る。そこは、海に面した――言わば、港のような場所。

「おい、早くしろよ。」

ライラに急かされる。他の三人はもう、水面に足をつけて立っている。私も恐る恐る水面へと踏み出すと、不思議なことに沈むことなく水面に立つことが出来た。

「................さーて、行くか。」

ライラが先頭になり、その後ろをランカ、ナデシコ、そして私の順に一列になって航行する。白い航跡が水面にたなびいて、すぐに消えていく。

........................へぇ、久しぶりに見たけど................海はあんまり、変わんないな。

「................どう?久しぶりに見た景色は。」

ナデシコが振り返らずに話しかけてくる。

「あー........................相変わらず『青』しかないな。」

「ふふっ、確かにそうね。................でもね、同じ『青』でも................もう、『あの日』からは数百年経ってるの。不思議、よね。」

「................もう、そんなに経つんだ........................」

................随分とまぁ、俺は居眠りしてたんだな。

『もうすぐ目標地点に到着する。各自、臨戦態勢。』

いきなり頭の中で声が響く。................けど、これぐらいの事ではもう驚かない。................無電みたいなものだろうか。

『................あ、通信は、伝えたい相手とメッセージを頭の中で浮かべるだけで通話できるから。』

ライラの素っ気ない説明が、またしても頭の中に響く。試しにライラのことを考えつつ『了解。................で、敵影は無いようだが?』と思いうかべる。するとすぐに、ライラから返事が帰ってくる。

『んー................また空振りかも?』

先頭でライラがやれやれといった様子を見せる。一方ランカの方は、じっと水平線の向こうを眺めている。

『向こうに何かが見えた気がする................索敵してみる。』

そう伝えると、ランカの帽子(?)がカパっと開いて、何かが数体水平線の向こうへと消えていく。................てかそれ、動かせるんだ。

『あれは艦載機。私達空母は、この頭部ユニットから艦載機を発着艦させるの。』

ナデシコがすかさず説明してくれる。................ってことは、あれは索敵機か。

しばらくして、艦載機が帰ってきてランカの頭に吸い込まれる。

「................ふむ、発見できず、か。」

「もうちょい範囲を広げてみる?」

「................そうだな。よし、ナデシコさん、ソラ。そっちも艦載機を頼む。」

「わかったわ。」

と、ナデシコの頭頂部が開いて艦載機が発艦する。................なるほど、ランカのとは違ってこっちは青の光を纏ってるな。

「ほら、ソラも。」

「................ええっ!?」

「................おい、まさか巡洋艦なのに水偵持ってないのか?」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。」

................えーと、この辺にないか!? 私は、艤装をごそごそと漁る。................お、これか?

魚雷発射管の奥に並べられた艦載機を見つけて、手のひらに載せてみると、自力で走り出してナデシコ機の後を追い始める。すると、頭の奥に違う映像が流れ込んでくる。

(これは........................艦載機の見ている映像?)

どこまでも果てしなく続く海原を眺めながら、くまなく探していく。その映像にしばし見とれて(?)いると、いきなり頭の中に無電が流れ込んでくる。

『発見!!4時の方向!!』

ライラの声................4時ってことは、こっちか!!

「気づかれたな。................私が空襲を仕掛ける。ライラは駆逐を集めろ。」

「こっちにも敵影!!................4-5隻ね。」

「................二部隊、か。ならこっちも分かれて戦いますか。私とライラはこっち相手するんで、ソラとナデシコさんはそっち頼みます。」

ランカがそう言うと、ライラは素早く口笛を吹く。すると、海面が揺れて、水底から何かが浮かび上がってくる。................な、なんだ、この丸っこいのは................。

「ああ、心配しないで。駆逐艦だから。................あれはイ級ね。」

「く、駆逐艦................?」

「そう。................言い方は悪いけど、私たちにとって駆逐艦は使い捨ての戦力に近いわ。人型を取らず、明確な意思が無く、呼び出されたら己の本能に従って襲いかかる『兵器』。それが私達の側の駆逐艦よ。................そうだ、ソラちゃん。試しに口笛で呼び出してみて。私達のような上位種なら大体は呼べるから。」

言われた通りに口笛を吹いてみると、またも水面を割って四体のイ級が................あれ?

「あら、イ級2隻にロ級................それに、軽巡へ級ね。随分といい艦を呼び寄せたわね。」

「................アルジ................ゴ命令ヲ。」

艤装と一体化した艦――どうやらこれが軽巡へ級とかいうものらしい――が、私たちの前に跪(ひざまづ)く。

「........................えと................、どうすればいいの、これ................?」

「................んー、そうね................まず駆逐を先頭に奇襲をかけさせて。目標は向こうの敵艦隊。」

「................だ、そうだ。」

「........................了解シマシタ。」

そう言ってへ級が駆逐達に向かって手を振ると、駆逐艦が一直線に水平線を滑っていく。

「................さ、私たちも始めましょ。」

ナデシコが艤装を開いて艦載機を飛ばす。

................これが、私の初陣。

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