三人(?)の後に続いて、施設の外れに出る。そこは、海に面した――言わば、港のような場所。
「おい、早くしろよ。」
ライラに急かされる。他の三人はもう、水面に足をつけて立っている。私も恐る恐る水面へと踏み出すと、不思議なことに沈むことなく水面に立つことが出来た。
「................さーて、行くか。」
ライラが先頭になり、その後ろをランカ、ナデシコ、そして私の順に一列になって航行する。白い航跡が水面にたなびいて、すぐに消えていく。
........................へぇ、久しぶりに見たけど................海はあんまり、変わんないな。
「................どう?久しぶりに見た景色は。」
ナデシコが振り返らずに話しかけてくる。
「あー........................相変わらず『青』しかないな。」
「ふふっ、確かにそうね。................でもね、同じ『青』でも................もう、『あの日』からは数百年経ってるの。不思議、よね。」
「................もう、そんなに経つんだ........................」
................随分とまぁ、俺は居眠りしてたんだな。
『もうすぐ目標地点に到着する。各自、臨戦態勢。』
いきなり頭の中で声が響く。................けど、これぐらいの事ではもう驚かない。................無電みたいなものだろうか。
『................あ、通信は、伝えたい相手とメッセージを頭の中で浮かべるだけで通話できるから。』
ライラの素っ気ない説明が、またしても頭の中に響く。試しにライラのことを考えつつ『了解。................で、敵影は無いようだが?』と思いうかべる。するとすぐに、ライラから返事が帰ってくる。
『んー................また空振りかも?』
先頭でライラがやれやれといった様子を見せる。一方ランカの方は、じっと水平線の向こうを眺めている。
『向こうに何かが見えた気がする................索敵してみる。』
そう伝えると、ランカの帽子(?)がカパっと開いて、何かが数体水平線の向こうへと消えていく。................てかそれ、動かせるんだ。
『あれは艦載機。私達空母は、この頭部ユニットから艦載機を発着艦させるの。』
ナデシコがすかさず説明してくれる。................ってことは、あれは索敵機か。
しばらくして、艦載機が帰ってきてランカの頭に吸い込まれる。
「................ふむ、発見できず、か。」
「もうちょい範囲を広げてみる?」
「................そうだな。よし、ナデシコさん、ソラ。そっちも艦載機を頼む。」
「わかったわ。」
と、ナデシコの頭頂部が開いて艦載機が発艦する。................なるほど、ランカのとは違ってこっちは青の光を纏ってるな。
「ほら、ソラも。」
「................ええっ!?」
「................おい、まさか巡洋艦なのに水偵持ってないのか?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。」
................えーと、この辺にないか!? 私は、艤装をごそごそと漁る。................お、これか?
魚雷発射管の奥に並べられた艦載機を見つけて、手のひらに載せてみると、自力で走り出してナデシコ機の後を追い始める。すると、頭の奥に違う映像が流れ込んでくる。
(これは........................艦載機の見ている映像?)
どこまでも果てしなく続く海原を眺めながら、くまなく探していく。その映像にしばし見とれて(?)いると、いきなり頭の中に無電が流れ込んでくる。
『発見!!4時の方向!!』
ライラの声................4時ってことは、こっちか!!
「気づかれたな。................私が空襲を仕掛ける。ライラは駆逐を集めろ。」
「こっちにも敵影!!................4-5隻ね。」
「................二部隊、か。ならこっちも分かれて戦いますか。私とライラはこっち相手するんで、ソラとナデシコさんはそっち頼みます。」
ランカがそう言うと、ライラは素早く口笛を吹く。すると、海面が揺れて、水底から何かが浮かび上がってくる。................な、なんだ、この丸っこいのは................。
「ああ、心配しないで。駆逐艦だから。................あれはイ級ね。」
「く、駆逐艦................?」
「そう。................言い方は悪いけど、私たちにとって駆逐艦は使い捨ての戦力に近いわ。人型を取らず、明確な意思が無く、呼び出されたら己の本能に従って襲いかかる『兵器』。それが私達の側の駆逐艦よ。................そうだ、ソラちゃん。試しに口笛で呼び出してみて。私達のような上位種なら大体は呼べるから。」
言われた通りに口笛を吹いてみると、またも水面を割って四体のイ級が................あれ?
「あら、イ級2隻にロ級................それに、軽巡へ級ね。随分といい艦を呼び寄せたわね。」
「................アルジ................ゴ命令ヲ。」
艤装と一体化した艦――どうやらこれが軽巡へ級とかいうものらしい――が、私たちの前に跪(ひざまづ)く。
「........................えと................、どうすればいいの、これ................?」
「................んー、そうね................まず駆逐を先頭に奇襲をかけさせて。目標は向こうの敵艦隊。」
「................だ、そうだ。」
「........................了解シマシタ。」
そう言ってへ級が駆逐達に向かって手を振ると、駆逐艦が一直線に水平線を滑っていく。
「................さ、私たちも始めましょ。」
ナデシコが艤装を開いて艦載機を飛ばす。
................これが、私の初陣。