僕が闇の書の真実を知り、自分のリンカーコアを差し出し、自分の自己満足のために守護騎士達に協力を申し出てからそれなりの時間が過ぎ、季節は夏が過ぎ秋、そして冬が近付いていた。
僕は夏休みの終わりで一時休学する事にした。
学校には「両親の居る海外への短期留学、ただし期間は未定」と連絡を入れた。これはもちろん表向きの理由であって、本当の理由は闇の書のページを集めるためだ。
実はこの事を学校に連絡しに行くときに、保護者役をシャマルに頼んで一芝居打った。
最初この方法を思いついた時、保護者役はヴィータを除く三人が候補だったのだが、ザフィーラは寡黙でこういう事に向かなさそうだからという理由で最初に外した。
そして、シグナムとシャマルに頼んだ時、近くにいたヴィータが「シグナムにそんな器用なまねは出来ねー。シャマルにしとけ」の言葉で決定したという一幕があった。ちなみに、そう言われたシグナム本人は自分でも自覚していたらしく、何も言わなかった。
そんなこんなで僕は今はやての家にお世話になっている。と共に守護騎士達のお世話をしている。
女の子と同棲!?リア充爆発しろ!って思った奴、残念ながらはやては入院中だ。まあ、はやてに許可は貰ったし、闇の書の事が解決するまではそういう事になるけど、はやての退院のめどはまだ立って
いない。
…参謀であり、戦闘では治療などの支援を主にするシャマルの見立てでは、はやての命は年が明けるまで持てばいいらしい。
魔法文化があって、手段を選ばない場合でも結構厳しいらしい。しかも、今回ははやてとの誓いを守るため、密かに、なおかつ命を奪わないでいくんだそうだ。ぶっちゃけ、同じ存在からは一度しかリンカーコアは奪えないからあまり変わらないのだが、それは、魔法生物に限る。
魔法を使える人間で、密かに奪えるような無人世界に居るようなのは管理局に所属する人間がほとんどだ。
彼らを殺さないという事は、情報が洩れ、警戒される。しかも奪った人間もいつかは復活して、戦線に戻ってくる可能性もある。
こっちは僕を合わせてたった五人。もちろん補充要員なんてものは存在しない。管理局は事件を解決できるまで戦力をどんどん投入してくるだろう。
期間は大体三か月。どこまで管理局に気付かれず、なおかつ大量のリンカーコアを手に入れられるか、それが問題だ。
…最終手段でこの街にいる、なのはとフェイトとアリシア、それに銀髪君を襲う事も考えないといけないかもしれない。
僕の魔力でおおよそ30ページほど埋めれた。多分、なのは達で20ページ前後、銀髪君で僕と同じ位は埋めれるだろう。合わせて、100ページ近くは埋めれる。
フェイトとアリシアが何故、この街に居るかというと、夏休みの終わりと共にこっちに引っ越してきたらしい。学校もなのはや僕と同じ、聖祥大付属小学校で同じクラスらしい。
僕が何故知っているかというと、なのはからメールが来たからだった。
余談だけど、あの銀髪君はフェイトやアリシアにもちょっかい掛けてきているらしい。…がんばれ、フェイト、アリシア。
それはさておき、僕達はここ最近、地球から離れた無人世界に住む魔法生物を相手にしている。
…殺してはいない。傷付け、魔力を奪い、そのまま去って行ってるのだから、弱ったその生物はそのあと多分死ぬだろう。それが自然界の掟であり、弱肉強食の鉄則でもある。
僕の行動は偽善でしかない。それでも、その辺一帯の魔法生物は倒しているのでそこまで命を奪われた生き物はいないと信じたい。
そこそこの数、生き物を斬ってきた。
前世で伯父さんが釣って来た魚を捌いた事があるから、生きている物を殺すという経験は無かった訳ではない。それに、今回は傷付けるだけで、殺してはいない。
でも、殺す殺さずを問わず、生きている物を斬るという感覚には慣れない。
以前、僕は士郎さんと恭也さんの剣の鍛錬を見る機会が偶然あった。そこで見た物はいわゆる道場で教えるような「剣道」ではなく、争いの果てに殺しの技術として昇華した「剣術」だった。それを見るだけで怖かった。今思うと、ジュエルシードの最後の異相体との対決の時より怖かったかもしれない。
その時士郎さんは「八雲君達に教えている『剣道』は力、技術も大事だけど一番大切にされるのは心だ。技術、力の使い方を教えるけど、それと同じくらい力を持ったものの心構えを教える。それらを合わせて『強さ』と呼べる。でも私や恭也が使っているのは違う。私の先祖が作り上げた純然たる殺しの技術、『剣術』。それにあるのはいかに効率よく斬れるか。その一点だけだ。それは『力』だけなんだ。…言ってみたけど、子供には難しかったかな?」
と言っていた。
正直言うと、哲学的で分かりにくかった。士郎さん、子供どころか大人でも分かりにくいと思いますよ…。
僕の解釈では、よく言われる『心・技・体』の内、剣道はすべてをまんべんなく教えるけど、剣術は『技・体』特化なのだろう。もちろん『心』がないわけじゃないだろうけど、他の二つの要素より弱い感じがする。…違うな。多分『心』だけ剣術と剣道が同じなんだ。だからバランスがいびつなんだと思う。
つまり、剣術は今の平和な時代にそぐわない物だという事。そして、まだ何も出来上がっていない僕がそれを見て憧れないように注意するのが士郎さんの言葉の意味だと思う。
多分、僕は転生時の特典によって跳ね上がった身体能力と、士郎さんやシグナムに教えてもらった刀の使い方で、『技』と『体』は出来ているんだろう。でもまだ、『心』が付いてきていないんだと思う。このままじゃ、何時か何かミスをするかもしれない。どうするべきなのだろう…?
守護騎士サイド(三人称視点で進みます)
とある日の夜の事、守護騎士達は話し合いをしていた。
そもそも話し合いをしようと持ちかけてきたのはシグナムだった。
ちなみに八雲は寝ている。彼は翌日の朝食の準備のため、大体一番最初に寝る。
「で、どうしたんだよシグナム。私達に相談って?」
少し眠たそうなヴィータがそう言った。
「うむ、今日の蒐集の際に霧島に聞かれたのだ。『どうして、シグナム達守護騎士は強いんですか?』とな」
「八雲君は今でも十分強いと思うけど?」
「私もそう思う。ザフィーラはどうだ?」
シグナムの問いにザフィーラは頷いた。
「なるほど、それでシグナムはどう答えればいいかを悩んでいるのね」
「ああ。…しかし、私にはこういう事に向いていないな。最近思うよ。自分が不器用だって事に」
「…そうやってお前が弱音を吐くのも今回が初めてだ」
「…確かに、そうだな」
「悪い事じゃないと思うわよ。私は」
「そうかもしれないな。…ヴィータ、さっきから何を考えてるんだ?」
さっきから一言も発さないヴィータにシグナムが聞いた。
「ん?八雲の言葉を私なりに考えていただけだよ。一応その答えを出してみたんだけど、聞くか?」
その言葉に二人と一匹は頷いた。
「多分、八雲が聞きたいのは、戦いの時の心の持ち方じゃないかな?と思う」
「心の持ち方?」
「ああ。聞いた話だと、アイツは今まで生き物と実戦で戦ってきていないみたいだし、一緒に過ごしてみて優しい奴だって事も分かる。だからこそ、生き物を傷つける事が怖いんだろうよ。戦っている時もつらそうな顔してたし。それでだ、八雲への答えは…」
「「「答えは…?」」」
「正直な所、分かんねえ。私達は戦うために生まれてきた物だし、その心構えも出来て当たり前だ。アイツはそれが出来てない。って事は無いんだと思うんだけどな」
「そうだな。主の倒れた日の霧島の想いは本物だ」
「だから、多分アイツはあのまま、優しいままで良いんだと思うぜ。戦ってるときは集中しているし」
「なるほど。…しかし、意外だな」
「ええ、まさかヴィータちゃんに人に教える才能があったなんて…」
「お前らな!…まあ、たしかに私自身びっくりしてるよ」
「という訳で、霧島への説明は任せた」
「へいへい」
守護騎士サイドEND
「八雲、シグナムから昨日の話聞いたぞ」
無人世界に出向き、魔法生物を探索している時ヴィータがそう言った。
大体いつも二人ペアで動いて、一人が留守番している。今日はシャマルが留守だ。
「昨日の話って…ああ、あれね」
「忘れてたのかよ。…まあ、その話を聞いて私なりの答えは用意した。納得いくかは分からんけどな。聞くかい?」
「ありがたく聞かせて貰うよ」
本当なら自分で答えを見つけないといけない物だと思うけど。
「そんじゃ始めるぜ。…私が見るに八雲は弱く無い。むしろ、強さなら今でも私達とそんなに変わらないと思う」
「そんな事無いと思うけど…」
「いや、これは守護騎士全員の総意だ。でも、それよりもお前は相手を傷つける事に抵抗があるんじゃないか?」
「うん…」
「正直、戦いの場でそれは危ないとは思うけどよ、お前くらい集中していれば大丈夫だと思うぞ。それに、お前は私達みたいにその事に慣れちゃいけない。お前のその心は多分、凄く大事な物だから。…こんなもんかな」
「ありがとう、ヴィータ。参考にさせてもらうよ。お礼に明日帰って来た時にお菓子用意しておくよ」
「ホントか!」
「うん。でも、意外だな。まさかヴィータが教えてくれるなんて。見た感じしっかりしてそうなシグナムに聞いたんだけど」
「まあ、アイツは戦い以外はてんでダメだからな。不器用なんだよ」
そこで話は終わり、僕達は蒐集を始めた。
一回すべての事を忘れて目の前の事に集中する。
答えは自分なりに後で出すとしようかな。
シリアスはあんまり好きじゃないんですが、ここからは事件解決まではシリアスオンリーですから僕の気持ちが持つかどうか…。
ヴィータの教官としての適性が垣間見えるシーンを少し入れれたら良いかなと思い書きました。
次はいよいよA`sの時間軸に突入します。