君達は私達の事を知っている筈だ。
我々は幾度となくカルデアの軍勢に襲いかかり、時には辛酸を舐めさせ、時には圧倒的なまでに蹂躙される。
それでも尚、輝き続ける我らの腕の名前は……––––––
……。
……な、名前は……。
……すいません、だれか漢字を教えて下さい。
『英雄育成の為に周回で狩られる腕の裏話』
転生なのか。これは。
最初に思い至った疑問がこれだった。
よぉく、考えて欲しい。なんらかの原因で転生した先が、あのFGOの雑魚敵で有名なあの腕である。あのー、やられたら種火落とす奴。
名前は、黎明の手。又は腕。又は剛腕。又は神腕。
まず、『黎明』の読み方が分からない。何だこれは。だれだ、こんなまともに読む事すら難しそうな名前は!?わざわざ調べたよ!『れいめい』だってな!シラネェヨ!
しかも、知覚できるのは地上に飛び出てる腕のみ。地面にあるであろう肩やら胴などの部位は全くもって分からない。
視覚や聴覚はなく、ただ訳の分からない感覚によって漠然と周りの分かる恐怖。怖すぎる。
ついでに喋ることも出来ない。知ってた。
こんな状況だからこそ周りを見る事なんて出来なくて。
いっその事、それに気付かなかった方がよかったとさえ思えた。
しかし、その雄叫びはFGOのマスターならよく聞き慣れた……。
「『
ザコとなった俺にとって、死の宣告だったのだ。
視界(?)の辺り一面は爆散し、俺は跡形もなく消え去った。
それが俺が最初に撃墜された時の思い出。あの時は焦った。「転生した意味neeee!!」とか考えながら吹っ飛んだ。死ぬかと思った。
その後の事を端的に言えば、蘇生した。
「腕は滅びぬ!何度でも蘇るさぁ!」とか言うやつだ。
しかも、周りの状況とか分かるくせに、触覚とかももあるくせに痛覚がなかった。これのおかげか、死んだ事が拷問じみた何かになる事もなかった。
この、蘇生と痛覚遮断が出来る。この二つが一度消滅してから分かった事だった。
それから時は流れて、今ではすっかり……
「フレ頼光さん!宝具いっちゃって!!」
「行きますよ!『牛王招雷・天網恢々』ッ!!」
快適ハンドオンリーライフを満喫しております。ぎゃー。
この世界を説明するにあたってまず聞いて貰いたいのは、この世界は決してループする世界ではないと言うことだ。
ループとは、もし死んでしまうと死ぬ前の状況にまで時間を遡っていくことを指すが、これは蘇生した後による2回目の転生の状況によって大幅に可能性が激減した。
それは俺が黎明の手であった事と、敵がステラさんでは無かった事だ。
そもそも一番最初に死んだ時、俺は黎明の中でもどの敵だったか。それは、黎明の神腕である。理由は後で説明するが、さらにカルデアから来たであろうサーヴァント達はマシュ、カエサル、フレンドジャンヌのパーティだったのだ。
この後ジャンヌの旗に刺さって死んだのだが、これによってループではなく、消滅と蘇生を繰り返しながらも時が進んでいる事が分かった。
これによって何が分かるか。つまり、今は人理焼却を防ぐため、サーヴァントを強化するために俺たちをフルボッコにしている。ならば定礎復元だの何だのさえ終わってしまえばお払い箱行き、転生するにしてももっとまともなトコに行けると踏んだのだ。
時間が全てを解決してくれると分かった今、余裕を持って死んでは生き返りをしていると言う訳だ。
と、なればポジティブシンキングである。よーく考えれば、痛覚遮断こそされているものの、死ぬ機会なんて滅多にない。好きなだけ種火を持っていけばいいのだ。
ある時はステラされ、ある時はランスロさんにガトリングをぶち込まれ、ある時は頼光が五人に増え、ある時はバニヤンに踏んづけられ、ある時は茶々に燃やされながら突かれる。
……あれ?ロクな死に方なくない?
偶に他のサーヴァントの全体宝具であべしッ!するが、ほとんどがステラさんに「アーラシュ!」されるか、全体宝具のバーサーカー(カレイドスコープ付き)で一掃されるかのどれかである。紙耐久ェ……。あ、あとニトクリスに即死喰らうことも多いかな?
そんな中でも面白いのが、マスターの立ち姿を観察する事だ。
ほとんどのマスターは全体宝具ぶっぱによる高速周回をする事だろう。だが、マスターがいつでも元気とは限らない。ちょっと疲れた顔をしながらヘンテコに輝くリンゴをモッシャモッシャ食べてるのは当たり前、目にクマを付けながら頭を時折カックンカックンいわせながら見守るマスターもいれば、完全に目線の照準が合ってないままゾンビのように佇んでいるマスターも数多く存在している。
何人か見た事あるのが、どこを見ているか分からない虚ろな目で1箇所を見つめ続け、サーヴァントに指令も送らず、翌朝になった辺りで「はっ!?寝てた!?」と急に正気に戻るマスターである。これには流石のサーヴァント達もズッコケていた。
しかし、それらよりももっと面白いのが、発展途上のマスター。つまり、育ち盛りのマスターが背伸びをして、超級の種火クエストに来る時である。(ちなみに2回目のマシュカエサルジャンヌパーティがコレにあたる)
フレンドさんにおんぶに抱っこをしながらも自分のカルデアを強くするために頑張るマスター達に、ボコボコにされながらもホッコリ。
まぁ、ちゃんとファイアボール的なのは撃つんですけどね。これはアレですよ。スパルタ教育みたいなもんですって。
あ、ついでに言わせて貰うけど、サーヴァントを倒しちゃった時にあからさまに不機嫌になるのやめてくれません?一部のマスターとか「チッ!!」って完全な舌打ちをしてるの知ってるからな!?アレやめろ!マジで傷つくんだからな!!
次に黎明のホニャララの違いとかについてなんだけど。いわゆる、手とか剛腕とかの違いね。これは単純なスペックの違いだけではなく。縦の繋がりというものがある。カンタンに言うと、時間経過に応じて進化。最終形態の神腕になっていくのだ。
ん?何故、不機嫌かって?
当たり前だろ!神腕が一番消し飛ばされやすいんだからな!?
主に周回で消し飛んでは手から進化して神腕になり、死んではすぐ手に戻って今度は神腕になってないのにサーヴァントが来てひでぶっ!する。
やっぱり、痛みがなくてもタイミングを選べないのはツライ。カルデアの方々がクエストを選んだら何が何でも応戦しないといけませんし。神腕になった途端にカルデアの高速周回組にマッチングするし。
何故か時々、神腕のまま蘇生する時あるんだけど。突然変異か何か?
……え?神腕が足りない?どんどん狩られる?どこの電波だこれ。知るか。
遂に、遂に来た。待ちわびた終局特異点。マスター達が人理修復に躍起になってくれている。
これで「ぎゃー」最後の敵を「うわー」倒す事が出来たら遂に「やめてー」俺たちの仕事が「イタイ」終わる。今まで「しぬー」長かった。あと少しだ「ギャフン」みんな!頑張って倒せ「ぶるぁあ」……って痛いなさっきから!?どんだけ死にゃあいいんだ!?何!?なんなの!?……え?ラスボス倒せないから他のサーヴァント強くしたい?……ソッスカ。
詳しくは分からなかったが、魔神柱とか言う奴らは幾万のマスター達によって手当たり次第に折られていったらしい。
敵だから悪い奴としか言えないが、「殺したかっただけで、死んで欲しかったわけではなかった」と言うマスター達の言葉を聞くと、何故か親近感というか仲間意識が芽生えた。案外、魔神柱と俺たち黎明の腕は似た者同士かも知れない。
最後の敵、ゲーティアもマスター達とその仲間の英雄達が倒し、それぞれの世界の人理修復を成し遂げたようだ。
ともかくこれで、俺たちはお払い箱になる。……はずだった。
ねぇ、1.5部って何?
まだ人理修復終わってないマスターがいる!?
2部ってなにさ!?まだ終わらないの!?!?
なんでさぁぁああ!!!!
今日も黎明の腕は種火を吐き出す。
だがそれが決して、恨みを持つことはない。
だが、覚えていて欲しい。
人間や英雄が平和を望むように。
戦いの終焉を望む者は他にもいることを。
『また来たか』
『蹂躙は構わんが、さっさと人理を守ってこいよ』
その名の通り、夜明けを願って。
英雄育成の為に周回で狩られる腕の裏話。完
どうも、夢見の双月です。
この作品は知り合いの企画の執筆した一発物第2弾となっております。
企画 ぼまー様
執筆 夢見の双月
感想、評価、その他諸々お待ちしております!