これとは別に、夜頑張って上げるつもりなので心配なさらず!
それではどぞー。
「マスター?ここにいたのですか?」
『なんだよ?俺がカルデアにいるのが不服か?』
「いえ、そのような大きな話ではなく。何故、私の部屋へ?」
『……ダメ?』
「構いませんが。何か用事でも?」
『ない』
「……そうですか」
『……』
「……」
『あのさ』
「はい」
『まだ……気にしてるか?俺に対して本気で殺しに来た事』
「……っ」
『うーん。あれは謝っただろう?お前が嫌うところまで踏み入った俺が悪い』
「……違います、あれは……!」
『違わないだろ。あれはお前の本心だった。だからこそ、俺はお前に対してふざけた気持ちで話すつもりはない。……まぁ聞け。俺はさぁ、断ち切りたいんだよ。こんな二人で謝りあって距離を作る関係をさ。どうせなら、笑いあってた方が気分もいい」
「……」
『繊細な部分なんて誰にでもある。俺だってみんなに話せてない事がある。同じさ。それでいて決して、負の感情が悪というわけではない。うんざりな気持ちが結果的に自分の助ける事だってある』
「……マスター」
『笑おうぜ、アルジュナ。このカルデアには似合わないのさ、そんな顰めっ面はよ。嫌なもん全部抱えても笑えるようにこれからを生きるのさ。……あ、そうだ!これからちょっと俺の部屋に遊びに行こうぜ!面白いゲームがあるんだ!一緒にやろうぜ!』
「マスター。……ふっ、分かりました。たまには付き合いましょう。どんな内容のものですか?」
『お互いが社長になって、総資産を競うスゴロクゲームで……』
彼は、マスターに過ぎない。
全てが自分より劣っていた。だが同時に、全てが正反対のマスターを羨ましく感じた。
彼はこの時、自分に何かを授けたのだ。そう思えてならない。
『あー……思ったより負けず嫌いだったか。顰めっ面倍増で帰っちゃった。……どうしよ』
『ごめん。ここまでとは思わなくて……』
藤丸立香がランサーの手助けで起き上がる。
「お前の魔力は少ない。その程度でサーヴァントの負担の全てを補おうとするのは正しく愚行だ」
「……ランサー、相変わらず言葉が少ないな。……やれる事をやるんだ、リツカ。それが最善だ、と信じて。……それだけでいい」
『……ありがとう、二人とも』
先程の、あらゆる宝具を飛ばしたサーヴァントにサルさんは向かっていったのが、黄金の波紋による2回目の迎撃が来ない時点で察している。
しかし、サルさんがあんな芸当が出来るサーヴァントに敵うとは思えない。
そもそもサーヴァントとは英霊であり、歴史に名を残した英雄が殆どのサーヴァントシステムの中でただの魔術師が勝てるサーヴァントがいるはずがない。
右手に宿した黎明の腕としての能力も、ルーラーにやられていたことを考えれば期待は出来ない。心配したくなるのも無理はないだろう。
それでも。
それでも前を向くしかない。勝敗はともかく、こちらに攻撃が向かないように戦ってくれているのだ。
『行こう、セイバー!ランサー!』
力強く号令をかけ、自身にも気合いを入れる。
後戻りは出来ない。このまま突っ込むだけだ……!
城周辺部。絶大な石の壁が道を阻むため、正面から進むことを余儀なくされる。壁を伝うようにランサーに飛んで運んでもらう事も考えたが、先程のようにアーチャーで狙撃でもされたら対応が難しい。
そして、もう一つ。
「お前達とはここまでだ」
そう、ランサーが言い放ったからだ。
『……ランサー!?』
「どういう事だランサー……!」
「ルーラーは俺の事を理解しているらしい。この戦場に我が宿敵がいる。ならば、俺が立ちはだかるべきだろう」
『宿敵……?』
「気にするな、単なる腐れ縁だ。しかし、向こうも俺も決闘を望んでいるのは明らかだ。俺が行く。手出しは無用だ」
戦いの場所を遠い所に定めるためか、ランサーは城から離れるように飛び去って行った。
ランサーは城から遠く離れた丘に降りていく。その間、狙撃のチャンスはいくらでもあったにもかかわらず、相手からの攻撃は一切来なかった。
「久しぶり、と言うべきか。アルジュナ」
「カルナ。やはりお前だったか」
アルジュナと呼ばれたサーヴァントはそこに佇んだまま、静かにカルナを見据えていた。
「これも宿命か」
「カルナ、お前がここにいるなら、我らのする事は二つと無い。今ここで殺しあうまで」
「……かつて、我がマスターが言った事がある」
「……?」
「ここは『夢』のような世界だと。その言葉が胸にスッと入って来たのを覚えていたが。本当に夢のようだ。また、お前のような戦士と戦えるのだから」
「……そうか。お前もまた、望んでいたか!」
「行くぞ、アルジュナ。これ以上の語らいは不要だ」
「決着をつけるぞ!カルナ!」
二人目のサーヴァントは、アルジュナ。
第二カード。
授かりの英雄VS施しの英雄
対峙する二人は、互いに何を見る。