英雄育成の為に周回で狩られる腕の裏話   作:夢見 双月

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ケバブは、いいぞ。


友ではない、親しき夢の跡。

「……貴様、誰に許しを得て我の前にいる? 拝謁する栄誉を与えた覚えはないぞ……?」

 

『……ん? お前何言ってん? そんなんだから某青セイバーに嫌われるんだぜ? もーちょいフランクにほら、笑って笑って』

 

「なんだと?」

 

 

 

『お初にお目にかかる、アーチャー。俺がマスターの藤丸立香です。見ての通り敬意は払うが、お前が勝手に俺を見定めるように、俺はお前を王としては見ない。人として見させてもらう』

 

「ほう……?雑種如きが吠えるではないか」

 

『噛みつく犬がいるからこそ、従順な犬の価値が分かるもんさ。楽しく気楽に世界を救おうぜ!……所で、アーチャーはなんか偉い人だったりする?』

 

「偉いか、だと? そんな物はこの我を差し置いて他におらん」

 

『なら、さ。俺の状況を説明したら、笑わずに理解してくれる?』

 

「何を言っている、貴様」

 

 

 

『俺、実は転生者って奴なんだけど、わざわざ俺をこんな目に遭わせた奴の正体と動機が知りたい。転生前の名前は–––––––』

 

「……ほう、なかなかに愉快な事になっているな、道化。面白い、雑種が足掻きながら真実を解き明かす様を見るのも一興か」

 

『協力してくれるという認識でいいのかよ。よろしく、アーチャー』

 

 

 召喚して初めての邂逅。

 

 裁定者(ギルガメッシュ)はやがて、人ならざる人(マスター)天の鎖(エルキドゥ)を重ねる事になる。

 

 

 

 

 

 

 

「天の鎖よッ!!」

 

 

 俺の周りを囲むかの様に、天の鎖(エルキドゥ)を展開させるギルガメッシュ。

 

 俺自身に、いや、ギルガメッシュの霊装投影ではこれを切り抜ける事は出来ない。

 

 ギルガメッシュの最大の特性は保有している財宝の全てであり、身体的特徴のみで言うならばあらゆる英霊に劣る。

 さらに言えば、ギルガメッシュの霊装投影によって少なからず神性を取得している今では、天の鎖の性質である『神性が高いほど抜け出せられない』能力とはとことん相性が悪い。

 

 

 しかし、鎖を持っているのは目の前のアイツだけじゃない……!

 

 

『行け、友の名を刻んだ鎖(エンキドゥ)––––––!』

 

「ぬぅ……!? 貴様ァ……!」

 

 

 神が造ったワケでもない、ギルガメッシュが俺に渡してくれた鎖。

 その思い出はさっきまで忘れてしまっていたけれど。

 

 

 エルキドゥが神として、神と人を繋ぎ止めるなら。

 エンキドゥは人として、人と神を繋ぎ止める鎖だ。

 

 

 結局、互いが互いを縛るために、決着がつく事はない。

 

 投影解除。

 神性をかなぐり捨てて、ただの鎖同然となった天の鎖(エルキドゥ)を引きちぎる。友の名を刻んだ鎖(エンキドゥ)は身体を物理的に縛る事しか出来ない為に、ギルガメッシュは王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)体勢そのままで放つ事が出来るだろうと予測し、気を引いている内に鎖の結界から脱出する。

 

 無理やり天の鎖(エルキドゥ)を引きちぎった反動で、体の節々が悲鳴をあげる。

 当たり前だ。所詮は人間のやる事。だが、こんな無茶は今までに何度もやってきた。この程度は偶然というくくりにすら入らん。

 

「チッ……!」

 

 接近している俺に気付いて、王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)を自分に向けて射出。強引に友の名を刻んだ鎖(エンキドゥ)を破壊した。そのまま俺に照準を向けて財宝を発射するが、その程度の弾幕でやられる俺ではない。

 

 最初に向かってきた宝剣を素早く掴み取り、反動で体勢を崩しながらも次弾を弾く。そのまま走り抜け、最後に飛んできた矛に宝剣をぶん投げて軌道を逸らす。

 

 そのままギルガメッシュに肉薄した。

 

 

 

「一掃しろ、エア……!」

 

 乖離剣エアの回転を始動させ、剣先を空に仰がせた。

 エアの回転パーツが徐々に速くなっていき、紅い風が吹き荒ぶ。

 

 

 

 そして、

 

 

 

 

 

『遅えよ……!!』

 

 

 

 

 

 ギルガメッシュの右手が爆発と共に吹き飛び、エアは地面を跳ねた。

 

 

 一方、俺の右手には黎明の腕が火炎弾を放つ際に発現する、焔の結晶が輝いていた。

 

「……サ、……!!」

 

『この距離なら、外すワケねぇだろォ!!』

 

 

 

 

 

 

 

「キサマァァアア!!」

 

『こっからは楽しいケンカの時間だ……! 覚悟しろよ、ギルガメッシュ……!』

 

 

 ギルガメッシュの顔面に、ありったけの力を込めた俺の拳が振り下ろす。

 

 

 

 しかしそれは、奴の焦げた右手に止められる。

 互いの目が合う。

 

 

 紅蓮の目と、翡翠の目が交差した。

 

 

「……気付けば、同じ事の繰り返しよ。貴様はあの時もこうして無謀に突っ込んで来たものよな」

 

『テメェもガラにもなく、色んなモン飛ばさねぇって慢心してたからだろうが。……今撃てば俺は呆気なく死ぬぜ? やるか?』

 

「ふん。貴様がただの人間として戦うというならば、我の財宝など使うに値せぬ。統治している民をわざわざ宝剣で斬り捨てる王などおらぬわ、たわけ」

 

『王様なら殴り合いだってしないだろうが。ばーか』

 

「なぁに、偶には悪くないぞ? 特にここの様に気兼ねの要らぬ世界であればな」

 

『しゃあねぇ、付き合ってやるよ!』

 

 

 

 

 拳を握り込む。

 最早、言葉は要らない。

 

 

 昔のように語り、笑い、本音をぶつけ合うのみ。

 その方法が拳というだけであるだけだ。

 

 ただ、英雄王を知る者からすればあり得ない光景であるのは間違いない。

 

 

 

『来いよ。ギルガメッシュ』

 

「覚悟せよサルバドール。我の拳は今までよりも重いぞ?」

 

『はっ、当ててから言えよ』

 

 

 

 

 彼にとっては友ではない、親しき者に過ぎない。

 

 少なくとも、二人はいい笑顔でひたすら殴り合ってたという。




神が造った人形を友と呼んだように。

人が造った人形と気が付けば隣にいた。


時には王として死闘を繰り広げ、共に戦い。

時には人として殴り合い、共に駆けた。


しかし、結末は共に同じく。
先立たれた英雄は何を思うか。


出来る事なら、今一度。
隣にいれば、それで良い。


そんな、夢を見た。
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