でも、いつも気付けば夜になってる。
おかしい……! 何故だ……!?
互いの槍の剣戟が、重なり合うたびに火花を散らす。
青きランサーは、華麗な目の前のランサーと同じ得物を用いていなし、払い、突き刺す。
しかし、その尽くは通じない。
それは決して、目の前のランサーが二本の朱槍を持っているからという理由ではなく。かといって、女性だからと言う理由も戦士には当てはまらない。
「どうした、セタンタ。よもやその程度では有るまいな?」
セタンタと幼名で呼ばれる、クー・フーリンにとっては目の前の女性–––––スカサハは師であるため。
少なくとも、生前においてクー・フーリンが自分の師を打ち倒す事があったという記述はなく。
彼女はクー・フーリンにとって未だに超えられることのない技量の持ち主である。
「当たり前よォ!! そら!!」
それがどうした。とクー・フーリンは当然の事実を吐き捨てる。
師匠が強い? 当たり前だ。なら、今、超えればいい。
強敵と出会うのは、悲劇ではなく幸運。そう思えるのは単に戦士であるからだろう。
それが、生前殺せなかった師であるならば尚の事。
死の機会を失ったスカサハという女。
自分は間に合わなかったのだ。その結果、彼女を殺せるものはいなくなった。
そんな存在となった女が今。
サーヴァントとしてここにいる。
神霊に近い存在となった師匠がなぜ召喚出来るのかはこの際どうでもいい。
彼女が敵として立ちはだかるのなら。
––––––こんな機会、逃す訳ねぇだろ––––!
『おい青タイツ』
「よし、シミュレーションルームに行こうぜ。ぶっ飛ばしてやる」
『なんでだよ!? これが褒め言葉だとなぜ分からない!?』
「分からねぇよ!? よしんばそうだったとしても皮肉にしか聞こえねーよ!!」
『あのさ、伝記をさらっと見てたらさ。クー・フーリンのページがあってさ。どうせだから生の声を聞きたいな、と』
「へぇ。オメェみてぇな後先考えねぇような馬鹿が伝記をねぇ……」
『お? ケンカか? 買うぜ?』
「やるか?」
『まぁいいや。そんでさ、このクー・フーリンの師匠ってどんな人だったんだ?』
「師匠?……スカサハの事か?」
『そう。単純な興味。話したくないなら後日でもいいし、やめてほしいなら二度とこの話はしないが』
「急にまじめになんなよ。……スカサハは……そうだな。俺にとって」
越えるべきだった壁だ。
「おおおおおおおお!!」
声を張り上げ、全ての挙動に全身全霊を注ぎ込む。
それでなければ。いや、そうであっても勝てるかどうかはわからない。
絶対に殺す。今度こそ。
「《
より鮮烈な赤を纏い、呪いの槍がスカサハに向く。
しかし、その後に立っていたのは。
他ならぬ彼女であった。
発動してしまえば、必ず当たる因果逆転の槍。
ならば、発動させなければいい。
早い話、発動前に封殺された。
「……衰えたか。修行を怠ったか? 馬鹿者」
スカサハの目にあるのは明らかな侮蔑。
壁まで吹き飛ばされて満足に顔も見れない状態の中、クー・フーリンは自嘲した。
(確かにな。ここに召喚されてから、身になることなんざ一つもしてねぇ。ここで強敵と戦ったのも師匠が初めてだし、光を取り戻した程度の雑魚相手じゃ運動にもならなかった。そして、何より–––––)
「……あン野郎。忘れてんじゃねぇよ……くそったれ」
「去ね。弱くなったお主など見たくなかった」
『お姉さんも弱くなってない? 背後取られた時点で負けでしょうよ』
「!?」
肩を叩かれ、瞬時にスカサハが後退する。
かつてのマスターがそこにいた。
『スカサハの姉さんの様な存在をちゃんとした召喚でサーヴァントにする
から、弱くなったのかな? 後、お前は俺から魔力を持って行かなすぎ。消える寸前じゃねぇの。魔力喰いもせずによくここまで生きられたもんだ』
「何をしに来た。テメェ」
『決まってるだろ』
『
「お前っ……!」
『さて、久方ぶりのケルト魂を見せてやんよ。覚悟はいいかい? ご令嬢』
「そんな歳でもない。。来い、勇士ども」
黎明の腕の時には、かつての記憶はほぼないに等しかった。
自分の行いは知っていても、それまでの過程を忘れていた。
しかし今は、過去の体がある。過去の記憶もある。
その証明としては、実際に見てもらった方が早い。
見ろ。
俺は今、お前の隣にいるぞ!
(尚、ギルガメッシュの事だけは過去の体を創ってからも忘れてた模様)