箸休めなのに、手掴みでメシを食うような内容となっております。
一応、第一部までのネタバレ注意。
あと、本編より先に幕間を読みに来るような人はいないよね……?
話をしよう。
……え? やだ? うるさい、聞け。
俺、サルバドールの人理修復の話はまるで物語のように奇怪、そして華々しいものであったかも知れないが。
生憎、それをこんな所で話すにはちょっと……恥ずかしいんだ。
だから、所々端折りながら話すが別にいいだろう?
本筋の変わらないところは別の機会に知ればいい。
俺はここで起きた事と、事実起きるはずだった事実との差異についてを重点的に話すつもりだ。
……ん? 本筋がそもそも何か、って?……結構前に話しただろうが。
お前だけに話すんだから。ちゃんと聞いててくれ。
いわゆるカルデアという場所に転生した後、俺はとある廊下で倒れていた。何かの訓練シミュレーションで脳が疲れていたらしい。簡単に言うと寝てた。でも、シミュレーションなんてしていた記憶はない。
もちろん、藤丸立香としての今までの記憶もなかった。
当たり前だ。既に気を失ったその時から、俺は藤丸立香ではなく、藤丸立香という皮を被ったサルバドールの名を持つ別人だったのだから。
あるとするなら、俺自身が転生前に普通の学生として過ごしていた思い出だけ。
目の前に来たフォウと呼ばれる小動物を可愛がった後に来た、ピンク色の髪で俺を先輩と呼ぶ少女が来た時。
俺はマジに焦った。
そりゃそうだ。知り合いだったら、一発でバレるぐらいには挙動不審だったからな。
だが、お互いが初対面だとわかったときは目に見えてほっ、としてたかな。
その後は、杉田の声の……そうだ、レフさんが来て、その後は成り行きそのままにカルデアは爆発して強制レイシフトが暴発した。
この時の事は事前に知ってはいた。だが、俺は動けなかった。
打算もなく二回目の転生に混乱していたから、自分がどこに飛ばされたのかすらもイマイチ把握出来てなかったのが原因だ。
俺はこの悲劇がおきた時に、やっと事態を掴んだんだ。
この後の特異点に関しては順調に進んだ。
マシュ・キリエライトがシールダーとしてデミ・サーヴァント化し、俺はこの特異点を知っていたから速やかに敵襲に対応出来た。
どれだけスムーズだったのかは、所長がザコに襲われる前に合流出来たと言えば分かるだろうか。
「マスターがあなたしかいない……? それにマシュがデミ・サーヴァントに……。どういう事よ!」
「落ち着いてください、所長。幸い、カルデアとは連絡が取れています。先ずは霊脈を目指してサークルを作りに行きましょう」
『所長。混乱しているようなら、全裸になればあらゆるしがらみから解き放たれるらしいですよ』
「先輩、それは嘘だと流石に私でも分かります」
「……ホントに?」
「落ち着いて下さい! 所長!」
『所で、オルガマリーさん。長いんでオルガって呼んでいいですか?』
「やめなさい。私は上司、あなたは部下よ。その軽い口を慎みなさい」
『じゃあ、オッさんでいい?』
「口を慎みなさいよ!!」
『……ん、来るか。マシュ、敵だから前方に立って構えろ』
「え?……っ!? はい!」
「え!? 何!?」
『安心してください。ただの敵です』
「安心出来ないじゃない!?」
そうして、聖杯探索は続いていった。そのまま知っている通りに、シャドウサーヴァントと対峙した際にキャスターが現れ、協力体制を整えて大聖杯の元に全員で向かった。
中にいたセイバーも命からがらで勝利し、キャスターが帰っていった後に、俺の人生最大の愚行にして全てが変わる事態が起こる。
大聖杯の前に現れたのは、レフだった。
何が起こるかは把握していた。そしてその邪悪さも。
マシュがレフに近づくオルガを止めるが、俺はこの時、自分の魔術の可能性が頭に引っかかって仕方がなかった。
思い浮かぶのは、先程のセイバー戦。
俺はあの時、見よう見まねで文字をなぞった。マスターなのにも関わらず、セイバーに肉弾戦を仕掛けている途中でだ。まぁ、まともに戦った事のない素人丸出しだったが。無意識にそこで書いたルーン文字によって発火が起き、セイバーが大きな隙を見せた事。
まるで、その現象がこれから起きる事態から救済出来るかの様に感じた。
セイバー戦の次に思い浮かぶは、今回の転生。
中の主人公に憧れたゲームがあった。こうなりたいと強く願ってから、同じような場所に来た。
もしかして、この転生は自分が引き起こした奇跡なのではないか。
馬鹿馬鹿しい話を俺は自然と受け止めていた。
我に帰れば、既にカルデアスに取り込まれようとしているオルガマリーがいる。
危険だと頭が信号を発したが、無理やり捩じ伏せる。
知るか。
俺を止める理由にはならない。
無我夢中に駆け出した。オルガマリーの下へ。
『オルガァァアア!!』
「貴様。何をする気だ……?」
レフが疑問の目を俺に向ける。
これから何をするか、コイツは分かっていないらしい。
決まってる。
「助けて!!」
助けるに決まってるだろうが……!
『手を伸ばせぇ!!』
しかし、届かない。
オルガマリーはカルデアスに触れた。
情報に耐えきれず、幽霊同然であるオルガマリーでさえも分解されていく。
その眼には、絶望が映っていた。
『まだだ! 諦めるかぁ!!』
右手を伸ばすが物理的に届かない。
ならば、右手の光る刻印を使うまで。
『令呪で命ずる、来いシールダー!!』
『重ねて命ずる。……俺を、カルデアスにぶん投げろォ!!』
転移した為に状況が急変し、混乱に陥った後輩は身体の動きそのままに身を任せる。
つまり、命令通りにマシュは動き。
俺自身を手にかけた事に気づくのは、手が俺から離れてからだった。
「……先輩!!?」
そして、その最悪なタイミングでマシュはカルデアに帰還した。
この時、俺には何か策があったか。と言われれば、否だ。
直感に近いものが「行ける」と踏んだだけで、具体的なものは一切ない。
ただ、死にゆくオルガマリーの手を取り。
勢い余って、二人ともカルデアスの中心に突っ込んだだけだった。
そして情報過多による弊害で、俺自身にも分化が始まった。
それだけで何も起きなければ、人理は終わっていたのかもしれない。
だが、いつか俺は言ったな?
俺の起源は『融合』であると。
何を思ったか消滅しつつあるオルガマリーごと、カルデアスを俺は取り込み始めた。
もちろん、意図はあった。
分化の性質を利用さえすれば、コントロール次第ではもとには戻れるはず。
だったら、コントロール出来るようにしてしまえばいい。
どうせ死ぬのならやってみるべきだ。
自分の推測が全て正しければ、確実にこの『分化』と『融合』の二つの性質は対立する––––––!
オルガマリーの思念体を最初に取り込み、一体化した後に徐々に分化の原因を解いていく。
原因とはつまり、単純に莫大な情報量による肉体の飽和。
『融合』によるカルデアス内での自身の存在を明確化させる作業と並行させながら、少しずつ情報を『融合』して取り込んでいく。
その後、カルデアに落胆の様子で帰還したマシュに告げられたのは、カルデアスが計測が曖昧となる神代から、人理焼却で観測できなくなる現代までの地球の姿を無作為に変化させているという、一種の故障状態に陥っているという事だった。
ダヴィンチちゃんはこれを見て、「地球がシステムアップデートのように更新されているかのようだ」と評した。
もちろん、この奇跡はいくつもの幸運無くしては出来ない芸当であった。
まず、彼の推測は予測通りで、彼はカルデアスが起こした現象とは真反対の起源であったこと。
次に、同じ『融合』を使用する事で、カルデアスの原因である情報の処理が可能であった事。
そして。
オルガマリーの「助けて」という思念があった為に、自分自身がサルバドールという存在を認識し、カルデアスの中で自分の存在を証明し続ける事が出来た事。
他にも小さな奇跡は起こっていただろう。
されど、大きな要因はこの三つであった。
結果的にカルデアスとサルバドール、そしてオルガマリーは一体化し。
カルデアス観測スタッフがその時見たのは、オルガマリーを抱えてカルデアスから分離を完了したサルバドールの姿だった。
『驚いてるところ悪いが、バイタル……チェックでいいかな? やらせてくれないか?』
そう言ってスタッフにオルガマリーを渡した後、彼は意識を手放した。
それが、マシュにトラウマを植え付けながらも彼女を救った、彼の愚行の始まりである。
同時にカルデアスと合体したことにより、サルバドールは投影魔術に必須な基本骨子や構造理解を全てカルデアスに一任する事で、飛躍的精度の投影を可能にした。
カルデアスとはそもそも擬似地球環境モデルであり、それこそ英雄の逸話や過去さえも正確に観測可能な装置の役割を果たすものである。
これは、後に人理修復においてサルバドールの重要な主力の一部となる。
オルガマリーはサルバドールによって、カルデアスの中で思念体を通して直接肉体情報を組み込まれた。これはカルデアスから出ることによってオルガマリーの死が確定し、そのまま消失する恐れがあるためである。
サルバドールはカルデアスに検索をかけ、およそ優秀な魔術師––––––さらに聖杯戦争にてサーヴァントを召喚出来た事例を持つ少女–––––––をオルガマリーに分化と融合を組み合わせて慎重に肉体情報を形成していった。
その少女の影響か、魔術回路に変化が生じ、《
それでも、これからのサルバドールの代わりにマスターの役目を担うのは彼女である。
まだ、彼らの物語は始まったばかり。
『語り部みたいな口調に変わっちまってたが兎も角、こっから俺の華麗な人理修復が……っておい、セイバー?……コイツ、寝てやがる……』
ふと、腕だけの存在は焚き火の前から移動し、地平線を見る。
『……おっ、黎明だ』
夜明けが来た、となんとなく言いたくなくて。
そんな言葉を使う。念話でしか聞こえなかろうと言いたいものは言いたいのだ。
そうだ。ゆっくりでいい。
時間はほぼ無限にある。ゆっくり、ちょっとずつ話して行こう。
俺の物語を。
セイバーに会って、一週間経過した頃のサルバドールはそう思い、セイバーへ毛布がわりの木の葉かける為に探しに向かう。
それから一ヶ月後、赤のランサーことカルナを召喚する。
ルーラーのサーヴァントを召喚し、雲行きが怪しくなるまで、あと10年3ヶ月と14日。
長い夢は、まだ始まったばかり。
転生。からの改変。
そんな事はもう彼は経験済みです。
妙に強い理由も多少はこれで分かってくれるなら幸いですね。
後、この番外編の全てを書ききるのは無理です。死にます。
ので、もし書くならストーリーの一部と終局特異点になると思います。
そこらの短編よりも続編分が長い件。