英雄育成の為に周回で狩られる腕の裏話   作:夢見 双月

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夢を見た事はありますか?

楽しい夢でしょうか。
悲しい夢でしょうか。
誰かに会えた夢でしょうか。

しかし、内容を覚えている人は少ないのではないでしょうか。
……やがて、夢を見た事すら忘れるかも知れません。

それでも、そんな所でないと叶わない事もあります。
夢を見るくらい、自由がいいですよね。



みんなを救うだけの夢の残滓

藤丸立香は不安が拭い取れない。

 

何故か。

 

分からない。

 

それは本来、仲間の危機を察知する直感であり、カルデアのマスターとしてとても大切な感覚であるのだが。

 

 

そんな事は今の彼に知る由はない。

 

故に、戦っているセイバーにかける言葉もなかった。

 

 

宝具の撃ち合い。

それは、どんな結果を招こうと必ず周りに影響を及ぼす程の衝撃が起こる。

 

必死だった。足に力を入れて吹き飛ばないように耐え忍ぶ。

藤丸立香は普通の人間だ。もし吹き飛んでしまい、当たりどころが悪かったらそれだけで気絶してしまう程には人間なのだ。

 

だが、それでも願った。セイバーの勝利を。

 

目の前から目を離さず、自分のやれることをしようと前を向く。

 

 

 

 

だからこそ。

 

 

「……令呪を以って命ずる……!!」

 

 

 

 

何が起きたのかを理解した。

 

 

「……宝具を中止せよ、セイバー」

 

 

 

 

 

 

『ルーラーァァアア!!』

 

神明裁決。ルーラーに託されるクラス毎に二画存在する令呪を使うことが出来るスキル。他でもない黎明の腕が殺された時にセイバー、ランサーが一画ずつ使われたもの。

 

その二画目に、絶対に避けられないタイミングを生み出すためだけに使われるとは–––––––!

 

思わず、藤丸立香は感情のままに叫ぶ。

卑怯だ、と。

 

だが、頭の中ではルーラーの事を理解していた。

こいつはそういう英雄なのだ。どんなことをしてでも、叶えたい願いを持つ英霊なのだ。

 

『《緊急回避》ッ!!』

 

カルデア制服の魔術礼装に付随しているのスキルの中に、サーヴァント一体に回避させることが出来るスキルの『緊急回避』を使用。すぐさま後退させようと試みた。

 

「無駄だ……! 二つの光弾が重なる時、生半可は対処では呑み込まれるだけだ! これで、俺の勝ちだ!」

 

 

 

『セイバー!!』

 

「くっ––––!」

 

 

 

 

「すまない、マスター」

 

 

 

 

城が、ルーラーの暗黒物質に引き寄せられる。

全体が砕け始め、瓦礫が中心に集まっていく。

 

勢いよく床も崩壊し、藤丸立香はそのまま下に落ちていった。

ルーラーやセイバーの姿は見る事は出来ないが、壁すらも崩れて倒壊していっている。間違いなく自分と同じように落ちていっているだろう。

 

いや、そうであって欲しい。

 

セイバーがあのブラックホールと化した物質に吸い込まれていった様には見えた。しかし、重力に従って落ちた筈だ。そうに決まっている。

 

藤丸立香は思い至った考えを拭い取り、そう決めつけながらも落ちていく。

 

不意に、誰かに手を掴まれ。

そのまま土煙に覆われていった。

 

 

 

「あはは、はははは–––––!!」

 

狂笑。

聖者は跡地に立ちながら、ルーラーのクラスとは思えない程に悶えた。

 

「ここに、遂に叶えり……! やっと、人類は救済の道を歩むんだ……!」

 

 

ルーラーが持っている聖杯によって、晩年から望んでいた願いが届こうとしていた。

 

もう成就まで幾ばくもない。

 

 

 

ひたすらに笑った。ただ笑った。

 

 

だからこそ気付かない。ルーラーの宝具は、ブラックホールにこそなれど。

 

城の尽くを破壊する力はない。

 

仮にルーラーの宝具を単体で発動するとしたのなら。瓦礫なんていう規模でなく、より大きな壁や床が引き寄せられる事だろう。

 

そもそも、ブラックホールが消滅しているのもおかしな話だ。まるで、暗黒物質ごと吹き飛ばされて消滅したかのような、衝撃の呆気なさがある。

本来ならば、ここまでルーラーも影響なく無傷でいられる宝具ではない。

 

何故、城が細かく砕け散り。ましてやルーラーの宝具が消し飛んだか。

 

 

『俺はかつて、言った。ここは夢だと』

 

『誰もが叶えたいが、中には決して叶えられないものもある。それを少なからず満たすための世界であると』

 

『俺は平穏を。セイバーは慈しみの人生を。ランサーは仇敵との再戦を。それぞれ、この地で叶えた事だろう』

 

『だが、聖人よ。心得ていたか?』

 

 

 

 

 

『夢とはやがて、醒めて消えるのが道理だと』

 

 

「お……お前は……!?」

 

『誰だってか? 殺した癖に、冷たいねぇ。……お前には俺の名前、言ってなかったっけか?……んじゃあ、改めて自己紹介だな』

 

 

 

前世界において、人類最後の切り札。

セイバーを抱えながら、右手に光を宿した青年は告げる。

 

 

『サルバドール・アニムスフィア。すまんが苗字で呼ばれると色々重いから、サルバドールかサルさんって呼べ。オーケーか、ルーラー?』

 

「うっ、マスター……」

 

『お前……こんなにボロボロになっちまって。……一体、誰にやられたんだ……』

 

 

 

 

 

「マスター。マスターのなんか赤いヤツを発する剣にやられた」

 

 

 

『……』

「……」

 

 

 

 

『証拠隠滅!』

「うぎゃ!」

 

 

 

当て身で沈んだセイバーを寝かせ、ルーラーに振り向く。

 

 

 

 

『貴様ァ!! セイバーをよくも!! 許さんぞ!!』

 

「ふざけるな……! 貴様みたいな連中に聖杯は渡さない! 俺が人類を導く!!」

 

 

『……ふぅ、夢はいつか醒めるものだぜ、ルーラー。夜明けが来たら、人は目覚めなきゃならねぇ。楽しく行こうぜ』

 

「ほざけ!!」

 

 

ルーラーとサルバドールの決戦。

その火蓋が遂に落とされた。

 

 

 

 

 




遂に終盤。

終わりが近づいてまいりました。


最近、何かと投稿出来てない日が多いですが、明日は投稿出来ると思います。
もし何かしらの事情で投稿出来なかった場合、活動報告で連絡しますね。
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